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学長室

第133回明大祭開催にあたって 「好きこそ「もの」の上手なれ」

2017年11月02日
明治大学 学長室

よく「趣味は?」と聞かれる。それが困る。読書とか、演劇鑑賞とか、音楽鑑賞などが思い浮かぶけれど、それが趣味かといえば少し違う。確かに「好き」なことではあるが、同時にそれは仕事でもある。私にとっては、本を読むことは研究にもつながる。演劇評論もやっていたので芝居を見ることは趣味だけではない。クラシックバレエの批評家であった何年間があったからこそ、芸術祭の審査委員まで務めたのだから、それも趣味とはいえない。音楽の評論も何回か書いたことがあったが、その時も仕事であった。

そう思うと、「好きなこと」を全て仕事にしてしまったことになる。それで給料や原稿料を貰うのはなんだか申し訳ない気にもなる。しかし、「好きこそものの上手なれ」という、ことわざがある。「好き」でないと、仕事であってもそれを上手といえるところまでは到達しない。辛いことであっても、好きなら持続することができる。

本を読むといっても、時には辛いことがある。好きだから、なんとか読み切ることができる。文章を書くことはもともと好きであった。小学校の読書感想文から始まって、文章を書くことは好きだった。でもなかなか上手くはならない。上手く書けるようになったと思った頃には、文章の上手い学者は本物になれないといわれて、なんとか下手に書くように心がけた。好きだから努力する。努力は決して嫌ではない。

好きでなければ何事も始まらない。それはいつか仕事になるかもしれない。好きなことを仕事にできたら最高だ。「好きを誇れ」。このテーマはいいな。そこには、学問や人生の鍵があるからだ。その鍵を明大祭で見つけて欲しい。来場する全ての人に見せて欲しい。学生諸君の躍動に期待します。