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専任教員活動成果報告(2011年度)

記述内容の説明をご一読のうえ,ご覧ください。
※職格・五十音順に掲載しています。本年度在外研究等の理由により,掲載をしていない教員もおります。

教員一覧

石川 幹人 Masato ISHIKAWA 教授

経歴
   1959年東京生まれ。1982年東京工業大学理学部卒業,同大学院物理情報工学専攻,松下電器産業(株)マルチメディアシステム研究所,(財)新世代コンピュータ技術開発機構研究所などを経て,1997年に明治大学文学部に赴任。2004年より情報コミュニケーション学部教授。博士(工学)。専門は情報学および科学基礎論。著訳書に、『心と認知の情報学』(単著/勁草書房)、『入門・マインドサイエンスの思想』(共編著/新曜社)、『心とは何か—心理学と諸科学との対話』(共編著/北大路書房)、『意識の<神秘>は解明できるか』(共訳著/青土社)などがある。詳しくはホームページ(http://www.isc.meiji.ac.jp/~ishikawa/)を参照されたい。
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   情報ネットワーク社会における人間行動の考察を、心理学・生物学の知見をもとに行ない、社会学に接続させるところまで展開してきた。さまざまな関連分野を橋渡しする視点が得られたと認識している。また科学的方法論の理解普及を目指して、科学コミュニケーション研究所を設置し、活動を開始した。加えて超心理学の研究および一般啓蒙を行なった。
1-2 今後2年間の予定
   情報社会における現代的問題に「擬似科学」問題がある。これはひとつには、科学の衣をまとって根拠のない製品やサービスを売りつけることであり、メディアの現代化に伴って問題が大きくなっている。この問題を解決するために、人間の科学理解やメディア理解の形式を分析し、将来の「科学コミュニケーション」の良好なあり方を検討する。これに関連して、超心理学(科学的方法論にのっとって研究を行なっているにもかかわらず疑似科学とみられる代表的分野)の社会的理解を事例として取り扱う。
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   法制度から科学法則に至るまで、もろもろの言語化された情報は、コミュニケーションの場から創発され、次のコミュニケーションを制約し誘導する役目を担う。個々の情報は、コミュニケーションの歴史を背景に意味をなすのであり、言い換えれば、情報が担うように見える安定した意味は、じつは情報コミュニケーションの不断の循環構造により、常に生成され続けているのである。おうおうにして、コミュニケーションを欠いた情報は暴力性を発揮する。一流の科学者が「そんなことは科学的にありえない」と、権威の衣をまとって主張するのがその一例だ。これでは開拓者精神が阻害されてしまう。科学は本来、探究の方法論なのであるから、「ありえないもの」の判断は、それを探究するコミュニケーションの場にゆだねればよいのである。科学にまつわる社会現象を情報コミュニケーションの視座から捉えることを作業課題にして、「多様性を認め柔軟な社会を形成する実践的な方法の確立」を目指す。
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1. 科学リテラシー(前期)
教室で実験デモンストレーションをするなど、工夫をこらしている。自分でメディアから問題のある広告を探して、批判させるレポートをクラスウェッブに出させている。履修者が多数(300 名以上)のため、試験を行なうようにした。
2. 問題分析ゼミナール(通年)
個人研究を主体にしているため、学生によって個人指導している。
3. 問題解決ゼミナール(通年)
学生の欠席が多く悩ましい状態。
4. 問題発見テーマ演習A(前期)
トルコ共和国について学生同士で調べものをするグループ活動としている。
5. 問題発見テーマ演習B(後期)
ゲーム理論についての演習を、学生自身が回り持ちで模擬講義をする形式で行なった。
6. 情報行動の心理学(前期)
情報社会における人間行動を進化心理学の視点から講じている。履修者が300 名をこえたが出席率は十分でない。毎回コメント・シートを出させて、それを平常点としたうえで、期末に試験を行なっている。
7. 心と認知の科学Ⅰ・Ⅱ(前後期)
指定図書を読んだ感想をクラスウェッブに出させている。講義内容を重視した試験を行なっている。紙のものは持ち込み可としているが、講義に出席していないと解きにくい問題を出題しており、採点結果を見ると妥当な評価となっている模様。
8. 不思議現象の心理学(後期)
人間が不思議だと思う背景にある認知構造を明らかにし、それが環境への適応進化の過程によって形成されてきた可能性を講じている。
9. 情報コミュニケーション学「コピー」(コーディネーター)
コピーという切り口で、文化伝承、生命進化、産業、政策、権利などを捉え、情報コミュニケーションの学際的視点を養う内容を企画した。
10. (文)人間と情報Ⅰ・Ⅱ(前後期)
11. (情コミ研)自然系列専門研究[認知情報論]Ⅰ・Ⅱ(前後期)
12. (情コミ研)自然系列専門演習[認知情報論]Ⅰ・Ⅱ(前後期)
修士1年学生が3名(うち1名休学中)。テーマを具体化する段階にあり、個別指導している。
13. (情コミ研)自然系列特論演習[認知情報論]Ⅰ・Ⅱ(前後期)
修士2年学生が2名で、双方でテーマが異なるので、個別対応している。
2-2 当年度担当授業
1. 科学リテラシー(前期)
教室利用の関係で6限に移動したところ履修者が百数十名に減少した。毎回コメント・シートを出させて、試験の代わりとした。
2. 問題分析ゼミナール(通年)
個人研究を主体にしているため、学生によって個人指導している。
3. 問題解決ゼミナール(通年)
同上。
4. 問題発見テーマ演習B(後期)
前年と同様、ゲーム理論についての演習・講義を予定している。
5. 情報行動の心理学(前期)
情報社会における人間行動を進化心理学の視点から講じている。毎回コメント・シートを出させて、それを平常点としたうえで、別途オーメイジにレポート提出させている。
6. 心と認知の科学Ⅰ・Ⅱ(前後期)
ビデオ教材などを多用している。履修者が多く、コメント・シートを出させると出席率は上がるが、教室がうるさくなるのが問題である。
7. 不思議現象の心理学(後期)
前年と同様に運営する予定。
8. 情報コミュニケーション学「コピー」(コーディネーター)
前年と同様に運営している。
9. (文)人間と情報Ⅰ・Ⅱ(前後期)
10. (情コミ研)自然系列専門研究[認知情報論]Ⅰ・Ⅱ(前後期)
11. (情コミ研)自然系列専門演習[認知情報論]Ⅰ・Ⅱ(前後期)
修士1年学生が2名。テーマを具体化する段階にあり、個別指導している。
12. (情コミ研)自然系列特論演習[認知情報論]Ⅰ・Ⅱ(前後期)
修士2年学生が4名で、テーマがそれぞれ異なるので、個別対応している。
2-3 その他の教育上の取り組み
研究員の受入れ:清水武・学術振興会PD(2007/4-2010/3)
「形状感インターフェースの研究と開発」について研究指導した。
(3) 研究成果報告
1. 学会研究発表:「超能力信奉の総意誤認効果」、日本超心理学会第42 回大会 (共著、2009/12)
新入学生の意識調査にもとづいて、自己の超常的信奉がどの程度周囲やメディアの影響を受けているかを分析した(予稿出版あり)。
2. 研究解説:「裁判員時代の確率リテラシー」、春秋、第515 号、春秋社、pp.1-4 (単著、2010/1)
裁判員を担当するときには、事件例に日常的な確率認識をもち込むと判断を誤ってしまう可能性があるので、確率リテラシーの涵養が必要という点を、想定事例をもとに議論している。
3. 教科書執筆:『だまされ上手が生き残る~入門!進化心理学』、光文社新書、p.259 (単著、2010/4)
進化心理学の成果を社会的な人間行動に応用し、人間の傾向性の生物学的由来について考えさせる内容。
4. 学会研究発表:「An empathic agent system based on field consciousness」、53rd Annual Convention of the Parapsychological Association in Paris (共著、2010/8)
RNGの信号の偏りに応じて感情的な表情を表示するシステムが、人々の中で共感的なふるまいをする可能性を指摘し、実験システムを構築してデモンストレーションした。
5. 研究論文誌掲載:「Field RNG data analysis based on viewing the movie Departures(Okuribito)」、Journal of Scientific Exploration、Vol.24, No.4, pp.637-654 (共著、2010/12)
映画「おくりびと」鑑賞時のRNGの信号の偏りを統計的に分析した結果、映画館の来場者人数に相関する結果が得られた。
6. 学会研究発表:「音楽再生時のRNG出力及び顔表示システムとの関連~共感的感情説の検討」、日本超心理学会第43 回大会 (共著、2010/12)
RNGの信号の偏りに応じて感情的な表情を表示するシステムが、音楽を鑑賞する人々の中で共感的なふるまいをするかどうかの実験報告をした(予稿出版あり)。
7. 研究報告掲載:「求められる広告の科学的表現」、月刊消費者、3月号、日本消費者協会pp.4-8 (単著、2011/3)
健康食品の広告について消費者の認識の実態を調査し、消費者の科学リテラシーの向上を図る方法を議論した。
8. 対談:「知るべきこと知りたいこと~サプリメント広告をめぐって」、月刊消費者、3月号、日本消費者協会pp.9-13 (共著、2011/3)
健康食品の広告について、広告主とメディア、そして消費者の各々の事情を明らかにし、広告を使ったコミュニケーションが良好になるには、どのような対策があるかを討議した。
9. 研究論文誌掲載:「ABO式血液型と性格との関連性~主要5因子性格検査による測定」、構造構成主義研究5、pp.78-91 (共著、2011/4)
血液型と性格の関連性について統計的な分析をしても、個人診断に使えるほどの関連性が得られないことを、最新の主要5因子性格検査によって明らかにした。
10. 教科書分担執筆:『心理学概論~学びと知のイノベーション』、第13 章、ナカニシヤ書店、pp.143-158 (単著、2011/5)
心理学の概論書において、「不思議現象の探究」というタイトルで、超心理学の研究の概要を解説した。
11. 教科書執筆:『人はなぜだまされるのか~進化心理学が解き明かす「心」の不思議』、講談社ブルーバックス、p.206 (単著、2011/7)
進化心理学の成果を人間の認知行動に応用し、人間が不思議と感じる現象の生物学的由来について考えさせる内容。
12. 研究論文誌掲載:「Examining familiarity through the temperament and character inventory: a structural equation modeling analysis 」、Behaviormetrika 、The Behaviormetric Society of Japan, Vol.38, No.2, pp.139-151 (共著、2011/7)
気質や性格の検査結果と、家族構成や性別との関係を構造モデルで統計分析したところ、長子かどうかよりも性別で大きな差が検出された。
13. 特定課題ユニット運営:科学コミュニケーション研究所(2009 年度より3年間)
科学や科学的方法論にかかわる、科学者(間)、メディア、政策当局、一般大衆などのあいだの相互理解について考察する研究拠点。
14. 研究費獲得:科研費基盤研究(C)「疑似科学的広告に対する実用的な科学性評価基準を策定する研究」(2010 年度より3年間)
現状の広告から疑似科学的言説を特定し分析することで、科学性を評価する基準を開発し、広告主や消費者の科学リテラシーを向上させる研究。
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1. 情報コミュニケーション学科長(2008/4-現在)
執行部として学部運営に加わるとともに、将来構想検討委員会、カリキュラム運営委員会、FD委員会・紀要編集委員会などの委員長として活動。
2. 大学院情報コミュニケーション研究科専攻主任(2010/4-現在)
研究科・専攻の運営に寄与。
3. 大学院情報コミュニケーション研究科委員長(2008/4-2010/3)
研究科の運営および職務上必要な会議に出席。博士後期課程の設置。
4-2 大学業務
1. 心理臨床センター運営委員(2004-現在)
運営委員会に出席し提言、議論している。
2. 全学自己点検評価委員会委員(2008-現在)
現在は第6 章の分担評価を担当している。
3. 和泉委員会委員(2008-現在)
最初2 年間は教養科目担当。現在は専門科目担当。
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1. 情報文化学会理事・評議員(2003-現在)
査読、支部運営。
2. 科学基礎論学会編集委員(2005-2010)
編集企画、論文審査。
3. 心の科学の基礎論研究会世話人(1997-現在)
企画、会場手配。
4. 国際生命情報科学会評議員(2010-現在)
企画検討、査読。
5-2 講演・講師・出演
1. 学会依頼講演:「超心理学とトランスパーソナル心理学~超心理学の現状と課題」、日本トランスパーソナル心理学/精神医学会学術大会 (2009/11)
最新の超心理学研究について、とくにトランスパーソナル心理学との接点を中心に紹介。(予稿出版あり)
2. 模擬授業:夢ナビin お台場 (2011/7)
高校生向けに不思議現象について模擬授業を行なった。
3. 学会依頼講演:「科学革命か疑似科学か~予知能力の証拠とアカデミズム」、科学基礎論学会学術大会 (2011/6)
最新の超心理学研究について、とくに予知・予感研究を中心に紹介。
5-3 その他の社会貢献
1. 一般啓蒙書の発刊:『トンデモ超能力入門』、楽工社 (2009/12)
超能力の肯定論-否定論の対談を通して、科学とは何か、科学的方法論とは何かを深めていく内容。
2. 雑誌連載:月刊消費者「石川教授の深読み情報学」、全6 回 (2010/11-2011/4)
消費者の科学リテラシーを向上させる目的で、「科学リテラシーって何ですか?」「ブランド力って何?」「六甲の?おいしい水」「マイナスイオンは体にいいの?」「量に気をつけよ」「反対側に気をつけよう」というテーマに関して解説した。
3. 一般啓蒙書の発刊:『人は感情によって進化した~人類を生き残らせた心の仕組み』、ディスカヴァー携書 (2011/6)
各種感情の進化論上の意義を解説し、感情の取り扱い方への指針を述べた。
4. 翻訳書の監修:『超常現象を科学にした男~J・B・ラインの挑戦』、ステイシー・ホーン著、ナカイサヤカ訳、紀伊国屋書店 (2011/7)
超心理学の創始者であるライン博士の伝記について翻訳を監修し、不足している内容について解説を執筆した。

牛尾 奈緒美 Naomi USHIO 教授

経歴
   静岡市清水区出身。静岡雙葉高校卒業。慶應義塾大学文学部仏文科卒業後、1983年、フジテレビジョン入社。アナウンサーとして「FNNスピーク」「FNNモーニングコール」などのニュース番組のキャスター、ならびにワイドショー番組等の司会を務める。
   退社後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程に進学、MBA取得後、1998年、同大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。同年、明治大学短期大学専任講師に就任。2003年短期大学助教授に就任。2004年明治大学情報コミュニケーション学部助教授就任、同学部と経営学部で教鞭をとる。2007年より准教授、現在に至る。
   専門は人的資源管理、経営管理論、ならびに「ジェンダー・マネジメント」(企業経営における人事問題をジェンダーの視点から分析する)。
   著書に、『叢書:働くということ 第7巻女性の働き方』ミネルヴァ書房、(第五章「ポジティブアクションと女性のキャリア:先進事例の検討を中心として」担当 pp.133-163)2009年、『ジェンダー・マネジメント』(共著:東洋経済新報社)、『大学生の就職と採用』(共著:中央経済社)、『人事管理-人事制度とキャリア・デザイン』(共著:学文社)、「アメリカ型アファーマティブアクションの日本への導入-日本的ジェンダー・マネジメントの構築に向けて-」『三田商学研究』第45巻 第5号、pp.155-173、2002年、「変化する大学生の就業意識と企業の採用活動に求められるもの-ジェンダー・マネジメントの視点から-」『明治大学社会科学研究所紀要』第 41巻第2号、pp.259-284、2003年など。
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   過去2年間の研究課題は大きく分けて5つに分けられる。
1.企業における女性社員の登用や多様な人材管理に関する事例研究・文献研究
2.日本企業の人材管理の在り方とジェンダーとの関連性について文献研究
3.女性社員のキャリア形成についての定性的研究
4.大学生の就職行動と若年従業員の就業意識についての実証研究
5.ダイバーシティー・マネジメントに取り組む企業における人材管理のあり方、リーダーシップと人材育成についての研究
   まず、 1つ目は、近年の労働力人口の減少に伴い、これまで企業組織において中核的位置付けがなされることのなかった人材(女性や高齢者、若年者、外国人)の登用問題が新たな経営課題として浮上してきた。具体的には、女性社員の積極的活用を推進するためのポジティブ・アクションや、人材の多様性管理(ダイバーシティー・マネジメント)の導入といった新たな取り組みがいくつかの先進企業の間で取り入れ始められている。こういった流れを事例として研究する一方、その意義について理論研究を行っている。2つ目は、伝統的な日本的雇用慣行の在り方とジェンダー意識との関連性について、社会学的視点から文献研究を行っている。3つ目は、企業の管理職層に昇進した女性従業員に対して、インタビュー調査を実施し、女性自身のキャリア形成上の課題や、企業として女性をいかに有効に活用していくかについての研究を行っている。 4つ目は、大学生の就職活動や、若年層の就業意識について大規模な質問紙調査を 10年近く継続的に実施しており、企業の人材採用の有効性と若年社員の組織社会化の促進に寄与するための方向性を模索している。
1-2 今後2年間の予定
   今後の 2年間も上記の研究は継続して行っていきたい。
   また、新たな方向性として、企業内のジェンダー問題について、情報コミュミケーション学的アプローチに基づくいくつかの事例研究を行っていきたいとも考えている。
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
  企業における人材活用問題を主軸としながら、情報化や情報社会の進展が従業員の働き方や企業経営にもたらす影響について実証的な研究を行っていきたい。こうした研究は、今後、情報コミュニケーション学の構築に寄与する研究分野となると思われる。また、こうした分析にジェンダーの視点を盛り込んでいくことが、私の本学部で行うべき使命であると考えている。
   また、私自身、かつてテレビ局のアナウンサーを務めていた経歴から、マスメディアで働く女性の問題や、マスメディアによって作り出されるジェンダーについても考えていきたいと思っている。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.講義科目:経営学(後期)
2.講義科目:経営学Ⅰ、経営学Ⅱ(通年:経営学部向け)
3.講義科目:ジェンダー・マネジメントⅠ・Ⅱ(通年 )
4.ゼミ科目:問題発見ゼミ(前期)
5.ゼミ科目:問題分析ゼミ(通年)
各人が興味をもつ業界について詳細な調査・分析を行い、パワーポイントを使用して発表する。
6.ゼミ科目:問題解決ゼミ(通年)卒論指導
2-2 当年度担当授業
1.講義科目:経営学(後期)
2.講義科目:経営学Ⅰ、経営学Ⅱ(通年:経営学部向け)
3.講義科目:ジェンダー・マネジメントⅠ・Ⅱ(通年 )
4.ゼミ科目:問題発見ゼミ(前期)
5.ゼミ科目:問題分析ゼミ(通年)
各人が興味をもつ業界について詳細な調査・分析を行い、パワーポイントを使用して発表する。
6.ゼミ科目:問題解決ゼミ(通年)卒論指導
(3) 研究成果報告
 <論文>
1.「企業における女性の能力発揮とキャリア形成に関する研究:グラス・シーリングを打ち破る鍵と組織の要件」『明治大学社会科学研究所紀要』第 47巻/ 2号, pp.81-128、2009年3月
2.「企業の採用戦略、細分化を—急速に変わる新卒の就職意識」単著日本経済新聞『経済教室』2009.10.1朝刊
3.「“企業の人材採用の動向に関する調査“結果報告」共著『政経論叢』第78巻、第一・二号、pp.165-185,2009年 11月(共著者は、永野仁、木谷光宏)。
4.「ジェンダー・マネジメントの観点から読み解くと見えてくる、女子学生の就職先決定に関する“迷い”。」 単著(『Humanage Report』NO.10,pp.47-52)(2009.11.1発行)
5.「学生の就業意志決定プロセスについての検討」『産業・組織心理学会第25回大会発表論文集』pp.79-82、2009年 8月
6.「企業の新卒採用と大学生の就職意識—就職活動中の大学生71250人を対象とした調査から—」明治大学経営学研究所 経営論集第57巻第1・2号(2010.3.31日発行)
7.永野仁・木谷光宏・牛尾奈緒美(2010)「若手・中堅人材の転職行動に関する調査」『政経論叢』第79巻、第一・二号、p.301-328
8.牛尾奈緒美「企業の新卒採用と大学生の就職意識—就職活動中の大学生 71250人を対象とした調査から—」明治大学経営学研究所経営論集 第 57巻第1・2号(2010.3.31日発行)pp.141-163
9.牛尾奈緒美(2011)「女性の転職:成功者に見る就業意識と行動特性」『情報コミュニケーション学紀要』第 10・11合併号、pp.17-32
10.牛尾奈緒美(2011)特集日本社会におけるダイバーシティー「ダイバーシティーが重要となる時代の女性のキャリア」『三田評論』2011年、3月号、pp.35-41第27回大会発表論文集』pp.43-46
11.宇佐美尋子・牛尾奈緒美(2011)「学生の就業意思決定要因についての検討-尺度作成と売り手市場/買い手市場の傾向分析-」『聖徳大学紀要論文』
12.松山真太郎 工藤正夫 宇佐美尋子 川上真史・牛尾奈緒美(2011)「学生の就業に対する価値観についての検討- 売り手市場/買い手市場における傾向分析 -」『産業・組織心理学会第27回大会発表論文集』pp.43-46
13.牛尾奈緒美・石川公彦・志村光太郎(2011)「多様性の時代を生き抜くラーニング・リーダーシップの提唱:双方向に働くリーダーシップ(1)」経営情報学会誌 20巻 2号、2011.9
14.牛尾奈緒美・石川公彦・志村光太郎(2011)「多様性の時代を生き抜くラーニング・リーダーシップの提唱:ダイバーシティを活かすリーダーシップ(2)」経営情報学会誌20巻3号、2011.12
<著書>
1. 『部下育成の知識:現代経営講座:新任管理者のための部下育成コース<第一単元>』共著2009年9月社団法人日本経営協会 総97ページ、(共同執筆者:石川公彦、志村光太郎)
2. 『目標達成と問題解決:現代経営講座:新任管理者のための部下育成コース<第二単元>』共著 社団法人日本経営協会、2009年 10月総90ページ(共同執筆者:石川公彦、志村光太郎)
3.『部下育成とリーダーシップ:現代経営講座:新任管理者のための部下育成コース<第三単元>』共著社団法人日本経営協会、 2009年 11月総 112ページ(共同執筆者:石川公彦、志村光太郎)
4.牛尾奈緒美・石川公彦・志村光太郎(2011)『ラーニング・リーダーシップ入門—ダイバーシティで人と組織を伸ばす』日本経済新聞出版社
<書評>
1.牛尾奈緒美(2010)「三善勝代著『転勤と既婚女性のキャリア形成』」『日本労働研究雑誌』 NO.598、p p.85-89
<学会発表>
1.松山真太郎 工藤正夫 宇佐美尋子 川上真史・牛尾奈緒美(2011)「学生の就業に対する価値観についての検討 -売り手市場/買い手市場における傾向分析 -」産業・組織心理学会第27回大会、 2011.9.3、於、中村学園大学
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.カリキュラム委員会
2.インターンシップ委員会(2006年度~2009年度)
3.ジェンダー研究所設置準備委員会委員(2008年 4月 1日~)副委員長
4.明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター、副センター長
5.将来構想委員会委員(2010年 4月~)
4-2 大学業務
1.リバティアカデミー運営委員会委員(20 08年4月1日~ 2010年3月31日)
2.リバティアカデミー専門部会委員( 2008年10月~2010年)
3.明治大学出版会(仮称)設立準備委員会委員 (2009年 6月~ 2010年3月)
4.駿河台地区環境保全推進委員会(教員)委員(2010年 4月~)
5.利益相反委員会(2011年4月1日~2013年3月31日)
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
 <政府委員等>
1.内閣府男女共同参画推進連携会議、有識者議員(2011.8-2013.8)
2.静岡県県政へのアドバイザリーボード「“ふじのくに”づくりリーディングアドバイザー委員」(2010.1-2012.1)
3.株式会社 セブン銀行、監査役(2011.6-2015.6)
<学会>
1.産業組織心理学会会員(現在に至る)
2.日本経営学会会員(現在に至る)
3.経営情報学会会員(現在に至る)
4.家族社会学会会員(現在に至る)
5.日本労務学会会員(現在に至る)
6.経営行動科学学会会員(現在に至る)
5-2 講演・講師・出演
1.ヒューマネージアカデミー講演会「女性の活躍が社会を変える 企業に働く女性のさらなる登用を」於、(株)アトラクスヒューマネージ本社、2009.10.23
2.2010年春闘総覧セミナー「仕事のやりがいと企業力強化をどう両立させるか」於、TKP大手町カンファレンスセンター ホール2、2010.1.21
3.財団法人日本経営協会主催、通信教育新コース開講記念講演会、基調講演「変革期におけるマネジャーの育成とは」於、大阪科学技術センタービル、2010.1.22
4.「女性・高齢者・若者にさらなる活躍の場を:これからの企業の人事戦略に求められること」明治大学公開講演会、明治大学・明治大学校友会兵庫県支部主催、於、シーサイドホテル舞子ビラ神戸、2010年 5月 29日
5.「ふじのくに・私の想い懸賞作文コンクール」審査委員長、ならびにシンポジウムパネリスト 2010.7.24、於、静岡県静岡市「あざれあ」6階大ホール(NPO法人静岡県男女共同参画センター交流会議主催)
6.「30代・40代管理職女性のキャリアデザイン」日本ドイツ研究所国際学術会議での学会発表、日本ドイツ研究所・明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダー・センター共催、於ける、明治大学、2010年10月 22日
7.「女性の能力発揮と戦力化」静岡県県庁男女共同参画課主催男女共同参画社会づくり宣言事業所・団体情報交換会における講演、2010.11.4 於、静岡県あざれあホール 5階
8.「私だけのキャリアをデザインする」ワーク・ライフ・バランスを目指す講座での講演、千代田区男女共同参画センター・明治大學情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター・明治大學就職キャリア支援センター共催2010.11.15、於、明治大學リバティータワー1133教室
9.「先輩に聞いてみよう」(シンポジウム)コーディネーター兼パネリスト、ワーク・ライフ・バランスを目指す講座、千代田区男女共同参画センター・明治大學情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター・明治大學就職キャリア支援センター共催2010.11.26、於、明治大學リバティーホール
10.「自立型人材の育成について」日本経営協会主催講演会、2011年 4月 28日、於、日本経営協会本社
11.「多様性の時代の企業と人材」明治大学校友会東京都西部支部総会における講演、2011年 5月 28日、於、紫紺館
12.「ウーマンズ・イニシアティブ・フォーラム in tokyo:トラベルアナザーインディア CEOゴウタミ氏との公開討論会」におけるモデレーター、2011年 9月 6日、日本経済新聞社主催、於、カルティエ・ジャパン本社
13.「大学生の就業意識と就職先の決定プロセス」大学と企業の懇談会における講演、2011年 10月 26日於、明治大学アカデミーコモン
14.「ラーニング・リーダーシップ—ダイバーシティで人と組織を伸ばす」新時代フォーラム(NTTデータ研究所主催)における講演、2011年 10月 26日
15.「ダイバーシティで人と組織を伸ばす:多様性から学ぶ先進企業のニューリーダー」Luxury Forum Japan主催の講演会における講演、2011年 11月 24日
5-3 その他の社会貢献
 <新聞>
1.「インタビュー(とうきょう便ウィーク)牛尾奈緒美」『静岡新聞』2010年 11月 1日朝刊
2.「牛尾奈緒美 新刊著書『ラーニング・リーダーシップ入門ダイバーシティで人と組織を伸ばす』紹介」『静岡新聞』2011年 10月 1日朝刊
3.今週の書棚「牛尾奈緒美新刊著書『ラーニング・リーダーシップ入門 ダイバーシティで人と組織を伸ばす』紹介」『東京新聞』2011年 11月 1日夕刊
<テレビ>
1.日本テレビ系列『NNNニュース リアルタイム』レギュラー・コメンテーター、2007年 10月~2010年 3月
2.テレビ朝日系列「報道ステーションSUNDAY」コメンテーター 、2011.10.2~
3.日経 CNBC「起業家という選択 ~夢を実現した女性経営者たち~」2011.10.6放送
4.ビジネス・ブレイクスルー(BBT)衛星レギュラー番組「組織人事ライブ 新時代を乗り越えるための心理学⑦若者の働く意識はどう変化しているのか(講師:川上真史、ゲスト:牛尾奈緒美)、2011.10放送
<雑誌>
1.「人間邂逅交換留学生牛尾奈緒美(明治大学教授)・程近智(アクセンチュア社長)」『プレジデント』2009年7.13号、p.19
2.「マイオンリー: ロック 牛尾奈緒美」『週刊新潮』2009.9.24号 p.43
3.「あの女子アナたちの「第2の人生」」『サンデー毎日』2010年 10月 10日号
4.「新刊紹介牛尾奈緒美・石川公彦・志村光太郎『ラーニング・リーダーシップ入門ダイバーシティで人と組織を伸ばす』日本経済新聞出版社」『プレジデント』2011年10.24号

江下 雅之 Masayuki ESHITA 教授

経歴
   1959年横浜生まれ。1983年に東京大学理学部数学科を卒業、同年、三菱総合研究所に入社し産業技術部に配属される。1992年に同社を休職(94年に退職)して渡仏し、 Ecole superieuredes sciences economiques et commercialesの Mastere Specialise課程、Universite de ParisI Pantheon-Sorbonne及び Universite de Paris III Sorbonne Nouvelleの大学院 DEA課程に留学し、情報システム論、データベース論、コミュニケーション論等を専攻する。1999年に帰国、2001年に目白大学人文学部現代社会学科に助教授として着任、2008年 4月に明治大学情報コミュニケーション学部専任准教授、2011年 4月より同専任教授となり、現在に至る。専門は情報社会論・メディア史など。著書に、『ネットワーク社会の深層構造』(中央公論新社)、『監視カメラ社会』(講談社)、『マンガ古本雑学ノート』(ダイヤモンド社)、訳書に『お尻のエスプリ』(共訳/リブロス出版)、『メディアの近代史』(共訳/水声社)、学術誌投稿論文に「SNSにおける日記コミュニケーションとネットワーク構造に関する研究」(情報通信学会誌第92号、2009)などがある。過去の執筆原稿、ゼミの活動記録、研究活動の一部などは個人サイト(http://www.eshita-labo.org/)に公開している。
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   過去二年間における研究テーマは大きく分ければ3つあげられる。
(ⅰ)ネットオークションにおける入札行動の定量的分析
(ⅱ)ソーシャル・ネットワークの構造分析
(ⅲ)先駆的ネットワーカーのネットワーク利用状況の変化
   インターネットの普及にともない、コミュニケーション行動の記録が電子的な形態で残されるようになった。これらを時系列的に収集すれば、俗論を排除した客観的な動向分析が可能である。これは近年利用者が急増している SNS、あるいはネットオークションの取引行動でも同様である。1点目の研究もその一環である。過去二年においては、任天堂WiiおよびDSiに関するオークションデータの分析を実施した。
   2点目は、過去十年間に数理社会学分野でめざましい成果をあげている社会ネットワーク理論に関する研究である。コミュニケーション行動の新たな分析の視点として注目し、現在、理論研究・事例収集を進めている。その成果の一部を 2008.2010年に紀要論文および学会誌投稿論文として執筆したほか、2009年に学会で個人研究として発表した。
   3点目は、インターネットを中心とするネットワークの普及がすでに四半世紀を超える一方、個々の利用アプリケーションの変遷が目まぐるしい状況下において、普及初期段階から CMCを活用している「先駆者」の具体的な利用形態を研究するものである。過去2年においては聞き取り調査を進め、成果の一部を 2010年に学会で発表した。
1-2 今後2年間の予定
   今後2年間も研究の基本線に変更はない。SNS、ネットオークション等のデータ収集は数ヶ月周期で定期的に実施しなければならない。2011年には任天堂から新しい携帯型ゲーム機 3DSが発売され、ネットオークションにおける取引データを収集した。今後はその精査と分析を進める予定である。また、SNSに関しても、twitterおよび facebookを対象に、利用者の影響力に注目した研究を実施するべく、基礎的な利用データを収集することを計画している。
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   情報コミュニケーション学は新しい学問分野であり、社会に十分認知されているとは言い難い。模擬授業においても、「情報コミュニケーション学がなにをするのかがわからない」とする高校側の意見も多い。この学問分野を振興するには、内容の深耕のみならず、裾野の拡大が急務であり、それは本学だけで担えることではない。よって、他大学の同分野を担う学部・学科との連携を含め、教員の相互交流、外部有識者を招いたシンポジウムの実施、学生をまじえたインカレ・イベントを定期的に運営することが必要であると考える。その方針に沿い、ゼミ間の合同企画、他大学教員との研究会を今後さらに進めていきたい。
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.基礎教育科目
該当科目の担当なし。
2.講義科目
情報社会論 IおよびII、メディアの歴史、社会調査実習、情報産業論、情報コミュニケーション学(消費)を担当した。
3.ゼミ科目
基礎ゼミナール、問題発見テーマ演習 Aおよび B、問題分析ゼミナールを担当した。
2-2 当年度担当授業
1.基礎ゼミナール(通年)
ブレーンストーミングによるアイデアの展開、構成を重視した writing communicationスキルの修得を重視した演習を前期に進めた。後期はパーソナル・ネットワーク研究に関する文献の読解を進め、この分野の基礎的な理論の理解をはかる。
2.問題発見テーマ演習A・ B
前期の演習 Aにおいてはメディア文化をテーマに、1)放送、2)音楽、3)雑誌、4)コミュニケーションの4領域に分けて演習を進めた。まずは最初に各領域の主要な研究成果を講義形式で解説した。そして受講者を4グループに分け、4領域のなかからこちらが設定した課題について、毎回2グループが発表を行う形式で演習を進めた。
後期の演習 Bについても、基本的に前期と同様の進行を実施する予定である。演習テーマは社会ネットワークである。
3.問題分析ゼミナール(通年)
このゼミでは、1)グループによる輪講、2)業界紙研究、3)企業への企画提案、の 3つの活動を基本にしている。グループ輪講は、全体を4グループに分け、グループごとに課題本を選定している。業界紙研究においては、日経産業新聞、繊研新聞、日経 MJの3紙をもとに、各人が注目した記事のレジュメを作成した発表を実施している。三番目の企業への企画提案は、活動に協力して頂いている企業より課題を出してもらい、それに沿った提案を学生が検討し、企業を訪問してプレゼンテーションを実施する。なお、8月には「第四回メディア研究インカレ原村」を主催する。 2008年以来継続しているこのイベントには、今年度は関西大学総合情報学部の岡田朋之ゼミおよび中央大学 FLPの松田美佐ゼミが参加する予定である。
4.問題解析ゼミナール(通年)
このゼミでは、メディア研究インカレ原村での研究発表、情コミジャーナル学生論文への投稿を中心に活動をおこなっている。インカレでの研究発表は原則5人単位のグループで、学生論文への投稿は個人単位(参加は希望者のみ)で行っている。
5.情報社会論Ⅰ・Ⅱ(前後期)
前期は情報社会論の主要な言説を紹介するとともに、企業、社会、個人の3レベルごとの情報化の進展をマクロ的な視点から講義した。後期は社会環境の変化と技術革新の推移を捉えつつ、両者の相互作用的な影響のもと、ミクロレベルで進展する情報化の具体的な内容を講義している。
6.情報産業論(前期)
情報産業が関わっている技術領域、サービス分野などの構造を解説するとともに、具体的な市場規模の推移、ビジネス・モデルの特徴、就業構造等を講義している。
7.メディアの歴史(後期)
ソシオメディア論の視座にもとづき、社会変化に伴うコミュニケーション行動の変化によるメディア技術の選択を歴史的な文脈のなかで講義している。
8.情報コミュニケーション学(通年)
「消費」をテーマとして取りあげ、消費社会論に関する主要な言説の講義、ブランディング、ソーシャルマーケティング、若者文化という近年の日本の消費行動で注目されているテーマの解説、マニアの消費行動に注目した講義等を中心に進めている。また、学生にはテーマごとにグループ単位でレポートを作成させている。
9.総合講座「リアルタイム・メディアが動かす社会」(前期)
twitterや Ustreamなどリアルタイムで情報を共有し拡散するメディアの影響に注目し、このメディアを積極的に活用するジャーナリスト、弁護士、市民活動家等によるオムニバス形式の講座を実施した。実験的な試みとして、講義にtwitterを積極的に活用し、学生の主体的参加を進めた。なお、本講義は東京書籍からの申し出により、講義録を書籍化して刊行することとなった。 
(3) 研究成果報告
1.投稿論文(論文)「SNSにおける日記コミュニケーションとネットワーク構造に関する研究」『情報通信学会誌』第 92号、20 09年 12月、情報通信学会
2.紀要論文(論文)「S NSにおける適応度とコミュニティ構造の関連性に関する研究」『情報コミュニケーション学研究』第 8・9号、 2010年 3月、明治大学情報コミュニケーション
学研究所
3.紀要論文(研究ノート)「 SNSにおける日記を媒介とするコミュニケーションの頻度に関する研究」『情報コミュニケーション学研究』第 8・ 9号、 2010年 3月、明治大学情報コミュニケーション学研究所
4.個人研究発表「先駆的ネットワーカーのネット遍歴」第 27回情報通信学会大会、 2010年6月 27日
5.投稿論文(論文)「複数同一財をめくるインターネット・オークションの入札行動に関する研究」『情報通信学会誌』第 96号、201 0年 12月、情報通信学会
6.紀要論文(研究ノート)「経験豊富なネットワーカーたちの役割に関する研究」『情報コミュニケーション学研究』第 10・1 1号、20 11年 3月、明治大学情報コミュニケーション学研究所
7.個人研究発表「アラブ革命とソーシャル・メディア」第 28回情報通信学会大会、 2011年7月3日
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1. 情報コミュニケーション学部教務主任(授業担当)
2. 情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター運営委員
3. 教務主任(授業担当)の役職にともなう委員会委員長および委員
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.情報通信学会( 2010年 9月まで事業企画委員会委員)
2.関東社会学会( 2011年度学会大会実行委員長)
3.数理社会学会
4.日本消費者行動研究学会
5.社団法人日本文芸家協会
6.日本社会学会 
5-2 講演・講師・出演
   拙著『ネットワーク社会の深層構造』(中央公論新社、2000)の一部が大修館書店発行の高校向け教科書『現代文』に収録され、平成 20年度より高校の教育現場で使用された。
   日独国際シンポジウム「ライフコース選択の臨界点」(ドイツ日本研究所・明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター共催)の第二セッションにおいて司会を担当することとなった。また、国際研究シンポジウム『韓国「併合」 100年から考える日韓コミュニケーションの未来』セッション2においても、司会を担当することとなった。
   2011年 5月 23日および 6月 23日には、大学院情報コミュニケーション研究科の主催でシンポジウム「検察、世論、冤罪」が実施され、いずれの回においても総合司会としてシンポジウムの運営を進めた。この2回のシンポジウムはドワンゴ社のニコニコ生放送を通じインターネットで実況中継をおこない、2回とも3万人以上の視聴者を得た。
   

金子 邦彦 Kunihiko KANEKO 教授

経歴
   1947年北海道出身 1970年明治大学商学部商学科卒業 1972年明治大学大学院商学研究科修士課程卒業 1976年明治大学大学院商学研究科博士課程退学(単位修得) 1990年商学博士(明治大学) 1976年明治大学専任助手 1977年明治大学専任講師 1980年明治大学助教授 1986年明治大学教授 1983-85年カーネギー・メロン大学客員教授1990-93年高千穂商科大学(現高千穂大学)兼任講師 1991-94年および 1995年から現在まで早稲田大学兼任講師 1994-2000年明治大学短期大学長 1996-2002年明治大学評議員 1999-2001年東京都私立短期大学協会常任理事 2000-2002年日本私立短期大学協会監事 2004-2007年法政大学兼任講師
   専門は金融システム論、金融経済論著書『現代マネタリズムの二つの潮流』(東洋経済新報社)、『エレメンタル近代経済学』(英創社、共著)、『金融論』(八千代出版社、共著)、『金融市場の構造変化と金融機関行動』(東洋経済新報社、共著)、訳書 P.デヴィッドソン『貨幣的経済理論』(日本経済評論社、共訳)、B.マッカラム『マクロ金融経済分析』(成文堂、共訳)、A.H.メルツァー『ケインズ貨幣経済論』(同文舘、共訳) 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   研究テーマは現代における貨幣を多角的に分析し、理論的・実態的に把握して貨幣理論を構築することにある。現代は貨幣経済社会であり、貨幣が社会のあらゆる分野に浸透して、影響力を発揮している。電子マネー、エコマネー、決済手段の多様化・複雑化など現代社会における貨幣をめぐる環境は大きく変質しており、貨幣の存在理由・有用性と貨幣的生産・交換経済成立のための理論的必然性を課題にする貨幣理論の重要性はますます高まり、その解明が待望されており、この課題に積極的に取り組んできた。
1-2 今後2年間の予定
   今後も現代社会における貨幣の多角的検討を続け、貨幣を理論的に位置づけていくことにする。 
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   不確実性の存在によって生ずる逆選択やモラル・ハザードの情報の非対称性を基調とする「情報の経済学」が貨幣・金融の分野において応用され、研究されている。例えば、貨幣や金融サービス業の情報生産機能の役割が強調され、金融情報技術を駆使した各種の新金融商品・サービスの登場や電子商取引の急速な拡大、決済システム・決済手段の改良、インターネット・バンキングの普及に典型的に見られるように、理論的かつ現実的に発展しており、これらの状況の大きな変化も研究対象にしていくことにする。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.問題分析ゼミナール
金融システム論の基礎的理解をめざすために、ゼミナール正式入室以前からふさわしいテキストをその都度指定して問題点の指摘、批判などの感想文を数回にわたって提出させたり、共同勉強会を実施したりした。金融システム論にきわめて密接に関連するミクロ経済学とマクロ経済学についても、入門のテキストを使用して理解力の涵養に努めた。入室後はテキストと関連資料の輪読を通じて、内容の把握と現状への応用可能性を探ることを常に意識させながら、レジュメの作成、活発な発言・質疑応答が出来るようにゼミナールの運営に心がけた。
2.問題解決ゼミナール
問題分析ゼミナールで得た経験をもとにして、テキストの輪読と関連資料の理解から現在大きな転換点を迎えているわが国金融システムのさまざまな課題を認識させた。次いで、わが国金融システムの課題のなかからゼミナール・メンバーが各自の卒業論文テーマを主体的に選び、事前報告を経て卒業論文を提出することにより、「ゼミナールの卒業」とした。
3.金融システム論
金融の動学的体系である金融システム論を包括的に取り上げ、テキストを基本としながら、重要な専門用語やトピックス、関連科目の重要事項などを別途「講義ノート」にまとめて事前に配布して、受講生の理解力の向上を図った。
また、金融をめぐる多くの問題、特にアメリカから端を発したサブプライムローン問題を現代世界のグローバル化、コンピュータ化、シンクロナイズ化の一例として意識的に取り上げ、内容と問題点の指摘、今後の推移・影響などを資料にもとづいて講義した。
4.金融論
早稲田大学において、現代の貨幣経済における金融の問題を検討する金融論を講義する際、テキストを基本としながらも重要な専門用語やトピックス、関連科目の重要事項などを別途「講義ノート」にまとめて事前に配布して、受講生の理解力の向上を図った。
また、アメリカから端を発したサブプライムローン問題を取り上げ、内容と問題点の指摘、今後の推移・影響などを資料にもとづいて講義した。
2-2 当年度担当授業
1.問題分析ゼミナール
金融システム論の基礎的理解をめざすために、ゼミナール正式入室以前からふさわしいテキストをその都度指定して問題点の指摘、批判などの感想文を数回にわたって提出させたり、共同勉強会を実施したりした。金融システム論にきわめて密接に関連するミクロ経済学とマクロ経済学についても、入門のテキストを使用して理解力の涵養に努めた。入室後はテキストと関連資料の輪読を通じて、内容の把握と現状への応用可能性を探ることを常に意識させながらレジュメの作成、活発な発言・質疑応答が出来るようにゼミナールの運営に心がけた。
2.問題解決ゼミナール
問題分析ゼミナールで得た経験をもとにして、テキストの輪読と関連資料の理解から現在大きな転換点を迎えているわが国金融システムのさまざまな課題を認識させた。次いで、わが国金融システムの課題のなかからゼミナール・メンバーが各自の卒業論文テーマを主体的に選び、事前報告を経て卒業論文を提出することにより、「ゼミナールの卒業」とした。
3.金融システム論
金融の動学的体系である金融システム論を包括的に取り上げ、テキストを基本としながら、重要な専門用語やトピックス、関連科目の重要事項などを別途「講義ノート」にまとめて事前に配布して、受講生の理解力の向上を図った。
また、金融をめぐる多くの問題、特にアメリカから端を発したサブプライムローン問題を現代世界のグローバル化、コンピュータ化、シンクロナイズ化の一例として意識的に取り上げ、内容と問題点の指摘、今後の推移・影響などを資料にもとづいて講義した。また、2011年 3月 11日に発生した東日本大震災を取り上げ、復興策を現段階で検討した。
4.金融論
早稲田大学において、現代の貨幣経済における金融の問題を検討する金融論を講義する際、テキストを基本としながらも重要な専門用語やトピックス、関連科目の重要事項などを別途「講義ノート」にまとめて事前に配布して、受講生の理解力の向上を図った。
また、アメリカから端を発したサブプライムローン問題および東日本大震災を取り上げ、内容と問題点の指摘、今後の推移・影響などを資料にもとづいて講義した。 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.コミュニケーション入学試験委員会委員(2007年度から 2008年度まで)
2.学生論文審査委員会委員(2007年度から 2008年度まで)
3.拡大カリキュラム運営委員会委員( 2008年度から現在まで)
4-2 大学業務
1.教員相互会幹事(2007年度から現在まで)
2.駿河台地区研究棟運営委員会委員(2008年度から現在まで)
3.教育・研究振興基金運営委員会委員(20 09年度から)
4.図書館長( 2011年4月から) 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本金融学会 監事
2.生活経済学会 監事
3.行動経済学会 
5-2 講演・講師・出演
1.東京税理士会王子支部業務研修会(2009年11月 24日、北トピア7階第1研修室、演題「世界同時不況」)
2.東京税理士会武蔵野支部勉強会(2010年4月13日、武蔵野税理士会館、演題「世界同時不況と日本経済の行方」) 
5-3 その他の社会貢献
1.日本経済学会連合評議員
2.大学基準協会「短期大学認証評価検討委員会」委員
3.短期大学基準協会「第 3者評価委員会」委員
4.財団法人郵政福祉理事

古屋野 素材 Sozai KOYANO 教授

経歴
   1946年岡山生まれ。
   1970年慶應義塾大学経済学部卒業
   1975年慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻単位取得満期退学
   その後、日本学術振興会奨励研究員を経て、
   1977年~1985年東京大学百年史編集室室員
   (この間、平行して、駒沢大学・明治大学・昭和薬科大学・慶應義塾大学・桜美林大学等での非常勤講師)
   1985年~2004年明治大学文学部専任講師・助教授・教授
   2004年(学内移籍により)明治大学情報コミュニケーション学部教授
   専門は、高等教育史(主として、明治期日本の大学制度の形成過程)及び、(社会認識教科、及び情報関連教科の)教師(養成)教育。
   『東京大学百年史』『明治大学百年史』の編集・執筆担当の他に、共著刊行本として、『学校事典』(日本評論社)『現代教育を考える』(昭和堂)『新しい社会科をつくる』(学芸図書)『日本の大学院』(青木書店)『学習指導案研究読本「社会・公民・地理歴史」』(蒼丘書林)『教育の方法と技術』(教育出版)等がある。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
ⅰ)教師教育関係
本学および他大学の教職課程科目の担当を通して、中学高校の社会科関連科目の担当希望者、及び高校「情報」担当希望者の育成にあたり、また、教育実習生に対する実習校での訪問指導も担当した。
ⅱ)学部教育関係
① ゼミナール
「基礎ゼミ」(1年生)・「問題発見テーマ演習」(2年生)「・問題分析ゼミ」(3年生)・「問題解決ゼミ」(4年生)を担当し、1~2年生段階では、外国語を含む、読解力・文章表現力・対話討論力の育成を基調とし、3~4年生段階では、多様な観点からの自己分析を踏まえての、進路形成力の育成に重点をおいて運営した。
② 専門科目
「情報社会と教育A・B」(2年生)高度情報社会という環境における日本および諸外国の教育の現状の認識を深めつつ、その変容の可能性や危険性を考察し、特に日本の教育改善の課題を検討することを目指した。
③ その他
「キャリアデザイン」(1年生)「インターンシップ」(2・3年生)のコーディネータや総括運営を担当し、学生が、4年間のキャンパスライフ全体を通して、悔いの残らないキャリアデザインに取り組める環境づくりを目指した。
ⅲ)研究活動
① 高等教育の変容・改革の国際比較
社会の高度情報化と連動しつつ急速に進展する経済活動の “グローバル化 ”は、各国の高等教育の変容に極めて大きな影響を及ぼしており、その状況を、特にEU地域や北米地域、さらには極東アジア地域及びインドについて、それぞれの現状と課題を考察することを目指した。
② 情報社会における初等中等教育の教材開発の研究
特にインターネットの普及により、学習にかかわる情報検索・収集に関するトラブルも格段に増加しつつあり、知財権の適正な理解や、情報の評価力の育成、犯罪的トラブルの回避力の育成、等々の課題を見据えての、授業運営を深めるための、アナログ的ツール・スキルも充分に活用することも含めた、教材開発の可能性・課題の考察を目指した。 
1-2 今後2年間の予定
   今後も、これまでの活動内容を基本的に継続し、それぞれの領域での成果を目指すこととする。
   2010年度から大学院「情報コミュニケーション学研究科」において、講義科目「情報社会教育論 Ⅰ・ Ⅱ」を開講したが、この内容の充実をめざすとともに、2012年度からは、同名の演習科目も開講し、情報社会と教育の問題に関する研究をめざす院生諸君の支援を試みたい。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   当初は、色々な面で“手探り状態 ”と言わざるを得ない状態でスタートした本学部であるが、今になってみると、法学・経済学・社会学・哲学・コミュニケーション論・科学論の諸分野に関して、それぞれ意欲的なスタッフが揃っていることの「強み」「将来への可能性」が、確かな手応えをもって確信できるのではないだろうか。
   社会の高度情報化故に生起する重大なイッシュウに関して、“学部・大学院の総力を挙げて取り組む ”ということを、例えば、ある月は、一つの具体的事例に関して、連日毎時限、複数の異領域の教員によるシンポジュームないしパネルディスカッションを行う、というパフォーマンスで学内外に提示するということも考えられる。このような試みは、色々な学部で時折、記念行事の一つとして短時間の臨時催し物として行われる例は多いが、本学部では、それを“日常化 ”してみるのである。新しく加わるスタッフも含めて、このような “日常化したシンポジューム講義”が実現すれば、かなり迫力のある、「情報コミュニケーション学部」の“凄み”を提示できよう。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
ⅰ)学部内
① ゼミナール:「基礎ゼミ」「問題発見テーマ演習」「問題分析ゼミ」「問題解決ゼミ」
② 専門科目:「情報社会と教育A・B」
③ コーディネート科目:「キャリアデザイン」「インターンシップ」
ⅱ)資格課程
① 教職課程:「社会科・公民科教育法Ⅰ・Ⅱ」「情報科教育法Ⅰ・Ⅱ」「総合演習」
ⅲ)学外
① 慶應義塾大学:「社会科・公民科教育法」
② 日本女子大学:「社会科教育法」「公民科教育法」
ⅳ)その他
① リバティー・アカデミー主催の「夏期司書講習」における、選択科目「学校図書館論」(8コマ)
<授業運営の工夫等>
   ⅰ)の②、及びⅱ)ⅲ)のすべての授業では、全体の半分以上の時間は、受講生を数名のグループに分け、研究課題の達成(最終プレゼンを含む)に向けての協同作業をうながすことで、極めて意欲的な学習の追及が実現できた。また、提出を求めたレポートはすべて全員のものを(縮小コピーし、多くの場合筆者を匿名とし通し番号をつけて、レポート集成を作成し)全員に配布し、それをもとに意見交換を行うことで、クラス内に常に積極的な(好もしい意味での)“討論”モードが実現した。
   また、上記の各大学でのほぼ同一科目である「社会科・公民科教育法関係科目」のレポート集成を、別の大学の受講生に配布紹介することで、間接的ながら、個別大学を越えての“討論”モードも実現した。 
2-2 当年度担当授業
ⅰ)学部内
① ゼミナール:「問題発見テーマ演習B」「問題分析ゼミ」「問題解決ゼミ」
② 専門科目:「情報社会と教育A・B」
③ コーディネート科目:「キャリアデザイン」「インターンシップ」
ⅱ)大学院「情報コミュニケーション研究科」博士前期課程
ⅲ)資格課程
① 講義課目「情報教育社会論Ⅰ・Ⅱ」
① 教職課程:「社会科・公民科教育法Ⅰ・Ⅱ」「情報科教育法Ⅰ・Ⅱ」「総合演習」
ⅳ)学外
① 慶應義塾大学:「社会科・公民科教育法」
② 日本女子大学:「社会科教育法」「公民科教育法」
ⅴ)その他
① リバティー・アカデミー主催の「夏期司書講習」における、選択科目「学校図書館論」(8コマ)
<授業運営の工夫等>
   前年度と同様である。 
2-3 その他の教育上の取り組み
   担当するそれぞれの授業中での工夫の他に、すべての受講生に授業者のメールアドレスと住所を公開し、提出物(レポート、学習指導案、等)につき、添削等を希望する学生に対しては、個別に対応している。住所の公開は、手書きが主となる「学習指導案」等は、メールなどでの対応が難しいため、郵送でのやりとりとなることによる。 
(3) 研究成果報告
   昨年度中に、教育学系の学会誌に、中等教育段階における情報教育関する考察の論稿を投稿し、かつ情報系の学会誌に、情報文化に関する論稿を投稿し、それぞれ、査読による指摘に対応すべく、リライトをすすめており、最終的に受理されれば、震災等の影響で、学会誌そのものの刊行が遅れる可能性はあるものの、今年度中には、拙稿所載の学会誌が刊行される予定である。
   なお、研究論稿ではないが、総合大学における教員の学部横断組織の文化的活動の可能性と課題に関する考察が、明治大学専任教授連合会『明大専教連会報』100号(2011年 3月刊)に掲載された。 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.インターンシップ委員会委員長:学部選択科目「インターンシップ」全般の運営新入生に対する、「インターンシップ・ガイダンス」、2年生に対する「インターンシップ入門履修ガイダンス」、3年生に対する「インターンシップ実習ガイダンス」を含む。
2.教務主任( 2008年8月1日~現在に至る) 
4-2 大学業務
1.体育教員会への学部代表:(2004年3月~現在に至る)
「体育担当専任教員」がいない本学部からの、“みなし体育教員”として参加し、兼任教員に委嘱している本学部の「ウェルネス科目」の、体育施設利用や時間割調整の協議に加わる。
2.博物館運営協議会委員( 2007年4月~現在に至る)
明治大学博物館の運営に関する協議・調整の会議体。(昨年6月までは、同協議会の委員長)
3.資格課程委員会委員(20 04年4月~現在に至る)
資格課程の講義等を兼担する学内専任教員として、資格課程の運営を協議する会議体に義務付けられた参加
4.教職課程教育実習担当委員(20 04年~現在に至る)
本学部の教職課程履修者で、東京都内公立中高校での教育実習を行う学生に関する、実習校に出向いての訪問指導を行う役割
5.就職キャリア支援運営委員
就職キャリア支援グループの企画・運営事業を検討する会議体への、各学部を代表する委員 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.情報コミュニケーション学会理事
2.大学史研究会『大学史研究』編集委員長 

須田 努 Tsutomu SUDA 教授

経歴
   1959年群馬県高崎市生まれ。1981年明治大学文学部史学地理学科(考古学専攻)卒業。1982年群馬県高等学校教員採用(89年退職)、89年早稲田大学大学院文学研究科博士前期課程入学(91年卒業)、91年同博士後期課程入学(96年修了)。2002年博士(文学)取得(早稲田大学)早稲田大学・一橋大学・千葉大学・立正大学非常勤講師を経て 2008年より現職。専門は日本近世・近代史を領域とする民衆思想史、社会文化史。主な単著として『「悪党」の一九世紀』(青木書店 2002年)『暴力の地平を超えて』(青木書店 2004年)、『イコンの崩壊まで』(青木書店2008年)、『幕末の世直し』(吉川弘文館、2010年)趣味は歌舞伎・寄席・落語鑑賞、オートバイツーリング。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
① 個人研究
1. 19世紀における暴力と地域秩序の問題に関する研究。
2. 19世紀、国民国家の形成と大衆芸能との関係、これに関連した民衆心性の解明。
3.「戦後歴史学」というデシィプリンと運動史研究の関連を史学史的に解析。
4.江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観研究
5.メディア・スタデイーズとしての浄瑠璃・歌舞伎研究
6.「近世における征韓論の系譜を探る」(科研費基盤研究 C)
② 共同研究
1.「国民国家の比較史的研究」
日本近世史・近代史、朝鮮近代史との共同研究
2.「19世紀の知・技術と地域秩序」
福島県を中心にしたフィールドワークと史料収集、定期的研究会を主催。
3.「近世起源の異邦人(在日朝鮮人)の総合研究」
日本近世史・近代史、朝鮮近代史・現代史研究者による共同研究を企画、 2008年度. 2011
年度科学研究費を獲得(研究分担者)
4.「19世紀の地域社会像研究」
埼玉県飯能地域を中心にフィールドワーク、史料調査整理、定期的に研究会を主催。
1-2 今後2年間の予定
①個人研究
1.19世紀における集団暴力の問題を社会文化史的に解明する。
2.19世紀、国民国家の形成と大衆芸能との関係、およびこれに関連した民衆心性につき考察する。
3.異文化コミュニケーション論 江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観研究
4.社会文化論メディア・スタデイーズとしての浄瑠璃・歌舞伎研究
5. 19世紀における国学思想と排他的言説構造の特質を社会文化史的に解明する。
6.近世における征韓論の系譜を探る」(科研費基盤研究C)
②共同研究
1. 「国民国家の比較史的研究」
日本近世史・近代史、朝鮮近代史、中国近代史、ベトナム近代史、ヨーロッパ近代史を専門とする研究者との共同研究として、歴史講座の公刊を計画している。
2. 「近世起源の異邦人(在日朝鮮人)の総合研究」
科学研究費を受けた 4年度計画の前半として、鹿児島県でのフィールドワーク、史料調査をより積極的に展開し、関連諸地域でのフィールドワークを展開する。
3. 「19世紀の地域社会像研究」
埼玉県飯能地域を中心に展開してきた史料調査、整理の成果として資料目録集を刊行する。
さらに研究成果を公刊する予定である。
4. 「グローバルヒストリーへの挑戦‐東アジア政治文化史の視座から‐」 
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   歴史学のディシプリンから、情報コミュニケーション学の充実をはかるためには「異文化コミュニケーション史」の構築という切り口が有効であろう。人は「異なる者」に接した時、恐怖を感じ、恐怖は「異なる者」への攻撃へと人を駆り立てることが社会心理学の領域で論じられている。当然ながら、攻撃は報復を生みだす。この暴力の連鎖を回避・断ち切るためには「異なる者」への理解が必要であり、その前提には情報の収集と分析が不可欠である、というあたりまえのことがいかに難しいことであったか。この問題群を歴史学の方法論に依拠し、帰納的に考察したい。具体的には「異文化コミュニケーション」という現象を緊張ある自己・他者関係として歴史的に理解し、分析する必要がある。これを「異文化コミュニケーション史」として提起する。また、これに関する共同研究も立ち上げた。
   「異文化コミュニケーション史」という領域を拓き、これを情報コミュニケーション学の下位概念として位置づければ、情報コミュニケーション学の学際性をより広げ、充実させていくことが可能となろう。また、実践的には現代社会における暴力の問題に関しても何らかの方策を見いだすことができるかもしれない。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.基礎ゼミナール(通年)
履修学生 3名。前期は、歴史学という学問の基本を学ぶために、歴史方法論に関する著作を講読している。レジュメの作成、報告の作法、論文の読解などの基本能力の育成をはかることを目的にしている。 5月末の時点で、論文読解能力の成果はあったと考える。
2.異文化コミュニケーション史(前期)
履修学生 2年生。17世紀~19世紀における、日朝関係は友好な善隣外交が展開されたとされる。その実体はどうであったか。来日した朝鮮通信使が記録した史料を提示し、朝鮮人の日本・日本人観を分析した。さらに、日本の為政者・知識人の朝鮮・朝鮮人観を提示し、日朝の国家レベルの交流の問題点を考察した。以上を前提として、江戸時代の民衆の朝鮮・朝鮮人観を、浄瑠璃・歌舞伎作品を解析することからアプローチした。毎回、講義の終了後、レポートを提出させた。読書レポート 2回を課し、さらに試験も行った。学生にとっては厳しい授業であったが、最後までついてきた学生に関しては、知的好奇心を刺激できまた、異文化コミュニケーションにかんする視座は鍛えられたと考える。
3.問題分析ゼミナール(通年)
履修学生 12名。異文化交流史をテーマとして、16世紀~18世紀における朝鮮通信使関係史料を全員で講読し、日本と朝鮮との文化交流の問題を考察している。文献購読・レポート提出・コンパ、サブゼミなどの結果、5月前半の段階で、プレゼンに必要な論文・著作・史料を自主的に調べることができるようになった。夏期休業中、京都・滋賀県をフィールドとして、朝鮮通信使関係史跡巡見をおこなった。期待以上の成果があった。
4.問題解決ゼミナール
履修学生 6名。卒業論文を義務としており、これの執筆に関する研究指導を行っている。日韓の歴史に関連する卒論を選択する学生が多い。夏期休業中には清里セミナーハウスで、卒論報告合宿をおこなった。
5.社会文化史Ⅰ(前期)
履修学生 3,4年生。日本の 16世紀から18世紀を対象にして社会文化の様相を考察する講義を展開している。最新の歴史研究成果を入れつつも、現代社会との関係を意識して講義は組み立ててみたが、毎回学生の興味を引き出せたかには自信がない。毎回講義内容に関連した発問をおこない、レポートとして意見を書かせてみた。学生たちの意見は面白く、講義の中でこれらを紹介しさらに深めるなどしているため、講義はシラバス記載の予定より遅れてしまった。
6.社会文化史Ⅱ(後期)
履修学生3,4年生日本の19世紀における社会文化に関する様相を提起、考察する。
わたしが、現在研究しているテーマ、社会変容、暴力、メディアに関して最新の研究成果を導入する予定である。
7.大学院(情報コミ研究科)社会文化史専門研究Ⅰ(前期)
「戦後歴史学」というデシィプリンの形成と展開を当時の社会情勢とともに理解しすること、論文読解能力の育成などを、目的として丸山真男全集を輪読している。また、講義のなかから任意のテーマを選定して、参加メンバーによるプレゼンも行っている。歴史認識、歴史的考察、学問的厳密さ等を会得する、という面での成果はあったと考える。課題等、院生に負担をかけすぎているか不安がある。
8.大学院(情コミ研究科)社会文化史専門研究Ⅱ(後期)
1980年代以降における社会情勢と歴史学のあり方に関する講義を予定している。
9.大学院(情コミ研究科)社会文化史専門演習Ⅰ(前期)
日本の近世史研究の水準を理解させるための演習となった。
院生が毎回、『岩波日本通史』のうち近代編から、論文をセレクトし、その内容を報告した。
10.大学院(情コミ研究科)社会文化史専門演習Ⅱ(後期)
前期と同様の内容であるが。院生には史料を踏まえたレポートの作成を義務とした。行わせる予定である。 
2-2 当年度担当授業
1.基礎ゼミナール(通年)
履修学生 1名。日本の近世.現代を対象として、学生が独自にセレクトした著作を講読する。
前期は、アジア・太平洋戦争、沖縄戦 琉球問題などを中心に議論を展開した。
2.問題分析ゼミナール(通年)
履修学生 2名。社会文化史と異文化コミュニケーション史をテーマとして、16世紀~18世紀における、日露関係をみるために、大黒屋光太夫の史料を、また 19世紀の社会文化史を理解するために『世事見聞録』を講読した。後期は、福沢諭吉の著作を読解する。8月中旬に横浜・横須賀で合宿を行った。
3.問題解決ゼミナール(通年)
履修学生 12名。卒業論文執筆を課題としている。前期では、各人個別テーマを選定し、文献購読、史料選択、データ作成などを行った。一定の成果は上げられた。就職活動で大変であったが、ゼミは毎週、全員出席、報告を行った。9月上旬、山中湖において卒論合宿を行った。
4.異文化コミュニケーション史
履修学生2年生朝鮮通信使を素材として,異文化コミュニケーションと、コミュニケーションギャップの問題を考察した。
5.社会文化史Ⅰ(前期)
履修学生3,4年生 日本の16世紀から18世紀を対象にして社会文化の様相を考察する講義を展開している。最新の歴史研究成果を入れつつも、現代社会との関係を意識して講義は組み立てた。浄瑠璃・歌舞伎という芸能をメディアとして位置づけ、そこから、社会文化の様相をくみ取り、講義に反映させてみた。毎回講義内容に関連した発問をおこない、レポートとして意見を書かせた。これ以外に、2度の読書レポート、試験を行い、総合的に評価をくだした。
学生には厳しい内容であったが、ついてきた者に関しては、知的好奇心、帰納法的論理力、歴史認識の面で、大きな進展が見られた。
6.社会文化史Ⅱ(後期)
履修学生3,4年生日本の19世紀における社会文化に関する様相を提起、考察した。
わたしが、現在研究しているテーマ、社会変容、暴力、社会文化史・思想史に関して最新の研究成果を導入する予定である。
7.大学院(情報コミ研究科)社会文化史専門研究Ⅰ(前期)
院生がセレクトした文献を講読した。前期はレヴィ・ストロース『野生の思考』、後期はポパー『よりよき世界を求めて』をセレクトした。学術論文の読み方や、論理構成、プレゼンの方法などに関して、一定の進展が見られた。
8.大学院(情コミ研究科)社会文化史専門研究Ⅱ(後期)
修論を控えている、院生を意識して、1980年代以降における社会情勢と歴史学のあり方に関する講義を展開した。
9.大学院(情コミ研究科)社会文化史専門演習Ⅰ(前期)
日本の近世史研究の水準を理解させるための演習となった。院生が毎回、『岩波日本通史』のうち近代編から、論文をセレクトし、その内容を報告した。
10.大学院(情コミ研究科)社会文化史専門演習Ⅱ(後期)
前期と同様の内容であるが。院生には史料を踏まえたレポートの作成を義務とした。 
(3) 研究成果報告
1.「江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観」単著、趙景達他編『「韓国併合」 100年を問う 『思想』特集・関係史料』岩波書店、2011年 3月
2.「日本史教育のなかの「韓国併合」」単著、趙景達他編『「韓国併合」100年を問う二〇一〇年国際シンポジウム』岩波書店、2011年 3月
3.「通史でみる日本近世史像・近世社会論の変容」『歴史評論』七三五号、2011年 7月
4.『比較史的にみた近世日本』編著、趙景達・須田努編、東京堂出版、 2011年 3月
5.『逸脱する百姓..菅野八郎からみる 19世紀社会..』編著、須田努編、東京堂出版、2010年 10月
6.『幕末の世直し..万人の戦争状態..』単著、吉川弘文館、20 10年 11月
7.「織り込まれる伝統と開化—寄席という AIEフィールド—」久留島弘・趙景達編『国民国家の比較史』有志社、201 0年 3月 30日p.208.p. 227
8.「征韓論への系譜」『近代日本のなかの「韓国併合」』東京堂出版、2010年 3月 19日 p.70.p.100
9.「江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観」『思想』№ 1029「『韓国併合』100年を問う」2010年 1月
10.「文明開化と大衆文化の間隙-三遊亭円朝の近代-」 深谷克己編『東アジアの政治文化と近代』有志舎、200 9年 3月 30日
11.(単著):『イコンの崩壊まで—「戦後歴史学」と運動史研究—』青木書店、2008年5月20日
12.(研究報告)「18世紀、日本の大衆芸能にみる近世人の朝鮮観」2009年 9月 21日 国際学術交流 主催:アジア民衆史研究会・歴史問題研究所(韓国)「『アジア民衆史』は可能か?─グローバリズムとナショナリズムの経験」
13.(研究報告)「江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観」 2009年 9月 25日 国際シンポジウム(於 韓国全州 全北大学校人文研究院主催)「文明創出と共同繁栄」
14.(研究報告司会)「近代日本のなかの韓国併合」 20 09年 11月 14日学会運営:人間文化研究機構連携研究(主催)、アジア民衆史研究会(共催)「国民国家形成期の民衆運動と政治文化」 総合司会  
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.将来構想委員
2.入試改革委員
3.入学試験制度検討委員会委員
4.懲戒委員会委員長
5.国際交流委員
6.全北大学校人文学校と情報コミュニケーション学部との研究シンポジウム企画 
4-2 大学業務
1.大学院委員
2.リバティアカデミー運営委員
3.社会連携委員 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.歴史学研究会 査読
2.アジア民衆史研究会幹事 学会運営
3.アジア民衆史研究会・歴史問題研究所(韓国)主催「近代移行期における東アジアの民衆のあり方を比較し、連関を考えるための国際的ネットワーク」国際シンポジウム企画運営 
5-2 講演・講師・出演
1.明治大学アカデミーコモン講師
2.早稲田大学エクステンションセンター講師 
5-3 その他の社会貢献
1.茨城県猿島郡五霞町、町史編纂専門委員 

大黒 岳彦 Takehiko DAIKOKU 教授

経歴
   1961年香川県生まれ。東京大学教養学部を卒業後、東京大学理学系大学院(科学史学基礎論専攻)博士課程単位取得退学。
   1992年日本放送協会に入局(番組制作ディレクター)。
   退職後、東京大学大学院学際情報学府にて博士課程単位取得退学。
   現在、明治大学情報コミュニケーション学部教授。
   専門は哲学・情報社会論。著書に『〈メディア〉の哲学』(NTT出版)がある。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   二回目の大学院(2000~2005年)時代より「メディア」の哲学的な研究を実施している。そしてその過程において「身体」「マスメディア」「情報社会」「映像」というテーマが「系」として哲学的分析の対象になってきた。
   2006年には『〈メディア〉の哲学─ルーマン社会システム論の射程と限界─』においてとりあえず筆者の「メディア」観の概要と、研究の見取り図を示した。また 2007年の『謎としての「現代」 ─情報社会時代の哲学入門─』においては筆者の「哲学」というディシプリンに対するスタンスを示しておいた。 
1-2 今後2年間の予定
   今後の二年では二つの課題に取り組みたい。
1.「情報社会」の思想史的・哲学的分析
「情報社会」という言葉は頻繁に使われるが、実はその実態は曖昧模糊としており必ずしもみなに明確なイメージが共有されているわけではない。「情報社会」とはそもそもなんなのか、という基本的な疑問にメディア論的なアングルから解答を与えていきたい。
2.「サイバネティックスの再評価」
これは 2006~2 008年度の学術振興会補助金、基盤研究(C)の研究課題であると同時に旧著『〈メディア〉の哲学─ルーマン社会システム論の射程と限界─』の姉妹編をなすはずのものである。サイバネティックスが現在の情報社会成立に際していかなる役割を果たしてきたかを究明するとともに、今後の研究の方法論を確立したい。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   筆者の年来の宿願は「メディアの基礎理論」の構築である。その作業の課程で当然「情報」そして「コミュニケーション」という概念は中枢的な位置を占め、その哲学的な分析は必須の課題である。「情報コミュニケーション学」という学際的ディシプリンにおいて「情報」「コミュニケーション」という基礎カテゴリーが従来の狭隘なイメージに矮小化されることなく諸学協働のアリーナとなるような発展的解釈を試みたい。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.哲学(後期)
2.メディア論(前期)
3.情報コミュニケーション論B(後期)
4.基礎ゼミナール(通年)
5.問題発見ゼミナール(通年)
6.問題分析ゼミナール(通年)
7.問題解決ゼミナール(通年)
8.大学院メディア論研究(通年)
9.大学院メディア論演習(通年) 
2-2 当年度担当授業
1.哲学(後期)
2.メディア論(前期)
3.メディア方法論(後期)
4.情報コミュニケーション論B(後期)
5.基礎ゼミナール(通年)
6.問題発見ゼミナール(通年)
7.問題分析ゼミナール(通年)
8.問題解決ゼミナール(通年)
9.大学院メディア論研究(通年)
10.大学院メディア論演習(通年) 
2-3 その他の教育上の取り組み
資格課程の特別講義「博物館における映像利用」を毎年担当。 
(3) 研究成果報告
1.「エンターテイメントのメディア論的・哲学的研究—ナチ時代に至るドイツの文化状況をめぐって—」大黒岳彦、『明治大学社会科学研究所紀要』査読あり、第 49巻第1号、 127~138頁、 2010年
2.『「情報社会」とは何か? —〈メディア〉論への前哨』大黒岳彦、NTT出版、全 261頁、 2010
3.「システムとしての情報社会」大黒岳彦、『明治大学社会科学研究所紀要』査読あり、第47巻第 1号、103~ 114頁、2008年
4.科学研究費「サイバネティックスの哲学的再検討」(日本学術振興会科学研究費補助金、基盤研究(C)、研究代表者 )2006年 4月~
1940年代にN.ウィーナーによって創始され、 1960年代には世界的規模で一世を風靡したサイバネティックスは現在ほとんど忘れ去られている。しかし、現今実現しつつある高度情報社会の理論的基礎はサイバネティックスによって準備されたといってよい。以上の認識を踏まえつつ、サイバネティックスの哲学的、社会思想史的意義を包括的に解明する。
5.科学研究費「メディアの哲学の構築—画像の役割の検討を中心として—」(日本学術振興
会科学研究費補助金、基盤研究 (C)、研究分担者) 2007年 4月~
哲学分野においては「画像」についての研究は、静止画、動画に限らず盲点となっており、進捗していない。本研究においては、現象学、分析哲学、社会哲学、倫理学、教育学、それぞれの分野の研究に携わるものが「画像」が孕む哲学的問題をそれぞれの視点から掘り起こし、研究分野としての確立を図る。
6.科学研究費「ユビキタス社会の社会情報学基礎論」(日本学術振興会科学研究費補助金、基盤研究(B)、研究分担者 )2007年 4月~ユビキタス時代を迎えつつあるにもかかわらず、時代をトータルに捉えるための理論的視座は不在である。高度情報社会に見合う複雑性を有した社会理論を、哲学と社会学それぞれの分野の研究者が協働して構築する。
7.「グーグルによる汎知の企図と“哲学”の終焉」大黒岳彦、『現代思想』2011年 1月号、青土社、20 11
8.「メディアとコミュニケーション」大黒岳彦、『コミュニケーション・スタディーズ入門』第 4章、大修館、201 1
9.「メディア 2010」『文藝年鑑』 2011、日本文芸家協会、新潮社、 201110.「マクルーハンにおける〈不可視なもの〉」大黒岳彦、『早稲田文学』 4号、早稲田文学会 2011 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.情報コミュニケーション学部教務主任
2.情報コミュニケーション学部広報委員長
3.大学院情報コミュニケーション研究科長 
(5) 社会貢献
5-2 講演・講師・出演
1.情報コミュニケーション学部・情報コミュニケーション研究科公開研究会『「情報社会」論の新しいパラダイム』コーディネーター( 2010年 3月 21日) 

塚原 康博 Yasuhiro TSUKAHARA 教授

経歴
   1960年東京生まれ。1988年一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位修得退学。社会保障研究所(現、国立社会保障・人口問題研究所)研究員、明治大学短期大学教授等を経て、現在、明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(経済学)。専門は、公共政策、公共経済学、社会保障論。主要な著書に『地方政府の財政行動』(勁草書房、1994年)、『人間行動の経済学』(日本評論社、2003年)、『高齢社会と医療・福祉政策』(東京大学出版会、2005年)、『医師と患者の情報コミュニケーション』(薬事日報社、2010年)がある。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   過去2年間を含め、2004年から学長室専門員の職にあるため、大学内の行政業務、すなわち毎週火曜日の定例の学長スタッフ会議、5時限終了以降等の不定期の各種委員会の会議、4月と9月の学長スタッフ合宿、会議の事前事後の打合せ等に多くの時間が割かれている。大学内の行政業務は多岐にわたるので、その詳細を記述するのは省略し、WGの業務を除く、委員会名をあげるにとどめる。委員会名については、後述の行政業務担当報告を参照されたい。ここでは、研究実績について報告する。早稲田大学諏訪ゼミナール経済政策研究会と厚生労働科学研究費補助金政策科学推進研究事業「医療と介護・福祉の産業連関に関する分析研究」に参加したが、これらの研究会や研究事業から得られた研究成果が過去 2年間の主たる実績である。研究成果は、以下のように2つに大きく分けられる。
(1)平成不況の経済分析
(2)医療と福祉の産業連関分析
   (1)の研究は、日本経済が経験した平成不況の原因を考察したものである。この研究から、不況が長引いた原因として、資産価格の大幅下落を背景とした金融システムの機能不全とデフレを背景とした雇用システムの機能不全が重要であり、さらに、これらの機能不全をもたらす根源的な原因としては、不良債権処理の先送りしようとする人間心理と名目賃金の低下を嫌がる人間心理が重要であるという結論が得られた。この研究成果については、著書の分担執筆論文として公表している。詳しくは、後述の研究成果報告を参照されたい。
   (2)の研究は、2005年の産業連関表を用いて、医療サービス活動および介護サービス活動の産業連関分析を行ったものである。これらの研究から、医療サービス活動や介護サービス活動の生産波及効果や雇用創出効果が、全産業部門の平均や公共事業のそれを上回る効果があることが示され、国内需要が低迷し、輸出に頼りがちな日本経済において、医療サービス活動や介護サービス活動の拡大は、高齢化を背景とした国民の医療や介護のニーズの増加に応えるのみならず、国内経済の下支えをする効果があることが示唆された。この研究成果については、日本経済政策学会や社会政策学会での学会報告および報告書の分担執筆論文として公表している。詳しくは、後述の研究成果報告を参照されたい。 
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   DPCマネジメント研究会に参加しており、そこでの研究が中心になる。現代日本の高齢社会では医療の重要性が高まり、政府の政策として効率的で質の高い医療を提供することが求められている。これを実現するために期待がかけられている政策が、DPC(Diagnosis ProcedureCombination:急性期入院医療における診断群分類別包括評価)の導入である。DPCの導入により医療情報が透明化するため、医療の標準化が進み、さらに、包括評価によって医療提供者にコスト意識が生じるため、医療資源の無駄な使用が抑制され、医療資源の効率的な使用が図られると予想されている。さらに、医療情報を有効に使うことで、医療機関同士の連携が図られ、地域において効率的な医療の供給体制が構築できると期待されている。この研究会では、DPC導入病院に対して、毎年調査を行っているので、この調査から得られたデータを用いて、DPCが期待されている効果をあげているのか、DPCの抱える問題は何かを検証していく予定である。
   個人的な意見としては、情報コミュニケーション学とは何かを抽象的に定義し、それにこだわるよりも、「何についての情報なのか」「誰と誰とのコミュニケーションなのか」をはっきりさせ、まずは個別・具体的な研究をたくさん蓄積させていき、次の段階として、それらの成果を踏まえ、情報コミュニケーション学の体系化を図るのがよいのではないかと思う。例えば、医療を取り上げてみると、医師と患者の間に医療の知識に関する情報の非対称性が生じており、医師と患者のコミュニケーション・ギャップも無視できないものがある。また、後期高齢者医療保険制度などの医療に関する諸制度については、制度自体の良し悪し以前の問題として、国民自体が制度について知らない、よく理解していない、政府とのコミュニケーションがとれていない等、いわば政策コミュニケーションの問題が制度の受け入れや評価において大きいと思われる。このような個別の問題に対して、各教員や各研究者が各自の関心に応じ、個別・具体的な研究をたくさん蓄積していくことが重要と考える。
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.公共政策A(前期)、公共政策B(後期)
事実と理論に基づき考えることが重要であることを学生に理解させるため、授業で取り上げる内容ついて、そのデータおよび理論的な要点をプリントで配布している。また、授業と現実の社会との関連を学生に理解させるために、適宜、新聞記事のコピーを配布し、それの解説を行っている。成績評価は原則として定期試験による点数で決めているが、その時々で授業に関連ある内容で重要な問題が発生したときは、適宜、A4・1枚以内の強制でない自主課題を学生に課している。自主課題を成績に加味することで、社会問題に関心をもたせ、それを自分で調べるインセンティブを与えている。
2.公共経済研究(ガバナンス研究科、後期)
事実と理論に基づき考えることが重要であることを学生に理解させるため、授業で取り上げる内容ついて、そのデータおよび理論的な要点をプリントで配布している。また、授業と現実の社会との関連を学生に理解させるために、適宜、新聞記事のコピーを配布し、それの解説を行っている。成績評価は、平常点及びその時々の重要な社会問題を題材としたレポートによって決めている。
3.問題分析ゼミナール (通年)
問題分析ゼミナールは、研究テーマを決めて、グループで研究成果を出すことを目的にしている。本学部のゼミナール協議会が主宰する研究報告会に参加したが、これは研究を行うことの動機付けを与えるのに役立っている。本ゼミナールから3チームが参加したが、そのうちの1つが第2位に入賞した。さらに、滋賀県草津市で開催された日本公共政策学会の学生コンペにも参加した。これは、他大の学生との交流やレベルの高い環境での競争を体験するよい機会となっている。
4.問題解決ゼミナール (通年)
不況の影響で、就職が決まらない学生がゼミに出席できず、前期はゼミナール活動に支障をきたした。学生各自の個人研究が主体であり、学生は順次ゼミナールで報告し、研究成果をリサーチペーパーにまとめ、提出した。
2-2 当年度担当授業
1.公共政策A(前期)、公共政策B(後期)
前年度と同じである。
2.問題分析ゼミナール(通年)
前年度と同じである。神奈川県藤沢市で開催される日本公共政策学会の学生コンペへの参加を決めており、本学部のゼミナール協議会が主宰する研究報告会への参加も予定している。
3.問題解決ゼミナール(通年)
前年度に引き続き、不況の影響で、就職が決まらない学生がゼミに出席できず、前期はゼミナール活動に支障をきたした。問題解決ゼミナールは、学生各自の個人研究が主体であり、リサーチペーパーの作成を目標にしている。
(3) 研究成果報告
(1)著書(単著)
1.『医師と患者の情報コミュニケーション』、薬事日報社、 2010年9月、1-244ページ.
(2)著書(分担執筆)
1.「消費行動と貨幣錯覚」千田亮吉・塚原康博・山本昌弘編著『行動経済学の理論と実証』、勁草書房、 2010年1月、3-17ページ.
2.「生涯にわたる消費行動」(松崎慈恵と共著)千田亮吉・塚原康博・山本昌弘編著『行動経済学の理論と実証』、勁草書房、2010年1月、1 8-28ページ.
3.「人間の行動動機と労働者の行動」千田亮吉・塚原康博・山本昌弘編著『行動経済学の理論と実証』、勁草書房、2010年1月、50-71ページ .
4.「投資決定要因の効果の非対称性」(千田亮吉と共著)千田亮吉・塚原康博・山本昌弘編著『行動経済学の理論と実証』、勁草書房、2 010年1月、130-174ページ .
5.「平成不況の特徴」安藤潤・塚原康博・得田雅章・永冨隆司・松本保美・鑓田亨著『平成不況』、文眞堂、2010年3月、87-105ページ.
6.「応用ミクロ経済学」青木孝子・鑓田亨・安藤潤・塚原康博著『入門現代経済学要論』、白桃書房、 2010年4月、165-180ページ.
(3)論文
1.「医療サービスの産業連関分析」医療経済研究機構『医療と介護・福祉の産業連関に関する分析研究報告書』(平成21年度厚生労働科学研究費補助金政策科学推進研究事業) 2010年5月、69 -92ページ.
2.「介護の産業連関分析」(大内講一と共著)医療経済研究機構『医療と介護・福祉の産業連関に関する分析研究報告書』(平成21年度厚生労働科学研究費補助金政策科学推進研究事業) 2010年5月、93-111ページ.
3.「社会福祉活動の産業連関分析」医療経済研究機構『医療と介護・福祉の産業連関に関する分析研究報告書』(平成21年度厚生労働科学研究費補助金政策科学推進研究事業) 2010年5月、113-131ページ .
(4)書評
1.川口章著「ジェンダー経済格差」社会政策学会『社会政策』、第2巻、第2号、2010年12月、105-108ページ.
(5)学会研究報告
1.日本経済政策学会第67回大会(2010年5月、京都産業大学)論題:医療サービス活動の生産・雇用誘発効果-2005年産業連関表による分析-
2.日本公共政策学会 2010年度研究大会(2010年6月、静岡文化芸術大学)論題:公共政策研究への行動経済学の適用可能性
3.日本コミュニケーション学会第 40回記念年次大会(2010年6月、明治大学)論題:医師と患者のコミュニケーションと患者満足度-日、米、英、独、仏の国際比較分析-
4.社会政策学会第 121回大会(2010年10月、愛媛大学)論題:福祉経済の可能性-介護サービスと公共事業の生産・雇用誘発効果の比較-
5.日本経済学会 2011年度春季大会(2011年5月、熊本学園大学)論題:情報化とサービス化の産業連関分析
6.日本公共政策学会 2011年度研究大会(2011年6月、北海学園大学)論題:DPC導入病院の経営母体の違いによる効果の差について-都道府県市町村立と医療法人の比較分析- 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.専任教員昇格事前審査委員会委員
2.拡大カリキュラム運営委員会委員
3.紀要編集委員会・FD委員会合同委員会委員
4.将来構想検討委員会委員
4-2 大学業務
1.年金運営委員会委員
2.学長室専門員
3.将来構想委員会中野地区専門部会部会長
4.新学部等設置検討委員会委員
5.研究・知財戦略機構研究企画推進委員会委員
6.海外発信支援委員会委員
7.教育改革支援本部本部員
8.情報基盤本部会議委員
9.中野キャンパス教育研究施設推進協議会委員
10.明治大学震災復興支援センター員
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本公共政策学会学会賞・経済小委員会委員
2.日本公共政策学会 2011年度研究大会企画委員(2011年6月まで)
3.日本経済政策学会関東部会部会幹事
4.日本社会情報学会学術委員会委員
5.日本コミュニケーション学会第 40回記念年次大会実行委員会委員(2010年6月まで)
6.社会政策学会秋季大会企画委員会委員(2009年11月まで )
7.『社会政策研究』編集委員会編集幹事(2010年3月まで)
8.DPCマネジメント研究会理事
9.日本私立大学連盟年金問題検討プロジェクトチーム委員長
10.日本私立大学連盟インテリジェンスセンター情報部門会議委員(2010年 3月まで)
5-3 その他の社会貢献
①学会等の研究報告に対する討論者
1.日本財政学会第 66回大会(2009年10月、明治学院大学)での矢吹・高橋・深江氏(青山学院大学)の研究報告「テキスト・マイニングによる地方自治体の分類」に対する討論者
2.第82回 SPSN研究会(2010年1月、明治大学)での神山氏(帝京大学)の研究報告「道州制の1つの意味—国土計画における“自治体間チキン・ゲーム”を越えて—」に対する討論者
3.公共選択学会第 14回全国大会(2010年6月、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス)での林氏(一橋大学)の研究報告「就学援助の実施に対する財政状況の効果」に対する討論者
4.日本財政学会第 67回大会(2010年10月、滋賀大学)での足立氏(大阪大学大学院)の研究報告「産科集約化において距離は障害となるのか—大阪府泉南地域の経産婦を対象とした実証分析—」に対する討論者
5.日本経済政策学会第 68回全国大会(2011年5月、駒澤大学)での辻氏(みずほ総合研究所)の研究報告「個人所得と幸福感の地域分析—所得と幸福感の関係に地域差はあるのか—」に対する討論者
6.公共選択学会第 15回全国大会(2011年 7月、嘉悦大学)での川瀬氏(東洋大学)の研究報告「出生率の決定要因に関する実証分析」に対する討論者
②学会の座長および司会
1.社会政策学会第 119回大会(2009年11月、金城学院大学)での自由論題「社会保障・労働・人口の経済分析」の座長
2.2010年日本社会情報学会 (JASI & JSIS)合同研究大会(20 10年 9月、長崎県立大学シーボルト校)での自由報告部会Ⅳ「産業論(2)」の座長
3.日本公共政策学会 2011年度研究大会(2011年 6月、北海学園大学)でのテーマセッションⅠ「医療政策」の司会
③取材
1.日経BPによる明治大学の GPに関する取材、取材内容は、『「変革する大学」シリーズ 明治大学2010-2011年版』、2009年9月18日刊行に掲載
2.読売新聞による介護サービスの雇用創出効果に関する取材、取材内容は、『読売新聞』朝刊 1面、2010年5月3日発行に掲載
④査読
1.過去 2年間で『社会政策研究』、『生活経済学研究』、『日本社会情報学会学会誌』への投稿
論文を査読

冨樫 光隆 Mitsutaka TOGASHI 教授

経歴
   1979年 一橋大学大学院後期博士課程単位取得
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   GPI(真の成長指標 )を中心に「豊かさ」の指標について環太平洋地域の諸国における作成状況、利用状況の調査を行い、問題点を精査した。 
1-2 今後2年間の予定
   GPIを主とする経済、福祉指標と各国固有の経済特性との関係を、アメリカ、カナダ、オーストラリア、日本の環太平洋地域の諸国を中心として分析していく。  
(2) 教員成果報告
2-2 当年度担当授業
1.問題発見テーマ演習
2.マクロ経済学
3.問題分析ゼミナール
4.問題解決ゼミナール
5.データ解析論 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.コース長
コース科目の検討、専任、兼任教員人事 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.生活経済学会 理事(2011年7月~ ) 

友野 典男 Norio TOMONO 教授

経歴
   1954年埼玉県生まれ。 1977年早稲田大学商学部卒業。 1980年早稲田大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。 1986年同博士後期課程退学。 1982年~1984年早稲田大学教育学部助手。1985年~ 1987年日本学術振興会特別研究員。明治大学短期大学専任助手,専任講師,専任助教授を経て, 2000年同専任教授。 2004年より明治大学情報コミュニケーション学部専任教授, 2004年~ 2009年明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科講師, 1996年~ 1998年英国イースト・アングリア大学客員研究員。専門は行動経済学・ミクロ経済学。
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   次のテーマを中心に行動経済学の研究を行なった。①進化と経済行動。これは,社会科学研究所から個人研究として研究助成を得ているテーマである。人間も動物であり進化の影響から逃れられないという観点から,意思決定特に経済行動の究極因として,進化適応の観点から考察することがきわめて有効であることを見た。②合理的意思決定とは何か。新古典派経済学の前提である合理性は道具的合理性であるが,その意味を,限定合理性などの観点から改めて検討した。また,進化心理学でよく主張される生態的合理性あるいは進化的合理性という概念について検討した。生態的合理性概念は,進化適応という観点からは合理的であると言えるが,現代の人間にとって適切な合理性概念ではないことが示された。③意思決定における感情の役割について。感情は従来考えられている合理性の攪乱要因ではなく,合理性にとって不可欠な要因であることを,脳科学や心理学の研究も援用して解明した。また,感情の役割を進化的観点から見ると,一見非合理的に見える感情が持つプラスの役割が改めて認識された。
   また,行動経済学の一般への啓蒙・普及活動にも力を入れた。
1-2 今後2年間の予定
   引き続き行動経済学の研究を行なうが,特に次の3点に重点をおく。①神経経済学的研究。人の意思決定に,感情や直感がどのような影響を及ぼしているのかを,できれば光トポグラフィなどの測定装置を用いて,計測し,理論化する。②経済は「人のつながり」で動いていることの追求。人の経済行動は,他者との関係に強く,広く影響されていることの解明であり,他者から影響されているという意味だけでなく,他者とのつながりを求める行動を行なっていることも含む。③インセンティブと動機づけに関する研究。新古典派経済学では,インセンティブとは,もっぱら金銭的報酬や罰金などの経済的インセンティブのみが考慮されるが,現実には,地位・名誉・評判や規範・倫理・モラルなどの社会的インセンティブ,義務感・達成感・自律性といった感情的(心理的)インセンティブがある。これらに関する理論的および実証的研究を進める。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   人間は情報を食って生きている動物である。しかし,適切な情報を吟味して選択し,十分に咀嚼して消化しているとは限らない。このことは品質・所在・性格など経済的取引に必要な情報についても当てはまる。情報をどのように判断して,それが経済行動にどのように結びつくか,さらに市場や相対の取引関係にどのような影響を及ぼすかは,経済の働きを考える上で重要である。また取引相手,競争相手さらに自分の周りの人々とのコミュニケーションは経済活動に多大な影響を及ぼす。このような観点からの「経済への情報コミュニケーション的アプローチ」の展開を目指す。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.不確実性下の人間行動(前期)
2.情報と経済行動(後期)
3.基礎ゼミナール(通年)
4.問題発見テーマ演習A・B
5.問題分析ゼミナール(通年)
6.問題解決ゼミナール(通年)
7.情報コミュニケーション学〈欲望〉(通年,コーディネータ)
8.行動経済学研究Ⅰ・Ⅱ(前後期)(大学院情報コミュニケーション研究科)
9.行動経済学演習Ⅰ・Ⅱ(前後期)(大学院情報コミュニケーション研究科)
10.行動経済学演習(通年;博士後期課程)(大学院情報コミュニケーション研究科) 
2-2 当年度担当授業
1.不確実性下の人間行動(前期)
2.情報と経済行動(後期)
3.基礎ゼミナール(通年)
4.問題発見テーマ演習A・B
5.問題分析ゼミナール(通年)
6.問題解決ゼミナール(通年)
7.情報コミュニケーション学〈欲望〉(通年,コーディネータ)
8.行動経済学研究Ⅰ・Ⅱ(前後期)(大学院情報コミュニケーション研究科)
9.行動経済学演習Ⅰ・Ⅱ(前後期)(大学院情報コミュニケーション研究科)
10.行動経済学演習(通年;博士後期課程)(大学院情報コミュニケーション研究科) 
(3) 研究成果報告
1.著書(単著)『行動経済学-経済は感情で動いている』(光文社新書) 2006.5.20光文社( →韓国語版出版 2007.1.2;オーディオ・ブック版発売(株)オトバンク 2010.7)
2.行動経済学研究所代表者(200 8年 4月~現在)特定課題研究ユニットとして設立.
3.招待講演「認知的錯覚と意思決定—行動経済学の視点—」,明治大学先端数理科学インス
ティテュート主催「錯覚ワークショップ—横断的錯覚科学は成立するか—」(200 9.9.9明治大学紫紺館 3階会議室 )
4.招待講演「インタラクションと意思決定—行動経済学の視点—」,情報処理学会 HCI研究会(200 9.11.12お茶の水女子大学)
5.招待講演「行動経済学とは何か」(財)日本総合研究所( 2010.1.8 (財)たばこ総合研究センター)
6.招待講演「経済は感情で動いている-行動経済学とは何か」(社)企業研究会( 2010.1.15 青学会館)
7.書評「『実践行動経済学-健康・富・幸福への聡明な選択』リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン著 (遠藤真美訳)日経 BP社」『行動経済学会誌』 vol.3, no.2, 2010年 5月 31日
8.招待講演「行動経済学とは何か」財務省夏季職員セミナー(2010.8.6 財務省)→『ファイナンス』20 10.12月号収録(財務省)
9.論文(単著)「進化と経済行動-生態的合理性は規範的行動経済学の基礎となりうるか-」『明治大学社会科学研究所紀要』第 49巻第 2号( 2011.3)
10.項目執筆「経済は直感と感情で動いている-行動経済学」『5 0のキーワードで読み解く経済学教室-社会経済物理学とは何か』(青木 正直 ,有賀 裕二 , 吉川 洋, 青山 秀明(監修)東京図書 2011.5.13)
11. 論文(単著)「人間関係の行動経済学とマーケティング」『流通情報』4 3巻 2号(流通経済研究所 2011.9.29) 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.学生論文集編集委員会委員長( 2006年 10月~20 10年 3月)
2.将来構想検討委員会委員(200 8年 4月~現在)
3.大学院博士後期課程設置検討委員会委員(20 08年 4月~ 2010年 3月)
4.B(組織と人間)コース副コース長(20 08年 10月~現在)
4-2 大学業務
1.教育開発・支援センター運営委員会委員(2007年 4月~ 2010年 3月)
2.連合駿台会学術振興基金運営委員会委員(2009年 4月~現在) 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本経済学会会員
2.進化経済学会会員
3.情報コミュニケーション学会会員
4.国際教育学会会員・理事(200 7年~現在)
5.行動経済学会設立発起人・会員・理事( 2009年 12月~現在)
6.経済学検定試験出題委員 (2007年~2 010年)
7.エコカップジャパン 2009ポリシー部門審査委員(2009年 8月~200 9年 12月 )
8.(財)大学基準協会大学評価委員会専門評価分科会委員( 2010年 4月~現在) 
5-2 講演・講師・出演
1.招待講演「経済は感情で動いている —行動経済学の考え方 —」志太榛原経済フォーラム(2009 .8.25 藤枝市立駅南図書館)
2.招待講演「判断と決定におけるヒューリスティクスとバイアス」小島国際法律事務所弁護士研修会(2010.9.11 木更津かずさアカデミアパーク)
3.出演「経済学」ニコニコ生放送 2011.6.17
4.出演「業界の法則」 2011年 7月 25日放送(テレビ東京) 
5-3 その他の社会貢献
1.企画協力「とくダネ!」 2009.4.2~2009.10(フジテレビ)
2.解説「人はお金だけでは動かない(2)」『pe rigee』 8号(読売インフォメーション・サービス 2009.10.20)
3.取材記事「ダニエル・カーネマン」『プレジデント』 2009年 10月 5日号(プレジデント社)
4.取材記事「行動経済学-全員が合理的になると恐らく景気は悪化する」『別冊 宝島 究極のお金の授業』 2009年 11月 5日(宝島社)
5.解説「モンティ・ホール問題」他『 Newton別冊確率に強くなる』(2010年 1月 15日ニュートンプレス)
6.取材「フリーについて」 NHKクローズアップ現代 2010.3.7→「タダでもうける?! “無料ビジネス”の舞台裏」20 10.3.10放送
7.インタビュー記事「人はダマされやすくできている」『月刊消費者』2010年 3月号 (No .607)(日本消費者協会 2010.3.1)
8.インタビュー記事「消費者の不安心理と消費行動」『peri gee』9号(読売インフォメーション・サービス 2010.4.20)
9.書評「『なぜ直感の方が上手くいくのか』ゲルト・ギーゲレンツァー著 (小松淳子 訳)インターシフト」共同通信社 2010.7→各紙掲載
10.インタビュー記事「今必要とされているのは幸せになる経済学」『pen』28 0号(阪急コミュニケーションズ 2010.12.1)
11.取材記事「断捨離ブーム」『朝日新聞夕刊』20 11.2.4
12.著書(共著)『マンガ 行動経済学入門』(PH P研究所 2011.3.7)
13.監訳・解説『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』(楽工社 2011.3.18)
14.解説「行動経済学定着のカギは政策への応用」『週刊エコノミスト』 2011.3.22号(毎日新聞社)
15.エッセイ「多すぎて選べない」『文藝春秋 SPECIAL』201 1春号(文藝春秋社 2011.4.1)
16.インタビュー記事「震災後に考え方が変わったわけではない」 ”The Social Insight Updater” http://www.social-insight.net 2011.7.3117.インタビュー記事「本能と環境を制するために「クリティカル・シンキング」」”The Social Insight Updater” http://www.social-insight.net 2011.8.7 

中村 義幸 Yoshiyuki NAKAMURA 教授

経歴
   1948年 8月新潟県生まれ。71年 3月明治大学法学部卒業、75年 3月同大学院法学研究科修士課程修了、80年 3月同大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。77年 9月~81年 4月国立国会図書館調査立法考査局(非常勤)、81年 4月拓殖大学政経学部専任助手、82年4月同専任講師、85年 4月明治大学短期大学専任講師、86年 4月同専任助教授、92年 4月同専任教授。92年 4月~93年 3月明治大学学長室専門員、94年 10月~00年 9月同短期大学法律科長、00年 10月~07年 11月同短期大学長、04年 4月~08年 3月同情報コミュニケーション学部教授・学部長、08年 4月~同教授。87年 4月~93年 3月日本大学法学部法学専攻科兼任講師、98年4月~04年 11月国際基督教大学教養学部兼任講師他獨協大学、静岡大学等で兼任講師。この間、旧郵政省電気通信研修所、法務省入国管理局、同民事局、同法務総合研究所等で公務員研修講師。02年 6月~04年 5月学校法人中野学園評議員、04年 2月~08年 3月、09年 5月~学校法人明治大学評議員、08年 4月~学校法人明治大学理事。主な著書は、『アジア諸国の企業法制』(共著・アジア経済研究所)、『行政法』(共著・法学書院)、『現代人と法生活』(共著・八千代出版)、『ゼミナール憲法』『ゼミナール行政法』(いずれも共著・時潮社)、『現代の憲法理論』(共著・敬文堂)、『日本の難民認定手続き』(共著・現代人文社)、『アジア諸国の憲法制度』『アジア諸国の民主化と法』(いずれも共著・アジア経済研究所)、『憲法重要判例集』(共著・敬文堂)、『イギリス、オランダ、スウェーデン各国における外国人受入れに関する調査研究報告書』(共著・経営労働協会)、『演習ノート行政法(第5版)』(共著・法学書院)、『人権政策学のすすめ』(共著・学陽書房)、『これからの人権保障』(共著・有信堂)、『戦後の司法制度改革—その軌跡と成果』(共著・成文堂)など。主な訳書は、『法と発展—法と発展研究の将来』(共訳・アジア経済研究所)など。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   教育成果の関連では、情報コミュニケーション学部・同研究科、法学部・同研究科での従来の担当に加えて、特別研究者の後任として法科大学院の行政法演習を担当した。
   研究成果の関連では、戦後の司法制度改革の中での「行政訴訟制度の改革」を執筆したことを契機としてさらに GHQ関連の一次資料の収集に努めている。また、新たに専門研究者と法律実務家を糾合して「人権救済機関設置検討会」を設置し、共同世話人の一人として研究を推進し、『望ましい国内人権機関法案要綱』を纏めて公表した。
   行政業務担当関連では、引き続き学校法人明治大学評議員を、学校法人明治大学理事としては「制度改革」を担当している。
   社会貢献関連では、引き続き「地域マネジメント学会理事・事務局長」、「移民政策学会理事・企画運営委員」として両学会の運営にあたり、03年 8月以来引き続き、「特定非営利活動法人(NPO)難民支援協会代表理事」の任にあり、10年 7月に設立された日本初の難民問題研究機関としての「難民研究フォーラム」の世話人を、09年 8月から「明治大学校友会副会長」に再任され、組織委員会副委員長として組織活性化・海外組織整備を担当している。 
1-2 今後2年間の予定
   教育成果の関連では、行政法学と人権政策学を中心にさらに専門教育を推進する。研究成果の関連では、戦後の行政訴訟制度の改革の内容をさらに分析し、移民政策研究についてはイギリスを始めとした諸外国との比較研究を、地域マネジメント関連では市町村合併と道州制に関連した地域マネジメント研究を推進する。行政業務の関連では、制度改革担当理事として大学・法人の長期戦略に適う制度改革案を検討し、社会貢献の関連では、二つの学会の理事として関連分野の研究活動をさらに活性化させるとともに、NPO法人の代表理事として設立 10周年を迎えた新たな取り組みを模索し、それを契機に設立された「難民研究フォーラム」での研究と活動範囲を拡大・充実させる予定である。
ITと金融工学が産み落とした「巨大モンスター」が規制緩和で「檻から放たれ」、ICTでグローバリズムの波に乗って世界経済を席巻して破綻した現代社会の悲惨な現状や諸課題を解決し、新たに豊かな社会を構成するための情報コミュニケーション学的方法による最適な国家的・行政的規制システムの再構築と法治主義の確立が課題である。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.「社会システムと公共性」コースのオムニバス方式の講義(学部)
前・後期とも、「間もなく移民社会がやってくる」と「この国のかたちが変わるー市町村合併と道州制のゆくえ」と題する講義を各 1回行った。
2.「問題分析ゼミナール」(通年)(学部)
前期は、芝池義一『判例行政法入門(第 5版)』を教材として行政判例を研究し、後期は、「民営化の諸問題」をテーマにサブゼミなども設置してゼミ員全員で研究し、 12月のゼミナール大会で発表した。
3.「問題解決ゼミナール」(通年)(学部)
前期は、堀部政男・長谷部恭男『メディア判例百選』を教材として使用し、「取材・報道の自由」、「肖像・氏名・パブリシティ」「通信」「インターネット」などのテーマに関わる裁判例を素材に研究した。後期は、「大型店と商店街の共存—大型店をどこまで規制すべきか」をテーマに研究し 12月のゼミナール大会で発表した。
4.「行政法と行政過程(Ⅰ,Ⅱ)」(学部)
『演習ノート行政法(第 5版)』(共著)を教材として使用し、前期のⅠでは「行政法の基礎」と『行政作用法』の分野を終了し、後期のⅡでは「行政救済法」の分野を講義した。
5.「人権と法(Ⅰ、Ⅱ)」(講義)(研究科)
樋口陽一『国法学—人権原論(補訂)』を教科書として講義した。
6.「行政法A(Ⅰ,Ⅱ)」(法学部)
櫻井敬子・橋本博之共著『行政法』を教科書とし、私の共著『演習ノート行政法(第 5版)』と現下最有力の理論書である塩野宏『行政法Ⅰ行政法総論(第 4版)』を参考書として使用し、講学上の「行政法の基礎(序論)」と「行政作用法」の内容を講義した。
7.「専門演習」(4年)(通年)(法学部)
芝池義一『判例行政法入門(第 5版)』を教材として使用し、3年次からの継続履修生であることから行政法のほぼ全分野を指導することができ、国家 I 種の合格者も輩出した。
8.「行政的規制と法治主義(Ⅰ,Ⅱ)」(法学研究科)
法学部の専門課程・ロースクール教材として執筆された宇賀克也『行政法概説Ⅰ(行政法総論)(第3版)』を教材として使用し、国民の基本的な権利・自由を保障する立憲主義の意義を確認した後、行政的な規制手法(手段)を主として作用法から抽出し、法治主義の観点からの司法的コントロールのあり方を裁判例を素材に講義している。内外でいわゆる「規制緩和論」が一世を風靡した結果の惨状が露わになるにつけ学生の関心も高い。
9.「行政法演習」(後期)(法科大学院)
法科大学院の行政法専任教員が作成した『行政法演習—各回の事例問題』と『行政法演習—2009年度—』を主教材とし、宇賀克也『行政法概説Ⅱ(行政救済法)(第 2版)』、『行政判例百選Ⅰ,Ⅱ』などを参考書としてケースメソッドとソクラテスメソッドを併用して後期 2コマの演習指導をした。 
2-2 当年度担当授業
1.社会システムと公共性」のオムニバス方式の講義(学部)
前期は、「移民受入制度」についての講義と「日本での難民支援 10年の歩み」(後掲)を教材としてレポートの作成を指導し、後期も同様の計画である。
2.「問題分析ゼミナール」(通年)(学部)
前期は、芝池義一『判例行政法入門(第 5版)』を教材に行政法判例を研究し、後期は、「少子化をどう防ぐか」をテーマにゼミナール大会発表に向けて研究中である。
3.「問題解決ゼミナール」(通年)(学部)
前期・後期とも、堀部・長谷部編『メディア判例百選』を教材にメディアをめぐる裁判事例を研究中である。
4.「行政法と行政過程 I,Ⅱ」(学部)
従来どおりの教材を用いて講義中である。
5.「人権と法Ⅰ、Ⅱ」(研究科、MC)
樋口陽一『国法学—人権原論(補訂)』を教材に講義中である。
6.「研究論文指導」(Ⅰ、 Ⅱ)(研究科、DC)
前期は、法学研究科とコミュニケーション研究科を修了した学生の修士論文を点検し、後期
は、博士論文の指導と学会発表論文の作成に向けて指導中である。
7.「情報コミュニケーション学学際研究」(Ⅰ,Ⅱ)(研究科、DC)
所属の専任教員と分担指導中である。
8.「行政法総論、行政法Ⅰ、Ⅱ」(法学部)
従来どおりの教材を用いて講義中である。
9.「専門演習」( 3年)(通年)(法学部)
従来どおりの教材を用いて演習指導中である。
10.「行政的規制と法治主義」(Ⅰ、Ⅱ)(法学研究科)
法学研究科の院生が情報コミュニケーション研究科の「人権と法Ⅰ,Ⅱ」(前掲)を他研究科履修してくれたため、本年度は未開講とした。
(3) 研究成果報告
   社会科学研究所の総合研究の成果である「行政訴訟制度の改革」(『戦後の司法制度改革』所収)を更に多面的な視点から研究し、総合的な研究成果とするためにGHQの公開資料を収集して研究を進捗させている。
   また、法政大学大学院法学研究科・ボアソナード記念現代法研究所グローバルコンパクト研究センター「国連グローバルコンパクト及び関連する諸問題に関する学際的共同研究」の客員研究員として、引き続き政府・自治体の対応を中心に研究中である。
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.学部運営について
04年 4月1日に開設時の初代学部長に就任し、08年3月31日の完成年度の完了を見届けて法人理事に就任するため学部長職を退いた。
2.情報コミュニケーション研究科委員(08年4月1日~)
4-2 大学業務
1.学校法人明治大学評議員(職務上: 04年 2月 24日~ 08年 3月 31日。学識: 09年 5月 11日~)
2.学校法人明治大学評議員銓衡委員会副委員長( 08年 1月 22日~)
3.学校法人明治大学理事(制度改革担当)( 08年 4月 1日~)
4.学校法人明治大学評議員会制度改革委員会(オブザーバー)(08年7月23日~10年5月27日) 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.地域マネジメント学会理事(06年 6月~)、同事務局長(06年 10月 1日~)
毎年総会は 6月に、学術大会は11月に開催している。
2.移民政策学会理事・企画運営委員( 08年 5月~)
第 2回の研究総会は 09年 5月に2日間にわたり本学で開催した(大会幹事)。
3.明治大学校友会副会長(11年 8月~再任 )
4.このほか、この期間には、「日本公法学会」「全国憲法研究会」「憲法理論研究会」「国際憲法学会日本支部」「国際人権法学会」「行政判例研究会」「フランス行政法研究会」「日本地方自治学会」「地方自治学会」の各学会・研究会の会員として活動している。
5-2 講演・講師・出演
   09年 11月 28日に、法人の常勤理事と校友会の副会長等で構成される臨時の「明治大学校友会組織活性化協議会」の委員長に就任し、「女子同窓会との融合」「外国居住校友の組織化」等を中心とする活性化政策について、校友会の常設の「組織委員会」と協力して審議を行って原案をまとめ、 10年 7月の校友会定時代議員総会で提案し承認された。こうした関連で、ホーチミン、ハノイ、シンガポール( 10年3~ 4月)、シドニー、バンコク(同 8月)、ニューヨーク(同 11月)の校友組織を訪問した。
5-3 その他の社会貢献
1.特定非営利活動法人(NPO)難民支援協会代表理事(03年9月~)
03年 9月の総会で承認されて 2代目の代表理事に就任して今日に至っている。同協会は、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所の事業実施の正式パートナーであり、法律・生活支援から調査・研究・研修活動、他の国際・国内の諸団体との連絡調整活動など多様な事業を行っており、こうした活動が評価されて 05年度には「第 20回東京弁護士会人権賞」を受賞し、 08年4月には国税庁の審査を受けて寄付者が税制上の優遇措置を受けることができるいわゆる「認定NPO法人」に認定されている( 08年 5月~)。
09年は協会設立 10周年に当たり、 8月に毎日新聞社主催・外務省後援の「第 21回毎日国際交流賞」を受賞し、 10月には代表理事として大阪毎日新聞社ホールで受賞記念講演を行った。
また、 10年 7月 23日には、本学駿河台校舎においてUNHCR駐日代表のヨハン・セルス氏をはじめ多数の専門家の参加を得て日本発の難民問題研究機関としての「難民研究フォーラム」の発足式を主催し、 11年 10月には『難民研究ジャーナル』創刊第 1号を刊行するとともに、 10年9月の年次総会終了後には難民の自立を支援するためのマイクロファイナンス組織もスタートさせた。
なお、同協会は、海外での難民(被災者)支援活動(プロテクション)にも実績を有する事務局員も在籍していることから、 11年 3月 11日の東日本大震災・大津波の発生による被災者救援のため、有力企業等の環境・CSR推進部などから助成金を受けて 3月末には陸前高田市に現地事務所を立ち上げ、公的機関と連携しながら法律相談やボランティア派遣を行っている。
2.講演等
「日本における難民支援の 10年」毎日新聞社主催第 21回国際交流賞受賞記念講演(09年10月毎日新聞大阪本社オーバーホール)
5-4 その他
1.「ごあいさつ Foreward」 Japan Association for Refugees, Annual Report2008-2009,2008年度難民支援協会年次報告書(09・10・31) 2.「毎日国際交流賞表彰式」毎日新聞 09年 10月 11日朝刊
3.「多文化共生へ手を携えー日本での難民支援 10年の歩み」毎日新聞 09年 10月 29日朝刊
4.「受賞記念講演—日本での難民支援 10年の歩み」『第21回毎日国際交流賞』(毎日新聞社、1 0年 3月)22頁~2 8頁
5.「ごあいさつ Foreward」 Jap an Association for Refugees, Annual Report 2009-2010,2009年度難民支援協会年次報告書 (10・10・31)
6.「ごあいさつ Foreward」 Japan Association for Refugees, Annual Report 2010-2011,2010年度難民支援協会年次報告書(11・10・31)

ハウス,ジェームス C. James C. HOUSE 教授

経歴
   Born in Leicester UK. Attended Hastings Grammar School. Graduated from theUniversity of London. Graduate studies in Phonetics at Cambridge. Came to Japan in 1982. Part-time lecturer in various schools including Meiji University. Became full-time at Tamagawa University in 1989, then full-time at Meiji University from 1993. 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   In principle my areas of research, educational activities and work in wider society revolve around language and culture with specific interest in the English language,British culture and Media studies.
   Up to now I have been able to identify the importance of content in language teaching and in seeming contrast to that the importance of clarity in pronunciation for effective communication.
I have centered my research on:
i) Motivating students through short-term study abroad programs
ii) British studies as part of courses in International Understanding
iii) Improving the communication ability of students through techniques for clearer pronunciation
iv) Media studies in the area of English for content education
   For the first part I have been encouraging students to go on study abroad programs over my seven-year period as associate director of the Center for International Programs (CIP).
   Now as a representative for the CIP I am able to continue this practical help without the day-to-day commitment to the center. I have focused my efforts on the Cambridge program with its commitment to content/academic studies.
   Secondly, in my classes, I am introducing students to an understanding of Britain and Europe through a study of history and present-day social problems.
   Thirdly, I am developing approaches to pronunciation awareness so that students will be able to target those aspects of their pronunciation that need work.
   In conclusion, I have introduced English for Media studies in my “zemi” classes to focus students on improving English language skills for content acquisition. 
1-2 今後2年間の予定
   For the next two years I expect to continue to collect materials and produce papers on aspects of British history, literature, modern life and media that will interest students and lead them to study content through English further. I shall do this through the medium of the English language so that both skills of cultural study and language study will develop together and students will be prepared for an international world.  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   I think that the nexus of the study of Information and Communication is language and culture. Only by encouraging a truly international approach to the subject can we hope to further develop the field. An understanding of foreign cultures and a high level of skill in foreign languages are crucial to the future of Information and Communication studies. 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
i) *Social Problems Discovery Seminar (2nd yr students) (All year)
In this class I introduce students to aspects of Media studies in the modern day with some reference to history. The students then give presentations on what they have learned.
ii) *Social Problem Solving Seminar (4th yr students) (All year)
In this class students were presented with examples of media and using facsimiles of original documents and other materials were asked to consider how media affects our lives today. They give presentations and write reports.
iii) English Skill A III/IV (Advanced level) (Semester)
In this class students are encouraged to develop their listening and speaking skills.
Demanding listening exercises spoken by native speakers and non-native speakers of English are used in the class to brush up listening skills. Also, students work in groups to solve problems and practice exercises, which they do in English. Students give their own opinions in English in the class.
iv) Speech and Debate I/II (Semester)
Students are given direction on how to give presentations and then give presentations to the rest of the class. They are encouraged to collect data and illustrate their presentations.
Power point presentations are encouraged. In the second semester students will be introduced to debate.
v) Communication for Language Zones I/II (Semester)
Students are asked to consider modern day social problems in Britain and compare them with those in Japan. In the first semester students studied a movie called “About a Boy” and discussed the social problems therein. They followed this up with presentations that concentrated on one scene from the movie and a related aspect of British society. In the second semester students will choose their own movie and make longer presentations.
vi) An Introduction to English Phonetics ( 1st semester only)
This class is intended for students who wish to become teachers. The aim is to improve the students’ understanding of pronunciation and to learn the phonetic symbols. They need to relate these symbols accurately to the sounds of English. The focus is on British English but reference is made to Standard American pronunciation, too. Some theory is also introduced. 
2-2 当年度担当授業
i) Basic Seminar (1st yr students) (All year)
In this class I introduce students to aspects of Britain in the modern day with some reference to history. The students then give presentations on what they have learned.
ii) Social Problem Analysis Seminar (3rd yr students) (All year)
In this class students were presented with case study of the 1st World War and using facsimiles of original documents and other materials were asked to consider how the war could have been prevented. They gave presentations and wrote reports.
iii) *English Skill A III/IV (Advanced level) (Semester)
In this class students are encouraged to develop their listening and speaking skills.
Demanding listening exercises spoken by native speakers and non-native speakers of English are used in the class to brush up listening skills. Also, students work in groups to solve problems and practice exercises, which they do in English. Students give their own opinions in English in the class.
iv) *Speech and Debate I/II (Semester)
Students are given direction on how to give presentations and then give presentations to the rest of the class. They are encouraged to collect data and illustrate their presentations. Power point presentations are encouraged. In the second semester students are introduced to debate.
v) *English Communication I/II (Semester)
Students are asked to consider modern day social problems in Britain and compare them with those in Japan. In the first semester students studied a movie called “About a Boy”and discussed the social problems therein. They followed this up with presentations that concentrated on one scene from the movie and a related aspect of British society. In the second semester students will choose their own movie and make longer presentations.
vi) *An Introduction to English Phonetics ( 1st semester only)
This class is intended for students who wish to become teachers. The aim is to improve the students’ understanding of pronunciation and to learn the phonetic symbols. They need to relate these symbols accurately to the sounds of English. The focus is on British English but reference is made to Standard American pronunciation, too. Some theory is also introduced. 
2-3 その他の教育上の取り組み
   I give three lecture/classes for the Interfaculty course “Honyaku Try Shiyo”. We study the language of “Hamlet” and its modern day equivalent. 
   I give two lectures on “Study Abroad . One step into the world” for the SIC introductory course on Information & Communication. 
   I teach a course on “English through Drama” (1st semester) and “Talking about Britain” (2nd semester) for Liberty Academy.
   I also teach 2 Listening classes and 1 Debate and Discussion class at Meikai University. 
(3) 研究成果報告
   As a result of my research in Cambridge in 2008 I have completed a paper on motivation amongst Meiji University students on short-term study abroad programs at Cambridge (2007-2008). This paper appeared The Meiji Journal in 2010. Another paper on further research in this area is intended for 2011. 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
i) Head of English, responsible for class scheduling and part-time teachers
ii) Member of the Language Committee 
4-2 大学業務
i) Member of the committee for the Liberal Arts Journal
ii) Representative of the Center for International Programs
iii) Member of the British Studies Committee of CIP
iv) Advisor to the Gender Center of SIC
v) Member of the Language and Culture Committee of Liberty Academy 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
i) Communication Association of Japan (CAJ)
5-2 講演・講師・出演
ii) May 28, 2009 attended workshop on motivating students in English classes held at Meikai University.
iii) July 27, 2009 gave a lecture for UFRA (Urayasu Foreign Residents Association) on “My Britain” recorded by local cable television and later broadcast.
iv) October 20,2009 gave a lecture on the internationalization of Urayasu for Urayasu Citizens’ University.
v) April 4, 2010 gave a lecture on Britain for the International Exchange Society, Ohta ku.
vi) August 30, 2010 gave a presentation on “English Teaching in Japan” to the Education Society of Cambridge. 
5-3 その他の社会貢献
i) *Co-author of “Expressways” re-published by Kairyudo (2009). This is an officially approved (Education Ministry) High School textbook on communicative oral English.
ii) *Acted in and contributed to a video production of “A Christmas Carol” by Charles Dickens for Last Hero Productions.
iii) *Preparing a textbook for publication on “Study Abroad in Britain”. 

細野 はるみ Harumi HOSONO 教授

経歴
   1949年東京都生まれ。1972年東京学芸大学教育学部卒業。1978年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。1979年明治大学短期大学助手、専任講師、助教授を経て、2004年明治大学情報コミュニケーション学部教授。「日本文学」「日本語表現」等担当。専門は日本古典文学、国語教育。『王朝文学史』『体系物語文学史』『講座源氏物語の世界』『王朝語辞典』など。(いずれも共著) 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   研究活動の上では暗礁に乗り上げている。枝葉末節を穿り出すような旧来の研究方法に疑問を感じ、かといって新機軸が打ち出せるでもなく、目下焦りを感じている状況である。 
1-2 今後2年間の予定
   学部・大学の業務に時間がとられることが多く、正直のところ研究に専念する余裕が確保できるか心もとないが、従来考えてきたことを煮詰めていけるように吟味していきたい。テーマとしては、(1)日本語文化社会を反映した文芸作品の考究、(2)国語教育について、などを続けて行く。
   文学作品においてはコミュニケーションはその描く人間の姿として大きな要素であるが、それをコミュニケーションとして捉える作品研究は中心的課題ではない。日本語社会には伝統的に人間関係意識を強く反映した待遇表現が体系的に確立されている。しかし日本語文化の中では基調低音のようなもので、国語史など語学の分野を別とすれば、とりわけてこれを文学作品の方法として考えることは余りなされていない。「情報コミュニケーション学部」という舞台で展開できることを探っていくべく、コミュニケーションの問題として捉え直してみたい。  
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.基礎ゼミナール
昨年度にひきつづき、最初は各人のブックレポートの練習をし、その後課題図書を決めて分析的に読んだ。特に芥川龍之介の小説をいくつか読み、映画化されたものとの比較もした。年2回のレポートをゼミ機関紙『暁』8、9号に掲載した。
2.問題発見テーマ演習A
ことばについての自由課題での発表とし、主に話し言葉について、グループごとに各種のテーマで発表する形式を取った。半期のみで切り上げねばならず、議論を深めるには至らなかった。レポートはゼミ機関紙『暁』8号に掲載した。
3.問題発見テーマ演習B
後期は「読むこと」を扱い、受講者の希望で近代の小説を読み、討論した。今期はやや長いものとして島崎藤村の『破戒』を中心に扱った。レポートはゼミ機関紙『暁』9号に掲載した。
4.問題分析ゼミナール・問題解決ゼミナール
初めから3・4年合同で行った。文芸作品を中心に講読し議論している。小説よりは新書がいいという者も若干いるが、現在は短編小説をテーマごとにまとめて読み込み論じ合うという形式に次第にまとまってきた。3年は出席率がよいが、4年は進路選択の時期と重なり、欠席も目立つようになってしまった。両学年のレポート、及び4年の卒業論文要約をゼミ機関紙『暁』8、9号に掲載した。
5.日本文学(後期)
昨年に引き続き『源氏物語』講読を半期で全体像がつかめることを目指して行っている。大人数の講義にしては静粛で、中には意欲の高い者も見受けられる。資料が多すぎたきらいがあり精選することが今後の課題である。
6.言語と文化(日本語文化圏)Ⅰ
古典講読。前年同様、受講者の希望により『古事記』を読んだ。受講者は従来よりかなり多く、一見疎遠に見える古典も扱い方如何で興味をもつと感じた。
7. 言語と文化(日本語文化圏)Ⅱ
日本語の中での文字について歴史的にたどった。受講者が少なく、密度の濃い授業ができた。 
2-2 当年度担当授業
1.基礎ゼミナール
現2年で、全員が仲良く積極的に取り組んでいる。前期は自然科学系の新書を講読した。主にグループ討論をベースに全体に発表する形式を取っているが、考えたことをことばにまとめる力の未熟さが目に付き、そこを重点的に訓練していけるよう心掛けている。前期レポートをゼミ機関紙『暁』8号に掲載した。
2.問題発見テーマ演習A
前期は受講者がかなり多く、東日本大震災に関しての「ことばと人間」の問題をグループごとに提示し討論した。レポートはゼミ機関紙『暁』10号に掲載した。
3.問題発見テーマ演習B
後期は「読むこと」を扱い、受講者の希望の多かった近代の短編小説を、色々な作品で比較して読んでいる。
4.問題分析ゼミナール・問題解決ゼミナール
初めから3・4年合同で行っている。ゼミで扱う題材や方法にゼミ員の意見がまとまらず、やや迷走気味となってしまった。夏の合宿でまとまった題材を扱え、議論を深めることができた。両学年の前期レポートをゼミ機関紙『暁』10号に掲載した。
5.日本文学(前期)
今年は半年で日本文学史が概観できるよう特徴的な作品を取り上げて講議した。大人数の講義にしては静粛で、中には意欲の高い者もかなり見受けられた。
6.言語と文化(日本語文化圏)Ⅰ
古典講読。前年同様、受講者の希望により『古事記』を読んだ。昨年度に引き続き、受講者が多く、しかも意欲的なものが多くて充実した講義ができた。
7.言語と文化(日本語文化圏)Ⅱ
言語としての日本語の姿を全般的に理解するため、井上ひさし『國語元年』を導入に、言語とは何かを考え、日本語の各要素の特色を理解して特に文字使用法や敬語について歴史的にたどることを進めたい。これも受講者が多く、意欲的である。
8. アカデミックライティングⅡ
大学院の論文作成のための演習。 
2-3 その他の教育上の取り組み
   本学のカリキュラムでは学部教育の中で多学年にわたって教室で触れ合う機会を設けることは難しいが、先輩・後輩の関係の中で知識探求・問題意識の共有を経験することは重要と考え、1年生から 4年生までの全学年のゼミナールの交流活動を活発に行っている。全学年でゼミのテーマは同じ「ことばと人間」としているが、当然のことながら学年により対象とする問題や取り組み方は違う。3年と 4年のゼミは毎回合同で、2コマ分貫いて密度の濃い発表や討論の場を設け、夏の合宿も合同で行っている。4年次では卒論または卒業制作(過去には小説や絵画もあった)を必須としている。それらに力を取られるため、ゼミナール大会や『情コミジャーナル』への参加がなかなかできないのは検討課題である。研究発表のグループは両学年混合で、教え・教えられの関係の中で作り上げ、次の学年へと引き継いで行っている。また、年 2回の全学年の合同ゼミ「オール細野ゼミの集い」を、卒業生も交えて秋に実施し、各学年のゼミ活動を紹介し、交流の機会を持つほか、随時他の学年を合流させたゼミも行っている。さらに、ゼミナール機関誌『暁』を年 2回発行している。 
(3) 研究成果報告
   講演「日本古典文学と中国文学—源氏物語を彩る漢詩文—」(韓国・全北大学校 人文研究院設立記念国際学術大会「文明の創出と共同繁栄」での招請講演)2009年9月 25日 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.情報コミュニケーション学部長( 2008年 4月~)、自己点検・評価委員会委員長( 2008年 4月~)。
4-2 大学業務
1.連合教授会代議員( 2008年 4月~)
2.将来構想委員会委員(2008年 4月~)
3.新学部等設置検討委員会委員(2008年 4月~)
4.明治大学評議員(2008年 4月~)他。 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.中古文学会常任委員(0 1年 4月~0 4年 4月)、同学会監査( 05年 4月~現在)。
2.物語研究会 

山口 生史 Ikushi YAMAGUCHI 教授

経歴
   明治大学商学部助手、講師、助教授、教授を経て、現在、情報コミュニケーション学部教授。
   博士〔学術〕。専門社会調査士。専門は、コミュニケーション学〔組織・異文化〕および組織行動学〔ミクロ組織論〕。主著に『従業員動機づけのための異文化間コミュニケーション戦略』(単著・同文館)、『成果主義を活かす自己管理型チーム:人の視点とプロセス重視のマネジメント』〔編著・生産性出版〕、『異文化コミュニケーション研究法:テーマの着想から論文の書き方まで』〔分担執筆・有斐閣〕、『企業変革の人材マネジメント』(分担執筆・ナカニシヤ出版)、『朝倉実践心理学講座6・コンピテンシーとチームマネジメントの心理学』(分担執筆・朝倉書店)、『コミュニケーション・スタディーズ入門』 (分担執筆・大修館書店 )、『現代日本のコミュニケーション研究:日本コミュニケーション学の足跡と展望』 (分担執筆・三修社 )、『希望立国日本:15の突破口』(分担執筆・日本評論社)、『異文化間コミュニケーション入門』(分担執筆・創元社)、『マレーシア、フィリピン進出日系企業における異文化間コミュニケーション摩擦』(分担執筆・多賀出版)、『文化摩擦における戸惑い』(分担執筆・創元社)、『米国、中国進出日系企業における異文化間コミュニケーション摩擦』(分担執筆・風間書房)、『グローバル社会における異文化間コミュニケーション』(分担執筆・風間書房)、『コミュニケーション・オーディット』 (共訳・ CAP出版)がある。その他、新聞連載や学術論文多数。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
組織コミュニケーションと組織行動学の全般的研究。
<例>介護保険施設におけるチーム・コミュニケーションの研究
組織内のネットワーク分析と組織ソーシャル・キャピタルの研究
コミュニケーションと組織公正理論の研究
コミュニケーション・オーディット研究
これらを研究テーマとして、量的・質的調査を行ってきた。これらの成果を研究学会で口頭発表したり、専門ジャーナルに発表してきた。 
1-2 今後2年間の予定
上記研究の継続と発展をめざす。
上記研究テーマとの接点と本学部の理念を連関させたい。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.<組織コミュニケーション A, B>
2.<4年生ゼミ>
3.<3年生ゼミ>
4.<専門研究・組織コミュニケーション論 I.II [大学院]>
5.<専門演習・組織コミュニケーション論 I.II [大学院]>
6.<特論演習・組織コミュニケーション論 I.II [大学院]>
7.<集約型外国文献購読Ⅰ [大学院]>
8.<グルーバル・マーケティング・コミュニケーション[専門職大学院]>
9.<組織コミュニケーション [立教大学大学院]> 
2-2 当年度担当授業
1.<組織コミュニケーション A, B>
2.<4年生ゼミ>
3.<3年生ゼミ>
4.<専門研究・組織コミュニケーション論 I.II [大学院]>
5.<特論演習・組織コミュニケーション論 I.II [大学院]>
6.<研究論文指導・組織コミュニケーション論 I.II[大学院]>
7.<集約型外国文献購読Ⅰ [大学院]>
8.<グルーバル・マーケティング・コミュニケーション[専門職大学院]>
9.<組織コミュニケーション [立教大学大学院]> 
(3) 研究成果報告
<書籍著書(分担執筆)>
1.「組織コミュニケーション・コンピテンス」、『コミュニケーション・スタディーズ入門』鈴木健(編)、p p. 112-134、2011、大修館書店
2.「組織コミュニケーション研究発展の経緯と動向」『現代日本のコミュニケーション研究:日本コミュニケーション学の足跡と展望』日本コミュニケーション学会(編)、 pp.68-80、2011、三修社
3.「自己管理型チームの強さと弱さ」、『朝倉実践心理学講座6・コンピテンシーとチームマネジメントの心理学』山口裕幸(編)、p p.165-183、2009、朝倉書店
<研究論文・単著>
1.「ワーク・チームにおけるソーシャル・キャピタルの形成過程とその機能」、『明治大学社会科学研究所紀要』 48(1), 45-74、2 009
2. 「組織内情報探索行動の日米比較」、『国際ビジネスコミュニケーション学会研究年報』、第 68巻、p p.13-20、2009
3. ”Influences of organizational communication tactics on trust with procedural justice effects: A cross-cultural study between Japanese and American workers,” International Journal of Intercultural Relations 33, pp.21.31, 2009
<研究論文:共著>
1.「介護施設におけるケアワーカー間の協働:組織内ケアチームに着目した分析」、『ルーテル学院大学・日本ルーテル神学校 紀要』第 43号、pp.1 3-20, 2009
<報告書>
1.『介護保険施設におけるチーム・コミュニケーション』〔共著〕、 pp.1-122(平成 19年度~ 20年度文部科学省の研究助成 (研究代表者・山口生史 ) 、研究課題番号基盤研究 C19530567)、2009.2
<エッセイ>
1.海外レポート「組織論研究を異文化研究視点から見る意義:国際学会に参加して」『組織科学』 Vol.43 、No2、pp .122-123、2010
<研究口頭発表>
1.「離職意図制御マネジメントの日米比較:手続的公正と職務満足の影響」、国際ビジネス研究学会 第 17回全国大会、20 10年 10月 24日
2. ”A Japan-US Cross-Cultural Study on Relationships among Empowerment, Social Capital, and Quality of Working Life,” International Academy of InterculturalResearchの第6回国際大会(米国・ハワイ大学)、 2009.8.
3.「介護ワークチームの自律性と QWLの関係:従来型とユニット型の多母集団分析」、2009年度組織学会研究発表大会(仙台)、2009.6.
<研究学会パネリスト・コメンテーター>
1.異文化経営学会第 23回研究会コメンテーター、2010.7
<研究費助成研究>
1.平成 19年度~ 21年度文部科学省の研究助成 (研究課題番号 基盤研究 B 19330083、研究
代表者・京都大学教授若林直樹)「ネットワーク組織の変革管理におけるコミュニケーション開発と学習の構造効果」
<外部団体報告書:研究アドヴァイザーとして参加>
1.『グッド・コミュニケーションが組織成果にどう結びつくか<GC C予備調査報告書>-成果を上げる組織コミュニケーション-』日本経営協会、 2010.12.のアドヴァイザー(調査・データ解析協力) 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.言語教育委員会(04 . 4~ )
2.ジェンダー運営委員会( 2010.10~)
4-2 大学業務
1.図書委員(08~10)
2.国際交流委員(図書委員会選出:08~ 10)
3.国際教育センター委員(10~ )
4.教育開発支援・センター運営委員(10~ )
5.情報基盤本部委員(10~) 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
<所属学会・役職>
1.日本コミュニケーション学会:広報局長・理事
2.国際行動学会:副会長・理事
3.国際ビジネスコミュニケーション学会
4.組織学会
5.国際ビジネス研究学会
6.異文化経営学会
7.産業・組織心理学会
8. International Communication Association (ICA)
9.International Association for Intercultural Research (IAIR): Fellow会員
10. Academy of Management (AOM)
<大会実行委員長>
1.日本コミュニケーション学会第 40回記念大会・大会実行委員長および国際コミュニケーション学会 (ICA=International Communication Association)プレカンファレンス実行委員( 2010.6)
<国際学会のアワード審査委員>
1. International Communication Association (ICA)の学会賞の一つの選考審査委員( Committeemember)、 2011.3
<研究論文査読委員>
1.米国の専門ジャーナル: Journal of Business Communication, International Journal of InterculturalRelations,PsychologicalReports,AsianPacificManagementReviewなどの査読
2.日本の専門ジャーナル:組織学会、日本コミュニケーション学会、多文化関係学会、国際ビジネス研究学会、国際行動学会、などの学会誌・専門誌の査読 
5-2 講演・講師・出演
1.グッド・コミュニケーション・カンパニー研究会 (日本経営協会 )「組織内コミュニケーションを成果に結びつける~組織内ネットワークと組織行動~」2009.3
2.所沢市NPO基礎講座「市民活動を連携させるネットワーク:ソーシャルキャピタルを豊かに」2009.1 
5-3 その他の社会貢献
 1.所沢市市民活動支援センター開設検討委員会・委員長(2010.12まで)
2.ボランティア活動 (老人福祉介護施設に年2~ 3回訪問 )
3.全日本スキー連盟(SAJ)スキー正指導員・ B級検定員としてスキースポーツの普及活動:(例)神奈川県連主催障害者スキー講習会および検定会主任検定員 

吉田 恵子 Keiko YOSHIDA 教授

経歴
   1946年東京生まれ。 1969年一橋大学社会学部卒業。 1974年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位修得。同年明治大学短期大学経済科助手。以後同短期大学で専任講師、助教授を経て 1985年教授。短期大学では「経済史」を担当。 2004年情報コミュニケーション学部教授。担当は「女性労働の歴史」。主著『女性と労働』日本経済評論社 2004年。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   大きく分けて 2つの分野があった。一つはライフワークであるイギリス女性労働の歴史研究である。産業革命期からスタートして現在ようやく戦後にたどり着いたところである。この時期の最大の問題は、今まで女性の労働が、その時々の労働力需要に左右されてその必要性が論じられていたのが、ここに来て初めて「働く権利」として認められるようになったことである。それを象徴するのが 1970年の男女同一賃金法と 1975年の差別禁止法である。しかしこれが問題を解決したかというとそうはいいがたい。女性の賃金は現在でも男性の 8割ほどである。この格差は決して差別によるのではなく、女性自身の選択の結果であるという説もあるが、何よりも、同法が各階層の妥協の産物として誕生していたことが重要である。同法の誕生の歴史をたどることによって、戦後における女性労働のあり様の一側面を探った。これについての成果は『情報コミュニケーション学研究』へ投稿した。
   もう一つは社会科学研究所の総合研究「女性専門職と女子高等教育」の一員としての研究である。戦前における女性専門職の代表として医師と弁護士を取り上げ、その誕生・発展を探るなかで両職業の比較を総合研究として行うが、そのなかで女性弁護士誕生に大きな力となった穂積重遠の役割、その思想について分担している。これについては3年間の共同研究の後、成果を出版する予定である。
1-2 今後2年間の予定
   イギリス女性労働の歴史研究の更なる継続である。戦後へと時代を移し、1970年の男女同一賃金法については、今年成果をまとめたので、それ以降が問題となる。特に、戦後における女性労働の問題が集約される場であるパート労働について取り組む。なかでもハキムなどが主張する選択理論をめぐる議論を視野に入れて、展開していく。
   女性弁護士の誕生と穂積重遠については、彼の著作はもち論、日記・家族の思い出・審議会での発言等を読み込むことによって明らかにしていく。  
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.「女性労働の歴史Ⅰ、Ⅱ」
2.「経済史 A、B」(経営学部)
3.ゼミナール「基礎ゼミナール」「問題発見ゼミナールA」「問題分析ゼミナール」「問題解決ゼミナール」
2-2 当年度担当授業
1.「女性労働の歴史Ⅰ、Ⅱ」
Ⅰでは女性労働の歴史をイギリスを中心に、Ⅱでは日本を中心に扱い、両国の比較と同時に両国に通底する問題を認識できるよう構成している。
2.「経済史 A、B」(経営学部)
イギリス経済の歴史を、Aでは成長の観点から、Bでは衰退の観点からたどり、そこに国家と市場の問題をからませて、経済発展についての現代的問題意識の涵養をめざしている。
3.ゼミナール「基礎ゼミナール」「問題発見テーマ演習」「問題分析ゼミナール」「問題解決ゼミナール」
1年では「働くこと」に興味を持ち、日本や海外における働き方を学ぶ。2年では特に日本における雇用問題を取り上げ、そこに歴史的な視点を入れて考察する。今年度のテーマは「日本的雇用の問題点を探る」とした。更に3、 4年では国際的な比較とジェンダーの視点を加え、個別にテーマを見つけて卒業論文に結実させ、『情コミ・ジャーナル』に投稿させる。全員の卒業論文についてはゼミの卒業論文集として、まとめていく。 
(3) 研究成果報告
1.「工場法~女性は労働時間の短縮を望んだのか、男性は国の介入を拒否したのか」『イギリス女性史研究会 ニュースレター』2009年 12月
2. 「同一賃金法とパートタイム労働から見た戦後イギリスの女性労働」『情報コミュニケーション学研究』第 10,11合併号、2011年 3月
   イギリスにおいて同一賃金への要求は、 100年の歴史があり、何度も議論されながら実現にはいたらなかった。それが 1970年に同一賃金法の成立となって実現した。なぜこの時期に法の成立が可能となったのか、しかしその効果は限定的なものにとどまったのはなぜか、これを当時広がりつつあったパートタイム労働との関連で論じたものである。 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.ジェンダーセンター長
昨年 4月開設のジェンダーセンターのセンター長としてセンターの運営にあたっている。
4-2 大学業務
1.男女共同参画推進委員会委員
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.社会政策学会
2.社会経済史学会
3.ジェンダー史学会 

石川 邦芳 Kuniyoshi ISHIKAWA 准教授

経歴
   東京学芸大学大学院英語科にて教育学 (英語教育 )の修士号を取得。イエール大学大学院博士課程にて言語学修士号、第一及び第二論文審査により哲学修士号 (言語哲学 )を取得し、博士候補生。その後、博士号請求論文審査により、言語学博士号取得。その間、客員研究員として、カリフォルニア大学バークレー校言語学科にて Charles J. Fillmore教授の下、「接続表現の分析・研究」のデータ収集、及び、中間報告に参画する。その後マサチューセッツ工科大学言語学科・脳認知科学科の Edward Gibson教授の下で、文解析における文構造と解釈処理の負荷との相関についての研究に加わる。ワシントン州立エバーグリーン大学日本語講師、宇都宮大学、作新学院女子短期大学英文科 (専任講師 )、東京家政学院大学人文学部 (助教授 )、國學院大學文学部、明治大学文学部 (英米文学専攻 )等にて教え、2004年4月より現在まで、明治大学情報コミュニケーション学部准教授。2005年7月~2006年7月まで、イエール大学大学院言語学科 (Laurence Horn教授の下 )外部客員研究員として東京在宅で VPN経由のデータベース・資料を通じて主に「談話における情報伝達構造のモデル」についての研究を行う。談話表示理論の時間継起の推論システムの研究や、言語媒体の情報構造の研究などに携わり米国言語学会、シカゴ言語学会、日本英語学会、日本英文学会、日本コミュニケーション学会などで研究発表を行った。平成 20年度の科学研究費学術図書出版助成金の交付を受け、学術書を刊行した。平成 21年度の科学研究費助成金の交付を受け、 3年にわたり談話の情報伝達の機能に関する実証的研究を行っている。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   2008年度以来の調査で得たデータベース・関連資料に基づいて「談話における情報伝達構造のモデル」構築に向けての研究を継続すると共に、韻律構造と情報更新との関連について焦点化の機能を分析し、さらに特定のメタ言語表現における情報価との関連について分析を行った。そして、以下のような進展をみた。メタ表現には多種類の、そしてプロトタイプの意味に基づいて分析することが困難な例が少なからずあり、作業仮説として設定していた「非逆説的」な、逆説の含意を明確に示すものばかりではなく、新たな種のメタ表現を追加データとして収集できた。しかし、仮説に矛盾する明示的データは見られないことも立証された。結果として単年度としては、幾つかの類型を分析することができ、仮説を支持する方向で研究が進んだ。 
1-2 今後2年間の予定
   2009年4月下旬より、文科省の科学研究費助成を受け、向こう3年間のスパンで、日英両言語の談話で、発話開始部と発話終結部という構造的位置が関わる、談話情報との機能的意味関係を、大規模言語コーパスからの実証的データ、及び新規の調査・収集活動や音声収録による第一次資料に基づいて分析し、最終的に、一定の表現が示す構造的な談話機能の特定を目指す。この科学研究費助成による研究が主要な活動の核となる。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   その中で、過去のテーマも継続研究していき、発話開始時・終結部の特定表現における情報価との関連から、情報発信で有標性の高いユニットを、ピッチ型とスペクトログラフ表示により分析していく。2010年と2011年の夏にはイエール大学とカリフォルニア大学アーバインにて調査・実験を実施して、第一次資料のデータを得ることができた。データの整理と韻律構造及び談話情報構造の分析を進めていく。一方、特定のメタ言語表現における情報価との関連から有効な説明原理を検証していく。
   2010年度より、新設の「談話コミュニケーション」にて、言語媒体の送り手と受け手の間で行われる情報・情意の伝達についての様々な相を談話研究、談話分析、発話構造と韻律の中間領域の研究、音響学的アプローチ、認知論、社会科学的研究法などの複合的視点から観察することを試みていく。さらに、以前から行っている以下の調査・分析により、幾つかのコミュニケーションと談話情報伝達論との具体的な接点について何らかの洞察が得られることを待望する。すなわち、会話の原理による一般化や談話表示理論の視点などの比較検討と、研究開発途上にある、「時間継起情報の伝達構造」の型の分析などを通して、情報価と談話のコミュニケーションの様態について根底的な理解を深める為の研究を進めていく予定。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.問題分析ゼミナ-ル
言葉の仕組みや機能についての基本的理解に始まり、言葉がコミュニケーションで果たす談話単位の意味について、考えてもらう。音韻的な特徴、発話の構造的な特徴、そして、より大きな談話脈絡の機能的特徴や、様々な、それを構成する要因などを理解してもらう。音声分析ソフトを使ったり、印刷媒体からの資料分析、新聞・雑誌の見出しの文体・修辞的特徴を観察したりしながら進めた。自分なりのまとめ方でレポート作成を行ってもらった。7月初めに2日間の合宿を行った。理解に時間が掛かる言語の仕組みの全体的特徴を少しずつ積み重ねて理解してもらい、自分で疑問について考えることができることの意義を実感してもらい、それを基礎に卒業までに小論文等の形に研究をまとめてもらえることができたら良い。
2.問題解決ゼミナ-ル
前年度に続き、音声分析ソフトを使ったり、印刷媒体からの資料分析、新聞・雑誌の見出しの文体・修辞的特徴を観察する等の作業を加えながら談話についての各自の研究の参考にしてもらった。各自、3年次に絞り始めた興味の主体についてそれをさらに具体化して、研究を進めてもらった。その後、社会言語学的な視点を紹介し、調べてもらった。また、国際関係論等の隣接分野について自主的に調査をしていただいた。
3.言葉の文化と歴史(英語)
前年と同様に、英語の生長・変化についての背景的な事項を説明し、さらに多くの印刷資料を与え、一方、視覚的な補助教材を毎回示して短期間に基本的な理解を植え付けることに眼目を置いた。文化的な側面や社会的側面については、時間的な制約から体系的な説明はせず、具体的な例を重点的に取り上げ、その生のままビデオや作品そのものを提示することで基本的な印象を残してもらうようにした。配布した豊富な資料は教職として履修する者にも後に参考になるものを選んだ。
4.明大文学部英米文学専攻:英語学研究 A、B
英語についての言語としての基本的仕組み:音声、語形態、語彙、統語、意味構造それぞれの部門の構成、そして、その諸部門に関わる隣接領域(インターフェイス)の理論やモデルの要素・方法論: 韻律要素、フット・音の強弱・音の高低要素と意味の関わり、叙述(predication)、指示(reference)的意味、De Re的指示、時や空間の表現と直示(deixis)、意味的前提と語用論的前提などを扱った。その後、認知論に基づく、認知意味論のアプローチに入り、レイコフやラネカー等による意味の拡張に関わる理論の方法論を扱った。概念的な分析方法はそのパースペクティブが広いため、具体的な例を受講者に考えさせることで、実際にどのように我々の認知的な思考が働くかを、体得してもらうように努めた。これをきっかけとして言語的知識の背後にある根本的な人間の能力を理解する為のメタヒューリスティックスを、後世に向けて考えてもらえればと願う。
5.言語学
言語によるコミュニケーションの土台となる領域について学ぶ。欧米の言語科学の体系的蓄積を噛み砕いてその要点を吸収する。言語学の構造的研究から話し手と聞き手の談話領域の研究、記号的或いは認知的研究などに及ぶ。一方、対人、対集団の言語コミュニケーションの型や特徴に触れ、最終的に、言語のメカニズムの視点からより有効な情報伝達の基礎を各自が考えることを目標とする。英語と日本語を比較しながら学ぶ。言語の階層性、分節性、あいまいさ等の構造的特徴を構成する要素を理解し、さらに、総体としての言語機能の諸相につき、異なった視点からの理論研究・実践的分析に触れながら学ぶ。
キーワード:言語の仕組みと脳と心、視覚的空間と聴覚的空間、空気の振動と発声の仕組み、音声の聞こえの分析、伝達されるものの構造、伝達されるものと送り手の意図、記号的意味と送り手の意味、談話とコミュニケーション、隠れた意味・意図(語用論・談話研究)。
6.大学院研究科専門研究:談話構造論Ⅰ, Ⅱ
必ずしも、履修者は英文科や言語系の学科出身ではないので、まず、言語の仕組みや機能、そして歴史的、社会的変化の様相についてテキストを使いながら解説する。また、分担してテキストをまとめてもらった。並行して各自のその時点での研究テーマについての発表をしてもらい、言語のどんな面がどのようにそのテーマに関わるか考察させた。さらに各自にとって特に必要な言語についての知識や研究分析の方法的基礎を見につけてもらうことに主眼を置いた。
発話の情報価について、音論、意味論、語用論、認知論での最近の研究成果を踏まえ、送り手・話し手の方策と漸進的な推論手順の点から検討する。
7.大学院研究専門演習:談話構造論Ⅰ,Ⅱ
発話の情報価について、音論、意味論、語用論、認知論での最近の研究成果を踏まえ、送り手・話し手の方策を漸進的な推論手順の点から検討する。 
2-2 当年度担当授業
1.言語学
昨年度と同様に、言語によるコミュニケーションの土台となる領域について学ぶ。欧米の言語科学の体系的蓄積を噛み砕いてその要点を吸収する。言語学の構造的研究から話し手と聞き手の談話領域の研究、記号的或いは認知的研究などに及ぶ。一方、対人、対集団の言語コミュニケーションの型や特徴に触れ、最終的に、言語のメカニズムの視点からより有効な情報伝達の基礎を各自が考えることを目標とする。英語と日本語を比較しながら学ぶ。言語の階層性、分節性、あいまいさ等の構造的特徴を構成する要素を理解し、さらに、総体としての言語機能の諸相につき、異なった視点からの理論研究・実践的分析に触れながら学ぶ。
キーワード:言語の仕組みと脳と心、視覚的空間と聴覚的空間、空気の振動と発声の仕組み、音声の聞こえの分析、伝達されるものの構造、伝達されるものと送り手の意図、記号的意味と送り手の意味、談話とコミュニケーション、隠れた意味・意図(語用論・談話研究)。
2.問題分析ゼミナ-ル
次年度、在外研究の為、募集せず。
3.問題解決ゼミナ-ル
音声分析ソフトを使ったり、印刷媒体からの資料分析、新聞・雑誌の見出しの文体・修辞的特徴を観察する等の作業を加えながら談話について各自、研究を進めてもらう。物語分析や表情分析を調べている。
4.英語の文化と歴史
予備知識を必要としない形で、英語の生長・変化についての背景的な事項を説明し、さらに多くの印刷資料を与え、一方、視覚的な補助教材を毎回示して短期間に基本的な理解を植え付けることに眼目を置く。文化的な側面や社会的側面については、時間的な制約から体系的な説明はせず、具体的な例を重点的に取り上げ、その生のままビデオや作品そのものを提示することで基本的な印象を残してもらうようにする。配布した豊富な資料は教職として履修する者にも後に参考になるものを選ぶ。
5.大学院研究科特論演習:談話構造論 I, II
論文作成の実践・最終段階として、談話、対人関係、言語的諸研究の枠組みの中でどれだけ一貫性、論理性、検証性、反論受容性を備えているかについて指導し、その方法論を身につけてもらう。
6.談話コミュニケーション I, II
前期は、談話の仕組みに関わる諸要素を理解することに中心を置くと同時にその根底にある実際の「対人関係」に関わる様々に要因について具体的な分析やデータを提示しながら、導入する。後期は Iで得た事柄の知識に則って、実際の発話収録データの分析やテキストの分析、アンケート資料、参与観察、インタビューのデータ等に触れながら、関わる談話研究、対人関係の研究・調査における分析の方法論を考える。全体として、情報伝達の仕組みや送り手の情的意味を含む、話し手・聞き手相互行為としての談話領域の仕組みについての理解を深めることと、その為にどのような視点から観察、分析が行われるのかを見ることを目標としている。コンテクストや対人関係、談話分析の事例研究、資料収集の方法と整理・分析法の基本的方法などを含む予定である。
7.明大文学部英米文学専攻:英米文学演習(3年)
言語によって表される「意味」はどのような仕組みによって解釈、理解されるのかという基本的な問いについて、その諸理論・分析に触れる。英語の統語的、意味的な現象はどのように分析できるのかということを、統語論に関わる基本的概念を身につけながら考察していく。 
(3) 研究成果報告
1.科学研究費助成による海外の大学生の発話・談話様態の調査・実験科研費助成研究の一環として調査・実験を2010年8月19日から9月10日まで、合計約3週間にわたり、米国イエール大学とカリフォルニア大学アーバイン校にて実施した。何組かの知人同士のペアに、或る程度の制限を設けた上で、予め作成した項目について自由な会話を行ってもらった。一方で、さらに用意した特定の発話をタイプした紙とペアの対話をタイプした紙のそれぞれを自由に読んでもらった。これらを録音収集した。合計10数名の参加者が集まり、十分に第一次資料になり得るデータを収集することができた。より自然な談話環境を作った上で、さらに音声面での分析の為には単一指向性の広音域の収録機器と共に無反響室が望ましいが、幸いにイエール大学院にてそれを確保できた。高低アクセントの選択とも合わせて発話開始部と終結部の様態を探るのに必要なデータが得られた。実験後、分析を進めている。現段階で、発話文の構造的な位置についての単純な三分割だけでは説明のつかない、話し手の示す特定の談話機能的意味が関わっていることを示すケースが見られる。2011年夏にはイエール大学院において前年度までの資料につき、音声分析の準備作業を行った。院生や諸教授の協力を得て、先に進むことができた。 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.言語教育部会委員
2.1年5組クラス主任
3.2年14組クラス主任 
4-2 大学業務
1.共通外国語運営委員会(2010)
2.和泉委員会英語部会委員 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.米国言語学会会員
2.日本英語学会会員
3.日本言語学会会員
4.日本英文学会会員
5.日本コミュニケーション学会会員 
5-2 講演・講師・出演
1.ECAP2010のワークショップ講師。 ELT Career and Professional DevelopmentConferenceの2010年度年次大会。「日本人学習者の抱える L1干渉克服:英語韻律単位と意味グループとの並行性」のテーマで言語科学での最近の研究から基本的な知見について講じ、韻律的な塊りと意味上有意な区分との並行性に注目して、より自然な流れに沿った意味理解を行うための方途を示した。さらに効果的な訓練を構築する為の重要な点について、実例を示しながら模擬演習を行った .The Daily Yomiuri後援 . British Council(英国政府観光局 )、ケンブリッヂ大学出版局等協賛 .読売新聞社本社9階ホール .2010年 5月30日 .
2.CAJ (日本コミュニケーション学会 )第40回記念大会、及び ICA (InternationalCommunication Association)の Pre-Conferenceが 2010年 6月19日・ 20日に明治大学にて開催され、その開催校実行委員として大会行事の準備と当日の運営全般に携わった。明治大学駿河台校舎
3.ECAP2011のワークショップ講師. ELT Career and Professional DevelopmentConferenceの2011年度年次大会で『 “Ⅰ”主語発話の英語らしさと「自己開示」の表現力養成:日本人学習者の「人称」感覚を磨く』を講じた。研究社出版ビル.2011年5月29日. 

今村 哲也 Tetsuya IMAMURA 准教授

経歴
   1976年 6月,東京都に生まれる。早稲田大学本庄高等学院,早稲田大学法学部卒業後,早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程研究指導終了。早稲田大学大学院法学研究科客員研究助手を経て,2006年 4月明治大学情報コミュニケーション学部専任講師に着任,2010年 4月同准教授。2011年 9月ロンドン大学クイーンメアリー校客員研究員。
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
 (ⅰ)教育面での実績
①講義
情報倫理,財産と法Ⅰ・Ⅱ及び知的財産法Ⅰ・Ⅱを担当している。授業では配布資料を用意し,配布した資料はウェブシステムにアップしている。成績評価は,2010年度は方式を変更し,①平常点と試験の点数を加味した総合成績,②試験の点数のみで計算した成績の双方を算出していずれか高い方の成績を素点として対応する評価を付与している。2011年前期は全て試験の素点のみで計算した。なお,定期試験では解答例を公表するとともに,異議申立期間を設けて,解答例に異議のある学生に申立ての機会を与えている。
②ゼミナール
2010年度は 1年及び 4年生のゼミを担当,2011年度前期は在外研究の都合もあり 2年生のゼミのみ開講した。例年 4年生のゼミでは知的財産法を題材とした講義と演習とを組み合わせて授業を行っている。ゼミ論の提出に代えて,情コミジャーナルへの投稿を促している。2010年 3月の懸賞論文(2009年度)では 12名(ゼミ登録者 16名)の者が参加し,2011年 3月の懸賞論文(2010年度)では,13名(ゼミ登録者 17名)の者が参加した。入賞に関しては,2009年度が優秀賞 1名・佳作 1名・努力賞 9名,2010年度は佳作 4名・努力賞 7名であった。情コミジャーナルの準備のために夏季休業中の期間を利用してゼミ合宿を開催している。
<ゼミ合宿>
2009年9月11日~13日尾瀬・旅館みゆき 1・2・3・4年合同
2010年8月25日~27日グリーンロッヂ山中湖 1・4年合同
③教材:田村善之編『論点解析知的財産法』(商事法務,第2版,2011年 2月)を改訂し,第2版を発行した。また,井田正道・和田格編『情報リテラシーテキスト』(培風館,2009年11月)を共同で執筆した。
(ⅱ)研究面での実績
① 権利者等不明著作物の利用の在り方に関する総合的考察
本研究は,科学研究費補助金(2009-10年度)及び学内の特定個人研究に係る研究である。本年度は,初年度に文献資料の分析や海外調査により収集した研究成果と 2010年度の追加的な資料収集を踏まえて,原稿をまとめる作業に努めた。追加的な資料収集として,欧州での著作権関係の会議に参加し関連情報を収集するとともに,英国では研究協力者のほか権利者団体(Design and Artists Copyright Societyや Music Publishers Association)の所属弁護士へのヒアリングを実施した。
初年度の英国でのヒアリングによって,英国において権利者等不明著作物への対応に関し,北欧諸国の採用する拡張的集中管理ライセンスの制度に類似した枠組みが,2010年1月に英国政府が提出した Digital Economy Billに盛り込まれていることが判明していた。2010年度の調査によると,同法案は通過したものの,権利者等不明著作物に関する条項は法案成立直前にすべて削除されたことが分かった。議会記録の調査や関係者へのヒアリングによると,その原因は,主に写真家団体との利害調整ができなかったことによる。同法案の制度モデルは集中管理団体の利用を前提としていたが,孤児著作物のシンボル的な存在でもある写真の著作物の権利処理の仲介はエージェントが主流であるため,集中管理団体の存在を前提とした北欧型の制度設計には不具合を生じるようである。
本研究の成果について,その一部を論文形式で早稲田大学グローバル COE紀要に掲載した。
同論文では,我が国では裁定制度の利用円滑化の法改正を行ったばかりであるが,我が国でも北欧型の拡大集中許諾制度に期待を寄せる見解もみられるところ,英国における DigitalEconomy Billの規定やその土台となった British Copyright Councilの提案は我が国の更なる制度選択の可能性のとしてあり得るため,英国での議論が参考になることを示唆した。
② 地理的表示の保護に関する研究
これまで行ってきた地理的表示に関する研究に基づいて,発展的な研究を行っている。
このテーマに関連して 2010年 6月 13日に開催された日本工業所有権法学会において,「地域団体商標制度という制度選択の意義とその課題」と題する報告を行うとともに,学会誌に論文を発表した。
③ タイ知的財産法の研究(判例データベース構築事業)
この研究は,早稲田大学 21世紀 COE企業法制と法創造総合研究所・知的財産法制研究センター(センター長・高林龍教授)のプロジェクトとして 2003年度から継続しており,2008年度に再び採択されたグローバル COEに引き継がれている。この 3年間の間でおよそ 12件のタイの裁判例を収集してインターネットで公表している(8年間の累積で 475件)。このプロジェクトを通してタイ王国の中央知的財産国際貿易裁判所と密接な交流を有するに至っている。
参考 URL:www.globalcoe-waseda-law-commerce.org/rclip/
④ 知的財産法の研究・教育拠点の形成を目的として,明治大学の特定研究課題ユニットとして 2009年10月に設置された明治大学知的財産法政策研究所(www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/index.html)に参加している。研究統括は,中山信弘特任教授(明治大学研究・知財戦略機構))。 
1-2 今後2年間の予定
(ⅰ)研究面での予定
   現在取り組み,かつ今後2年間に重点的に取り組む研究として,以下のものがある。
①電子書籍の普及に向けた著作権法上の法的課題の検討
昨今,電子書籍端末が普及したことに伴って,電子書籍の需要が著しく拡大することが予想されており,著作権法がこれまで前提としていた出版物をめぐる環境は大きく変化しつつある。本研究はこうした現代的な環境の下で,電子書籍の普及に際して問題となる著作権法上の課題を掲げて,それに対する調査と検討を行うことを目的とする。具体的な論点として,(1)出版物の権利関係をめぐる現状の整理,(2)出版社の権利や出版権の設定範囲の拡大の是非,(3)電子書籍の普及に向けた権利処理の円滑化の方策(権利者不明著作物や集中管理団体の問題を含む)について,出版社へのヒアリング等の実態研究や,諸外国の現状や制度の状況を調査し,これらの課題の解決に向けた立法論・解釈論を展開することを目的とする。
②知的財産法と公共政策上の多元的価値との関係に関する研究
知的財産は,産業の発展や文化の発展を目的としているが,その法目的を実現する上で知的財産法(特許法や著作権法等)に法目的として規定されていない公共政策上の多元的価値(環境保護,表現の自由などの人権その他の社会的正義)との関係をどのように調整していくべきかという問題が生じる。これまで著作権法と表現の自由との関係等の研究を通して,知的財産法とその法目的に掲げられていない価値との関係をどのように調整していくのかということを検討してきた。この研究では欧米においてこの価値調整についてどのように論じられているのかについて調査研究を行う。
③地理的表示の保護に関する研究
2年以内にこのテーマに関連する論文等を整理して研究書にまとめたいと考えている。
(ⅱ)教育面での予定
①教育手法の在り方
在外研究の機会を活用してイギリスにおける学部・大学院での教育手法について観察したい。
LLMコースの講義を聴講する機会を得たので幾つかのクラスに参加している。
②非法学部における法学教育の方法論の模索
2010年度から知的財産法が,知的財産法Ⅰと知的財産法Ⅱとして開講された。早稲田大学社会科学部でも同じ講座を担当することとなった。いずれも非法学部であるがこうした学部における先端法学の教育方法論を模索する。
③学部の学際性を生かした教育
本学部はその特色である学際性を十分に生かした教育を行うことが重要であると思われるので,各種の機会を生かして,他の先生方との連携を徐々に深めていきたい。 
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   本学部の情報コミュニケーション学は,研究面においては,教員相互の必要に応じた学際的な共同研究の試みによって高められる部分が大きいと思われる。また,教育面においても,単に幅広い断片的な専門・教養を与えるだけではなく,それを有機的に連関させてより総合的な理解を獲得するための思考方法も教授しなければならないと思われる。FDなどを通して,教員間における情報コミュニケーション学の方法論に対する共通認識を様々に試行錯誤しながら意識的に構築していくことが必要と思われる。
   専門科目との関係では,情報コミュニケーション学の枠組みの中で,「体系性のある法学教育をどのように実施していくのかについて,学部内あるいはコース会議の中で検討するとともに本学部の法学科目担当者間のより積極的な連携が必要なのではないかと思われる。
   法律の学習は,最終的には何らかの国家資格(法曹資格等)を取らなければ,専門家として知識を生かすことは難しい。現在のロースクール制度は混乱の様相を呈しているが,今後制度が安定していくであろうことを考えると,本学部のような非法学部系の学部から適性や能力に応じてロースクールへ進学する学生が増えることが望ましい。
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.情報倫理
例年,村田潔編『情報倫理:インターネット時代の人と組織』(有斐閣,2004年)を使用している。学部1年には難しい部分があるので,極力分かりやすく解説するように試みている。ビデオ教材も利用した。受講生は 128名。出席はマークシート式の小テストを兼ねた出席票を用いて9回実施した。試験は持ち込み不可で,論述式とキーワードを記入する問題との組み合わせによって実施した。解答例を公表した。
2.財産と法Ⅰ
昨年度と同じように実施したが,4年生の就職活動との関係で出席はとらずに,レポートを提出させることにした。受講生は 211名。試験は持ち込み不可で,選択式の問題と簡単な記述式の説明問題を出した。成績の比率は S 25%,A 30%,B 20%,C 17%,F 7%となった。解答例を公表し,異議申立期間を設定し,解答例に疑義のある学生には異議申立ての機会を与えた。
3.財産と法Ⅱ
民法の債権法にあたる部分について講義する予定である。教科書は,松倉耕作=甲斐好文編『ビジュアルに学ぶ財産法Ⅱ』 (嵯峨野書院,2006年)を用いた。受講生は 152名(受験者 122名)。試験は選択式の問題を中心に記述式の問題も出題した。成績の比率は,S 30%,A36%,B21%,C10%,F2%となった(未受験者除く)。解答例を公表し,異議申立期間を設定し,解答例に疑義のある学生には異議申立ての機会を与えた。
4.知的財産法 Ⅰ
著作権法をメインに講義した。特許庁や文化庁の外郭団体から資料を取り寄せて配布した。教科書は島並良・上野達弘・横山久芳『著作権法入門』(有斐閣,2009年)を使用するとともに,自分で作成したレジュメを用いて講義をした。4年生の就職活動との関係で出席はとらずに,レポートを提出させることにした。受講生は 152名。試験は選択式の問題を中心に記述式の問題も出題した。成績の比率は,S 22%,A24%,B24%,C16%,F14%となった。解答例を公表し,異議申立期間を設定し,教員の解答例に疑義のある学生には異議申し立ての機会を与えた。
5.知的財産法 Ⅱ
知的財産法のうち,特許法を中心に講義を行っている。教科書として,高林龍『標準特許法』(有斐閣,第三版,2008年)を使用するとともに,必要に応じてレジュメを用意している。受講生は 168名(受験者 122名)。試験は持ち込み不可で,選択式の問題と簡単な記述式の説明問題を出した。成績の比率は S 26%,A 33%,B 26%,C 10%,F 3%となった(未受験者除く)。解答例を公表し,異議申立期間を設定し,教員の解答例に疑義のある学生には異議申し立ての機会を与えた。
6.基礎ゼミナール
講義と演習を組み合わせて行っている。講義では,基礎となる専門的知識と主要な論点の説明を行った。演習では,大学におけるレポートの書き方を中心に指導した。夏期休校期間中に1年および4年生で合同ゼミ合宿を開講した。受講生は 17名である。
7.問題解決ゼミナール
演習を中心に行っている。演習では論文の書き方について指導すると共にゼミ論のテーマとして予定している内容について報告をさせた。夏期休校期間中等にゼミ合宿を開講した。受講生の人数は 18名(内 1名は留学による休学)である。就職先は民間企業が多く,IT系,製造業,金融業,サービス業などさまざまである。
8.情報コミュニケーション学入門A(コーディネータ・中村義幸教授)
オムニバス形式の講座について「著作権と「文化」の発展」と題する講義を 2010年 6月 1日および 12月14日に実施した。
9.情報コミュニケーション学(コーディネータ・小保内弘子教授)
オムニバス形式の講座について「アジア地域における知的財産権侵害の現状とその解決策」と題する講義を 6月11日に実施した。
10.情報コミュニケーション学(コーディネータ・石川幹人教授)
オムニバス形式の講座について「コピーから権利を守る法的枠組み」と題する講義を 10月 18日及び 25日に行った。
11.学部間共通総合講座キャンパス・リテラシー入門(コーディネータ・川島高峰准教授)
オムニバス形式の講座で「情報倫理—盗作など」と題する講義を 7月 6日に実施した。
オムニバス形式の講座主任として講義を行った(他に授業をお願いした先生は,池水通洋氏,後藤健郎氏,杉村晃一氏,新藤剛氏,南場雄二氏)。
   知的財産法のうち著作権法を中心に講義を実施した。
12.知的財産権(早稲田大学川口芸術学校)
13.知的財産権法1(早稲田大学社会科学部)
14.知的財産権法2(早稲田大学社会科学部)
知的財産法のうち特許法を中心に講義を実施した。
2-2 当年度担当授業
1.情報倫理
授業では,村田潔編『情報倫理:インターネット時代の人と組織』(有斐閣,2004年)を使用している。学部1年には難しい部分があるので,極力分かりやすく解説するように試みた。ビデオ教材も利用した。受講生は 345名。人数が多くて教室を鎮めるのに苦労した。試験は持ち込み不可で,論述式とキーワードを記入する問題との組み合わせによって実施した。成績の比率はS 24%,A 30%,B 24%,C 12%,F 9%となった(未受験者除く)。解答例を公表した。
2.財産と法Ⅰ
昨年度と同じように実施したが,4年生の就職活動との関係で出席はとらずに,レポートを提出させることにした。受講生は 102名。試験は持ち込み不可で,選択式の問題と簡単な記述式の説明問題を出した。解答例を公表し,異議申立期間を設定し,解答例に疑義のある学生には異議申立ての機会を与えた。
3.知的財産法Ⅰ
著作権法をメインに講義した。特許庁や文化庁の外郭団体から資料を取り寄せて配布した。教科書は島並良・上野達弘・横山久芳『著作権法入門』(有斐閣,2009年)を使用するとともに,自分で作成したレジュメを用いて講義をした。受講生は 76名。試験は持ち込み不可で,選択式の問題と簡単な記述式の説明問題を出した。解答例を公表し,異議申立期間を設定し,解答例に疑義のある学生には異議申立ての機会を与えた。
4.問題発見テーマ演習 A
アカデミック・ライティング(学術的文章)の手法を学ぶことで,学術的に評価に値する内容や表現をもつ論文とは何かについて理解した。学術的文章の特徴,調査の仕方,フィードバックの仕方,ピアレビューの手法,定義の用い方,語彙,分類の手法,比較と対照の方法,ヘッジングとブースティング,剽窃を回避する方法等を学んだ。受講生は27名。参考書として戸田山和久『論文の教室—レポートから卒論まで』 (NHKブックス)を利用。
5.情報コミュニケーション学入門A(コーディネータ・中村義幸教授)
オムニバス形式の講座について「著作権と『文化』の発展」と題する講義を 2011年 6月 14日に実施した。レポート課題についてはレジュメに採点の基準を明示した。
6.情報コミュニケーション学(コーディネータ・石川幹人教授)
オムニバス形式の講座について「コピーから権利を守る法的枠組み」と題する講義を 6月 8日・15日に実施。レポートは 10点満点で採点,基準を示して学生に返却した。
7.情報コミュニケーション学(コーディネータ・須田努教授)
オムニバス形式の講座について「マイノリティ—知的財産法の分野から(Antonia Bakardjieva ENGELBREKT教授の論文を参考に)」と題する講義を 6月 22日に行った。レポート課題は,採点の上,基準を示した上で学生に返却した。
8.知的財産権・ライツマネジメント1・映像の知的財産権(早稲田大学川口芸術学校・早稲田大学オープン教育センター)
オムニバス形式の講座主任として講義を行った(他に授業をお願いした先生は,池水通洋氏,後藤健郎氏,杉村晃一氏,新藤剛氏,南場雄二氏)。
9.知的財産権法1(早稲田大学社会科学部)
知的財産法のうち著作権法を中心に講義を実施した。
2-3 その他の教育上の取り組み
共同執筆して発行した演習書の第 2版を発行した(田村善之編『論点解析知的財産法』(商事法務,2011年 3月))。
(3) 研究成果報告
1.論文:今村哲也「地域団体商標という制度選択の意義とその課題—地域ブランド保護に関する制度の方向性について」日本工業所有権法学会年報 34巻(2 011年 5月)29 -61頁
 内容:地域団体商標制度の現状を確認した上で,地域ブランドを保護するために地理的表示保護制度などの別の制度が(追加的に)必要であるかということについて,①地域団体商標制度以外の別の制度が是非とも必要とされるかどうかという積極的理由の有無, ②別の制度を採用しても特に不都合がないかどうかという内在的な消極的理由の有無,③現在の地域団体商標制度に不都合がないかどうかという外在的な消極的理由の有無を踏まえた上で,結論を述べた。
2.調査報告書: W IPジャパン編『平成 22年度文化庁委託事業 諸外国の著作権法等における出版者の権利及び出版契約に関連した契約規定に関する調査研究報告書』(2011年 3月)担当部分 7-35,43-57, 63-77頁
 内容:以下で閲覧可能。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/pdf/shogaikoku_chosakuken_201103.pdf
3.翻訳:Justin Hughes[今村哲也訳]「シャンパーニュ,フェタ,バーボン(3):地理的表示に関する活発な議論」知的財産法政策学研究 33号(2011年3月)283-338頁
 内容:Justin Hughes, Champagne, Feta, and Bourbon: the Spirited Debate aboutGeographical Indications, 58 HASTINGS L. J. 299 (2006)の翻訳である。
4.論文:今村哲也「権利者不明著作物の利用の円滑化に向けた制度の在り方について —英国における近時の法案からの示唆—」季刊企業と法創造7巻6号(2011年3月) 167-180
 内容:英国における孤児著作物を巡る状況について,英国の現行法における孤児著作物の取り扱いと,英国における近時の議論の状況を確認した上で,デジタルエコノミー法案において強制許諾制度と拡大集中許諾制度を組み合わせた制度が提案されたことに着目して,この背景となった権利者団体の提案とデジタルエコノミー法案との関係について述べた上で,これらの議論のバックグラウンドとなっている北欧諸国における拡大集中許諾制度と強制許諾制度についてカナダを例について整理した。そして,最後に英国における議論の状況から得られる日本法への示唆について述べた。
5.翻訳:Justin Hughes[今村哲也訳]「シャンパーニュ,フェタ,バーボン(2):地理的表示に関する活発な議論」知的財産法政策学研究 32号(2010年 12月)215-247頁
 概要:本論文は, Justin Hughes, Champagne, Feta, and Bourbon: theSpirited DebateaboutGeographical Indications, 58 HASTINGS L. J. 299 (2006)の翻訳である。
6.その他:安藤和宏=今村哲也=桑原俊「知財学説の動き—著作権法—(学説紹介)」高林龍=竹中俊子=渋谷達紀編『I.P. Annual Report 知財年報 2010』別冊NBL136号(2010年12月) 31-50 頁
 内容:2009年 8月から 2010年 7月までに公表された著作権に関連する論文で展開された学説を網羅的に紹介したもの。
7.翻訳:Justin Hughes[今村哲也訳]「シャンパーニュ,フェタ,バーボン(1):地理的表示に関する活発な議論」知的財産法政策学研究31号(2010年10月) 77-124頁
 内容:本論文は,Justin Hughes, Champagne, Feta, and Bourbon: the Spirited Debateabout Geographical Indications, 58 HASTINGS L. J. 299 (2006)の翻訳である。
8.著書:今村哲也「知的財産をめぐる判例学説の動向」260-268頁高林龍編『著作権侵害をめぐる喫緊の検討課題』(成文堂,2011年 3月)所収
 内容:概要 早稲田大学大学院法務研究科で開講された連続公開講座の講義録。担当部分では,2005年から 2010年までの著作権法学における学説の動向について解説をした。
9.著書:田村善之(編著)=井関涼子=駒田泰土=今村哲也『論点解析知的財産法』(2011年3月,商事法務)担当頁109-121, 233-244,294-303, 367-381頁
 内容:法科大学院および学部での法学教育で使用することを目的として作成した演習書であり,最高水準の内容を網羅するように心がけて作成した。過去の裁判例等を素材にしつつ複数の論点の絡み合う問題を基本として裁判例が学説の趨勢に準拠しながら解説を試みている。
10.教科書:「第9章(情報の利用と法を理解しよう)」井田正道=和田格編『情報リテラシーテキスト』(培風館,2009年 11月)167-188頁
   内容:総193頁・編者:井田正道,和田格,分担執筆:鈴木亮輔,筧直之,大塚和彦,藤沢弘美子,加藤浩,鈴木栄幸,仙波洋史,山之口洋,今村哲也
   大学生として確認しておかねばならない知識・スキルを体系的に扱い,点として理解している知識・スキルをつなぎ合わせ,大学の専門科目で情報活用力を発揮できるようになることを目標として作成した。第 9章(情報の利用と法を理解しよう)を担当。
11.判例評釈:今村哲也「テレビ番組録画視聴サービスにおける複製の主体について争われた事例 」(2009年10月,日本評論社)速報判例解説5号(2009年10月)243-246頁
 内容:知財高判平成 21.1.27平成 20年(ネ)第 10055 号,平成 20 年(ネ)第 10069 号
 [ロクラクⅡ2審]の評釈。本判決の意義,判例法上の位置づけについて整理した上で,その評価とその射程について述べた。
12.論文:「修理部品(spare parts)の意匠保護に対する権利制限の可能性—欧州の議論にみる理論的な諸相—」NBL130号『I.P. Annual Report 知財年報 2009』(商事法務,2009年12月)320-334頁
 内容:修理部品を巡る問題とはどのような問題なのかについて,修理部品に対する意匠保護の法的な形式,その保護を弱める場合の法的な形式,自動車の一次的市場(primarymarket)と二次的市場(after market)の関係などについて,EUが修理条項を提案するに至った背景やそこでの議論の内容を紹介しながら整理した上で,修理条項という制限規定の創設がTRIPs協定26条2項との関係で許されるのかという点についてもEUでの議論な
どを紹介しながら分析を試みた。
13.その他:今村哲也「知財学説の動き-著作権法-」NBL130号『I.P. Annual Report 知財年報 2009』(商事法務,2009年12月)57-83頁
 内容:2008年 8月から 2009年 7月までに公表された著作権に関連する論文で展開された学説を網羅的に紹介したもの。
14.学会報告等:第9回 日本知財学会 年次学術研究発表会」一般発表「権利者等不明著作物の利用の円滑化に向けた制度の在り方について—英国における近時の法案からの示唆—」(2011年 6月 25日)
 内容:英国における孤児著作物を巡る状況について,英国の現行法における孤児著作物の取り扱いと,英国における近時の議論の状況を確認した上で,デジタルエコノミー法案において強制許諾制度と拡大集中許諾制度を組み合わせた制度が提案されたことに着目して,この背景となった権利者団体の提案とデジタルエコノミー法案との関係について述べた上で,これらの議論のバックグラウンドとなっている北欧諸国における拡大集中許諾制度と強制許諾制度についてカナダを例について整理した。最後に,英国での議論状況から得られる日本法への示唆について述べた。
15.学会報告等:東京大学著作権法等奨学研究会(JASRAC)第 27回研究会(2011年 6月 23日)「出版者の保有するべき権利のあり方について」
 内容:出版者の保有するべき権利のあり方について,主に比較法的な示唆を踏まえつつ,たとえば,出版者に対する固有の権利の付与や出版権設定範囲の拡大の是非などの論点について,私見も交えながら報告をした上で,研究会参加者と議論を行った。
16.学会報告等:今村哲也「出版者の権利に関する比較法的考察」(著作権法学会・2010年 5月 21日)
 内容:現行法における電子出版に関する著作権にかかる出版者の権利関係について整理した上で,米国等における電子出版に関する著作者と出版者等との権利関係をめぐる法的議論や,出版者等に一定の場合と範囲において固有の権利を付与している諸国(英国やオーストラリアなどにおける発行された版に関する権利や,EUの 1993年保護期間ディレクティブにおけるパブリケーション・ライツなど)での議論を紹介した。
17.学会報告等:今村哲也「「地域団体商標制度という制度選択の意義とその課題」(日本工業所有権法学会 2010年度総会・研究会』(2010年 6月 13日)
 内容:地域団体商標や地理的表示のような地域の名称を含む標識の機能に着目しながら,地理的表示をめぐる国際的なトレンド,国際条約における地理的表示と商標との相互関係,そして両者の普通名称化をめぐる取り扱われ方の相違について検討することにより望ましい制度の方向性について述べた。また,個別の論点として,地域団体商標の出願人適格の問題について,地方自治体の出願人適格という立法論や,全国農業協同組合連合会の出願人適格,外国法人の取り扱いについても言及した。
18.研究費獲得実績:「電子書籍の普及に向けた著作権法上の法的課題の検討」(平成 22-24年度科学研究費補助金(基盤研究(C)・研究代表者,研究分担者:安藤和宏兼任講師)
19.研究費獲得実績:「研究課題「コンテンツの創作・流通・利用主体の利害と著作権法の役割」(平成 23-27年度科学研究費補助金(基盤研究(A)・研究分担者,研究代表者:中山信弘特任教授)
20.研究費獲得実績:「権利者等不明著作物の利用の在り方に関する総合的考察」(平成 21-22年度科学研究費補助金(若手研究(B)・研究代表者)
21.研究費獲得実績:研究題目平成 21年度二十一世紀文化学術財団学術奨励金「情報財の多元的な価値を考慮した著作権法の体系的再構成」(共同研究者。研究代表者は,中山信弘特任教授,他の共同研究者として金子敏哉専任講師)
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1. 情コミジャーナル編集委員会委員(2010年度まで)
2. その他
4-2 大学業務
1. MIND審査委員会委員(2010年度まで)
2. 社会科学研究所運営委員(2010年度まで)
3. その他 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.著作権法学会
2.工業所有権法学会
3.コンテンツ学会
4.日本知財学会
5.早稲田大学グローバル COE知的財産法制研究センター・研究協力員
6.著作権情報センター賛助会員
7.ロンドン大学クイーンメアリー校客員研究員 
5-2 講演・講師・出演
1.オープンキャンパス模擬授業:2011年 8月 25日「情報化社会と情報倫理—著作権,プライバシー,不正アクセス禁止法等」
2.IT企業法務研究所(LAIT)セミナー:2011年 8月 1日・アビタスセミナールーム「イギリスにおける知財制度改革の最新動向—ハーグリーヴス・レビュー(2011年 5月)の勧告を中心に—」
3.文化庁「「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」報告(グランドアーク半蔵門3階光の間・2011年 7月 11日):「諸外国の著作権法等における出版者の権利及び出版契約に関連した契約規定に関する調査研究」報告
4.出張講義:2011年 7月 12日(本庄高等学校)
5.出張講義:2011年 6月 20日(山手学院)
6.著作権法特殊講義(JASRAC寄附講座) における司会(2010年 5月 8日第4回「レコード製作者の権利とその適用範囲」(講師:今村哲也/ゲスト・安藤和宏特任教授(北海道大学)),2010年 6月 19日第 10回「著作権侵害の責任主体」(講師:今村哲也/ゲスト・奥邨弘司准教授(神奈川大学)) 2011年 6月 18日第 4回「図書館における著作物の活用と制度」(講師/今村哲也・ゲスト:鳥澤孝之氏(国立国会図書館),2011年 7月 30日第 14回「出版社のライツと契約」(講師:今村哲也/ゲスト:福井健策弁護士(骨董通り法律事務所))
5-3 その他の社会貢献
1.日本学術振興会の論文博士号取得希望者に対する支援事業(RONPAKU)において高林龍教授(早稲田大学大学院法務研究科)の指導する Jumpol Pinyosinwat判事の研究指導協力者として,タイに訪問する等して論文作成の協力を行い,同氏は 2011年 3月に早稲田大学より論文博士号の授与を受けた。
2.明治大学リバティアカデミーにおいて知的財産管理技能検定3級合格対策講座を実施している(担当講師・今村哲也,岩永和久(弁理士),山田武史(弁理士))。知的財産管理技能検定は知的財産教育協会(棚橋祐治・元明治大学法科大学院教授)が指定試験機関として実施しており同検定によって付与される知的財産管理技能士の資格は国家資格でもある(名称独占資格)。

川島 高峰 Takane KAWASHIMA 准教授

経歴
   1963年東京生。 1984年明治大学政経学部卒業、 1997年同大学院政治経済学研究科政治学専攻修了(政治学博士)。早稲田大学理工学部・立教大学大学院文学研究科等の非常勤講師を歴任、 2004年より情報コミュニケーション学部准教授。主著『流言・投書の太平洋戦争』(講談社学術文庫)、『敗戦占領軍への五〇万通の手紙』(読売新聞社)。訳書『昭和天皇上・下』(講談社学術文庫・ 2002年米国ピュリッツァ賞受賞作品)、監訳『イラク人権レポート』(現代史料出版)他。史料集に監修・解説『占領軍治安・諜報月報』全 14巻(現代史料出版)、監修・解説『時事通信占領期世論調査』全 10巻(大空社)、編集・解説『敗戦時全国治安情報』(全 7巻)など。日本の近代化と民衆意識の分析をモデルとして非欧米圏と欧米圏の政治文化の比較を目指している。
   教育の情報化への取り組みとして携帯端末による授業支援システムの活用について先駆的な取り組みの実践を行ってきた。明治大学インキュベーション・センターにて開発した携帯授業支援システムについて、特許申請を行い、 2007年末、公開特許となった。なお、権利は明治大学に譲渡した。
   大学国際化対応に関連して、世界最大規模の国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ (1997年・ノーベル平和賞、 2008年・国連人権賞受賞団体)の東京オフィスを学校法人明治大学の理解の下、アカデミーコモン内に設置した。また、 2008年、国内人権団体 6団体を母体にアジア人権人道学会を設立、同会会長に就任した。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   2009年、ジュネーヴ国連人権理事会・普遍的定期的審査の北朝鮮審査に際し、人権 NGOと連携してこれに参画し、国連人権高等弁務官事務所による北朝鮮人権報告書に資料提供を行った(同弁務官事務所報告書に反映された)。日本外務省ジュネーヴ代表部の協力により、ブラジル、インド、インドネシア他 14か国の代表部に対し、北朝鮮人権審査に際し、邦人拉致問題につき日本の立場に立った審査報告をすることを求めた。
   また、科研費 2007~09年基盤研究(C)19530140取組代表「北朝鮮帰還事業の政治外交過程、及び、邦人拉致工作に対するその前史形成の検証」の研究成果として、①久米裕さん(不明当時52)を拉致した「宇出津(うしつ)事件」につき、北朝鮮帰国者の親族・大山秋吉、②政府未認定の拉致被害者である小住健蔵氏並びに蓮池薫氏の拉致事件につき、朝鮮労働党対外情報調査部所属工作員・松田忠雄ことチェ・スンチョル並びに補助工作員・北朝鮮帰国者の親族・江口智こと金錫斗、以上三名を、刑法第226条(国外移送目的略取)を犯した罪により厳罰を求めるべく警視庁公安部に刑事告発した。同部はこれを受理、捜査に入った。
   大学の国際化について、2011年 7月 28日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)・難民高等教育プログラムの明治大学への導入を担当し、UNHCRと明治大学との協定調印を担当した。国際連合が新たに始めた世界の大学間での国際連携システム、アカデミック・インパクトへの明治大学の加盟を担当し、2010年11月 18日、ニューヨーク国連本部におけるアカデミック・インパクト発足式に大学代表員として参加した。2010年 12月 5日、国連事務次長・赤坂清隆氏の来校公演を担当した。 
1-2 今後2年間の予定
①ビルマ、ヴェトナム、中国の人権問題について関係団体との研究交流につとめていく。②NHKアーカイブス・トライアル調査員を務めたが、これを起点として、放送の歴史についての研究をすすめていく。③国際人権問題に関わる調査を、研究成果としてまとめる。④ニューアカデミズム以降の現代思想についての研究を始める。
政治学における情報コミュニケーション概念の探求を行ってきたが、成果報告まであと数年は要すると考える。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   政治学における情報コミュニケーション概念の探求を行ってきたが、成果報告まであと数年は要すると考える。
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.基礎ゼミナール
2.問題発見ゼミナール
ビルマ・ロヒンギャ難民の実情や難民認定裁判を題材としたドキュメンタリー作成を行った。議題設定、取材先交渉、撮影、編集、報告会の広報並びに組織化を実践学習として学生により行わせている。
3.問題解決ゼミナール
4.政治学
5.政治コミュニケーション
6.専門情報リテラシー 
2-2 当年度担当授業
1.基礎ゼミナール
2.問題発見ゼミナール
3.問題解決ゼミナール
   靖国神社、311震災を題材としたドキュメンタリー作成を実施している。議題設定、取材先交渉、撮影、編集、報告会の広報並びに組織化を実践学習として学生により行わせている。
4.政治学
5.政治コミュニケーション
6.現代政治学Ⅰ、 Ⅱ
7.専門情報リテラシー 
2-3 その他の教育上の取り組み
   議員インターンシップ、国際人権問題の研究会の開催、学習型観光事業を通じた地域活性化の考案等、体験型学習につとめてきた。議員インターンシップでは、ドットジェーピーの協力を得て、学部・全学の窓口を通じ多くの明大生を各議員事務所に派遣した。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのインターンに情コミの学生を派遣した。国際連合広報センターが実施した模擬国連に明大生4名を参加させた。外国人特派員協会での記者会見等の見学に大学生を引率した。
   脱北者・ビルマ難民の証言集会などの運営実施を学生主体に実施した。例年、学習型観光事業・地域活性化・里山と都会の交流などの実践活動の教育を福島県北塩原村での合宿を通じて実施してきた。同村役場・地域の自然環境保護団体、農家などの協力を得ており、例年、福島放送が実施する「ふくしまふるさと CM大賞」に作品を応募している。 NHKアーカイブ・トライアル調査について学生参加の許可を得て、過去の非公開番組アーカイブスの閲覧・学習を行った。
   また、進路指導に意を注ぎ、これまでの主要進路先は電通PR、DAC、Yahoo、リクルート、リクルートHRマーケティング、朝日新聞、長崎新聞、埼玉新聞、山口新聞、ラヂオプレス、福島放送、ハウスフル、東宝、総務省、埼玉県庁、アップル、富士通、大日本印刷情報システム、京セラ三田、HIS、ドコモ、損保ジャパン、星野リゾート、HIS、後楽園ホテル、三菱マテリアル、ヤクルト、ダイキン等の結果を得たが、採用状況は、年々、一段と厳しくなっており、今後も気を引き締めて指導に当たりたい。 
(3) 研究成果報告
1.論文「政治家のイメージの形成に与える報道の影響に関する研究」 2009年 9月 1日、放送文化基金
2.論文「北朝鮮帰還事業、今、その真実を語るテッサ・モーリス・スズキ氏の虚偽について」
2009年 12月 10日、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会編『光射せ!』第4号、 84-104頁
3.学会報告「脱北とは何か魂のデプログラミングから自己回復と体制のデプログラミングヘ」20 10年 5月 15日、アジア人権人道学会
4.報告論文「戦後の在外邦人及び在日外国人の出入国をめぐる政治及び人道問題の研究戦後東アジアにおける多国間帰還交渉の中の北朝鮮帰還事業」、『明治大学社会科学研究所紀要』第 49巻第 2号、201 1年 3月 25日、31-45頁
5.科研費、学術振興会 2009~11年基盤研究(C)21 530154「北朝鮮帰国運動と日朝間の不法出入国をめぐる出入国管理の人道措置と治安対策の検証」取組代表 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.インターンシップ委員 
4-2 大学業務
1.明治大学大学史調査員
2.就職キャリア支援センター運営委員
3.情報基盤本部副本部長 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.アジア人権人道学会、会長
2.日本政治学会
3.日本国際政治学会
4.日本現代史研究会
5.日本外国人特派員協会
6.北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
7.私立大学情報教育協会キャンパス・コンソーシアム委員会委員 
5-2 講演・講師・出演
1.講演「 The case of the Japanese abduteed preparing for UPR session, Dinner Conference,Villa La Plage, Residence of the Permanent Representative of Japan、 2009年 12月 3日
2.講演「 Human Rights in the Democratic People's Republic of Korea in the context ofthe upcoming Universal Periodic of the DPRK」 RoomXXIV, Palais des Nations、 2009年 12月 3日
3.講演「 The Problem of North Korean Repatriation Program is Now Goning On」Pres s Club of the United Nations、 2009年 12月 7日
4.報告「国際共産主義運動の中の北朝鮮帰還事業」 2009年 12月 12日、アジア人権人道学会
5.出演・作成「悲劇の楽園~北朝鮮帰国事業、50年目の真実~」 2009年 12月 12日朝日放送、 2010年・第 17回坂田記念ジャーナリズム賞受賞作品
6.講演「国際人権問題の中の日本人拉致」 2010年 1月 24日、徳島県庁 平成21年度 拉致問題講演会
7.講演「普遍的定期的審査について」 2010年 6月 3日、民主中国陣線主催「六四」天安門事件記念集会 
5-3 その他の社会貢献
1.記事「特集マッカーサーへの手紙」、『北海道新聞』20 09年 8月 11日
2.記事「北と総連の帰国計画 推進物語る極秘資料を発掘 明大・川島高峰准教授が2年がかりで」、『統一日報』20 10年 1月 20日
3.記事「拉致講演会」、『徳島新聞』2010年 1月 25日
4.記事「ボトナムは知っている 北朝鮮帰還事業 50年 悲劇繰り返さぬ検証を」、『毎日新聞』2010年 3月 31日
5.アジアプレス・川島ゼミナール共催「北朝鮮帰国者との交流集会」、2 010年 4月 9日
6.記事「『脱北』テーマにアジア人権人道学会」、『統一日報』20 10年 5月 19日
7.記事「包括的支援の時代に向けて意識改革から価値の創造へ」、『大学時報』 2010年 10月 1日
8.主催「<北朝鮮の内実を知る講演会> —北朝鮮の天国と地獄—『金日正の料理人 vs政治犯』」2010年 10月 10日
9.2011年4月1日、文化庁委託「生活者としての外国人」のための日本語教育事業、運営委員
10.NHKアーカイヴ・第 2期トライアル調査員(~ 2011/9/30) 

熊田 聖 Hijiri KUMADA 准教授

経歴
   1989年国際基督教大学教養学部社会科学科卒業 1989年-1991年横河ヒューレットパッカード株式会社(現日本HP) 1991年-96年国際基督教大学非常勤助手 93年国際基督教大学行政学研究科博士前期課程修了 96年同後期課程修了(学位博士(学術) )1996年明治大学専任助手 1997年より専任講師 2003年より助教授 07年より准教授 03年-05年ブリティッシュコロンビア大学客員教授専門は交渉理論著書「科学的交渉理論『HICAT』」(泉文堂)、「意思決定科学」(泉文堂、共著)、「交渉ハンドブック」(東洋経済新報社、共著)訳書レビスキー「交渉学教科書」(文眞堂、共訳) 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   過去二年間における研究テーマはコーチング手法の交渉学への応用研究であった。企業における上司と部下の交渉に着目し、より効果的に業務を依頼するためには、どのような手法が有効であるのかを検討した。学生を対象としたアンケート調査を行い、将来の新入生社員となる大学生の特徴に関するデータを収集し分析した。 
1-2 今後2年間の予定
  今後2年間も研究の基本線に変更はない。引き続きデータ収集を進める予定であるが、より的確なデータを得るために、今後も定期的に実施していきたい。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.意思決定論Ⅰ
主として意思決定に関する経営学の手法に関する講義を行った。また、経営者としての心構えを考えるために、4本のレポート課題を課した。毎回授業内に小問題を出し提出させている。記名式にするのは、出席を成績の70%程度を目安に得点に換算するためである。
2.意思決定論Ⅱ
主として企業内における交渉に関する講義を行う。また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を5本課した。
3.問題分析ゼミナール(通年)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。ホワイトボードを利用し、提示物を持参し、参加型のプレゼンテーションにするルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。
4.基礎ゼミナール(通年)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。1回目は 5分以上、2回目はホワイトボードの利用、3回目以降は 20分以上というルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。各学期、2回のディベートを行っている。学生自らが課題を選び、賛成、反対に分かれて相手を説得する訓練である。
効果的に反論をするためには相手の意見を聞く能力が不可欠であることを、学生に自覚させる手段としてディベートを用いている。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。
5.問題発見ゼミナール(通年)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。1回目は 5分以上、2回目はホワイトボードの利用、3回目以降は 20分以上というルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。各学期、2回のディベートを行っている。学生自らが課題を選び、賛成、反対に分かれて相手を説得する訓練である。
効果的に反論をするためには相手の意見を聞く能力が不可欠であることを、学生に自覚させる手段としてディベートを用いている。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。
6.問題解決ゼミナール(通年)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。1回目は 5分以上、2回目はホワイトボードの利用、3回目以降は 20分以上というルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。各学期、2回のディベートを行っている。学生自らが課題を選び、賛成、反対に分かれて相手を説得する訓練である。
効果的に反論をするためには相手の意見を聞く能力が不可欠であることを、学生に自覚させる手段としてディベートを用いている。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。 
2-2 当年度担当授業
1.意思決定論 Ⅰ
4人一組の学生のグループディスカッションを主体とし、意思決定に関する経営学の手法に関する講義を交えて授業を行った。また授業の予習として、経営者としての心構えを考えてきてもらうために、6本のレポート課題を課した。毎回授業内に小問題を出し、提出させている。
記名式にするのは、出席を成績の70%程度を目安に得点に換算するためである。
2.意思決定論 Ⅱ
主として企業内における交渉に関する講義を行う。また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を5本程度課す予定である。
3.問題分析ゼミナール(通年)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。ホワイトボードを利用し、提示物を持参し、参加型のプレゼンテーションにするルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。
4.基礎ゼミナール(通年)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。1回目は 5分以上、2回目はホワイトボードの利用、3回目以降は 20分以上というルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。各学期、2回のディベートを行っている。学生自らが課題を選び、賛成、反対に分かれて相手を説得する訓練である。
効果的に反論をするためには相手の意見を聞く能力が不可欠であることを、学生に自覚させる手段としてディベートを用いている。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。
5.問題発見ゼミナール(半期)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。1回目は 5分以上、2回目はホワイトボードの利用、3回目以降は 20分以上というルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。各学期、2回のディベートを行っている。学生自らが課題を選び、賛成、反対に分かれて相手を説得する訓練である。
効果的に反論をするためには相手の意見を聞く能力が不可欠であることを、学生に自覚させる手段としてディベートを用いている。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。
6.問題解決ゼミナール(通年)
教科書の中から各学生が課題を選び、それに関して調査し、レジュメを準備し、プレゼンテーションを行う。1回目は 5分以上、2回目はホワイトボードの利用、3回目以降は 20分以上というルールを設け、終了後には聞き役の学生からのフィードバックを受ける。これにより学生のプレゼンテーションがより効果的かつ魅力的なものになるよう指導している。各学期、2回のディベートを行っている。学生自らが課題を選び、賛成、反対に分かれて相手を説得する訓練である。
効果的に反論をするためには相手の意見を聞く能力が不可欠であることを、学生に自覚させる手段としてディベートを用いている。
また、経営者としての心構えを考えるために、レポート課題を課し、毎週提出させ、学年末に返却している。
(3) 研究成果報告
1. 11年 交渉における満足度と自分に対する厳しさとの関係『情報コミュニケーション学研究』第10.・11合併号 p.33-49
2. 11年交渉意欲の向上:挫折乗り越え体験の効果『日本交渉学会誌』第 23号、p. 69-94
3. 11年交渉環境と合意に関する分析 :笑顔の効用『明治大学社会科学研究所紀要』第 49巻第2号 p.349‐366
4. 10年ビジネスにおけるモチベーション維持に関する研究:否定的対応の効果分析『明治大学社会科学研究所紀要』第 49巻第 1号 p.161-180
5. 10年交渉における会話『日本交渉学会誌』第 23号、p. 63-75 
(4) 行政業務担当報告
4-2 大学業務
 1.学生部委員08年度4月
(5) 社会貢献
5-2 講演・講師・出演
1.日本交渉学会

鈴木 健 Takeshi SUZUKI 教授

経歴
   1960年茨城県生まれ。獨協大学外国語学部卒業。カンザス大学大学院コミュニケーション学研究科修士課程修了。ノースウエスタン大学大学院コミュニケーション学研究科博士課程修了。コミュニケーション学博士(PhD)。2006年4月より 2007年3月まで、フルブライト研究員及び南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション学部客員教授。2007年4月より津田塾大学学芸学部准教授。2009年4月より現職。この間、青山学院大学、島根県立大学等で非常勤講師および兼任講師を務める。日本ディベート協会元会長(現理事)、日本時事英語学会(現、日本メディア英語学会)元副会長。おもな研究領域は、レトリック批評、説得コミュニケーション論。カンザス大学大学院及びノースウエスタン大学大学院、南カリフォルニア大学客員教授時代に、アメリカ人学生を対象にディベート・コーチを務める。第1.3回まで国際議論学会議(通称、東京議論学会議)の主催者を務める。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   これまでの「公的な説得の技法」としてのレトリック研究の集大成として、『政治レトリックとアメリカ文化—オバマに学ぶ説得コミュニケーション』(朝日出版社)を 2010年 5月に上梓した。また、日本で歴史の浅いパフォーマンス研究を紹介する『パフォーマンス研究のキーワードー批判的カルチュラル・スタディーズ入門』(世界思想社)を 2011年3月に上梓した。同時に、2011年より情報コミュニケーション学部 1年生の選択科目として設置された「コミュニケーション A/B」の教科書『コミュニケーション・スタディーズ入門』(大修館書店)を、編著者として本学情報コミュニケーション学部の教員と上梓した。
   さらに研究代表者として、日本学術振興会平成 23-25年度科学研究費補助助成金基盤研究(C)課題番号 23520762「日本人の言語説得能力を養成するための英語コミュニケーション・プログラム」を実施中であり、2011年度は議論学の国際的権威であるフランス・イームレン博士(アムステルダム大学)を招聘して、共同研究を行う予定である。 
1-2 今後2年間の予定
    「象徴的な行為」を学ぶ説得コミュニケーションとしてのレトリック批評の研究を、さらに進めたい。説得コミュニケーションを学ぶということは、人間とはどのようにして説得されうる存在であるのか、歴史や社会状況において意見の対立する両陣営はどのような説得の戦略を用いたのか、あるいは権力を持たない人々が変革を望んだ時に、どのようなアピールを用いてきたのかといった問題を考えることである。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   日本に住む我々には、政治分野における説得コミュニケーションを研究すべき三つの理由がある。第1に、自由民主党と日本社会党による 55年体制と呼ばれた枠組みの崩壊によってイデオロギーの対立が無意味になり、2008年の衆議院選挙で自民党政権が終焉を迎えて真の政権交代が可能な二大政党制へ舵を切ったことで、財政再建や公的年金の立て直しなど先送りされてきた問題に政治家が直面しなければならなくなった。社会階層、居住地区、年齢、性差、個人の価値観によって社会が分断された近代では、時間をかければ機が熟して国民的合意が形成されることなど百年河清を待つに等しい。逆に、時間をかければかけるほど反対勢力の声が大きくなって、新たなプログラムの実行は難しくなる。一つの問題の解決は、新たな問題を建てることに他ならず、必要なのは最善の選択肢の組合せを「公の議論」によってできるだけ早く決定することである。20世紀末の冷戦構造の崩壊により、各国が自己の主張や利益を自由に追求できる環境が国際的にも整っただけでなく、21世紀に入って、環境や人口、民族問題に代表されるように、国家エゴイズムを越えてグローバルな枠組みによって、こうした問題に取り組む国際的な責任が我々に求められてきている。 
   第2に、平成に入って小泉純一郎が「劇場型」と批判されながらも、国民にビジョンを語る政治スタイルを確立した結果として、政府は何を決めるだけでなく、その正統性を説明しなければならなくなった。福沢諭吉が 1873(明治六)年に、スピーチに「演説」、ディベートに「討論」という訳語をあてて西洋式議会討論の導入を図ってから、すでに百年以上が経過しているが、「言論の府」としての国会は、福沢が望んだ方向には行かなかった。日本の政治家は、新政策プログラムを実行する時、「国民的合意が形成されていない」という理由で先送りする傾向がある。日本でも指導者層に、「言語によって人を説得して、社会を動かす」という公的な説得能力の修得が急務になっている。
   最後の理由は、マスメディアが「公的な政策決定を議論する場」として機能してこなかったことである。官僚や族議員による「専門領域の議論」と国民の日常感覚での「私的領域の議論」を結ぶ「公的領域の議論」の活性化のために、マスメディアが賛成論と反対論を国民にバランスよく提示することが求められている。そうして初めて、専門領域の問題が一般の人々にも理解可能な言語で議論されるようになり、マスメディアも読者・視聴者を教育するという本来の役割を果たすことができる。民主主義社会では、「どうせ素人には専門的な議論は分からないのだから、むずかしいことは専門家に任せておけ」という議論が望ましいとは言えない。
民主主義社会では、意見の交換(give-and-take of opinions)は、構成員の権利と同時に責任でもあるからである。そのためには、知識人、関係者、マスメディア、政治家による公的な議論が活発に行われなければならない。特に、マスメディアは、公共性の空間(public sphere)の参加者であると同時に提供者の一員として、一般人にも理解可能な言語を用いて、問題の主要論点を整理して、可能な選択肢の議論と評価を行っていかなければならない。
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1. English Skills BI & BII
Communication Strategies III (センゲージ )を教科書に用いて、英語でのコミュニケーションのためのリーディングとライティング能力の養成を図っている。単なる英文和訳や和文英訳ではなく、パラグラフ・リーディング及びライティング、トピック・センテンスに着目したリーディングやライティングを学ぶ。
2.パブリック・スピーキング
『説得コミュニケーション論を学ぶ人のために』(世界思想社)を教科書に用いて、社会論争を分析する場合のテーマ設定、わかりやすいプレゼンテーションの方法、議論の展開と論証の方法などを、実習形式で学ぶ。
3.基礎ゼミナール
「ホモ・クロエンス」(言葉を使う人)としての人間の本質をなすレトリックを、法学、美学、言語学、コミュニケーション論や哲学思想の面からアプローチすることを通じて、「レトリック論」の内実、意義、将来の課題について学ぶ。
4.問題・分析ゼミナール
西洋では、レトリックは、単なる美辞麗句としてではなく説得の方法論としても2,300年以上にわたって研究されてきた。演説や討論、社会運動、メディアを通じた言説や超越的表象などを対象に、レトリック批評の歴史的成り立ちと方法論を学ぶ。
5.言語圏コミュニケーション
2008年米大統領選において民主・共和二大政党の候補者を中心にメディアを通じて1年がかりで行われたキャンペーンについて考察する。予備選、党大会、TVディベート、就任式などのスピーチ等をテクストに、米国の政治レトリックと説得の文化構造を学ぶ。
2-2 当年度担当授業
1. English Skills BI & BII
CommunicationStrategiesIII(センゲージ)を教科書に用いて、英語でのコミュニケーションのためのリーディングとライティング能力の養成を図っている。単なる英文和訳や和文英訳ではなく、パラグラフ・リーディング及びライティング、トピック・センテンスに着目したリーディングやライティングを学ぶ。
2.パブリック・スピーキング(前期)
『説得コミュニケーション論を学ぶ人のために』(世界思想社)を教科書に用いて、社会論争を分析する場合のテーマ設定、わかりやすいプレゼンテーションの方法、議論の展開と論証の方法などを、実習形式で学ぶ。
3.Public Speaking: Critical Discussion over Social Issues(後期 )
This course deals with fundamentals of debate in English. In our everyday life, arguments are given to justify acts, beliefs, and values. This course will emphasize the theoretical understanding of arguments and practice in argument construction. Students enrolled in class do not need to have highly-advanced English skills, but they should be interestedin argumentation and debate.
4.基礎ゼミナール
「ホモ・クロエンス」(言葉を使う人)としての人間の本質をなすレトリックを、法学、美学、言語学、コミュニケーション論や哲学思想の面からアプローチすることを通じて、「レトリック論」の内実、意義、将来の課題について学ぶ。後期は、米大統領選のレトリックを題材に学ぶ。
5.問題・分析ゼミナール
西洋では、レトリックは、単なる美辞麗句としてではなく説得の方法論としても2,300年以上にわたって研究されてきた。演説や討論、社会運動、メディアを通じた言説や超越的表象などを対象に、レトリック批評の歴史的成り立ちと方法論を学ぶ。
6.問題・解決ゼミナール
西洋では、レトリックは、単なる美辞麗句としてではなく説得の方法論としても2,300年以上にわたって研究されてきた。前期は、演説や討論、社会運動、メディアを通じた言説や超越的表象などを対象に、レトリック批評の歴史的成り立ちと方法論を学ぶ。後期は、ジョン・フスクの『テレビジョン・カルチャー』を題材にカルチュラル・スタディーズについて学ぶ。
7. 言語と文化(英語圏)
前期は、 2008年米大統領選において民主・共和二大政党の候補者を中心にメディアを通じて1年がかりで行われたキャンペーンについて考察する。予備選、党大会、 TVディベート、就任式などのスピーチ等をテクストに、米国の政治レトリックと説得の文化構造を学ぶ。後期は、批判的カルチュラル・スタディーズに関してパフォーマンス研究の視点から学ぶ予定である。
8.コミュニケーションA/B
コミュニケーション的有能さを説得、対人、異文化、メディア、組織、ジェンダーなどをキーワードに学ぶ。講義、ディスカッション、グループ・プレゼンテーションを組み合わせた授業を行っている。
大学院:説得コミュニケーション論
前期は、公的説得のコミュニケーションに関してレトリック批評の成り立ちと方法論について学ぶ。後期は、エスノグラフィーの方法論に関してパフォーマンス研究について学ぶ。 
(3) 研究成果報告
   すでに触れたもの以外では、2010年3月に日本学術振興会平成 19-21年度科学研究費補助助成金基盤研究(C)課題番号 195205112001「提唱力養成のための英語コミュニケーション教育」の報告書を出版した。また、日本コミュニケーション学会 40周年記念研究書として出版された『現代日本のコミュニケーション研究:日本コミュニケーション学の足跡と展望』に第 IV部第 1章「コミュニケーション教育の源流」を寄稿した。 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
   将来構想委員会委員として、情報コミュニケーション学部教員による教科書プロジェクトに関わる。国際交流委員会委員として、2009年度に米国メンフィス大学コミュニケーション学部を訪問して、2010年度に交換プログラムを含む学術協定を締結する。その他、大学院広報委員会委員、創立 80周年記念英語スピーチ・コンテスト運営委員会委員。 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1. 査読委員 Controversia:An International Journal of Debate and Democratic Renewal
2. 査読委員『時事英語学研究』日本時事英語学会
3. 査読委員『コミュニケーション教育』『スピーチ・コミュニケーション』日本コミュニケーション学会
4. 査読委員 Argumentation&Advocacy:TheJournaloftheAmericanForensicAssociation.
5. 編集委員 The Journal of Argumentation in Context.
6. 茨城県取手市情報公開委員会委員。 
5-2 講演・講師・出演
   2011年度日本メディア英語学会第1回年度大会(10月 23日、於、京都産業大学)「政治・社会的変革や災害等の危機的状況とメディア」のテーマで基調講演者を務める。 

鈴木 健人 Taketo SUZUKI 准教授

経歴
   1958年東京生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業。同大学院政治学研究科政治学専攻博士前期課程修了。同後期課程単位取得満期退学。この間、1988年から1990年までシカゴ大学政治学大学院に学ぶ。広島市立大学国際学部助手、同講師、同助教授、同准教授を経て、2009年 4月より明治大学情報コミュニケーション学部に赴任。博士(政治学)。
   著書に『現代アジアの変化と連続性』(共著)(広島市立大学国際学部現代アジア研究会編)、(彩流社、2008年)、『「封じ込め」構想と米国世界戦略——ジョージ・F・ケナンの思想と行動、1931年~1952年——』(単著)(渓水社、2002年)、『二十世紀政治史の諸問題』(共著)(斉藤孝編)(彩流社、1997年)など。論文に “The Necessity of Political Settlement: George F. Kennan’s Strategic Thought and U. S. War Objectives against the Soviet Union in the early Cold War,”(『同志社アメリカ研究』第 43号、2007年)、「ケナンの『封じ込め』構想とドイツ問題——分割か統一か1946年‐1948年——」(『中・四国アメリカ学会』第2号、2005年)など。また翻訳として『冷戦——その歴史と問題点——』(河合秀和氏との共訳)(彩流社、2007年)(John Lewis Gaddis, TheColdWar:ANewHistory, Penguin, 2005の翻訳)などがある。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   科研費により 1950年以降の米国の世界戦略、特に核を中心とする軍事戦略、同盟形成による外交戦略、第三世界での英国の権益の継承、などの点に焦点を当てて研究を進めている。海外出張により米国立公文書館で史料を収集している。また、すでに発表したジョージ・F・ケナン論(『「封じ込め」構想と米国世界戦略』渓水社、2002年)のなかで検証できなかったテーマである、ドイツにおける兵力引き離し構想、日本の復興と東南アジアとの関連などを明らかにしつつある。
   国際関係論の理論については、ウェントの『国際政治の社会理論』に基づいて構成主義の国際政治理論を研究中。人間集団が分かち持つ「観念」を、認識論ではなく実体論として把握し、国家のアイデンティティなどの「観念」が国際社会の現実を構成するところに魅かれている。これとウオルツ的なホーリスティックな新現実主義の理論とをどのように総合するのかを研究中。
またオバマ政権の核政策についても研究を進めており、その成果の一部は既に学会で報告された。(「オバマと核軍縮」、アメリカ学会、大阪大学千里キャンパス、2010年 6月、「現代アメリカ政治」分科会における報告)。
   政経学部の伊藤教授、東京女子大学の湯浅教授とともに、東アジアにおける中国台頭の意味について共同研究を行なった。
1-2 今後2年間の予定
   科研費による米国の世界戦略について、できるだけ早く成果をまとめる予定である。また、ケナン論の研究成果をまとめ増補改訂版を出版するべく努力している。構成主義の国際政治理論について出来るだけ早く一定の研究成果をあげて発表したい。アメリカ合衆国の外交政策については、オバマ新政権の核政策に焦点を当て、核軍縮がどの程度進むかについて検証してみたい。中国台頭の軍事的意味、とりわけ海洋進出について論文をまとめる予定。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   構成主義の国際政治理論では、人間集団が分かち持つ「観念」も、領土や軍事力と同様に国際政治の現実を構成するとしている。この意味で、情報とコミュニケーションのあり方が国際社会全体の現実を作り出しているとも言える。『想像の共同体』は国家だけでなく国際関係においても一定の意義を持つと考えられる。
   核抑止理論では、自国の能力と意図とについて、潜在敵国にたいして間違いのない情報を伝える必要があり、コミュニケーションが成立し十全に機能しなければ抑止力が機能しない。敵対関係にある国家(群)同士が、どのようにして円滑なコミュニケーションを行うのかを探求することは学問的にも興味深い。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.「国際関係論」(前期)
国際関係論の基本的歴史や概念を講義して、国際社会を見る目を養うよう指導した。また情報コミュニケーション学の視点から、抑止などの権力関係を関係国相互のコミュニケーションの問題として捉えることができる点を指摘している。
2.「基礎ゼミナール」(通年)
第二次世界大戦へといたる昭和の歴史を題材にして、レジュメの作り方、口頭報告の仕方、レポートの書き方などを指導。同時に歴史的知識の習得にも努めている。歴史をある程度習得した後、基本的な政治学の文献を読み、日本ファシズムの分析を通じて学術論文の読解や理論的な思考法について学ぶよう促している。
3.「問題発見ゼミナール A」(前期)
国際関係論についての基本的文献と古典を読み、国際関係史の概容を学ぶとともに、戦争と平和の問題について学生が自ら考え議論ができるように指導した。学生の積極的な参加を得て一定の成果をあげることができた。
4.「問題分析ゼミナール」(通年)
国際社会を成り立たせている様々な概念について、基礎的文献を読みながら指導した。学生が個人またはグループで研究できるように促し、パワーポイントなどを利用しながらプレゼンテーションする技法を習得させるように努めた。情報コミュニケーション学部ならではの国際関係論の学習をめざした。
5.「問題解決ゼミナール」(通年)
個人研究を中心に、卒論につながるテーマを研究させ、ゼミ生の前で発表し意見交換やディスカッションを行ない、各自の研究を深めるように促し、卒論の執筆を指導した。
6.「情報コミュニケーション学入門A」
国際関係論における構成主義の理論を簡単に紹介し、情報コミュニケーション学の入門とした。
7.「専門情報リテラシー(国際関係論)」(後期)
インターネットを利用して国内外の情報を収集し分析する手法を講義。また公表された外相会談などの記録に表れた用語の表現が何を意味しているかなどを解説。
8.「問題発見ゼミナールB」(後期)
冷戦の歴史を学びながら、国際社会を分析する上で重要な、イデオロギー、アイデンティティ、権力、など基本的な概念を習得させ、理論的な視角から対象を分析し、学生が自分で考えて意見を展開できるように促している。
2-2 当年度担当授業
1.「国際関係論」(前期)
国際関係論の基本的歴史や概念を講義して、国際社会を見る目を養うよう指導した。また情報コミュニケーション学の視点から、抑止などの権力関係を関係国相互のコミュニケーションの問題として捉えることができる点を指摘している。
2.「専門情報リテラシー(国際関係)」(後期)
インターネットを利用して国内外の情報を収集し分析する手法を講義。また公表された外相会談などの記録に表れた用語の表現が何を意味しているかなどを解説。
3.「基礎ゼミナール」(通年)
第一次世界大戦から第二次世界大戦へといたる世界の歴史を題材にして、レジュメの作り方、口頭報告の仕方、レポートの書き方などを指導。同時に歴史的知識の習得にも努めている。歴史をある程度習得した後、基本的な政治学の文献を読み、日本ファシズムの分析を通じて学術論文の読解や理論的な思考法について学ぶよう促している。
4.「問題発見ゼミナールA」(前期)
国際関係論についての基本的文献と古典を読み、国際関係史の概容を学ぶとともに、戦争と平和の問題について学生が自ら考え議論ができるように指導した。学生の積極的な参加を得て一定の成果をあげることができた。
5.「問題分析ゼミナール」(通年)
国際関係論の基礎を学んだ後、グループ研究を進めて発表してもらうようにしている。欧州統合、ヴェトナム戦争、1968年の国際社会、パレスチナ問題、日米関係など、広い範囲にわたって研究をしてもらい、その成果に基づいて議論をした。
6.「問題解決ゼミナール」(通年)
個人研究やグループ研究を基にして、卒論にまとめるよう指導している。
7.「情報コミュニケーション学入門A」
国際関係論における構成主義の理論を簡単に紹介し、情報コミュニケーション学の入門とした。
8.「問題発見ゼミナールB」(後期)
冷戦の歴史を学びながら、国際社会を分析する上で重要な、イデオロギー、アイデンティティ、
権力、など基本的な概念を習得させ、理論的な視角から対象を分析し、学生が自分で考えて意見
を展開できるように促がしている。
9.「アメリカ政治論(アメリカ政治外交史I)」(後期)
政経学部の授業を担当し、アメリカの歴史を素材にしながら、三権分立、共和主義などの基礎的概念と、米国と世界との関係について講義している。 
2-3 その他の教育上の取り組み
   夏季休業中に実施した合宿には、基礎ゼミに参加している1年生、問題発見ゼミAに参加している2年生、問題分析ゼミに参加している3年生、問題解決ゼミに参加している4年生を参加させ、学年の枠を超えて議論をし、交流を深めた。3年生はゼミ大会に挑戦するよう指導し、一定の成果を収めた。 
(3) 研究成果報告
1.論文「アメリカ冷戦外交における『力の立場』の論理とその限界:アチソン国務長官・ニッツェ政策企画室長と NSC-68」、『情報コミュニケーション学研究』第8・9合併号、 2010年 3月、明治大学情報コミュニケーション学研究所。19-3 9頁。(閲読有)。
2.翻訳 ピーター・グローズ『学問とビジネスの出会い:シンクタンクはいかに社会と政策に貢献できるか』(共訳。第 5章後半から第 6章前半までを訳出。)(フォーリン・アフェアーズ・レポート、 2010年 5月)(Peter G r ose, Continuing the Inquiry: the Council on Foreign Relations from 1921 to 1996, ( Foreign Affairs Anthology, V o l . 3 0 )の翻訳)。
3.書評「佐々木卓也著『アイゼンハワー政権の封じ込め政策——ソ連の脅威、ミサイル・ギャップ論争と東西交流』有斐閣、20 08年、254頁」の書評。(『国際安全保障』第 36巻、第 2号、20 08年 12月( 2009年 3月発行)。97-1 02頁。依頼論文。)
4.書評「菅英輝編著『冷戦史の再検討——変容する秩序と冷戦の終焉』法政大学出版会、 2010年の書評」。(『アメリカ学会会報、No . 173, 2010年 7月、9頁。依頼論文)。
5.学会報告「オバマと核軍縮」、アメリカ学会、大阪大学千里キャンパス、 2010年 6月、「現代アメリカ政治」分科会における報告。依頼公演。 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.ジェンダーセンター運営委員会(2010年度-)
ジェンダーセンターの運営について意見を述べている。
2.修学委員会(2009年度-)
取得単位の少ない学生への対応を検討。学生相談室委員になったことにより引き続き参加している。
3.図書委員会委員(2010年度-)
学部での資料購入の要望を取りまとめた。 
4-2 大学業務
1.図書委員会委員(2010年度-)
全学レベルの図書委員会に出席し、学部との連絡に当たっている。
2.学生相談室委員(2011年度-)
学生相談室の活動に参加し、学生の精神的・心理的ケアに協力している。
3.社会科学研究所運営委員会委員(2011年度-)
社会科学研究所の運営について意見を述べている。また研究費の申請などを審査している。 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本国際政治学会
2.日本政治学会
3.日本西洋史学会
4.歴史学研究会
5.国際安全保障学会
6.アメリカ学会 

関口 裕昭 Hiroaki SEKIGUCHI 准教授

経歴
   1964年大阪府生まれ。1988年慶応義塾大学文学部(独文学専攻)卒業。1991年同大学大学院修士課程を修了、在学中に 1年間ドイツ・ゲッテインゲン大学留学(1990~1991年、国際ロータリー財団奨学生)。この間ゲッティンゲン大学日本学科非常勤講師も務める。1994年同大大学院博士課程単位取得満期退学。日本学術振興会特別研究員(PD)、慶応義塾大学文学部非常勤講師を経て、1997年より愛知県立芸術大学専任講師。2001年 7月~10月、ドイツ・マールバッハ文学資料館に愛知県費により研究滞在。他短期の海外への研修、研究滞在、学会出張 15回。愛知県立芸術大学助教授を経て、2009年より明治大学情報コミュニケーション学部准教授。2011年 7月、京都大学より文学博士号(論文博士)を取得。
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   パウル・ツェランを中心に現代ドイツの詩人の研究・紹介に努めてきた。その成果はツェラン研究三部作に結実した。2011年7月に刊行した『パウル・ツェランとユダヤの傷〈間テクスト性〉研究』がその完結編であるが、これについては後で詳述する。これと並行して、日本におけるハインリヒ・ハイネ受容など、日独比較文学の研究も少しずつ進めており、もう一方の研究の柱としたい。かたわら、ドイツ児童文学の翻訳にも精力的に努めている。
   昨年5月には生誕200年を記念して、ローベルト・シューマンのシンポジウム(日本独文学会)とレクチャー・コンサート(明治大学アカデミーホール)を行った。この催しにはドイツ文学者のみならず、演奏家も参加し、従来の枠組みを超えた新しい研究の可能性を提示できた。
また同年10月にはツェラン研究の世界的権威バルバラ・ヴィーデマン博士をドイツ文化センターの協力を得て招聘し、シンポジウム(明治大学)や講演会(東京ドイツ文化センター、日本独文学会)を開催した。これらは幸い好評でもって迎えられた。 
1-2 今後2年間の予定
   今後 2年間は、ブコヴィーナ出身の周辺の詩人、その歴史や環境など、この多言語・多文化地域の地域研究へと発展させていくつもりである。また、最近注目を集めているルーマニア・ドイツ文学も紹介したいと考えている。
   その次年度は、ローレライ伝説に関するもの、ドッペルゲンガーに関するもの等、一般読者にも受け入れられる啓蒙的な書物を刊行したいと考えている。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   本学部で私が担当する主要科目は「ドイツ語」と「比較文学・比較文化」なので、この科目を通して学生たちに何を伝授したいかを述べる。
   グローバル化の進む世界情勢を鑑みると、コミュニケーション力を高めるためには、英語以外の第二外国語もますます重要になってくると思われる。ヨーロッパではドイツ語人口が最も多く、EUの地位上昇につれその重要さも年々高まっている。そこで、まず学生のドイツ語に対する関心と学力を高めたい。そのためにドイツ語の授業を根本的に改革するつもりである。
   この基礎学力、語学力が培われて初めて、3年生以降のゼミでの「比較文学・比較文化」の本格的な学習が可能となる。 
   「比較文学・比較文化」は異文化を理解する上で必須の科目である。情報が氾濫する現代社会において、その文化的背景を抑えて「他者」を理解することは重要であり、他者を知ることによって己をもよく知ることができるのである。1,2年生で身につけた語学力をいっそう磨きながら、専門的な文献を精読し、また実際にヨーロッパでのフィールドワークを通して、社会で役に立つ比較的思考の錬成に努めたい。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.ドイツ語 AⅠⅡ(前期・後期 )
2.ドイツ語 BⅠⅡ(前期・後期 )
この年度からドイツ語の大きな変革を断行した。すなわち、1年生のドイツ語の基礎 ABを同一の教官が担当し、無駄のない有機的な教育が行える環境を整備した。前年度まで別々の教官が、互いに連絡をとることなく Aと Bの授業を運営していたため、無駄な反復が多く、進度も遅く、学習者のモチヴェーションも上がらなかった。今年度から同一教官が週に 2回、同じクラスを責任をもって担当し、1年生のうちに基礎文法の学習を終えることが義務づけられる。また学習者は 11月にドイツ語検定 4級を受験し合格するように指導することとした。
授業形態は、Aは会話、Bは文法を中心とし、教科書も別のものを使うが、従来の方法と比較して、遥かに効率が上がることが実感できた。ただし問題点も少なくない。成績評価のために、教科書も 2冊使用し、試験も ABで別々に行わねばならない。これらの点は今後改善すべきであろう。
3.問題発見ゼミナール (通年 )
2年生向けのゼミ。前期のテーマは「映画の中の異邦人」であった。映画を観賞しながら、外国人と、もともとその地に定住していた人間が様々な問題を乗り越えどのように共生していくべきか、また外国人の眼を通して自国の文化や性格を見直すとどうなるかということを学習した。後期は「メルヘンとは何か?」。グリム童話を様々な絵本で読み比較することから、メルヘンの本質に迫って行こうとしている。
4.問題分析ゼミナール (通年 )
「日独比較文化研究」。本年度から考察対象をドイツ語圏に絞っている。前期のテーマは「メルヘン」と「ドイツ・ユダヤ文学」。「メルヘン」のテクストとしてグリム童話の様々な版を比較し、同じテクストが時代や編集者によってどのような改変を受け、その背後にどのような意図があるのかを考察した。「ユダヤ文学」のテクストとしてはフランツ・カフカの短編「変身」「田舎医者」を精読し、解釈の方法やユダヤ文化史の基礎を学んだ。後期は「世紀末ウィーン」をテーマに都市ウィーンを総合的に考察する。手始めに 3つのグループに分かれて、美術・音楽・建築を主目的とした観光プランとその文化史的な背景についての発表をする。テクストは森本哲郎『ウィーン』。
5. 問題解決ゼミナール(通年)
テーマ「日独比較文化研究」
前期は就職活動で欠席する学生が多かったので、毎回短い新聞記事やエッセイを読み、内容要約とディスカッションを行った。また最近のドイツ文化を知るために映画を2本(『グッバイ、レーニン』『善き人のためのソナタ』)見て、意見を述べ合ったり、感想を書いてもらった。後期は個別の卒論指導。就職も決まり、また単位も満たしているため、後期から自然消滅する学生も散見される。学生生活の総決算であるべき 4年生のゼミの単位なしに卒業できるのはカリキュラム上問題があると思う。
6.比較文学・比較文化BⅠ(前期 )
テーマ「ドッペルゲンガー」
ドイツ・ロマン派からおこったドッペルゲンガー文学の系譜を、19世紀のホフマン、ポー、ドストエフスキー、スティーブンソンから現代まで辿り、時代背景や文学思潮とあわせてその特質と変容を考察した。またこれらの映画化されたもの鑑賞し、原作と比較考察した。後半は近現代日本文学における分身像に、西洋文学の影響が表れていることを確認し、さらにサブカルチャーにまで視野を広げて、SF、漫画、音楽におけるドッペルゲンガー像を紹介した。ドッペルゲンガーには、分裂した自己、自己と他者の関係の変化(希薄化)、複数化されたオリジナル等、現代社会が抱える様々な問題が色濃く反映していることが理解された。
7.比較文学・比較文化B Ⅱ(後期 )
テーマ「日独比較文学史」主として以下の内容について講義した。
鷗外の西洋詩翻訳——『於母影』の成立、森.外の「舞姫」とモデルをめぐって、明治・大正期における日本のハイネ受容、ローレライ伝説について、村野四郎の『体操詩集』——ノイエザハリヒカイトの受容、ブルーノ・タウトの日本美再発見、ウィーンにおけるジャポニズム、柏原兵三の『長い道』と藤子不二夫A『少年時代』——その舞台を訪ねて、日本のドイツ文学者と戦争責任——ナチス・旧制高校・教養教育、映画に見るドイツ人の見た日本像——『NANAMI(花見)』を手がかりに、等。
新しい試みとして、理工学部から管啓次郎、清岡智比古両先生を招き、詩の翻訳をめぐるシンポジウムを行った。
8.ドイツ文学特殊講義 (京都大学大学院・集中講義 )
テーマは「パウル・ツェランとユダヤ精神」。ツェランの後期の詩におけるユダヤ的要素を、「傷」というモチーフを手がかりに、「間テクスト性」に着目して読み解いた。マンデリシュターム、ネリー・ザックス、ベンヤミン、アドルノ、ショーレムらとの関わり、特に引用の問題を考察した。受講生のレベルも高く、非常にやりがいがあった。
9.ドイツ語 (東京大学教養学部・後期 )
初級文法を終えた 1年生を対象に、グリム童話、カフカ、ドイツリート、その他比較的やさしい政治・経済・自然科学論文を、文法事項を復習しながら精読した。テクストは『Horizonte』。 
2-2 当年度担当授業
1.ドイツ語 AⅠⅡ(前期・後期)
2.ドイツ語 BⅠⅡ(前期・後期)
昨年に引き続き、1年生のドイツ語の基礎 ABを同一の教官が担当し、無駄のない有機的な教育が行えるような授業を展開している。震災のために授業開始が 1カ月遅れ、その分を取り戻すべく、文法中心の授業を行っている。履修者は 11月にドイツ語検定 4級を受験し、合格するべく日々学習に励んでいる。
授業形態は、Aは会話、Bは文法を中心とし、教科書も別のものを使っているが、学習者のモティベーションはかなり高いと思う。時おりドイツの都市や自然を扱った映像資料を見せているが、特に 1954年のワールドカップでの伝説的な勝利を映画化した『ベルンの奇蹟』は好評であった。
3.問題発見ゼミナール(通年 )
2年生向けのゼミ。前期のテーマは「メルヘンとは何か?」。グリム童話を様々な絵本で読み比較することから、メルヘンの本質に迫った。「白雪姫」と「赤ずきん」の原文をテクストにし、さまざまな絵本やリライト版を比較することによって、時代によって激しく変化するイメージの多様性、さらにグリム童話へのさまざまなアプローチの仕方(原文の版による比較、民族敵的研究、心理学的分析等を学んだ。
後期のテーマは「映画の中の異邦人」である。映画を観賞しながら、外国人と、もともとその地に定住していた人間が様々な問題を乗り越えどのように共生していくべきか、また外国人の眼を通して自国の文化や性格を見直すとどうなるかということを学ぶ。最初に『ヴェニスの商人』を読み、また映画と比較し、ユダヤ人とキリスト教徒の軋轢の根源を考察した。
4.問題分析ゼミナール(通年 )
5.問題解決ゼミナール(通年 )
「日独比較文化研究」。本年度から 2コマ連続で、3年生と 4年生の合同で学ぶクラスとした。最初の50分はドイツ語の原典講読でグリム童話を読んでいる。次の約 2時間のメイン・ゼミは、前期は「都市ベルリン」をテーマに、都市の歴史と文化・政治を総合的に考察した。後期は「ゲーテ」をテーマにして、彼の箴言(名言)が持つ今日的意味を探ったり、小説『若きヴェルテルの悩み』を輪読して、映画『ゲーテの恋』と比較しながら、社会や恋愛事情の変化を話し合った。そのかたわら、日独交流150周年で行われたさまざまな行事にも積極的に参加し、学外での研究を採り入れた(上記の映画鑑賞、美術館訪問など)。
夏休みには清里で合宿を行い、震災で減った分を取り戻すべく、シュリンクの『朗読者』をテクストに、映画と比較しながら、戦争犯罪やその責任、ナチスの罪などについて話し合い、有意義な学習ができた。
昨年も同じことを書いたが、就職活動のために 4年生になるとゼミに来なる学生も散見される。学生生活の総決算であるべき 4年生のゼミの単位なしに卒業できるのはカリキュラム上問題があると思う。
6.比較文学・比較文化BⅠ (前期)
テーマ「ドッペルゲンガー」
ドイツ・ロマン派からおこったドッペルゲンガー文学の系譜を、 19世紀のホフマン、ポー、ドストエフスキー、スティーブンソンから現代まで辿り、時代背景や文学思潮とあわせてその特質と変容を考察した。またこれらの映画化されたもの鑑賞し、原作と比較考察した。後半は近現代日本文学における分身像に、西洋文学の影響が表れていることを確認し、さらにサブカルチャーにまで視野を広げて、SF、漫画、音楽におけるドッペルゲンガー像を紹介した。ドッペルゲンガーには、分裂した自己、自己と他者の関係の変化(希薄化)、複数化されたオリジナル等、現代社会が抱える様々な問題が色濃く反映していることが理解された。
7.比較文学・比較文化BⅡ (後期)
テーマ「日独比較文学史」主として以下の内容について講義した。
鴎外の西洋詩翻訳 ——『於母影』の成立、森.外の「舞姫」とモデルをめぐって、明治・大正期における日本のハイネ受容、ローレライ伝説について、村野四郎の『体操詩集』 ——ノイエザハリヒカイトの受容とレニ・リーフェンシュタールのオリンピック映画について、ブルーノ・タウトの日本美再発見(桂離宮 )、ウィーンにおけるジャポニズム、柏原兵三の『長い道』と藤子不二夫 A『少年時代』 ——その舞台を訪ねて、日本のドイツ文学者と戦争責任 ——ナチス・旧制高校・教養教育、映画に見るドイツ人の見た日本像 ——『 NANAMI(花見 )』を手がかりに、等。 
(3) 研究成果報告
1.(論文)「パウル・ツェランという傷」 (『詩界』 (日本詩人クラブ発行 )No.255. 2009 年 9月 30日、p .31-p.53)
2.(国際学会発表) Die Wunde Paul Celans (Internationales Symposium .Paul Celan und dereuropaische Kulturraum“, Bukarest, 2009年 9月 25日)
3.(翻訳)『とびだす!うごく!えほんうんちしたのはだれよ!』(ヴェルナー・ホルツヴァルト文、ヴォルフ・エールブルッフ絵、関口裕昭訳、偕成社、 2009年 10月)
4.(創作・詩)「ソラリス——水の惑星」(詩誌『ERA』 第 2次 3号、20 09年 10月)
5.(書評)「思想から詩へ——細見和之『ベンヤミン言語一般および人間の言語について』」(『樹林』V ol.531, 2009年 11月)
6.(口頭発表)「ハイネとユーデントゥムⅠ ——『バッハラッハのラビ』を中心に」(ハイネ逍遥の会、 2010年 2月 27日、名古屋国際会館)
7.(シンポジウム・口頭発表 )「生誕 200年ローベルト・シューマン ——言葉と音楽」司会および発表「シューマンとハイネ ——『詩人の恋 作品 48』を中心に(日本独文学会春季研究発表会、慶應義塾大学日吉校舎、 2010年 5月 19日)
8.(レクチャー・コンサート)「生誕 200年ローベルト・シューマン ——歌曲とピアノ曲の魅力」(話:関口裕昭、ピアノ:掛谷勇三、歌(バス):戸山俊樹、明治大学アカデミーホール、 2010年 6月 19日)
9.(創作・詩、エッセイ)「廃市——ブリュージュ小景」「ヴォルプスヴェーデの光」(詩誌『ERA』第 2次 5号、2010年 9月)
10.(翻訳)『フリードリヒばあさん』(ハインツ・ヤーニッシュ文、ヘルガ・バンシュ絵、関口裕昭訳、光村教育図書、2010年 8月)
11.(エッセイ)「『シューマンの指』を読んで」(日本独文学会ホームページ、2010年 9月20日より公開)
12.(国際シンポジウム・企画/発表/司会) .Wundgelesenes. Paul Celan ubersetzt Emily Dickinson“ (国際シンポジウム .Paul Celan als Ubersetzer“「翻訳者としてのパウル・ツェラン」、明治大学国際会館 3階第 1会議室、 2010年10月 8日、明治大学国際交流支援事業) 発表内容は以下の通りである。全てドイツ語で行われた。
 1. Barbara Wiedemann: Shakespeare als Kassiber. Celans Ubertragung der Sonette XC und CXXXXVⅡund sein Breifwechsel mit Rolf Schroers
 2. Hiroaki Sekiguchi: Wundgelesenes. Celan ubersetzt Emily Dickinson“
 3. Leopoer Federmair: Prosa-Ubertragung Paul Celans aus dem Franzosischen
 4. Tomoko Fukuma: Die neue Moglichkeit der Ubersetznug —Paul Celan und Yoko Tawada
13.(企画・翻訳 ) 『心の時』 ——インゲボルク・バッハマン/パウル・ツェラン往復書簡集の紹介と解説(バルバラ・ヴィーデマン博士解説、関口による翻訳・通訳、東京ドイツ文化センター図書館、 2010年 10月 8日、午後 7時~ )
14.(論文)「歪められた天使——ベンヤミンを読むツェラン」 (『明治大学教養論叢』通巻 459号、20 10年 9月 30日、 p.47-p.75))
15.(論文)「アウシュヴィッツ後に詩は可能か——アドルノと対峙するツェラン」(『明治大学教養論叢』通巻 463号、201 1年 1月 31日、p. 75-p.106)
16.(単著)『パウル・ツェランとユダヤの傷 ——〈間テクスト性〉研究』 (総 504頁、慶應義塾大学出版会、 2011年 7月 31日、京都大学に提出した博士論文)。
本書は筆者のこれまでの総決算でもあるので、全体の内容(目次)と概要を以下に記すことにする。
【もくじ】
まえがき
第1章薔薇——パウル・ツェランという傷
第2章アーモンド——ツェランとマンデリシュタームの対話
 第1節黒土に咲く薔薇の言葉
 第2節子午線をめぐる燕たち
 第3節時の中庭に
第3章アウシュヴィッツ——ベンヤミン、アドルノと対峙するツェラン
 第1節歪められた歴史の天使——ベンヤミンを読むツェラン
 第2節アウシュヴィッツの後に詩は可能か——アドルノと対峙するツェラン
第4章シェキーナ、あるいはユダヤの母なる存在
 第1節 光をめぐる対話——ネリー・ザックスとツェラン
 第2節 星をめぐる対話——マルガレーテ・ズースマンとツェラン
第5章モーセ、あるいはユダヤの父なる存在——フロイトとカフカを読むツェラン
 第1節 反復強迫と詩作——ツェランとフロイト
 第2節 「お前の傷も、ローザよ」——ツェランとカフカ、あるいはとユダヤ的身体
第6章カバラ——ツェランとゲルショム・ショーレム
第7章エルサレム——「エルサレム詩篇」を読む
結語 子午線——円環を描く言葉の道筋
補遺 その他のユダヤ人たち(1.リヒャルト・ベーア=ホーフマン 2.グスタフ・ランダウアー 3.エーリヒ・フォン・カーラー 4.ローベルト・ノイマン  5.ルードルフ・ヒルシュ  6.ハンス・マイアー 7.エドモン・ジャベス 8.エーリヒ・フリート  9. フランツ・ヴルム  10.ペーター・ソンディ)
註、パウル・ツェラン略年譜、あとがき、初出一覧、参考文献
【概要】
   第1章では、後期作品から「傷」を扱った 2編の詩を取り上げ、「傷」の形象がツェランの詩全体の中で果たしている機能を確認する。その考察の過程で、ドイツ・ユダヤ文学史における「傷」のイメージの変遷を、ハインリヒ・ハイネ、フランツ・カフカ、ローザ・ルクセンブルク、ネリー・ザックスの 4人にたどる。ツェランの傷はこれらのテクストと引用を通じて連携しながら、新たなテクストを創造してゆくのである。これは本書全体への見取り図と問題意識を提示している。薔薇の形象を傷ととらえた研究は、他にあまり例がないと思う。
   第2章では、ロシア系ユダヤ詩人マンデリシュタームの受容を、ユーデントゥムの視点から検討する。マンデリシュタームはスターリンの粛清にあってシベリア送りとなり、薄命のうちに死んだが、現代詩の開拓者として、またユダヤ人の「兄弟」としてツェランは高く評価していた。それは詩集『誰でもない者の薔薇』は彼に捧げられていることからもわかる。本章ではツェランの「間テクスト性」の根底には、マンデリシュタームから受け継いだ対話性があることを確認する。
   第3章では、ベンヤミンとアドルノという二人の傑出したユダヤ系の思想家をツェランがどのように読み、対決していったかが論じられる。ベンヤミンの歴史の天使は、ツェランの詩ではさらに歪められ、危機的な状況に立たされている。また彼は「アウシュヴィッツの後に詩を書くことは野蛮である」というアドルノの言辞をどう受容し、また乗り越えていったのであろうか。往復書簡集と「山中の対話」等の解読を通して、その過程を明らかにする。この章でもカフカが三者を結びつける媒体の役割を果たしている。
   第4章では、ネリー・ザックスとマルガレーテ・ズースマンという、ツェランにとって母親の世代にあたるユダヤ系女流詩人との交流と創作上の影響を考察する。そこでユダヤ神秘思想、とりわけシェキーナと旧約聖書のヨブがクローズアップされる。
   第5章は、フロイトとカフカとの関係を論じる。フロイトの「モーセと一神教」、カフカの「父への手紙」をツェランが熱心に読んでいることに注目し、ユダヤ的な父なるものへの畏怖と関心がツェランと深く結びついていることを指摘する。ドイツ・ユダヤ文学を網羅するテクスト複合体を作ろうとする意図は、見えない父性的な神なるものへの畏怖からなされていることが、ハンデルマンの間テクスト理論を援用しながら考察される。父の形象に注目した先行研究はまだないので、これが初めての試みとなるだろう。
   第6章では、ゲルショム・ショーレムのカバラ論をどう受容したかを、詩の解釈を通して考察する。これらのいわゆる「カバラ詩篇」が生まれたのは、 1967年の春から夏であるが、同じ時にフロイトの心理学やファラーの生理学を基にした、引用からなるモザイク詩が多く書かれている。こうした詩作の背景には、ツェランが読んでいたレヴィ=ストロース『野生の思想』の影響があると筆者は考える。「寄せ木細工ブリコラージュ」から神話的思想を再構築するように、ツェランは詩を構築しようとしていたのではないか、と新たな問題提起がなされる。
   第7章では、 1969年 10月の最初で最後となったツェランのイスラエル旅行の足跡を詳細にたどりつつ、その伝記的資料をもとに「エルサレム詩篇」を精読する。これらの詩はツェランのユダヤ観が凝縮された総決算であるといえよう。ここではまた、イラーナ・シュムエリとの交流にも触れられる。
   終章では、本書の総括として、「傷」が無数の言葉の線となって「子午線」を形成し、「私(Ich)」と「あなた (Du)」を結びつけるその線が、円環を描く言葉の筋道になることを明らかにする。その背景にマルティン・ブーバーの影響、特に「ダニエル」における「両極性」の思想があったことを指摘する。すべての相反する要素は、ここにおいて一致するわけである。
   以上のように 7つの章は、ユダヤ教の儀式で用いられるメノーラの燭台のように、独立しながらも星座のように互いに照らし合い、ユーデントゥムの受容についてひとつのまとまった論旨を提供できるよう工夫されている。
17.(記事)「明治大学の教養探究者たちの肖像 ⑯ 関口裕昭 パウル・ツェランから越境文学の深淵へ」(『ユリイカ』201 1年 9月号、裏面)
18.(研究紹介)「研究最前線ドイツ・ユダヤ文学の豊饒な世界」(広報誌『明治』 vol.52, 2011年 10月、p .50-p.51)
19.(創作・詩)「最後の生き残りの Nipponia Nipponが裏声で歌う怒りの歌、亡国の歌」(『詩誌 ERA』第 2次第 7号、20 11年 11月掲載予定) 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
①2009年度
1. 言語教育部会委員(2009年 4月~)
②2010年度
1. 言語教育部会委員(2009年 4月~)
2. 国際交流委員(2010年 4月~ )
3. 情コミジャーナル編集委員(2010年 4月~ )
③2011年度
1. 言語教育部会員( 2009年 4月~) 
2. 国際交流員会(2010年 4月~ )
3. 情コミジャーナル編集委員(2010年 4月~ )
4-2 大学業務
①2009年度
1. 共通外国語委員会委員(2009年 4月~)
②2010年度
1. 共通外国語委員会委員(200 9年 4月~)
2. 大学教授会連合会幹事 (2010年 4月~ )
3. 和泉研究棟管理委員( 2010年 4月~)
③2011年度
1. 学生部委員(201 1年 4月~)
2. 奨学金委員(201 1年 4月~)
3. 共通外国語委員( 2009年 4月~、 2011年 4月~ドイツ語種代表 )
4. 大学教授会連合会委員 (2010年 4月~ )
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1. 日本独文学会
2. 日本独文学会東海支部
3. 日本ゲーテ協会 (2011年度より理事、ゲーテ賞選考委員、「べりひて」編集委員)
4. オーストリア文学会
5. 日本詩人クラブ(『詩界』編集委員、詩書情報収集委員)
6. 三田文学会
7. スイス文学研究会
8. ハイネ逍遥の会 
5-2 講演・講師・出演
1. (講演)「パウル・ツェランへの旅 ——写真でたどるツェランの詩と生涯」(東京ドイツ文化センター、 2009年 11月 20日、午後 7時~)
2. (翻訳・通訳) 『心の時』——インゲボルク・バッハマン/パウル・ツェラン往復書簡集の紹介と解説(バルバラ・ヴィーデマン博士解説、関口による翻訳・通訳、東京ドイツ文化センター図書館、20 10年 10月 8日、午後 7時~ )
3.(講演)「図書紹介——『パウル・ツェランとユダヤの傷—〈間テクスト性〉研究』(東京ドイツ文化センター、 2011年 10月 7日、午後 7時~) 
5-3 その他の社会貢献
1. (受賞)第 58回産経児童出版文化賞翻訳賞(『フリードリヒばあさん』により) 2011年6月 7日 

武田 政明 Masaaki TAKEDA 准教授

経歴
   1952年神奈川県川崎市に生まれる。1976年明治大学法学部法律学科卒業。1981年明治大学大学院法学研究科民事法学専攻博士後期課程単位取得満期退学。同年明治大学短期大学法律科助手。以後同短期大学専任講師、助教授を経て、現在、明治大学情報コミュニケーション学部准教授。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   男女、夫婦、親子、親族等の関係において生ずる家族法が解決の重要部分をしめる問題点について研究してきている。特に、社会において家族法に期待される機能の変遷が当該問題解決に大きな影響を与える問題点に重きを置いて、家族法条文上は大きく改正されないままに、その変遷が条文の解釈に反映され、司法上の解決の結論が大きく変わることとなった問題点について研究している。この研究方針から、過去2年間は、無戸籍児の問題が現代社会に提示する国の基本制度に対する構成の前提理念の変更に関する問題につい研究している。
1-2 今後2年間の予定
   過去 2年間の実績で示した研究の基本を継続する。我が国の家族法と密接な関係を有する国が定める戸籍制度や児童福祉に関する諸制度等について、その制度構成の基本構造を決定する前提理念の変更の必要性に関わる諸問題を研究する予定である。 
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   現実社会に暮らしている人々が、平穏に安心してのびのびと和やかに暮らせる社会の構築のために必須となる可能な具体的提言を目ざして、たくさんの学問領域から重層複合的に地道に研究することの集積が、結果として情報コミュニケーション学という新しい学問の確立に資することになると考えている。したがって、このような研究成果を集積することに傾注する。研究の基本に新たなこのような視座をおくならば、研究成果は必然的に多方面からバランスよく人々の現実生活に資することになるので、情報コミュニケーション学という学問の定義や意義付けについて、特に意識して研究を進める必要はあまりないと考えている。
   また、研究対象が属する学問・学系領域についても、全ての問題はあらゆる学問・学系領域と重層複合的に関わりを有して研究することによって実際生活において大きな意味を有すると考えている。したがって、研究の成果を社会において効率よく生かせるという研究の社会における貢献度という観点からは、このように研究することこそが、本来の研究の通常の姿であると認識している。そのため、当該の研究テーマが、従来の観点からの所属領域や学問体系上の辺縁や中心にあるか、すなわち既存の分類による学問領域の中心に位置するか学際領域に位置するか等は、研究成果の社会貢献度とは直接の関係は見出せないと考えている。情報コミュニケーション学による研究は、その研究対象問題の解析に必要な限り、力量の限界には制約されるが、あらかじめの学問領域に拘束されることなく可能とする限りあらゆる領域からを研究対象とすると考えている。  
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.問題分析ゼミナール(通年)
実現が可能な僅かでも実際に効果がある現実生活に資する具体的提言をするためには、人の心の奥底に潜み人の行動を規定する内心の意思や、個人、社会、世界に存在する多様な価値観に深く分け入った上で導かれたものでなくてはならないことの重要性を認識してもらうことに重きを置いた。
2.基礎ゼミナール(通年)
自分の意見や見解を相手に正確に伝えられ、他人の意見や見解もその内容を正確に理解することができるようになるための練習に重きを置いた授業をした。また、ゼミナールを実り多きものにするために、実社会においても役立つように、相手が意見や見解を表明したくなるコミュニケーションの仕方の修得のための練習もした。
3.日本事情(前期)
留学生が受講する授業であることに重きを置いて、日常の日本での生活の中から、多くの者が疑問に思うであろう問題やより詳しく知りたいと思うであろう問題を教材として選んで、それらの具体的問題から発展させる形で、日本法の概略や、特徴的な日本法特有の基本的価値観について理解してもらう授業をした。
4.市民社会と法Ⅰ・Ⅱ(前期・後期)
社会生活をする市民として是非とも知っておくべき重要な法律知識について、単なる知識の暗記に陥ることなく、その知識を知らなくてはならない理由やその知識がどのように社会生活において機能しているか等、現実生活との接点を重視する形で、市民社会において重要な法を理解してもらうことに重きを置いた授業をした。
5.家族と法Ⅰ・Ⅱ(前期・後期)
家族に関わる重要な法律知識について、その重要性の意義、抱えている問題点を解説し、今後の家族法の大幅な改正にも対処しうるよう、学生が家族に関する法が今後どのように変わる必要があるかを考える契機となる内容の授業をした。
6.法学(後期)
総論として、法一般に共通する基本として理解しておくべき事項について解説し、各論として、社会において重要な機能を営む代表的な法の概説的な解説をすることにより、全体として法一般および日本法についての概略を理解するための授業をした。
2-2 当年度担当授業
1.基礎ゼミナール(通年)
自分の意見や見解を相手に正確に伝えられ、他人の意見や見解もその内容を正確に理解することができるようになることを目指している。また、ゼミナールを実り多きものにするために、実社会においても役立つように、相手が意見や見解を表明したくなるコミュニケーションの仕方の修得も目指している。
2.問題発見テーマA・B(通年)
家族法上の重要諸問題の本質を発見、理解するための基本を学ぶことを目指している。そのために、既存の法や制度について正確な専門的な知識が得られるようにすることを第一目的としている。その上で、問題を生じさせる人々の心理や社会生活上の原因についても考えさせることとしている。
3.問題分析ゼミナール(通年)
家族法に関わる問題として、高齢者と家族の関係において生ずる問題を広い視点から学習することを目指している。
4.問題解決ゼミナール (通年)
問題分析ゼミナールで学んだことを前提として、各自が深めたいと選択した問題についての具体的解決策を提言することを目指している。
5.日本事情(前期)
留学生が受講する授業であることを考慮して、日常の日本での生活の中から、多くの留学生が疑問に思うであろう問題やより詳しく知りたいと思うであろう問題を教材として選んで、それらの具体的問題から発展させる形で、日本法の概略や、特徴的な日本法特有の基本的価値観について理解してもらうことを目指している。
6.市民社会と法Ⅰ・Ⅱ(前期・後期)
社会生活をする市民として是非とも知っておくべき重要な法律知識について、単なる知識の暗記に陥ることなく、その知識を知らなくてはならない理由やその知識がどのように社会生活において機能しているか等、現実生活との接点を重視する形で、市民社会において重要な法を理解してもらうことを目指している。
7.家族と法Ⅰ・Ⅱ(前期・後期)
家族に関わる重要な法律知識について、その重要性の意義、抱えている問題点を解説し、今後の家族法の大幅な改正にも対処しうるよう、学生が家族に関する法が今後どのように変わる必要があるかを考える契機となることを目指している。
8.法学(後期)
総論として、法一般に共通する基本として理解しておくべき事項について解説し、各論として、社会において重要な機能を営む代表的な法の概説的な解説をすることにより、全体として法一般および日本法についての概略を理解することを目指している。 
2-3 その他の教育上の取り組み
   情報コミュニケーション学入門Aの担当回の講義において、法の世界においても、国家の基本を支える重要な国家制度に関する法文でありながら、その適用の実際においては、法文の存在意義が問われるほどにその文言と著しく乖離しているものが少なからずあることを示し、広くこの国の法治国家としての危機的側面について考えてもらうこととしている。
(3) 研究成果報告
   本年度は成果として報告するべき公表したものはない。
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.ジェンダーセンター委員
4-2 大学業務
1.国庫助成推進委員会委員
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本私法学会
2.日本比較法学会
3.日本家族〈社会〉と法学会
4.日本法政学会

根橋 玲子 Reiko NEBASHI 准教授

経歴
   埼玉県出身。 1990年早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。 1994年ミシガン州立大学大学院英語教育学研究科修士課程修了(英語教育学修士号取得)、1999年ミシガン州立大学大学院コミュニケーション学研究科博士課程修了(コミュニケーション学博士号取得)。立教大学ランゲージセンター嘱託講師、東海大学文学部専任講師を経て、 2004年より明治大学情報コミュニケーション学部准教授。専門はコミュニケーション学(異文化間・対人コミュニケーション)。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
    ここ数年の研究課題は、主に以下の通りである。(1)日本在住外国人(主にニューカマー)を対象にした研究、(2)在中国日本企業における異文化間コミュニケーション問題、(3)大学におけるコミュニケーション教育に関する研究。
(1)については、これまでに海外調査で得た知見や研究成果をもとに、日本における外国人、特にブラジル人を対象に、彼らとよりよい共生を図るためにはどのようなことができるのかをテーマに、次の 2つに焦点を当てて調査・研究を行った。(a)特にまだ研究蓄積の少ない未就学のニューカマーの子供たちと彼らをとりまく日本人の子供たちを対象に、彼らの社会化プロセスにおける異文化の影響ついて子どもたちがどのように文化に根ざした行動様式を身に着けるのかに着目した文献調査。(b)実際に日系ブラジル人を含む外国人と関わる人々(ボランティアや日本語学校教師、研修センター関連スタッフ等)や彼ら自身を対象にしたトレーニング手法の開発と実践。
(c)2010年度より明治大学人文科学研究所の研究費を受け、実際にブラジル人学校における聞き取り調査の実施。(2)については、科研プロジェクトの一員として共同研究者と調査を進めており、主にデータ分析と執筆を行っている。(3)については、2007~2008年度に、明治大学人文科学研究所より研究費を受け、研究成果をまとめ、報告書として提出した。 
1-2 今後2年間の予定
   上記のうち(1-c)については、2010年度より明治大学人文科学研究所より個人研究費を受け、すでに調査を進めており、今後は結果のまとめ・執筆を行う予定である。(3)については、2010年は、学部におけるコミュニケーション・コンピテンスプログラムの教科書作成に参加した、一章((3)研究成果報告-1.)を上梓した。また、(2)については関連するプロジェクトを計画しており、今後はそちらで科研費の申請も含め、進めていく。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.問題分析ゼミナール(通年)
前期前半は、分析ゼミナールは解決ゼミナールと合同で、学部主催の留学生受け入れプログラムの対象ゼミとして、タイ人留学生との講義やフィールドワークを実施した。前期後半は、卒業論文を執筆するための基礎力を養うために、主に調査方法について学び、自己のテーマ設定を行った。昨年同様解決ゼミナールとの合同ゼミを実施しており、授業時間枠外にも上級生たちと合同で英語の力を向上させるため、少人数のグループでのディスカッション等を行った。また、解決ゼミナールと合同で夏合宿を行う等上級生との交流も図った。
2.問題解決ゼミナール(通年)
解決ゼミナールの大きな目標は卒業論文を仕上げることにある。分析ゼミナールで設定したテーマや学んだ方法論をもとに実際に調査を行い、論文として執筆し、1月に論文発表会を行った。
3.文化系列専門研究 I・II(前期・後期・大学院博士前期課程)
前期は文化を異にする人々がどのような行動をするのかをテーマに、関連する異文化間コミュニケーション学の教科書を読み進めながらディスカッションを中心に理解を深めた。履修人数が少ないため、後期は学生の論文テーマに応じた内容の物を中心に読み進めた。
4.文化系列専門演習 I・II(前期・後期・大学院博士前期課程)
履修人数が少なかったため、主に履修学生の修士論文に沿った内容で、問題の設定や方法論について指導をしたり、関連する文献を読んだりした。
5.情報コミュニケーション学学際研究I・II(前期・後期・大学院博士後期課程)
博士後期課程担当教員がオムニバス形式で行う授業。前期は方法論を中心に、ディスカッションを交えながら授業を行った。後期は、院生一人ひとりの博士論文のテーマに関する発表を中心に教員も参加し、ディスカッションを行った。
6.コミュニケーション論序説(放送大学)
放送大学ラジオ講座にて、『コミュニケーション論序説』がオンエアされた。さまざまな分野の視点を通じてコミュニケーションとは何かにアプローチする内容。 
2-2 当年度担当授業
1.問題分析ゼミナール(通年)
分析ゼミナールでは、解決ゼミナールで卒業論文を執筆するための基礎力を養うために、主に調査方法について学び、自己のテーマ設定を行っている。また、昨年同様問題解決ゼミナールと合同で英語のディスカッションを行っており、夏合宿も合同で行うなど、上級生との交流にも力を入れている。
2.問題解決ゼミナール(通年)
解決ゼミナールの大きな目標は卒業論文を仕上げることにある。分析ゼミナールで設定したテーマや学んだ方法論をもとに実際に調査を行い、論文として執筆し、12月の論文提出、1月の論文発表会を目指して進めている。
3.文化系列専門演習 I・II(前期・後期・大学院博士前期課程)
異文化間コミュニケーションにおける新しい理論構築を目指すために、既存の主たる理論を概観するとともにその問題点を明らかにすることに取り組んでいる。特に、修士論文のテーマに関連する理論に力を入れた。後期には、テーマ関連論文の読み方を実習し、アカデミックなジャーナルを精読できるようにすることを目指す。
4.文化系列専門研究 I・II(前期・後期・大学院博士前期課程)
前期は文化を異にする人々がどのような行動をするのかをテーマに、関連する異文化間コミュニケーションの教科書を読み進めながらディスカッションやケーススタディを中心に理解を深めた。後期は、関連分野の英文テキストを読む予定である。
5.文化系列特論演習 I・II(前期・後期・大学院博士前期課程)
修士論文の完成を目指し,データの収集,分析,考察についてディスカッションとフィードバックを交えながら授業を進めている。
6.研究論文指導 I・II(前期・後期・大学院博士後期課程)
博士後期課程の学生を対象にした、論文指導の授業。前期は関連文献を読みながら、論文のテーマ設定に関するディスカッションを中心に授業を進めた。後期も引き続きこれを行うとともに、より具体的な研究計画を構築するよう指導していく。
7.情報コミュニケーション学学際研究I・II(前期・後期・大学院博士後期課程)
博士後期課程担当教員がオムニバス形式で行う授業。担当教員の概論と D1学生の修士論文の発表と博士論文のテーマ、D2学生の博士論文テーマに関連するゲスト講師を招いての講義を軸に、ディスカッションを中心に展開されている。
8.コミュニケーション論序説(放送大学)
前年度同様ラジオ講座で放送中。 
2-3 その他の教育上の取り組み
大学院(修士課程)の論文指導を行った(1名、 2010年 3月修了)。 
(3) 研究成果報告
1.研究論文(単著)根橋玲子「異文化間コミュニケーション」( 2011.7.10)鈴木健編『コミュニケーション・スタディーズ入門』大修館書店 ,135-157.
2.研究論文(単著) Nebashi, R. “Role schema and its modification: Stereotypicalimages among Japanese, Chinese, and Americans”『情報コミュニケーション学研究』第 10・ 11合併 , 51-61、 2011年 3月
3.研究論文(共著)西田ひろ子・根橋玲子・佐々木由美「公立学校とブラジル人学校のブラジル人保護者が抱える問題」( 2011.2.28)西田ひろ子編『ブラジル人生徒と日本人教員の異文化間コミュニケーション』風間書房 , 103-144.
4.研究論文(共著)「日本の大学における異文化教育・異文化間コミュニケーション教育実態調査」『情報コミュニケーション学研究』第 6・ 7合併 , 43-51、 2009年 3月
5.研究論文(単著)「日本人のコミュニケーション能力定義の試みと大学におけるコミュニケーション教育への応用」『明治大学人文科学研究所紀要』第 64冊 , 214-234、2009年 3月
6.明治大学人文科学研究所個人研究研究代表者「ブラジル人幼児のコミュニケーション行動実態調査:公立保育施設とブラジル人保育施設の比較」 2010年 4月~ 2012年3月 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.言語と文化コース副コース長
2.言語教育部会部会長
3.紀要委員
4.FD委員
5.大学院研究科委員 
4-2 大学業務
1.学生相談室相談員
2.ケベック文庫選定委員 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.国際行動学会
理事・学会誌編集委員(副編集長)
2.多文化関係学会
学会誌査読・年次大学発表司会
3.異文化間教育学会
4. International Communication Association
5. National Communication Association6.異文化コミュニケーション学会 
5-2 講演・講師・出演
1.異文化トレーニング講師
2010年 11月 21日に静岡県立大学、 県委託業務のトレーニング講師として、ボランティアや研修生、留学生にトレーニングを実施。 

波照間 永子 Nagako HATERUMA 准教授

経歴
   1969年沖縄生まれ。お茶の水女子大学家政学部児童学科(現:生活科学部発達臨床)卒業、同大学大学院人文科学研究科修士課程(舞踊教育学専攻)修了、同大学院人間文化研究科博士課程(人間発達学専攻)を経て、博士(学術)取得。日本学術振興会特別研究員 PD、群馬県立女子大学文学部美学美術史学科助手・専任講師(舞踊学担当)、2008年 4月より明治大学情報コミュニケーション学部准教授(表現論担当)。沖縄タイムス芸術選賞新人部門(舞踊)最高賞 2000、ACC Japan-US Arts Program Fellowship Grant Award 2002、比較舞踊学会研究奨励賞 2002、沖縄文化協会賞 (仲原善忠賞 )2006を受賞。主な著訳書:『バレエのサイエンス』(翻訳協力)、『教養としてのスポーツ人類学』(共著)、『沖縄学入門空腹の作法-』(共著) 2010年、「琉球舞踊における流会派の発生と展開」『韓国舞踊史学』第 12号(論文) 2011年。琉球舞踊重踊流師範。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
1.琉球舞踊の動作単元データベースを用いた比較技法研究
【科研費基盤研究 C( 2009~ 2011)】
国指定重要無形文化財(総合認定)を受けた 4名のインフォーマントを対象に伝承方法に関する比較分析を実施した。あわせて、本動作単元データベースを活用し、幼児向け民俗舞踊教材を試作し文京区立青柳保育園および日本伝統芸能教育普及協会 <むすびの会 >にてワークショップを実施した。
2.琉球舞踊オーラル・ヒストリー映像アーカイブ構築事業
上記科研費研究の一部として、インフォーマントの伝承の系譜および「わざ言語」の特性を調査し、国内外の学会およびシンポジウムにて公表した。 
1-2 今後2年間の予定
   今後は、上記の研究をさらに推進しつつ、芸術表現・身体表現の総合的な入力検索システムを構築していきたい。あわせて、本システムを利用して、琉球舞踊の流会派間、および韓国舞踊との比較研究を試みる予定である。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   本学部は、「情報」や「コミュニケーション」の概念を、狭く限定することなく「包括的」な視点から捉えている。非言語情報を主たる媒体とする芸術表現をいかに記録し公開して伝えていくか、また、時代とともにダイナミックに変容する現代芸術をいかにサポートするかといった諸問題を、他領域の専門家との討議のなかで探求し、将来的には「芸術コミュニケーション」研究の基礎的な理論と方法を確立していきたい。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1明治大学
1.表現論(半期)
舞踊・ダンスの作品を事例にあげ、①創作法、②記録法(テクノロジーの活用と問題)、③社会における役割と課題の3つの切り口から講義した。授業後に小レポートをかして理解度や問題意識を喚起するようつとめた。また、学期末の課題として、作品とそのコンセプトを提出させたところ力作が多くみられた。
2.基礎ゼミナール(通年)
沖縄の芸能・芸術を題材に、テキストの輪読と討議を実施。レジュメの作成、パワーポイントを活用したプレゼンテーション、久米島のフィールドワーク(2010)を行った。後期は、三線の歴史、エイサーとよさこい祭り、沖縄戦と音楽、浜松まつりとエイサー、地名と名字など、各自が設定したテーマに絞って報告させ討議した。
3.問題分析ゼミナール(通年)
4.問題解決ゼミナール(通年)
「現代社会における芸術の役割と課題」について、3年前期は「アートと医療・教育」「アートと地域」「アートと企業」等の3つの柱をたてて先行事例を調べ発表させた。討議が深まったテーマは継続して研究を行い、その成果をオープンキャンパス模擬授業のなかで発表させた。ゼミ以外で発表する場を設けたため、緊張感も高まり、熱心に取り組んでいた。後期は、前期で学んだ事例研究をもとに、フィールドワーク(御茶の水アートピクニックにて企画参加、すずらん祭り・神保町ブックフェスティバル(2010)にスタッフ参加)を行い、4年次と合同で、神保町と若者をつなぐアートプログラム Art-Live-Rally 2010 の企画制作を行った。
5.身体コミュニケーションB(半期)
17世紀に伝わった沖縄の盆踊り「エイサー」が、現代の「太鼓パフォーマンス」としていかに変容してきたかを概説した後、実際に身体を動かして「基本の型」を伝授した。さらに、その型を土台に、フォーメーション、音楽、動きをアレンジするといった創作活動も行った。期末には「エイサーとコミュニケーション」と題するレポートを提出させた。
2早稲田大学(兼任校)
兼任校において以下の4科目を担当した。内容は省略する。
専門教育科目:舞踊技法論(前期集中)、身体技法論(後期)
オープン教育科目:琉球舞踊(後期・保健体育科目)
琉球舞踊と身体(後期・総合講座「沖縄学」) 
2-2 当年度担当授業
1明治大学
基本的には前年度の内容を踏襲しているが、当年度は震災のため授業コマ数が限られていた
ため、最終日の作品鑑賞会を開催することができなかった。
前年度の内容に同じ。フィールドワークは後期に実施予定。
1.表現論(半期)
2.基礎ゼミナール(通年)
3.問題分析ゼミナール(通年)
4.問題解決ゼミナール(通年)
前年度の内容にほぼ同じ。ただし、当年度は震災により、すずらん祭り等前期開催予定のフィールドワークを実施できなかったが、首都圏高校教員説明会、オープンキャンパス模擬授業等で研究成果を公開する機会を設けた。
5.身体コミュニケーションB(半期)
前年度の内容に同じ。後期は平屋敷エイサーの「七月節」(念仏歌謡にあわせた手踊り)をとり入れ盆行事の身体表現の本質的意味を実習した。
6.情報コミュニケーション学<リズム>(通年)
総合講座形式。前期は、自然・人文社会科学におけるリズム論の基礎的内容を提示した。それを踏まえ、後期は言葉、音、色、形、身体等のメディアを用いたリズム表現のワークショップを実施する。受講生には自身のリズム論を模索するよう課題を出している。
2早稲田大学
兼任校において以下の4科目を担当している。内容は省略する。
専門教育科目:舞踊技法論(前期集中)、身体技法論(後期)
オープン教育科目:琉球舞踊(前期・保健体育科目) 
(3) 研究成果報告
<論文・図書>
1.論文(単著)「民族舞踊における男女のしぐさ」『体育の科学』 59(9)、2 009年 9月琉球舞踊の古典舞踊および民俗舞踊にみる男女の芸態の特性について報告した。
2.論文(単著)「琉球舞踊における『コネリ手』の動作類型」『比較舞踊研究』第 16巻比較舞踊学会、 2010年 3月
沖縄舞踊の代表的な技法「コネリ手」の特性を、演目の上演時間に対する出現率および上肢の部位別類型から明らかにし、ジャンル別の比較を行った。
3.論文(単著)「琉球舞踊における流会派の発生と展開」『韓国舞踊史学』第 12号、韓国舞踊史学会、20 11年 6月 “Emergence and development of schools (Ryukaiha) in Ryukyuan dancing”Journal of Korean Dance History, Vol.12. The Society of Korean Dance History, Jun. 20114.図書(共著)「琉球舞踊と身体-舞踊技法研究の魅力—」『沖縄学入門-空腹の作法-』昭和堂、 2010年 4月
身体技法における舞踊技法の位置づけと、琉球舞踊の技法に潜む意味とその魅力について概説した。
<報告書>
1.報告書「ワークショップ〈琉球舞踊〉:芸能の宝庫“琉球・沖縄 ”の魅力を体験しよう」『舞踊教育学研究』第 13号(日本教育大学協会全国保健体育・保健研究部門舞踊研究会)2011年 3月
<国際シンポジウム報告>
1.国際シンポジウム報告「琉球舞踊にみるアジア諸国の影響」『全北大学校人文研究院設立記念国際学術大会要旨集』(“The Influence of Asian Countries on Ryukyu Dance”Proceedings of International Conference in Commemoration of Launching Research Center for Humanities) 2009年 9月
琉球舞踊の技法・衣装・音楽における周辺アジア諸国の影響について報告した。
<国内シンポジウム・学会口頭発表>
1.口頭発表(共同研究)「琉球舞踊における玉城盛重系流会派の系譜と伝承」日本スポーツ人類学会、早稲田大学、 2009年 3月
玉城盛重に系譜を引く4名の沖縄県指定無形文化財を対象に、伝承の系譜と主要な技法の伝承方法について比較を行った。
2.口頭発表「琉球舞踊における『わざ言語』の特性と変容」日本体育学会大会、広島大学、2009年 8月
琉球舞踊重踊流志田房子氏(国指定重要無形文化財総合認定)のインタビューを分析した。
氏が戦前・戦後、沖縄で受けた伝承方法とわざ言語(比喩的表現)が、伝承する時間・場所・対象の変化を受け、いかに変容したかを明らかにした。
3.口頭発表(共同研究)「幼児向け民俗芸能教材の考案と実践」比較舞踊学会伝統と舞踊研究会、 2010年 3月
琉球舞踊の動作単元データベースを活用し、幼児向け舞踊教材を試作し実践した。実践に際しては文京区立青柳保育園 吉野かほり保育士、樋口美恵子園長の協力を得た。
4.シンポジウム報告「琉球舞踊における流会派の発生と展開」日本スポーツ人類学会琉球舞踊シンポジウム、名桜大学、20 10年 3月
琉球舞踊に流会派および家元制度が、いつごろどのように発生・展開したかを、沖縄タイムス新聞記事の分析を通して考察した。
5.口頭発表「琉球舞踊の『動作単元データベース』を活用した教材作成の試み」、日本体育学会、中京大学、2010年 9月
<学会コメンテータ・座長>
1. 舞踊学会定例研究会(201 1年 6月)において、博士論文コメンテータを担当
2. 舞踊学会定例研究会(201 1年 6月)において、修士論文発表会座長を担当
<研究費の取得>
1.日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究 C (200 9年 4月~201 2年 3月)
「琉球舞踊における動作単元データベース『動作辞書』を活用した比較技法研究」 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.広報委員会
2.メディアと人間コース 副コース長
3.ジェンダーセンター運営委員会 
4-2 大学業務
1.体育教員会学部代表
2.専任教授会連合(専教連)幹事(2009年4月~2 010年 3月)
3.リバティアカデミー専門部会員(教養・文化専門部会)
4.リバティアカデミー運営委員会
5.PIC(太平洋諸島センター)連携講座プロジェクト委員会
6.地域連携推進センター運営委員会 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.比較舞踊学会 理事(会報編集・20 10年度学会大会組織委員長)
2.日本体育学会スポーツ人類学分科会世話人(会報編集・基調講演&シンポジウム企画)
3.スポーツ人類学会 理事(会報編集・20 10年度学会大会組織委員長)
4.特定非営利活動法人日本伝統芸能教育普及協会 <むすびの会 > 理事
5.沖縄文化協会
6.CORD( Congress on Research in Dance)
7.舞踊学会 
5-2 講演・講師・出演
<学内>
1.明治大学オープンキャンパス模擬授業(20 09年 8月・ 2010年 8月)
2.明治大学首都圏高校教員説明会 学部独自プログラムの紹介( 2010年 6月・20 11年 6月)
3.明治大学学部教員紹介・クラスアクティビティにてパフォーマンス企画(2009年 4月・ 2010年 4月)
4.明治大学リバティアカデミー教養文化講座企画・講師(2010年度後期)
「伝統芸能(能・日本舞踊・琉球舞踊)を学ぶ・楽しむ-安珍・清姫「道成寺」伝説をテーマとして-」
<学外>
1.(講演)おきなわ女性の会例会「琉球舞踊研究の魅力」20 09年 8月、明治大学
2.(講演)川村中学特別講義「琉球舞踊の魅力~表現と創作~」 2010年 3月
3.(出演:MC)田園調布雙葉中学校琉球舞踊鑑賞会 2010年 5月
4.(講師)特定非営利活動法人日本伝統芸能教育普及協会<むすびの会>琉球舞踊ワークショップ2010年6月、お茶の水女子大学付属小学校
5.(講師)日本教育大学協会全国保健体育・保健研究部門 舞踊研究会 琉球舞踊ワークショップ 2010年 12月、国立オリンピック記念青少年総合センター

蛭川 立 Tatsu HIRUKAWA 准教授

経歴
   神奈川県立湘南高等学校卒業。京都大学農学部農林生物学科卒業。同大学大学院理学研究科動物学専攻修士課程修了。東京大学大学院理学系研究科人類学専攻博士後期課程単位取得退学。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   ここ二年ほどの研究テーマの中心は、引きつづきコスモロジー(世界観、宇宙論)である。古今東西の神話や儀礼から、古代から現代に至る西洋科学の宇宙論までも視野に入れつつ、比較研究を進めてきた。またそのような人類学的な比較だけではなく、そのようなコスモロジーを生み出す人間の内的体験の研究も意識科学的な観点から続けてきた。とくに、近代化された社会では非日常的とされ、通常の心理学があまり扱ってこなかった、いわゆる変性意識体験や変則的体験に注目している。
   西暦2008年の大学院、同2010年の博士後期課程の新たな設置にともない、たとえば、 2009-2010年度の2年間だけで、和泉、猿楽町、駿河台と、研究室を4回も移転することになり、その中で体調を崩すなど、残念ながら、なかなか研究に専念できる時間がとれなかったのが実情ではあるが、その中でも、大学院生、とくに博士後期課程に進学してきた学生諸君とともに、日本人を対象とした臨死体験、明晰夢などの変性意識体験の聞きとり調査も進めている。
   それに先立つ2008年2月には、石川幹人教授、岩渕輝准教授、小久保秀之兼任講師とともに特定課題研究所「意識情報学研究所」を立ち上げていたが、その後、所員に助手の岩崎美香、特任教授の森達也、兼任講師の清水武の各氏を加え、さらに研究体制を充実させるべく準備を進めてきている。 
1-2 今後2年間の予定
   今後も「意識情報学研究所」の代表として、その活動を中心にすえながら、従来「変性意識状態」や「変則的現象」などと呼ばれ、ともすれば興味本位な文脈でしか語られず、科学的、科学論的な研究対象とされにくかった現象を、人類学的なコスモロジーと併せて研究を進めていく予定である。
   残念ながら、ここ数年は大学院の新設という困難な作業の中で、なかなか研究といえるだけの作業に充分に取り組めなかったのが現状であるが、新しい学部・大学院もようやく 2012年度で 9年目の完成年度を迎え、その後は在外研究なども視野に入れながら、研究体制の再構築をしていきたい。
   長期的な視点においては、近代科学的な知の体系自体のポストモダンな再構築という作業の一端を担いたいと考えている。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   従来、特異な意識現象の研究においては「精神」対「物質」という古典的な二元論が暗黙のうちに仮定されることが多く、それゆえに研究の進展が行き詰まっていたところも否めない。すでに活動を開始している「意識情報学研究所」では、特異的とされる意識現象の分析に、認知科学などの発展に寄与してきた「情報」という新しい視点を導入することによって、従来の縦割り型の研究領域ではなしえなかった、新たな学際的視点からの研究が展開できるものと期待している。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.人類学A
2.人類学B
3.情報コミュニケーション学入門D
4.情報コミュニケーション学
5.身体と意識
6.問題分析ゼミナール
7.問題解決ゼミナール
8.専門研究 人類学と意識科学Ⅰ
9.専門研究 人類学と意識科学Ⅱ
10.専門演習 人類学と意識科学Ⅰ
11.専門演習 人類学と意識科学Ⅱ
12.特論演習 人類学と意識科学Ⅰ
13.特論演習 人類学と意識科学Ⅱ
14.研究サポート演習(フィールド・アプローチⅡ)
15.情報コミュニケーション学学際研究
※明治大学付属明治高校高大連携講座 
2-2 当年度担当授業
1.人類学A
2.人類学B
3.情報コミュニケーション学入門D
4.情報コミュニケーション学
5.身体と意識
6.問題分析ゼミナール
7.問題解決ゼミナール
8.専門研究 人類学と意識科学Ⅰ
9.専門研究 人類学と意識科学Ⅱ
10.専門演習 人類学と意識科学Ⅰ
11.専門演習 人類学と意識科学Ⅱ
12.特論演習 人類学と意識科学Ⅰ
13.特論演習 人類学と意識科学Ⅱ
14.研究サポート演習(フィールド・アプローチⅡ)
15.情報コミュニケーション学学際研究
16.研究論文指導Ⅰ
17.研究論文指導Ⅱ
※明治大学付属明治高校高大連携講座 
2-3 その他の教育上の取り組み
   引きつづき、今までに世界各地で収集してきた儀礼等の映像のデータベース化を進めており、WEBサイトなども積極的に活用しながら、講義やゼミナール科目で活用する試みを進めている。また、大学院・学部のゼミ生の調査に同行ないし遠隔指導することによって、調査の実地指導という教育活動と、自らの研究活動を相互に連関させる試みを進めている。
   一方で、三鷹ネットワーク大学など、明治大学内だけにとどまらない、地域との結びつきも視野に入れた教育的・文化的活動、とりわけ自然科学離れが叫ばれる状況の中で、いわゆる科学リテラシーの普及活動も行っている。 
(3) 研究成果報告
1.雑誌連載「意識のコスモロジー」『風の旅人』ユーラシア旅行社
第3回「内部と外部/分節と自己言及」『風の旅人』39号、2 010年 2月、4 2-45頁
第4回「世界を夢見ているのは誰か?」『風の旅人』40号、2 010年 6月、1 31-134頁
第5回「始原の神話時間」『風の旅人』4 1号、201 0年 10月、1 9-22頁
第6回「場当たり的な奇跡」『風の旅人』42号、 2011年 2月、17 -20頁
第7回「ガンジスの砂の数ほど」『風の旅人』43号、20 11年 6月、1 7-20頁
第8回「『大爆発(ビッグ・バン)』としての『今』」『風の旅人』 44号 2011年 10月、 21-24頁
世界各地での人類学的調査にもとづいた神話的コスモロジーの研究と、現代宇宙論における「人間原理 anthropic principle」の関係を考察した試論的エッセイ。学術的にはまだ考察の不完全な部分が多いが、あらためて加筆修正し、単行本化する予定。
2.著書『精神の星座-内宇宙飛行士の迷走録-』サンガ 2011年 8月
今まで行ってきた、東南アジア、南米などの儀礼的世界への参与観察的フィールドワークを、対談インタビュー形式で録音したものを文字に起こして加筆修正したもの。学術的には厳密性を欠く部分もあるが、どうしても主観的な話し言葉でしか表現できない体験世界を、半フィクション的対談という形式で語りおろしたものである。
3.研究論文
「心物問題再考—『超心理学』という自己矛盾の克服に向けて—」『トランスパーソナル心理学/精神医学』 11号、1-4頁、2011年
「共時性のコスモロジー—記号/宮(シーニュ)と布置/星座(コステレーション)再考—」
『トランスパーソナル心理学/精神医学』1 1号、44-4 7頁、2011年 
(4) 行政業務担当報告
4-2 大学業務
1.2010~ 2011年度 図書委員
2.2011年度人文科学研究所運営委員 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1. American Anthropological Association
2.日本文化人類学会
3.国際生命情報科学会
4.科学基礎論学会
5.日本心理学会
6.日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
7.日本進化学会
5-2 講演・講師・出演
1.第二回東京国際科学フェスティバル、サイエンスカフェ「響き合う宇宙-星界の音楽・第二楽章-」(蛭川立・清田愛未・郡正夫) 2010年 9月 24日・三鷹市「ラ・フォルテ」三鷹ネットワーク大学の依頼で、現代の西洋音楽の背景には古代ギリシアの天文学的コスモロジーが存在することについて、一般市民向けに講演し、音楽とのコラボレーションも行った。
2.「『野生の科学』としての神話の論理 —中南米先住民のコスモロジー —」 2010年 6月24日・三鷹市「星と風のカフェ」
古代マヤ文化の暦法などに象徴される、中南米先住民の数学的なコスモロジーについて、一般向けのサイエンス・カフェを行った。
5-3 その他の社会貢献
1. 『 Room of Dreams』監修
明晰夢体験とチベット仏教の世界観をテーマにした SF映画、『 Room of Dreams(仮題)』の科学監修を継続中。
2. 田口ランディ『アルカナシカ-人はなぜ見えないものを見るのか-』『マアジナル』(いずれも角川書店、 2011年 6月)監修
「 UFO」や「超常現象」など、通常の科学的常識ではア・プリオリにありえないとされ、あるいは主観的な幻覚・妄想として扱われがちであった現象について、それらの現象の真偽について早急に結論を出すのではなく、あくまでもそれを見たり体験したりしたと報告する人がいるのは事実であるという立場から描いたエッセイと小説について、その心理学的、認識論的側面について、学術的な監修を行った。 

山崎 浩二 Kouji YAMAZAKI 准教授

経歴
   1967年千葉生まれ。1989年明治大学工学部卒業、1991年同大学院工学研究科博士前期課程修了、1994年同博士後期課程修了(工学博士号取得)。明治大学理工学部専任講師を経て、現在は明治大学情報コミュニケーション学部准教授。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   過去2年間の研究テーマは大きく2つに分けられる。1つはディープサブミクロン ICにおける半断線故障(配線の一部が欠損した故障)の検査技術に関する研究である。このテーマでは、半断線故障のモデル化を目指し、半断線故障を意図的に埋め込んだ ICを作製し、実際の故障の振る舞いを分析した。また,現在予想されている半断線故障モデルに基づいたテストパターン生成アルゴリズムおよび故障診断技術の研究を行った。もう1つの研究テーマは ICのテスト生成に関するものであり、テストパターン圧縮、および順序回路のオーバーテストを低減する方法について研究を行った。 
1-2 今後2年間の予定
   今後、半断線故障を意図的に埋め込んだ ICの動作の解析を行うことで、故障のモデル化を行う予定である。また、このモデルに基づいたテストパターン生成アルゴリズムおよび故障診断技術の研究をすすめる予定である。また、テスト生成に関してはこれまでと同じ方向で研究を進める予定である。  
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.問題発見テーマ演習A、 B(前期、後期)
2.問題分析ゼミナール(通年)
3.問題解決ゼミナール(通年)
4.情報科学(前期)
5.情報社会と安全 A(前期)
6.プログラミング実習Ⅰ、Ⅱ(前期、後期)
7.アルゴリズム実習Ⅰ,Ⅱ(前期、後期)
8.ネットワーク技術Ⅰ(前後期)
2-2 当年度担当授業
1.問題発見テーマ演習A、 B(前期、後期)
2.問題分析ゼミナール(通年)
3.問題解決ゼミナール(通年)
4.情報科学(前期)
5.情報社会と安全A(前期)
6.プログラミング実習Ⅰ、Ⅱ(前期、後期)
7.アルゴリズム実習Ⅰ,Ⅱ(前期、後期)
8.ネットワーク技術Ⅰ(前後期) 
(3) 研究成果報告
1.研究発表 "しきい値関数を利用したファンナウト中のオープン故障の診断法 ", FTC研究会, 20 10/7.
2.論文"故障励起関数を利用したオープン故障の診断法 ", 電子情報通信学会論文誌 , J93-D, No.11, pp.2416-2425, 2010/11.
3.論文 "論理回路の故障診断法—外部出力応答に基づく故障箇所指摘法の発展 —", J94-D, No.1, pp.266-279, 2011/1. 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.一般教育主任
2.将来構想検討委員
3.学生論文編集委員( 2008/10-現在) 
4-2 大学業務
1.校友会委員(20 08/4-現在)
2.情報教育推進部委員(2010/4-現在) 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1. IEEE
2.電子情報通信学会
3.信頼性学会 

清原 聖子 Shoko KIYOHARA 准教授

経歴
   学歴
   1999年3月慶応義塾大学法学部政治学科卒業
   1999年4月慶応義塾大学大学院法学研究科修士課程入学
   2001年3月慶応義塾大学大学院法学研究科修士課程修了
   2001年4月慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程入学
   2004年3月慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学
   2007年7月慶応義塾大学大学院より、博士(法学)授与(課程博士)
   主な職歴
   2003年10月~2006年10月東京大学大学院情報学環助手(現助教)
   2006年10月~2007年3月東京大学大学院情報学環特任助手(現特任助教)
   2007年4月~2009年3月(株)情報通信総合研究所研究員
   2009年4月~明治大学情報コミュニケーション学部専任講師
   (兼務として、東京大学大学院情報学環客員教員(助教相当)の他、非常勤講師を慶応義塾大学法学部、慶応義塾大学総合政策学部、慶應義塾大学法学部通信教育、中央大学総合政策学部にて務めてきた。)
   留学歴
   2005年7月~2006年3月 フルブライト博士論文研究フェロー、ジョージタウン大学政治学部客員研究員
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
1.現代アメリカにおけるテレコミュニケーション規制改革メカニズムに関する実証的研究(科学研究費補助金若手研究(B)、個人研究:研究代表者)
2010年度から 3年間の予定で科学研究費補助金若手研究(B)を採択した。現代アメリカのテレコミュニケーション政策領域では、メディア融合の進展と市場の変化に伴い、グーグルをはじめとする新しいアクターが政治化し、既存の強固な業界利益との対立が深まっている。それゆえ当該分野の規制政策は新たな局面を迎えていると言える。本研究の目的は、こうした新たなアクターの台頭によってテレコミュニケーション規制政策の構造にどのような変化が表れているのか、という問題について、政策ネットワーク論、イデオロギー対立、政権交代といった政治学的観点から分析し、関係者への聞き取り調査を重視することにより、実証的な研究の体系化を行うことにある。現在は、この研究テーマに関して段階を追って事例研究を進めているところである。 2011年 3月にはワシントン D.C.で連邦通信委員会(FCC)のネットワーク中立性規則作成過程を事例として、関係者へのヒアリング調査を行った。その成果の一部は、東京財団のウェブサイトに「ティー・パーティー運動とオバマ政権のテレコミュニケーション政策 —FCCによるネットワーク中立性の規則制定をめぐって」と題した論考が掲載されているほか、『Inf oCom ReviewVol.55』(201 1年 12月 1日発刊予定)に「ネットワーク中立性をめぐる FCCの規則制定過程におけるイデオロギー的対立」と題した論文の採録が決定している。
2.日米韓比較研究によるインターネット選挙運動の発展メカニズムとその展望(共同研究)
本研究は、2009年度サントリー文化財団から得た研究助成(共同研究:研究代表者)の研究課題である。本研究は、インターネットを選挙運動に利用することに関して先進国であるアメリカと韓国を事例として、選挙制度の差異や情報通信技術の発展に着目して、インターネットの利用が選挙や政治をどのように変化させるのか、というメカニズムの比較検討を行ってきた。本共同研究の成果は、慶應義塾大学出版会より 2010年12月下旬に『インターネットが変える選挙—米韓比較と日本の展望』(清原聖子、前嶋和弘編著)というタイトルで出版された。また、2011年度(2011年8月~2012年 7月)もサントリー文化財団から研究助成(共同研究・研究代表者)を頂き、再び研究グループを結成して現在日本の政治や選挙におけるネット利用という点を重視しながら米韓比較の視座から共同研究に取り組んでいるところである。
3.現代アメリカのテレコミュニケーション政策における規制改革メカニズムの研究(個人研究)
アメリカにおけるテレコミュニケーション政策の研究を行う上で、アメリカ政治のマクロ的な動きとの連関性を注視することが重要であることから、本研究は、現代アメリカ政治の特徴であるイデオロギー的対立に注目して、こんにちのアメリカのテレコミュニケーション分野の規制改革を論じることとした。本研究の成果については、2009年 12月に東京大学出版会より出版された五十嵐武士、久保文明編著の『アメリカ現代政治の構図-イデオロギー対立とそのゆくえ』の中で、「第 10章テレコミュニケーション政策におけるイデオロギー的対立」として収められている。
1-2 今後2年間の予定
   来年度及び再来年度については、上述の科学研究費補助金の研究課題及びサントリー文化財団の研究助成による共同研究の成果をとりまとめ、単著もしくは共著を目指している。
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   本学に奉職して3年目である私にとって、情報コミュニケーション学とは、既存の研究の枠を超え、学際的に様々な分野の専門家と連携することで、研究の視野が広がり、新しい研究課題を創発することができる、将来性の高い学問である。私はこれまでアメリカ政治を基盤に情報通信政策の研究を行ってきたが、将来的にはその専門性を生かして、異分野の研究者との連携による授業・研究指導に尽力したい。そういう観点から、昨年度から3年生対象の情報コミュニケーション学の授業(「コピー」、今年度は「マイノリティ」も追加)にも講義を行いに参加させていただいている。   
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.情報政策論A(前期)
本講義では前年度に続き、アメリカの情報通信政策はどのように形成されるのか、その仕組みから初学者にもわかりやすく解説し、 AT&Tの分割をはじめアメリカの情報通信政策の歴史を踏まえ、最近の新しいオバマ政権の情報通信政策について、これまでとの差異や今後の展望について検討してきた。授業内で連邦通信委員会などのホームページや YouTubeの動画も利用することで、学生にインターネットを使ってどこに行けばアメリカの情報通信政策の最新情報が入手できるのか、という点を示すように心掛けた。なお、本授業は就職活動中の 4年生のことを考慮し、出席は参考程度として、書評レポートと中間試験を定期試験の他に課して、評価対象とした。
2.情報政策論B(後期)
情報政策論Aで扱ったアメリカの事例と対比的に、主に日本の情報通信政策について扱うが、前期未履修者にも配慮して、日本の情報通信政策がどのようにして形成されるのか、歴史的展開や政策形成過程の特徴から講義し、政治学初心者にもわかりやすい内容を心がけた。今年度も情報政策論Bでは、日本の情報通信政策に直接携わる方々として、総務省や情報通信総合研究所からゲスト・スピーカーをお招きした。本授業の評価は、出席を重視し、中間試験と定期試験で総合的に行った。
3.基礎ゼミナール(通年)
本年度の基礎ゼミナールのテーマは「政治学入門—ICTの発達が政治や選挙に与える影響を考える」である。履修者は 9名おり、前期は 3名1チームとして、自分たちで選択したニュースに関する新聞報道の温度差について比較検討を行った。また、政治学の基本的文献について担当教員による解説及び履修者による報告を中心に授業を進めた。前期には国分寺市議会議員をゲスト・スピーカーにお招きし、学生の選挙や地方自治に対する関心を高めるような工夫を行った。後期は日本との選挙制度や政党の特徴の違いなど比較する視点から、アメリカ政治の基本的な知識について文献の輪読と教員の解説で養った。最終的にはグループ・ワークによりリサーチ・ペーパーを執筆し、ペーパーの内容を整理してプレゼンも行った。
4.問題分析ゼミナール(通年)
3、4年生のゼミでは、2年間を通じて、政治学的アプローチから情報通信政策の研究を進めている。3年と 4年のゼミは基本的に合同で、2コマ連続で行っている。それには3年生に、卒業論文の準備を進めている 4年生からいい刺激を受けてもらいたいという目的がある。前期は、キャス・サンスティーンの『インターネットは民主主義の敵か』を輪読し、インターネットによってアメリカ政治がどのように変化しているのか、その功罪について日本と比較しながら議論を行った。夏のゼミ合宿は 4年生と合同で山中セミナーハウスにて2泊 3日で行った。
3年生は夏合宿前に割り振られた 3チームに分かれ、後期のゼミナール大会発表を目指してリサーチを始め、夏合宿では、その研究進捗状況について、チーム対抗で発表した。12月のゼミナール大会でグループ別に研究成果を発表したが、グループワークはチームワークがうまく育たず、非常に苦戦する結果となった。しかしリサーチ・ペーパー集として一つの形にまとめることはできた。また今年度も3年生の希望者にはテレビ朝日の見学会を行った。
5.問題解決ゼミナール(通年)
4年生のゼミ生は 1名留学中のため、7名であった。7名一人一人が教員と相談しながら自分で選んだ卒業論文テーマについて、4月以降数回の研究発表を行った。夏合宿では、4年生は卒業論文の研究進捗状況についてパワーポイントのスライドを使ってプレゼンテーションを行った。また 3日間の合宿を通じてスポーツや、花火大会、懇親会を行って 3年生との交流も深まったようである。後期は4年生にとっては卒業論文の完成が第一であったが、7名中5名が積極的に情コミジャーナルに投稿し、5名とも論文が掲載され、うち1名は佳作を受賞することができた。最終的に7名全員が卒業論文を執筆し、卒業論文アルバム集が完成した。
6.地域研究(アメリカ政治)(慶応義塾大学法学部通信教育)(後期)
本授業は、通信教育の学生のためのスクーリング授業であり、30代から 60代までの社会人が履修した。本授業の目的は、アメリカ政治の基礎知識や特徴をしっかり学び、自分なりのアメリカ政治に対する見解を身につけてもらうことにある。本授業では選挙、政策過程、大統領、議会、メディアや司法の役割、外交政策など、各回2テーマとして、久保文明、砂田一郎、松岡泰、森脇俊雅著『アメリカ政治新版』を教科書として、講義した。 
2-2 当年度担当授業
1.情報政策論A(前期)
本講義では、日本との比較の視座からアメリカの情報通信政策はどのように形成されるのか、その仕組みから初学者にもわかりやすく解説し、AT&Tの分割をはじめアメリカの情報通信政策の歴史を踏まえ、最近のオバマ政権の情報通信政策の特徴までを網羅して説明してきた。
授業内で連邦通信委員会などのホームページや YouTubeの動画も利用することで、学生にインターネットを使ってどこに行けばアメリカの情報通信政策の最新情報が入手できるのか、という点を示すように心掛けた。なお、本授業では就職活動中の 4年生のことを考慮し、出席は取らなかったが、書評レポートとリサーチ・ペーパー(アメリカのデジタル・デバイドがテーマ)及び定期試験の結果から総合的に評価した。また、付属高校の高校生も熱心に授業を聴講し、勉強になったとコメントシートを受け取ったことは、良い励みとなった。
2.情報政策論A(英語版)
本講義は、上述の日本語で行う情報政策論Aと同様の内容を英語で行うというものであった。そもそも情報政策論Aの内容はアメリカの情報通信政策を扱っており、それを留学生ではない日本人学生に英語で教えて理解できるのかと懸念していたが、予想通り留学経験のある学生しか履修しに来なかった。しかし非常に少人数の環境で勉強ができるということで履修者は満足していたようである。また、グローコムの研究者をゲスト・スピーカーに迎えるなど、ネイティブ・スピーカーによる講義を受ける機会も設けた。履修者とゲスト・スピーカーとの懇談会の場も設け、少人数であるがゆえに充実した時間を提供できたと思われる。学生はリサーチ・ペーパーを 2本英語で執筆し、出席点とこのペーパーにより、総合的に評価を行った。
3.情報政策論B
情報政策論Aで扱ったアメリカの事例と対比的に、主に日本の情報通信政策について扱うが、前期未履修者にも配慮して、アメリカの政策形成過程の仕組みについても適宜ふれて講義を行っている。主に日本の情報通信政策がどのようにして形成されるのか、1985年の電電公社の民営化など歴史的展開や官僚制や審議会の役割など政策形成過程の特徴から講義し、政治学初心者にもわかりやすい内容を心がけている。今年度も情報政策論Bでは、日本の情報通信政策に直接携わる方々として、総務省からゲスト・スピーカーをお招きする予定である。特に現在日本で初めて電波オークションが行われることからその担当部長にお話を伺う機会は貴重である。本授業の評価は、出席を重視し、中間試験とレポートで総合的に行うことになる。
4.問題発見テーマ演習A
政治学演習「インターネットが変える政治・選挙—日米韓の比較」ということで、今年度はテーマ設定を行った。『インターネットが変える選挙—米韓比較と日本の展望』に加えて三浦博史『ネット選挙革命』などを題材に、日本の政治や選挙がネットの利用が進むことでどのように変わるのか、あるいは変わらないのか、という点を議論することに主眼を置いた。履修者も多く、出席率も高かったので、毎回グループディスカッションの時間を設けることができた。
2002年の韓国大統領選挙戦に携わった経験を持つ李洪千氏をゲスト・スピーカーとして迎え、韓国の選挙についてご講演いただいた。またゲスト・スピーカーとともに学生とランチをとり、学生にとってとても楽しいひと時だったようである。
5.問題発見テーマ演習B
政治学演習「アメリカ政治と社会」ということで、テーマ設定を行った。履修者が前期のテーマ演習Aよりさらに増え、19名となった。選挙や政策過程、メディアの役割、大統領制、マイノリティの問題など、アメリカ政治・社会の諸問題について講義を担当教員が行い、それをベースにグループディスカッションを学生がしていく形式をとる。アメリカ政治・社会をより深く理解するために、映画もテキストとして利用する予定である。また、評価は出席・書評レポート・試験による総合評価である。
6.問題分析ゼミナール(通年)
今年度の 3年生は 6名であるが、非常に勉強熱心な学生が集まった。前期は『インターネットが変える選挙—米韓比較と日本の展望』を輪読し、選挙と SNSを切り口に現代の情報社会における政治参加の問題を検討した。江戸川区議会議員をゲスト・スピーカーにお迎えし、現実の政治の世界を垣間見ることができ、学生は大変喜んでいた。3年生は夏以降「デジタル・デバイド」を大きなテーマとして、各自が個別テーマを設定しリサーチ・ペーパーを執筆することとした。そのうち 1名は現在情コミジャーナルに投稿することを目指している。また、今年度から学生の協力により、ゼミのブログを大幅にリニューアルした。
(http://kiyoharaland.com/)
後期は、政治学の基本的な考え方について知識を養うため、現在、森脇雅俊『政策過程』を輪読している。
7.問題解決ゼミナール(通年)
今年度も、3・4年のゼミは2コマ連続合同で行っている。夏合宿は房総半島の安房鴨川で行い、4年生の卒業論文の進捗状況の説明、3年生のリサーチ・ペーパーの方向性の確認に加え、南房総IT推進協議会の方にゲスト・スピーカーでお越しいただき、南房総の地域 SNSの実態と課題についてお話を伺うことができた。今回初めて合宿先を大学のセミナーハウス以外にしたことで、地元の方のお話を伺うことができ、良かったと思われる。
2-3 その他の教育上の取り組み
 総務省や通信事業者など、情報政策論に関係の深い職種の方々を情報政策論や3、4年ゼミにゲスト・スピーカーとしてお迎えして、ゼミ生と交流を持てる機会を増やすようにしている。情報政策論の履修者の中には、そうしたゲスト・スピーカーの講演を聞けたことで、放送局や通信会社、総務省を就職先として考えるよいきっかけになったというものも複数人いた。また、2010年度後期には、前年度に引き続き3年のゼミ生によるテレビ朝日見学を行ったほか、2011年度前期には学会の研究会など外部の研究者や学生との交流も図れるような機会を希望者には提供している。さらに、2010年6月、2011年7月には、国際連携事務室のスタッフ・セミナーを企画し、アメリカン大学法科大学院大学のアジャンクト・プロフェサー兼連邦通信委員会弁護士顧問を務めるジェームズ・ミラー氏を招聘。終了後、ゼミ生との交流も深められるよう懇親会などを開催した。基本的に本を読んで知識を得るだけでなく、実務家との対話や研究会への参加を通じて、この分野の仕事や研究の面白さを知ってもらえるように、学生には様々な機会を提供していけるようにしたいと考えている。
(3) 研究成果報告
<著書>
1.清原聖子、前嶋和弘編著『インターネットが変える選挙 —米韓比較と日本の展望』、慶応義塾大学出版会、 2011年 1月。
2.清原聖子、「第10章テレコミュニケーション政策におけるイデオロギー的対立」、五十嵐武士、久保文明編著、『アメリカ現代政治の構図—イデオロギー対立とそのゆくえ』、東京大学出版会、20 09年 12月。
<論文>
1.清原聖子、「“日本版 FCC”構想に関する論考—独立行政委員会の政治的中立性の観点から—」、『電子情報通信学会誌』、V ol.94, No.5, 2011年, 354-358頁。
2.清原聖子、「ティー・パーティー運動とオバマ政権のテレコミュニケーション政策 —FCCによるネットワーク中立性の規則制定をめぐって—」、東京財団論考、201 1年 6月 7日
( http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=761)
3.清原聖子、「アメリカにおける学校・図書館向けのユニバーサルサービス支援プログラムの実施」、『 Nextcom』、Vo l.3, 2010 Autum, 12-1 9頁。
4. Shoko Kiyohara, “A Discussion toward Adoption of Internet Election Campaigns in Japan: What Can We Learn from the Case of the 2008 U.S. Presidential Election?”, InfoCom Review, vol.51, 2010, pp.15-26.
<学会報告>
1.清原聖子、「現代アメリカのテレコミュニケーション政策ネットワークの変容とイデオロギー対立—ネットワーク中立性の規則制定を事例に—」 2011年度日本比較政治学会大会、北海道大学、20 11年 6月 19日
2. Shoko KIYOHARA, “Parties, Candidates, and Voters: How did ICT Development Affect the 2008 U.S. Presidential Election Campaign?”, The U.K. and the U.S. in 2010: Transition and Transformation, at a one-day conference sponsored by the British Politics Group, Washington D.C., USA, September 1, 2010.
3. Shoko KIYOHARA, “ A Discussion toward Adoption of Internet Election Campaigns in Japan: Implications from the 2008 U.S. Presidential Election”, The International Studies Association’s 51st Annual Convention, New Orleans, LA, February 17-20, 2010.
<研究成果報告書>
1.清原聖子「米韓比較研究によるインターネット選挙運動の発展メカニズムとその展望」サントリー文化財団研究助成の研究成果報告書、20 10年 8月
2.清原聖子「先進各国におけるデジタルテレビ移行支援策の比較研究」、放送文化基金『研究報告』平成 20年度助成・援助分(人文社会・文化)」、 2010年 7月(共同研究成果報告)
<研究費獲得実績>
1.科学研究費補助金若手研究(B)(研究課題番号 22700261)研究課題「現代アメリカにおけるテレコミュニケーション規制改革メカニズムに関する実証的研究」(個人研究)( 2010年 4月~20 12年 3月)
2.サントリー文化財団研究助成研究課題「米韓比較研究によるインターネット選挙運動の発展メカニズムとその展望」(共同研究:研究代表者)(200 9年 8月~201 0年 7月)
3.放送文化基金研究助成研究課題「先進各国におけるデジタルテレビ移行支援策の比較研究」(共同研究:研究代表者)(2 009年 4月~ 2010年 3月)
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.情コミジャーナル編集委員 
4-2 大学業務
1.社会連携促進知財本部会議委員
2.社会科学研究所運営委員会委員
3.専任教授連合会幹事会委員 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.情報通信学会会員・同学会情報社会システム研究会主査
2.アメリカ学会会員
3.日本政治学会員
4.日本比較政治学会会員
5.日本社会情報学会会員
6.慶應法学会会員
7.日本マス・コミュニケーション学会会員 
5-2 講演・講師・出演
1.北海道大学公開シンポジウム・講演、2011年3月1日
2.東京財団現代アメリカ研究会・講演、2010年11月10日
3. American University Washington College of Law・講演、20 10年 9月 9日
4.武蔵野北高等学校・出張講義、 2010年 7月 9日
5.放送文化基金研究報告会・講演、2009年 11月 12日
5-3 その他の社会貢献
1.総務省情報通信審議会専門委員
2.一般財団法人情報通信振興会(旧電気通信振興会)・理事
3.国際大学グローコム客員研究員

竹中 克久 Katsuhisa TAKENAKA 専任講師

経歴
   1974年奈良県生まれ。 2003年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了、博士(学術)。
日本学術振興会特別研究員、関西学院大学 21世紀 COEプログラム専任研究員、関西学院大学先端社会研究所専任研究員等を経て、 2009年 4月より、明治大学情報コミュニケーション学部専任講師。専門は組織論および社会学。
   著書に『身体の社会学——フロンティアと応用』(共編著/世界思想社: 2005年)、『文化の社会学——記憶・メディア・身体』(分担執筆/文理閣: 2009年)など。
   論文「組織文化論から組織シンボリズムへ——〈シンボルとしての組織〉概念の提唱」(『社会学評論』 210:2002年)にて、 2002年度日本社会学史学会奨励賞を受賞。その他、主要論文に「組織戦略を社会学的見地から検討する——認知的・道具的合理性から理解可能性へ」(『社会学評論』224:2006年)や「組織秩序の形成と解体を説明するオルタナティブ——組織目的、組織文化、そして組織美学」(組織科学 41(2):2007年)など。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   博士論文である「組織の理論的研究」で展開した組織文化論や組織シンボリズム研究を超えて、組織美学や組織空間論を精査すると同時に、「組織が社会を生み出す」という仮説のもと、監視社会論や身体社会論へ組織社会学を援用する試みに着手した。
   前者の実績の代表的なものとして、 “The Concept of Organizational Culture and Sociology of Organization in Japan”(XVII World Congress of International Sociological Association,2010)があげられる。また、後者の実績としては、「組織が生み出す社会——刑務所、病院、学校、企業の比較から」(『情報コミュニケーション学研究』10・11:2011年)があげられる。
   また、2010年に採択された科研費補助金の若手研究(B)「組織における物理的環境が身体・感情に与える影響についての社会学的研究」(2010-2012)の遂行を行っている。 
1-2 今後2年間の予定
   まずは 2010年度に採択された科研費補助金の若手研究(B)の課題である「組織における物理的環境が身体・感情に与える影響についての社会学的研究」を具体的に進めてゆく。
また、「組織・社会・情報コミュニケーション」をテーマとした過去 10年の研究成果を著作のかたちで世に問う予定である。  
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   情報コミュニケーション学は、私の専門とする社会学と同じく、「何を学べるのか分からない」「答えが分からない」という学問に似ているように思える。ただ、社会学は「社会」に力点をおくあまり、「現代社会」を高所からしか語れない弱さを内包している。情報コミュニケーション学は、まさに社会の中(あるいは外)で情報が繋がり、離れ、自己増殖する特徴をもつ現代社会を説明可能なディシプリンだと考えられる。また、全ての社会現象をいったん「情報」という単位に還元したり、言語、貨幣、権力あるいは身体を機能的に等価なメディアと位置づけたりすることによって、おおよそ比較不能な社会現象が比較分析できる可能になるという、きわめて斬新かつ不可欠な学問であると実感している。その思いは、明治大学情報コミュニケーション学部での教員・学生の方々とのコミュニケーションによって、より確信的なものとなってきている。今後とも、多くの研究会などを通して、情報コミュニケーション学の発展に寄与したいと考えている。
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.情報組織論(前期)
組織論と情報論の交差する地点から、現代社会における組織の諸問題について、具体的な事例(組織内の情報弱者、偽装問題、情報倫理など)に触れ、授業を進めた。各回に、「情報コミュニケーション学」という見地から導き出される「視点」を提示した。(履修生数 182名)
2.組織論(後期)
組織論の基礎知識として、M.ウェーバー、E.メイヨー、C.I.バーナードといった古典から、A.エツィオーニ、H.ミンツバーグ、K.E.ワイクといった現在でも活躍する組織論者の見解まで、広く示すとともに、企業だけではなく、病院、学校、刑務所といった多くの組織を比較する視点を提供した。(履修生数 137名)
3.基礎ゼミナール(通年)
社会問題についてマスコミ報道やウェブで流される情報を取捨選択できる能力を身につけるため、社会学の基礎知識を共有しながら、学生自身がテーマを設定し、グループ・ディスカッションを行い、プレゼンテーション能力の向上を図った。(履修生数20名)
4.問題発見テーマ演習A(前期)
社会学という「常識を疑う」にあたって有益なディシプリンを中心に、文化や伝統、観光、恋愛といった社会にまつわる問題群を学生のプレゼンテーションとディスカッションにより、多様なモノの見方を習得する機会を提供した。(履修生数 20名)
5.問題分析ゼミナール(通年)
組織社会学に基づいて研究を行うゼミ生同士が集まり、「リーダーシップ」「組織文化」「組織コミットメント」などのテーマについてゼミ生の個人プレゼンテーションとグループ・ディスカッションを行いながら、プレゼンテーション能力の向上と論理的思考の洗練をはかった。(履修生数20名)
6.問題解決ゼミナール(後期)
論理的思考能力のさらなる高度化と、卒業論文執筆の指導を行った。(履修生数 24名)
7.総合講座 D(時事通信社寄付講座)(後期)
報道の最前線で活躍されている時事通信社の記者やデスクに、ニュース取材現場の実態と、取材を通じて把握した現代社会の断面を講義していただき、それをコーディネートした。(履修生数146名)
2-2 当年度担当授業
1.情報組織論
組織論と情報論の交差する地点から、現代社会における組織の諸問題について、具体的な事例(組織内の情報弱者、組織における監視、偽装問題、情報倫理、アカウンタビリティ、組織内のモンスターなど)に触れ、授業を進める。各回に、「情報コミュニケーション学」という見地から導き出される「視点」を提示する。
2.組織論
組織論の基礎知識として、M.ウェーバー、E.メイヨー、C.I.バーナードといった古典から、A.エツィオーニ、H.ミンツバーグ、K.E.ワイクといった現在でも活躍する組織論者の見解まで、広く示すとともに、企業だけではなく、病院、学校、刑務所といった多くの組織を比較する視点を提供する。「組織の比較」により重点を置いて講義を構成する。
3.基礎ゼミナール
社会問題についてマスコミ報道やウェブで流される情報を取捨選択できる能力を身につけるため、社会学の基礎知識を共有しながら、学生自身がテーマを設定し、グループ・ディスカッションを行い、プレゼンテーション能力の向上を図る。初年次の基礎教養としての意味合いから、新書を複数使用する予定である。
4.問題発見テーマ演習 A
社会学という「常識を疑う」にあたって有益なディシプリンを中心に、文化や伝統、観光、恋愛といった社会にまつわる問題群を学生のプレゼンテーションとディスカッションにより、多様なモノの見方を習得する機会を提供する。3年次の問題分析ゼミナールにスムーズに移行するために、自らの研究テーマを明確化させる。
5.問題分析ゼミナール
組織社会学について、独創的な問題設定と分析能力の向上を図る。
6.問題解決ゼミナール
卒業論文の完成を目指し、論理的思考能力の向上を図る。
7.総合講座 D(時事通信社寄付講座)
報道の最前線で活躍されている時事通信社の記者やデスクに、ニュース取材現場の実態と、取材を通じて把握した現代社会の断面を講義していただき、それをコーディネートする。学生から講師の方々への質問やコメントを、より大局的な観点から俯瞰する。 
2-3 その他の教育上の取り組み
   Oh-o! Meiji Systemを積極的に活用し、「情報組織論」「組織論」においては、各回のプレゼンテーションスライド資料を各 300枚以上ウェブ上に公開し、復習機会の向上を図った。 
(3) 研究成果報告
 【著書】
1. 2012年 3月『現代コミュニケーション論』(分担執筆),白桃書房[担当部分「組織とコミュニケーション——我々は何を共有しているのか」].
【論文】
1. 2011年 3月「組織が生み出す社会 ——刑務所、病院、学校、企業の比較から」『情報コミュニケーション学研究』10・ 11合併号,63-76.2. 2012年 3月「組織の使命と企業博物館 ——原子力発電展示が生み出す情報弱者」『情報コミュニケーション学研究』 12号.
【国際学会報告】
1. July, 2010 “The Concept of Organizational Culture and Sociology of Organization inJapan, XVII World Congress of International Sociological Association, Sweden.(単独口頭発表)
【学会報告】
1. 2010年 11月「組織の比較分析の可能性 ——刑務所、病院、学校、企業」第 83回日本社会学会大会、名古屋大学.
【研究費の取得】
1.科研費補助金若手研究(B )「組織における物理的環境が身体・感情に与える影響についての社会学的研究」(2010年度~2012年度).
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.ジェンダーセンター運営委員
2.修学委員会委員 
4-2 大学業務
1.学生部委員会委員
2.M-naviプログラム委員
3.スポーツ振興委員会委員
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本社会学会
2.日本社会学史学会
3.組織学会
4.関東社会学会
5.日本社会学理論学会 
5-2 講演・講師・出演
1.出張講義
実践学園高等学校で出張講義「情報社会に特有の社会問題を考える——組織における情報管理と監視」を行った。
2. Web
リクルート進学ネットから取材を受け、紹介記事が掲載された。

中里 裕美 Hiromi NAKAZATO 専任講師

経歴
   立命館大学文学部卒業。立命館大学大学院政策科学研究科政策科学専攻博士前期課程修了。
   博士前期課程在学中にスウェーデン・セーデルテルン大学へ交換留学。立命館大学大学院社会学研究科応用社会学専攻博士後期課程修了。博士(社会学)。博士後期課程在学中には,立命館大学産業社会学部第一号助手,日本学術振興会特別研究員(DC2)を務め,その後,日本学術振興会特別研究員PD(京都大学経済学研究科),立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー,ならびに佛教大学・帝塚山大学等での非常勤講師を経て,2010年 4月より明治大学情報コミュニケーション学部専任講師。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
1.「地域通貨」の経済社会学的研究
P2P(P eer to Peer:個対個)で取引を行う型の地域通貨の多くが失敗に終わる現況を鑑み,地域通貨取引を社会的行為として位置づけ,地域通貨取引「行為」の社会学的記述と経験的分析を通じて,地域通貨活動の活性化と地域通貨活動の成果の可視化に貢献することを目的とした研究を進めている。
2.スウェーデンにおけるサードセクター組織(NPO)の研究
スウェーデンにおけるサードセクター組織 (NPO)の概要(=歴史・組織形態・規模・活動分野や法・税制度など)とその特徴について,文献資料研究をもとにした研究を進めている。
3.ワーク・ライフ・バランスの企業での実施に関する瑞・蘭・日の比較研究
科学研究費補助金を受けて行われた研究であり,筆者は研究代表者らとともに,ワーク・ライフ・バランスの先進国といわれるスウェーデンの 2つの組合( FinansforbundetとIngenjorsforening)に属する雇用者を対象とした質問紙調査を実施し,その考察を行った。
4.現代日本映画の製作提携における企業間ネットワークに関する研究 
1-2 今後2年間の予定
   上述の研究を継続して行うとともに,次の研究テーマでの研究を進める。
1.NPOにおける社会的行為の組織化とそれが地域社会に及ぼす影響に関する実証的研究
2.地域住民の対人・援助ネットワークと社会関係資本に関する研究など 
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   昨年度は,本学部の基礎教育科目の教科書である『コミュニケーション・スタディーズ入門』(2011,大修館書店)のなかの第 8章「社会ネットワークとコミュニケーション」を執筆する機会を頂いたが,国内・外の研究者との連携を図りながら,ひきつづき「情報コミュニケーション学」という新しい学問と自身の研究との接合をめざしたい。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.ネットワーク社会論(前・後期)
2.社会調査実習(通年)
3.基礎ゼミナール(通年)
4.問題発見テーマ演習A・B(通年) 
2-2 当年度担当授業
1.ネットワーク社会論(前・後期)
人と人,人と集団,あるいは集団と集団の間を結ぶ社会的な繋がり(ソーシャルネットワーク),およびソーシャル・キャピタル(社会関係資本)についての理解を深めることをめざしている。また,繋がりの質や構造を科学的に把握するための手法である社会ネットワーク分析の考え方とそのいくつかの指標(距離・中心性・密度など)の解説も行う。
2.社会調査実習(通年)
「社会調査士」資格<G>区分認定科目である。受講生は,社会調査の基礎知識の習得,調査票の作成および実査,そして得られた社会調査データを適切な方法で処理し,統計ソフトSPSSを用いたデータ分析を行って『調査報告書』を完成させる。
3.コミュニケーションA(前期)
身近なものでありながら学術用語としても多義的なものである「コミュニケーション」について,『コミュニケーション・スタディーズ入門』をテキストとし,その序章から第 4章までを扱う。あわせて,受講生は大学での学修に必要とされるプレゼン能力・文章力を身につけるべく複数回にわたる発表やレポート作成を行う。
4.コミュニケーションB(後期)
コミュニケーションAの後半部にあたり,テキストの第 5章から第 8章(終章)までを扱う。
「コミュニケーション」と異文化・ジェンダー・組織・社会ネットワークなどの分野(テーマ)との関連について学ぶ。
5.問題発見テーマ演習A・B(通年)
NPOに関する文献の輪読を通してその基礎的事項について学んだ後,受講生は関心領域別のグループにわかれて調査企画書を作成し,フィールドワーク調査を行う。また報告会にて,調査報告とディスカッションを行う。調査の内容をまとめ『ゼミレポート集』を作成している。
6.問題分析ゼミナール(通年)
社会的ネットワーク〈つながり〉に関連する諸テーマに興味・関心をもつ受講生に対して卒業論文の執筆に向けた指導を行う。夏休みには 2泊 3日のゼミナール合宿を行い,各グループ研究の進捗報告の発表を行った。
7.学部間共通総合講座ボランティア入門
ボランティアの基礎に関する教室での学習に加えて,受講生はボランティア体験(12時間の実習)を行い,実践を交えて主体的にボランティアの全体像を学んでいる。  
2-3 その他の教育上の取り組み
講義科目においては,毎回の授業内容に関する質問・意見・感想を集め,次回の授業時に対話形式でそれらへの回答・コメントをレジュメにして配布,授業中に解説を行っている。 
(3) 研究成果報告
<著書>
1. 「第 8章 社会ネットワークとコミュニケーション」鈴木健編著『コミュニケーション・スタディーズ入門』,pp. 181-203, 大修館書店,2011年 7月.
<学術論文>
2. 「非営利組織の活動におけるソーシャル・キャピタルの「よさ」—地域通貨組織を事例に—」『立命館産業社会論集』,47巻 1号, pp.157-172,201 1年 6月.
3. 「実践コミュニティとしての地域通貨組織への会員の参加構造と組織のパフォーマンスの関係—スウェーデンの LETS組織を事例として—」『ノンプロフィット・レビュー』, 11巻 1号,pp .1-10,2 011年 6月.(共著)
<翻訳>
4. 『Pajekを活用した社会ネットワーク分析』(=原著『Exploratory SocialNetwork Analysiswith Pajek <Structural Analysis in the Social Sciences 27>』の翻訳東京電機大学出版局,「第 6章:中心と周辺」・「第 7章:仲介者とブリッジ」・「第 8章:普及」(pp.171-264)を担当,2009年 11月.
<報告書・ワーキングペーパー>
5. 「Evolution of Promotion Alliance Networks in the Current Japanese Film Industry:Advantages of Social Cohesion in Digital Media Mix Promotion」The Working Paper presented at 27th EGOS Colloquium, Gothtenburg, Sweden, July 6-9, 2011.(共著)
6.『ワーク・ライフ・バランスの企業での実施に関する瑞・蘭・日の比較研究』(平成 19年度~平成 21年度科学研究費補助金基盤研究(B),研究代表者:篠田武司の成果報告書)「スウェーデンの組合におけるワークライフバランス調査」(pp.281-305)および「Handels」(pp.202-208)を担当,2010年3月.
<学会報告・学会討論者>
7. 学会報告:「地域住民の対人援助ネットワークに関する研究—近畿2府4県を対象とした質問紙調査の分析から—」第84回日本社会学会大会,関西大学,2011年9月. (共同報告)
8. 学会報告: “Evolution of Promotion Alliance Networks in the Current Japanese Film Industry: Advantages of Social Cohesion in Digital Media Mix Promotion,” 27th EGOSColloquium, Gothtenburg, Sweden, July 6-9, 2011. (共同報告)
9. 学会報告:「地域通貨は地域社会にどのような繋がりをもたらすのか?—地域通貨ピーナッツの事例をもとに—」第 13回日本 NPO学会,日本大学,2011年 3月(共同報告,震災の為中止)
10. 学会報告: “Empirical Study on the “Social Effects”of Community Currencies,”International Conference on Community and Complementary Currencies, ENS de Lyon, France, February 16-18, 2011.
11. 学会報告: “Past Networks and Present Innovation Performance in Asian Context,” International Conference of OrganizationalInnovation, Siam University, Thai, August, 2010. (共同報告)
12. 学会報告:「地域通貨組織への会員の参加構造と組織のパフォーマンスとの関係」第 82回日本社会学会大会,立教大学,2009年 10月.(共同報告)
13. Discussant: “Needle Pulling Thread: The Emergence, Diffusion and Transformation of Ready-to Wear Fashion in New York and Paris between 1940s and 1960s” (Presented by Yue Zhao), 27th EGOS Colloquium, University of Gothtenburg, Sweden, July 6-9, 2011.
14. 学会報告討論者:「大恐慌期米国のスクリップ再考—地域通貨の経済社会的な機能を問う」(宮﨑義久氏・北海道大学)の報告に対する討論者,経済社会学会第 46回全国大会,日本大学,2010年9月.
<研究費獲得実績>
15. 明治大学若手研究( 2010年 7月~2 011年 3月)
16. 科学研究費基盤研究(C)(研究課題:「NPOにおける社会的行為の組織化とそれが地域社会に及ぼす影響に関する実証的研究」,研究代表者)(2011年 4月~)  
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1. 広報委員会委員
2.学生論文集編集委員会委員
4-2 大学業務
1.専任教授会連合会幹事会委員 
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本社会学会会員
2.関西社会学会会員
3.関東社会学会会員
4.経済社会学会会員
5. 日本地域学会会員
6. 組織学会会員
7. 北ヨーロッパ学会会員
8. 日本 NPO学会会員
9. 日本行動計量学会会員
10. European Group of Organizational Studies(EGOS) 会員 
5-2 講演・講師・出演
1.招待講義:東洋大学大学院経済学研究科「経済学方法論」, 2010年 7月 6日講師
2.出張講義:千葉県立匝瑳高等学校, 2010年 6月 23日講師
3.出張講義:横須賀学院高等学校, 2011年 10月 25日講師
4.出張講義:聖学院高等学校, 2011年 11月 16日講師 
5-3 その他の社会貢献
1.日本 NPO学会第12回年次大会運営委員( 2009年4月~2010年3月迄)
2.日本 NPO学会第13回年次大会運営委員( 2010年4月~2011年3月迄)
3.経済社会学会東部幹事(20 10年 9月~現在)
4.北ヨーロッパ学会学会誌編集委員会委員(20 11年~現在)

田中 洋美 Hiromi TANAKA 特任講師

経歴
   福岡県生まれ。ボーフム・ルール大学社会学博士。デュッセルドルフ大学東アジア研究所(現・現代日本研究所)研究助手,同常勤講師,ドイツ日本研究所専任研究員を経て, 2011年より明治大学情報コミュニケーション学部特任講師。その間,カッセル大学,デュースブルク・エッセン大学,東京家政大学等で非常勤講師を務める。 
(1) 全般的な報告
1-1 過去2年間の実績
   過去2年間における研究テーマは大きく分けて次の三つである。
①戦後日本型ライフコースの変化
②育児期の親のウェルビーイング
③現代社会の変容と社会的差異・境界の再編成
   ①は,過去 20.30年の間に顕著となった個人の生き方の変容をライフコースの視点から捉えようとするものである。とりわけ大きな変化が見られた女性の生き方の変化を取り上げ,その結婚行動の変化について新たな説明を試みている。従来ライフコース研究では統計データを用いた定量分析が中心であったが,本研究ではあえて質的調査法(半構造化インタビュー)を用いた理論構築型の研究を行っている。本研究では,ライフコースの変化の中でも,とりわけ女性の未婚化・晩婚化・非婚化が特に都市部で進行していることを踏まえ,東京都内で働く独身女性を対象とした聞き取り調査を行ってきた。このような実証研究に加え,同テーマに関する国際シンポジウムの企画・実施にも関わってきた。これは,ライフコース研究において個別に論じられることの多い,主要な人生の道筋(pathway,キャリア(career)とも呼ばれる)である仕事,家族,居住の三つの領域を併せて論じる機会をつくるためであった。同シンポジウムでは,家族のセクションにおいて自らも登壇発表者として独身女性調査の中間発表を行った。
   ②は,育児期の親のウェルビーイングに関する研究である。2009年,就学前の子どもを持つ父親・母親(一人親を含む)を対象とする全国調査がドイツで実施された。これを受けて,同様の調査を日本で実施すべく共同研究者と共に準備を進めてきた。これまでは主として日本調査立ち上げのための共同研究機関(ベネッセ次世代育成研究所等)との調整,調査実施機関の選定,実査に向けての調査票の準備等に取り組んできた。
   ③については,これまで取り組んできたジェンダーやその他の差異に関する諸研究が含まれる。さまざまな社会変化が進む中,近代を特徴づけてきた社会的排除と包摂のシステムがどのように変わりつつあるのか(あるいは変わっていないのか)ということに関心を抱いてきた。特にジェンダーという社会的差異に焦点を絞り,公私分離を特徴づける性役割の変化に関わる諸現象について,具体的には女性の賃金労働や政治参画について様々な調査を実施してきた。またジェンダー以外の社会的差異については,人の国際移動(看護師のような医療従事者の移動やメディカルツーリズム)や新たな国境管理体制の登場等に関する文献調査を,細々とではあるが,進めてきた。
1-2 今後2年間の予定
    これまで取り組んできた主要な研究プロジェクトの仕上げを目指す。また新たな研究を立ち上げるべくための準備に取りかかる。
   上記①については,学術書の刊行と論文の執筆・投稿という課題を果たす。②については,2012年春に予定されている実査を成功させ,その後のデータ解析,研究成果発表につなげる。③については,現代日本社会のジェンダー構造を世紀転換後の社会状況を踏まえて再考し,その成果を海外に発信していきたい。
   以上,研究活動について述べたが,教育活動においては,担当科目の質の向上のためにより一層の努力をする。教材・資料づくりはもとより,授業の運営等に関する教育スキルのアップにも力を入れる。
1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望
   現職に着任してから間もないため,学部が掲げる情報コミュニケーション学が実際にどのようなものなのかは今後も学んでいかなければならないが,これまでのところそれはグローバル化,高度情報化に特徴づけられた現代社会の諸相に学際的に迫る新しい学問領域であるという印象を受けている。このような印象に基づくならば,これまで社会学を専攻しながら関わってきた日本研究,ジェンダー研究,グローバリゼーション研究といった学際的な学問領域での経験を活かし,どのように学部の情報コミュニケーション学に寄与できるのか,考えていきたい。 
(2) 教員成果報告
2-1 前年度担当授業
1.ジェンダー論を考える(東京家政大学人文学部,家政学部,前期・後期)
社会文化的に形成される性のあり方を指す用語とされるジェンダーを,性差またはそれに関係する社会的差異を生産・再生産する社会構造ないしシステムとして捉えた上で,社会の様々な領域についてジェンダーの視点から考えると何が見えてくるのか,どのような特徴が浮かび上がってくるのかを論じた。通常ジェンダー論で取り扱う家族,学校,労働,政治等を,社会的差異としてのジェンダーが(再)生産される場として捉え,そのような場でいかにしてジェンダーの差異化が起こるのかを考察した。
2.国家と国境を考える.地域・移民・国家(獨協大学全学総合講座,後期)
オムニバス授業の二回分(「移民から考える ①」「移民から考える ②」)を担当した。近年グローバリゼーションが進む中,国家と国境のあり方がどのように変わりつつあるのかについて,グローバリゼーション論の主要な言説を整理した上で,人間の国際移動に関するさまざまな現象についてナショナリティ,エスニシティ,階級,ジェンダーといった複合的な視角から考察した。例えば,近年越境化が進む国家の国境管理体制,不法移民として生きる人々の越境的な日常に関する事例を取り上げ,国家の領土性の脱領域化( de-/extra-territorialization)やトランスナショナリズムの展開が必ずしも国家の影響力や国境の重要性の低下につながっていないことを明らかにした。
2-2 当年度担当授業
1.基礎ゼミナール(明治大学情報コミュニケーション学部,通年)
履修学生 20名。「社会学入門.差異と境界について考える」というテーマで取り組んでいる。
前期では,社会とは何か,社会学とは何か,社会についてどのように学んだらよいのかについて学ぶとともに,社会学の入門テキストに収められている基礎的文献の購読とディスカッションを通して,ジェンダー,エスニシティ,ナショナリティ,階級,階層といった社会的差異に関する基本的な概念について学ぶとともに,基礎的な学問スキルの向上に努めている。
2.問題発見テーマ演習 A(明治大学情報コミュニケーション学部,前期)
履修学生 18名。社会変動論をテーマとする。今学期は, ①人口学的変動(少子化や未婚化,それと関わる家族,パートナーシップのあり方の変化)と②経済変動(ロストジェネレーションと呼ばれる世代の働き方に焦点を当て,バブル経済崩壊後の若者の働き方の変化をもたらした制度要因の考察)を取り上げ,ライフコース,ジェンダー,世代という切り口から近年の日本社会の変化について考察した。文献の購読,発表者によるプレゼンテーション,それに続く議論により理解を深める演習形式の授業を実施した。また授業で取り上げた書籍については,書評の課題を課し,自分の考えを文章にまとめる訓練の機会を設けた。なお社会変動論の重要テーマである③社会運動についても取り上げたが,今学期は教員による講義とそれに基づくディスカッションという形式を取った。
3.問題発見テーマ演習B(明治大学情報コミュニケーション学部,後期)
履修学生 18名。グローバリゼーションの社会学をテーマとする。特に近代的な国家と国境のあり方が近年どのように変わっているのかについて事例研究を通して考察する。
4.ジェンダー論(明治大学情報コミュニケーション学部,前期)
履修学生は約 160名。今年度から本学で担当するにあたり内容を一部改訂し,学際的な本学部のカリキュラムに活きるようなジェンダー論を心がけた。各回では取り上げるテーマ(家族,身体,労働,政治等)についての概論となるような導入部を設け,各テーマに関する主として人文・社会科学における一般的な学説や主要な言説についての概要を提供した上で,ジェンダー分析を行うというスタイルを採った。なお各回,理論だけで抽象的にならないように,具体的な事例を盛り込み,映像資料なども用いる等,学生の理解が促されるよう注意を払った。
5.基幹科目(異文化理解) II(明治大学全学,後期)
上記ジェンダー論を英語で開講する。
6.情報コミュニケーション学入門A(明治大学情報コミュニケーション学部,前期・後期)
オムニバス授業の第二回目を担当した。「コミュニケーションのジェンダー問題を考える」と題する講義を前期は 2011年5月10日に、後期は9月27日に実施した。 
(3) 研究成果報告
1.(著書) Japanische Frauennetzwerke und Geschlechterpolitik im Zeitalter derGlobalisierung(グローバル時代における日本の女性ネットワークとジェンダー・ポリティクス). Munchen: Iudicium, April 2009,全 579頁,単著 .
2.(学術論文)「第7章 ジェンダーとコミュニケーション」鈴木健編著『コミュニケーション・スタディーズ入門』大修館書店, 2011年 7月,158.1 80頁,単著
3.(学術論文) “Identifying and Explaining Ambiguities and Ambivalences in Middle Adulthood: The Life Story of Ms K.” DifferentPerspectivesonBiographies, ed. T. Kobayashi. Tokyo: Hitotsubashi University Graduate School of Social Sciences, March2011, pp. 11-32, 単著.
4.(学術論文)「人の移動と国家.ドイツへ渡った韓国人看護要員」『マテシス・ウニウェルサリス』第 12巻第 1号, 87-119頁,201 0年 11月,共著.
5.(学術論文)“ Stated Desire versus Actual Practice: Reviewing the Literature on Low Fertility.“ JapaneseStudies, Vol. 29, Issue 3, December 2009, pp. 415-430, 単著,査読あり.
6.(書評)“ A Japanese Way of Life in Change: Marriage and Work in Woman’s and Men’sLives: A Book Review of 田中亜紀子『満足できない女たちアラフォーはなにを求めているのか』and 山田昌弘・白河桃子『「婚活」時代』 ”. Japanstudien, Vol. 21, December2009, pp. 351-359, 単著
7.(記事)“ Japanese Way of Life: Continuity and Change.” DIJNewsletter, No. 38,November 2009, p. 2,単著
8.(学会報告)「働くシングル女性の結婚と仕事をめぐるライフコース選択—東京,ソウル,香港を例に」ドイツ日本研究所・明治大学ジェンダーセンター共催日独国際シンポジウム『ライフコース選択の臨界点.生き方はどこまで自由に選べるのか』2010年 10月 22日.23日,明治大学紫紺館,共著.
9.(学会報告)“ Unmarried working women in Tokyo: Social change or continuity?” Paper presented at the British Association of Japanese Studies (BAJS) Triennial Conference, School of Oriental and Asian Studies (SOAS), London, UK, 9-10 September2010. 単著.
10.(学会報告) “Family effects on women’s decision to run for office: Women candidates in the 2009 Tokyo Metropolitan Assembly Election.” Paper presented at the 6th Japan-America Women Political Scientists’ Symposium (JAWS) “Gender, Politics and Policy: Post Elections”, Washington College, Chestertown, Maryland, USA, August2010, 共著.
11.(学会報告) “Single working women in Hong Kong and Tokyo: Cases of normal deviance?” Paper presented at the XVII World Congress of Sociology, International SociologicalAssociation, Gothenburg, Sweden, July 2010, 共著.
12.(学会報告) “Identifying and explaining ambiguities and ambivalences in middle adulthood: The life story of Ms K.” Paper presented at the XVII World Congress of Sociology, International Sociological Association, Gothenburg, Sweden, July 2010,単著.
13.(学会報告) “The pursuit of happiness across borders? Internationalization ofJapanese women’s movements in an age of globalization.” The Annual Meeting of theAssociation for Asian Studies, Philadelphia, 28 March 2010, 単著 .
14.(学会報告)“Global norm diffusion and the rise of networks: the case of gender norm and Japanese women’s networks.” The 5th General Conference of the European Consortium of Political Research (ECPR), University of Potsdam, Germany, 10September 2009, 単著.
15.(学会報告) “Single working women in Tokyo: their negotiations on work and marriage.” The 13th Asian Studies Conference Japan, Association of Asian StudiesRegional Conference, Sophia University, Tokyo, 21 June 2009, 単著. 
(4) 行政業務担当報告
4-1 学部(大学院)内業務
1.ジェンダーセンター運営委員
2.国際交流委員
(5) 社会貢献
5-1 学会・委員会活動
1.日本社会学会
2.国際ジェンダー学会
3.日本政治学会
4.日本ドイツ学会
5. International Sociological Association (ISA)
6. Vereinigung fur sozialwissenschaftliche Japanforschung (VSJF)
7.学術雑誌 Contemporary Japan査読者 
5-2 講演・講師・出演
1.群馬県立男女共同参画センター講座招聘講師,20 11年 10月 22日(予定)
2.青山学院大学英文学会主催特別講義講師,20 11年 6月 20日
3.獨協大学全学総合講座「国家と国境を考える.地域・移民・国家」(後期)講師, 2010年11月.12月
4. Vortragsreihe an der Deutschen Gesellschaft fur Natur- und Volkerkunde Ostasiens(OAG), Tokyo(O AGレクチャーシリーズ)/日独交流 150周年記念イベント講師, 2010年11月10日