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数理のチカラ − 秋岡 明香

コンピュータの高速化で社会がエコに?

明治大学 総合数理学部 ネットワークデザイン学科 秋岡 明香



 電子商取引やSNS、携帯端末の普及などにより、企業が扱うデータはかつてないほど増えています。それらをより速く、効率的に処理できるコンピュータシステムへのニーズは高まるばかりです。

 コンピュータが高速化すると、今までより詳細で緻密な解析ができるようになります。需要予測に基づく商品管理、流通や生産ラインの最適化などを、より高精度なものにできるのです。さらに膨大なデータを解析することから得た知見や洞察が、新しいビジネスの創造へとつながるかもしれません。従来の手法では処理しきれない複雑で膨大な「ビッグデータ」をいかに活用するかが、これからのビジネスの鍵を握るともいわれています。



 このような社会のニーズに応え、コンピュータサイエンスの分野では、多様で膨大な情報を効率よく、スピーディーに処理するための研究が進められています。私の研究テーマである並列分散処理もその一つです。大量のデータを分割し、画像解析や数値計算など特徴的な処理がある場合には、そのような計算を得意とするコンピュータに振り分け、役割分担して処理するシステムのことです。解析処理を並列分散処理できるようにすることで、高価な大型コンピュータだけでなく、クラウドサービスを利用しての大規模データ処理も可能になるといったメリットがあります。



 私たちの研究は、情報社会の基盤となるインフラを整備し、性能をあげていくことです。社会のあらゆる分野に大きな影響を及ぼします。またコンピュータは電気をよく使います。スーパーコンピュータを何も考えずにつくると、隣に専用の発電所をつくらなくてはならないほど大量の電力が必要となります。コンピュータが今より高速化すれば、稼動時間を減らすことができ、省エネにつながります。コンピュータは今や家庭からオフィス、工場にいたるまで、社会のあらゆる場所に様々なかたちで存在しますが、最先端の高速化、効率化の技術はやがてそれらにも波及し、社会全体の電力消費量を大きく削減することにもつながります。



 コンピュータの世界はハードもソフトも猛スピードで進化しており、日々の勉強は欠かせません。またこれからのコンピュータエンジニアには、技術プラスアルファが求められます。ビジネスや文化、人々のライフスタイルなど、社会の様々なことに関心をもち、広い視野と教養をもっていることが大切です。総合数理学部には金融工学やメディア、インターフェイス、人工知能など多様なバックグラウンドをもつ研究者がそろっています。みなさんその分野における最先端のコンピュータユーザでもあり、貴重な意見やヒントをいただくことができます。他学科との交流も多く、広い視野を育むには打ってつけの環境だと思います。
(了)

数理のチカラ : ネットワークデザイン学科

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