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石器使用痕分析

石器使用痕分析

 石器表面の使用痕を顕微鏡などによって観察することを通して、使用された部位やその使用方法、被加工物、柄の有無など石器の使用に関わる問題を考察するのが石器の使用痕分析です。
 
 破損、摩滅・磨耗、微小剥離痕、線状痕、使用痕光沢面、残滓に大きく分けられる石器の使用痕の形態的特徴を観察するためには、肉眼やルーペなどだけでなく、様々な種類の顕微鏡を用いる必要があります。一般的に低い倍率(通常100倍程度以下)の機器による観察では破損や摩滅・磨耗、微小剥離痕、線状痕が主な観察対象となり、高い倍率(通常100倍程度以上)の機器では、線状痕や摩滅・磨耗、使用痕光沢面、残滓などが主な観察対象となります。前者では主に実体顕微鏡が用いられ、後者では主に落射照明付き金属顕微鏡やデジタルマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡などが用いられます。

 石器にみられる痕跡とその形成要因の相関性を実験的に把握し、痕跡の形態的特徴とその形成要因を結びつけることは、石器使用痕分析に不可欠な作業です。まず条件を統制した実験によって形成要因である行動とその結果生じる痕跡との相関を明らかにし、その結果をもとに、考古資料にみられる痕跡を形成させた過去の要因(行動)を推定するのです。その際重要なことは、分析対象とする資料の時代や当時の環境を充分に考慮すること、想定しうる使用方法や被加工物を対象に多量で体系的な実験を行うことによって、事前に対比試料を作成するということです。