明治大学黒川農場では、2013年度から文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の助成を受けて、「亜臨界水処理有機液肥による地域内有機資源循環型農業システムの構築」に関する共同研究を開始しました。この研究は、都市近郊農地から排出される作物残渣、都市生ごみを亜臨界水処理により分解し、これを液体肥料として農業生産に活用するとともに、有機性廃棄物による都市および都市周辺の汚染を軽減することを目的としています。さらに、この研究を黒川農場のフラグシップとして、国際交流を進めています。
今年度は、都市のごみ汚染、化学肥料による水質汚染が深刻なフィリピン共和国の土壌・水管理局から専門家2人を招聘し、20143月10~13日に、見学会と講演会からなる国際ワークショップ「亜臨界水処理有機廃棄物の農業利用」を開催しました。
招聘者は土壌保全部長 Samuel M. Contreras氏と 水資源管理部技師のTeresita S. Sandoval氏で、明治大学は小沢聖特任教授と藤原俊六郎特任教授及び共同研究者が対応しました。
<見学会>
黒川農場では、この共同研究のために導入された亜臨界水処理装置と、製造した液肥の栽培試験を見学し、意見交換しました。
三重県農業研究所では自然光型植物工場の一部で、食品屑の亜臨界水処理物を培地に利用したイチゴ栽培の状況を視察しました。
(株)小桝屋の運営する弥富市肥料工場では、実用規模で運営されている食品粕亜臨界水処理装置を用い、堆肥を製造している過程を視察しました。
<講演会と意見交換>
3月12日、三重県農業研究所において共同研究者を対象に、2氏から以下の講演をいただいた後、意見交換が行われました。
Samuel M. Contreras氏;「フィリピンにおける地下水の硝酸汚染の現状」
Teresita S. Sandoval氏;「フィリピンにおける都市ごみ処理の現状」
フィリピンの多量の有機性廃棄物処理と深刻な土壌・水質汚染の対策として、黒川農場で研究を実施している亜臨界水処理技術は有望と思われ、これからも情報交換を進めながら、フィリピンにおいて事業の可能性を検討することを確認しました。