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オープン初日の杉原特任教授
明治大学先端数理科学インスティテュートに、錯覚と数理の融合研究拠点となる「錯覚美術館」が、東日本大震災の影響を受けオープン日程を2ヶ月遅らせて、先日5月13日に内覧会、翌14日一般向けにグランドオープンの運びとなりました。この錯覚美術館は、CRESTの「数学領域」で昨秋採択された研究プロジェクト、「計算錯覚学の構築」における錯覚と数理の融合研究拠点として設置されました。美術館には“だまし絵”を立体化した不可能立体と、同じ原理を利用して、あり得ないことが起こっているように見える不可能モーションの錯視立体を設計・制作した作品など、錯覚作品約30点が展示されています。
展示品の中には、明治大学先端数理科学研究科の杉原厚吉特任教授の作品のひとつ、「何でも吸引4方向滑り台」も展示されています。この作品は、2010年5月フロリダで開かれた第6回Best Illusion of the Year Contestで最優秀賞に選ばれ、「計算錯覚学の構築」プロジェクトがCRESTに採択される一因ともなったものです。
なお、作品の制作過程で生まれる新しい立体錯視現象についても、研究が進められることになっています。
◆CREST◆
独立行政法人科学技術振興機構(JST)が2010年8月25日、社会・経済の変革につながるイノベーションを誘起するシステムの一環として、戦略的重点化した分野における課題解決型基礎研究を推進し、今後の科学技術の発展や新産業の創出につながる革新的な新技術の創出を目指すべく、総額1億5千万円から3億円を助成する戦略的創造研究推進事業(CREST)として立ち上げたプロジェクト。
明大が採択された研究は、国が定めた11の研究領域のひとつ「数学と諸分野の協働によるブレークスルーの探索」の枠組みで行われ、杉原厚吉特任教授、宮下芳明理工学部准教授、友枝明保研究・知財研究機構特任講師および東京大学と共同で進められる。杉原特任教授らは人の錯視現象(錯覚)の数理モデリングを通して、錯視の仕組みを理解し、錯視効果を数量化、制御する方法を開拓する。
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2ヶ月遅れての開催となりましたが、グランドオープン当日は「錯覚」を楽しむ若い女性の姿も多く見られました。一人の滞在時間は平均30分前後、身近で日常に起こっている錯覚の不思議に新しい世界を垣間見たような感覚を抱きながら、来館者はみなそれぞれ手に取ったり、距離を変えてみたりしながら、一つ一つの作品に見入っていました。
◆ 作品の紹介 ◆

不可能物体に錯視している状態を映し出したモニターを配置
不可能物体はある1点から見たときに、不可能な形以外には見ることができなくなります。これも不可能立体の一つ。棒はまっすぐです。しかし棒が曲がっていないと不可能なはずの立体に錯覚によって見えている状態をモニターで見ることができます。(立体の実物も展示)

錯視アート「蛇の回転」
このアートは静止画ですが、どうしても動いて見えてしまう・・不思議です。
図の様に上り坂を作り、走っている車にカメラを搭載。車内から実際に見える映像をモニターに映し出せるようにしました。道路は地平線が見えないように黒いパネルで目隠ししています。
すると、モニターに映し出された映像は、上り坂ではなく下り坂に錯覚して見えてしまっています。これは実際に夜の山道などで起こりうる現象です。
緩やかに見える斜面が実際は急勾配でスピードを出しすぎたり、逆にいつも渋滞する道は実際より急勾配に錯覚していて、意識的にブレーキを踏んでしまっているなど、錯覚による現象といえるでしょう。標識の設置、道路を作る際に、この研究は錯覚が起こりにくい安全な道路を作ることの手助けとなります。また逆の発想では、 “錯覚”を利用した安全な運転ができる道路を作ることもできるわけです。数学で錯覚を計量化することで、自由に思い通りのもの作りができるようになります。

錯視アート
一番上の階段のように斜めに見える文字列も、もうお分かりでしょうか、これは真っ直ぐに配置した文字列なのです。文字の1つ1つもきちんと真っ直ぐに描かれています。でもどうしても斜めに見えてしまいます。
あるデザイナーが、どんなにまっすぐに描いてもクライアントから斜めになっているとクレームが来ることがあって困ると言っていましたが、これと同じ錯覚が生み出した現象といえるでしょう。
中央の絵は上の文字画像から錯覚を引き起こす“斜め成分”を取り出したものです。この斜め成分を取り除いた一番下の画像は、真っ直ぐにしか見ることが出来なくなりました。
この様に、錯視を起こす成分を数学的に取り出すことが可能になったわけです。
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◆ごあいさつ◆
当館は5年の期間限定で研究拠点として開設いたしましたが、広く多くの方に是非錯覚を知っていただき、またその反応を研究にも活かしていきたいと、毎週土曜日のみ美術館として一般に公開することといたしました。館内にはだまし絵を立体化した不可能立体と、同じ原理を利用してありえないことが起こっているように見える不可能モーションの錯視立体を設計・制作した作品など、約30点の作品を展示し、楽しみながら色々な錯覚を体験できます。
私たちは錯覚という現象を、数学を道具に用いて理解しようとしています。数学では錯覚を数理モデルとして数式化することができます。そして数式化することで錯視の強さの数量化が可能になります。この新しい研究分野を「計算錯覚学」と名付けました。美術館に展示する作品はこの研究成果として生まれてきたものです。作品を制作していくうえで生まれる新しい立体錯視現象についても研究が進められています。
展示物はどんどん入れ替える予定ですので、時々お立ち寄りいただけるとまた違った錯覚を知っていただけると思います。数学がこんなところに役立っている姿も理解していただけると嬉しいです。
美術館では今後ご来館いただいた方にアンケートをお願いする予定です。実際に錯覚を体験していただいた結果をもとに、新たな研究テーマとして役立てていきたいと思っていますので、是非ご協力ください。
杉原 厚吉
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【開館日・時間】
毎週土曜日 10時〜17時
(平日は研究室として使用しているほか、案内人もおりませんのでお入りいただけ
ませんのでご了承ください)
入場は無料です |
◆ 杉原 厚吉 (すぎはら・こうきち) 先端数理科学研究科特任教授プロフィール ◆
【略歴】
1971年6月 東京大学工学部系計数工学科卒業
1973年3月 東京大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修士課程修了
1973年4月 東京大学工学部助手
1973年7月 通商産業省電子技術総合研究所研究官
1980年2月 工学博士(東京大学より)
1981年4月 名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻助教授
1986年4月 東京大学工学部計数工学科助教授
1990年4月〜1991年3月
Purdue大学(アメリカ合衆国)計算機科学科客員助教授
1991年1月 東京大学工学部計数工学科教授
2001年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻教授
2009年4月 明治大学研究・知財戦略機構特任教授
2011年4月から現職
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