Go Forward

京きもの店「ゑり善」を訪問







(1)組織、活動概要
創業は四百二十年余り昔、天正12年に遡り、「当社は専門店である。したがって最も大切なことは、人と人との繋がりである」のゑり善の先人の言葉で言い表せるように、ただ販売するだけでなく、きものの着こなしやTPOのアドバイスなど様々なフォローによるアフターケアーも充実しており、CS(顧客満足度)の向上に努めている。

(2)聞き取り調査
Q:呉服店のCSRとなるとイメージがわきにくいのですが、ゑり善さんではCSRを行っているのでしょうか。
A:、日本のCSRの原点として再認識されている「実の商人は、先も立、我も立つことを思うなり」と、実にシンプルな言葉でCSRの本質的な精神を表現した石田梅岩や、近江商人の「売り手良し、買い手良し、世間良し」の「三方良し」の考え方に近い形でCSRを行っているのではないでしょうか。社会、市場に対しては適正な価格と品質の良さをモットーに時代の流れが変遷しつつある現代に着物を装う満足感、喜びを提供し、TPO、コーディネートの相談も承り、取引先に対しても事業を継続することにより和装産業の活性につながり、また染織技術の継承と発展の一翼にもなっています。
Q:染色に使う材料の再利用など環境保全に貢献するようなコスト削減には取り組んでいるのでしょうか。
A:染色に使う材料の再利用は行っていませんが、着物の特徴が結果的にエコなサイクルを生み出していると考えます。着物の仕立てでは洋服や他の民族衣装に比べ裁ちが少ないため、貴重な素材を有効に活用することができ、このことが結果的にエコにつながっているのではないでしょうか。また着物を購入されたお客様によっては、その着物が親から子、子から孫と受け継がれます。これも着物の良いものは時代を問わず生き続けるという特徴を活かしたものです。
Q:伝統を守りながらの企業発展は非常に難しいことと考えられますが、日々の経営において苦労するエピソードはあるでしょうか。
A:京都商法に基づいた身の丈に合わないことはしない、信用を重んじる経営を行っています。これは常に変化する世の中で無理はしないで伝統を継承しつつ、企業も変化していこうという考えです。苦労したエピソードではないですが、現代生活のカジュアル化により着物を着る機会や環境が減りつつあるのが気がかりです。しかし近年では着物を購入してくださる外国人さんがいらっしゃたりもします。

(3)学生の感想
一見呉服店はCSRに無関係であるように思えるが、他の洋服より無駄のない着物作りはそれ自体でコスト削減につながり、和装産業の活性や染色技術の継承と発展の一翼をになっていることからもわかるとおり、事業そのものが社会貢献につながっているのではないかと感じました。
ゑり善さんのみなさん、お忙しい中インタビューに応じていただき、まことにありがとうございました。ご協力に深く感謝申し上げます。


実施日 2010年9月17日
実施場所 京都府京都市中京区
担当教員 小関隆志