新しい社会に向けて

 本日ここに、めでたく卒業式を迎えた皆さんに、心より「おめでとう」と申し上げます。皆さんがこの日を迎えるために皆さんの背後にあって有形無形の犠牲を払ってこられた御両親をはじめとする多数の方々のお喜びも、さぞかし大きいことでありましょう。心よりお祝い申し上げます。

 ところで、わが国は、今、社会の質的転換をむかえて既存のパラダイム(ルール、枠組み)の見直しと、その変革が求められています。しかも明治維新、戦後改革に匹敵する「第三番目の開国」期に入っています。このグローバル化は、IT(情報通信技術)の急速な発達という大津波を受けて、「行先不透明」といわれながら、以前のどの時代とも較べものにならない規模と速度で進むものと思われます。

 今年は戦後60年、すなわち1945年に終結した第二次世界大戦から60年目という節目の年にあたります。この期間の歴史的な意義について、これを総括し、皆さんが新しい社会の建設にむけて自らの夢を描き、そして本日からその夢実現にむけて「前へ」歩むことを切に望みたいと存じます。

 戦後の60年間、世界は米ソが対立する冷戦構造のなかで、常に第三次世界大戦に脅えながら、しかしそれを回避してベルリンの壁の崩壊に至りました。そして今は、アメリカ一極主義化の潮流が見え隠れする時代に入っていると評しうると思います。わが国についていえば、占領下の日本から独立日本へ、そして経済大国になり、今では国際社会において「独自の役割を担う」ことが求められています。

 この60年という歳月のなかで、数多くの危機があり、今なお宗教や民族間の対立による局地的な武力紛争、テロの恐怖などが多発しています。しかし、この間、ともかく人類が大戦を回避できたこと、しかも日本が60年間にわたり戦渦にまきこまれないで過ごすことができたことは、素直に喜びたいし、また高く評価すべきことであると思います。私たちは、今後とも「平和に暮したい」と希求することを常に第一位に据え、これを心に刻んで皆さんには歩んでいただきたいと願う次第であります。

 最近、大型台風やハリケーン、集中豪雨、記録的な豪雪など自然災害が日本のみならず世界各地で多発しており、しかもそれは破壊的と表現しなければならないほどひどいものです。これらの異常気象は、社会がコストや効率性の追求を優先して、自然との調和を無視、少なくとも軽視してきたことによるものと私は考えています。この「異常気象は、温暖化が関係している」との見方が有力です。日本が世界に誇り、かつ発信した京都議定書も、ようやく発効した今日、そこで義務づけられている温室効果ガスの削減率の達成、そして地球環境の保全は、人類の将来のために英知を用いて解決しなければならない喫緊の課題です。

 最後になりましたが、卒業生の皆さんが明治大学で学んだことを役立てながら、どうか健康で、幸せに、かつ大いに活躍されることを心よりお祈りして、私の告辞といたします。

学長 納谷廣美

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