2008年度入学式 学長告辞「新たな挑戦、そして飛躍」

 新入生の皆さん,ご入学おめでとうございます。また,ご両親をはじめとするご家族の皆様におかれましても,お喜びもひとしおのことと思います。明治大学を代表して,心より「おめでとう」とお祝い申し上げます。
  私ども明治大学の教職員は,本日ここに皆さんをお迎えすることができ,本当に嬉しく思っています。また,既に在籍している約2万3千名の学生,および48万名余の卒業生(校友)も,皆さんと新しい縁をもつことができたことを嬉しく思うとともに,皆さんを心より歓迎していることでしょう。

明治大学は,1881年(明治14年)に誕生し,今年で128年目を迎えます。当時わが国は,近代国家に仲間入りするために「維新」すなわち「これ(維)あらた(新)なり」の気概のもと,新しい「国造り」に取り組んでおりました。この「明治維新」は,その頃,欧米の先進諸国が競って,インドやアジアにおいて植民地化政策を強力に展開していたことから,これに対抗して,わが国の独立を守るためには,一刻も早く「近代化」をはからなければならないという状況下にあったことによります。このことがあって,わが国は,単に封建制度を打破することにとどまらず,当時のグローバル・スタンダードに適合させるべく「富国強兵」の旗印のもと,条約改正をはじめ社会の諸制度(分野)にわたって質的転換をはかろうとしていました。
  このような背景状況において,本学の創立者達は,国家(社会)を構成する市民(国民)の意向を尊重する,換言すれば「個人の尊厳」をベースにした民主養成型の国造りを目指して,本学の前身・明治法律学校を開設しました。この教育方針は,やがて建学の精神「権利自由」「独立自治」として,ゆるぎない伝統になり,今日に引き継がれています。最近では,「個を強くする大学」というキャッチフレーズを用いています。この標語は,決して個人のエゴを強調するものではありません。社会や企業等の組織の中にあっても,自らの使命(役割)を自覚し,他者との連携をはかりつつも,個として光り輝く存在になってほしいと願い,そのような人材の養成につとめている大学,それが明治大学であると宣言しているものです。
  今わが国は「官から民へ」とベクトルが動いています。この意味では,「今こそ,明治大学の時代」といえると思います。そして,時代の潮流の真っただ中にあって,本学は私学のトップ・スクールへと歩みはじめているといっても過言ではないといえましょう。

  ところで,わが国のみならず国際社会は,社会の多種多様な分野で新しい在り方を構築しようと歩みはじめています。それは,主として高度情報化とグローバル化が急速に進展していることによります。この激流のなかで,人類は,ともすると「画一化」された人物像を描くことにもなりかねません。財力や武力を優先する「モノ社会」に埋没する危険もあります。また,特定のBench mark(基準)を設定し,それとの関係で「適否」を判断する手法には,用い方によっては他者に対する「思いやり」など「人間らしく生きる」という情の側面を看過する危険性があります。しかし人類は,自らの歴史に目をむけるべきです。
  20世紀は,科学技術の時代といわれています。科学技術は,新しいエネルギーの発見などにより,人びとに,それまでとは比較にならないほどの物質的な豊かさをもたらしましたが,他方で戦争,自然破壊,さらに心の病など「負」の側面も増大させましたことは,皆さんも,ご承知のことと思います。「科学」は,真実の発見(探求)であり,それ自体は中立(中性)のものです。しかし,「技術」は科学による成果を,どのように人びとの実生活に導入させるかにかかわるところのものです。後者のところでは,人類の叡智が問われます。たとえば最近,再生医療のために,ES(胚性幹)細胞やiPS(人工多能性幹)細胞が注目されています。まだ,これらの細胞については,「科学」のレベルでも完成された研究成果にはなっていないようですが,将来,これが活利用される,すなわち「技術」の局面に移ったときには,人びとの倫理や価値観などにおいても十分な検証がなければ,人類はドイツのナチNatiがかつて言った「純血主義」のような悪夢の再現で多大な混乱に陥ることになると思われます。
  われわれは,過去の苦い経験を忘れてはなりません。個人は勿論,民族や国家には,それぞれの歴史と特有事情があります。他者との連携(共存)を,第一に考えなければなりません。このことを看過して社会の在り方を論ずることは,大変に危険なことであると考えております。 
  このように,今の時代は,社会構造の変革が世界的規模ですすんでいますが,このことを認識すると「時代の進むべき方向性や価値観」につき,皆さんは戸惑いを覚えることでしょう。しかし,このような時代であるからこそ,今こそ若者にとって自らの夢(大志)を実現できる「大きなチャンス」であると思います。自らの夢(大志)にむけて,皆さんには,是非「挑戦」してほしいと願っています。

  大学に入るということは,生徒から学生になることです。生徒は「徒(ただ),教えられたことを習得する」ことにとどまりますが,学生は「生きるためのことを学ぶ」,すなわち,学生は「学問をする」者を意味しています。学問は,知識を蓄積するだけではありません。これを活用して,人類の叡智にまで昇華させることです。その道は,遠い。そして厳しい。しかし,夢(大志)があれば,必ず到達できるものです。
  皆さん,時代の新しい動向を肌で感じとりながら,他者との「連携,共生」を基本に据えて,世界的な視野で自らの人生目標(役割・使命)を見いだし,その実現に備えて,多くのことを明治大学で学んでください。そして,自らの「学問」を完成させ,世界を舞台に飛躍してほしいと,切望いたします。

  最後になりましたが,皆さんの前途に幸多いことを心よりお祈り申し上げて,私の告辞といたします。

学長 納谷廣美

前学長挨拶集一覧に戻る

上へ戻る

明治大学 MEIJIUNIVERSITY

© Meiji University,All rights reserved.