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数理のチカラ vol.2

研究対象は「シマウマから天気予報まで」 現象数理学は人の命も救う!

明治大学 総合数理学部 現象数理学科 二宮 広和



動物の模様は、どのようにしてできるのでしょう?シマウマの縞(しま)は胎児の頃の早い段階に形成されると本数が少なく太くなり、逆にある程度大きくなってからできると数が多くて細くなる。コンピューターで数値計算をしているとそんな関係が見えてきます。この仕組みをナノテクノロジーなどに応用すれば、合金を作る際、より良く混ぜ合わせる方法が導き出せたりするのです。このように、世の中で実際に起きている現象を、数学を用いて解明し、多様な分野に応用していく学問が現象数理学です。



私の専門は「非線形偏微分方程式」。これが応用されているものを私たちの日常にあるものの例は、「天気予報」があります。今日の天気の状況から明日の天気を予想するというのは「偏微分方程式」を解いて計算します。最近はコンピューターの演算速度が速くなったこともあり、得られるデータがたくさんあれば、精度良く計算することが可能になってきました。また飛行機や自動車の設計においても空気抵抗などを計算するときにも、この偏微分方程式が活用されています。



現在、私の研究の大きなテーマとなっているのが「AED」です。AEDは、心臓が心室細動(心臓の心室が小刻みに震えて全身に血液を送ることができない状態)を起こした時に、電気をかけて心臓の中の信号を消し、心臓が正常に動くようにするという装置。心室細動が起こる理由はいくつかあると言われていますが、私が今調べているのは、心臓に傷があるような場合にどういうようなことが起きるかということ。傷の形がどういう形であれば起きやすくて、どういう形だったら起きにくいかということを調べようとしています。現象数理学を用いて、一人でも多くの人の命を救いたいと思っています。



いま数学は、科学ともう一度向き合って方向性を見いだす、一種のルネッサンスのような時期に来ていると思います。それを推進しようとしているのが現象数理学。現象数理学科は新しく自分で数学、科学を作り上げていくことができるような学科であり、それがこの学科で学ぶことの醍醐味だろうと思います。最近のテレビなどを観ていると、政治や原発、年金の話にしても、非科学的で感情論的な議論が多いので少し心配しています。現象数理学科で学ぶ皆さんには、論理的、科学的にものを考えられる人材へと成長し、社会全体がより科学的な思考が出来るようになるための牽引役として、幅広い分野で活躍してほしいと願っています。
(了)

数理のチカラ : 現象数理学科

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