「明治大学広報」
 
第553号(2005年4月1日発行)
論 壇:大学機能の再編・強化を
政治経済学部長 飯田 和人
この1月にだされた中教審答申は、21世紀を知識基盤社会の時代とし、ここでの高等教育が「誰もがいつでも自らの選択で学ぶことのできる」ユニバーサル段階にあるという認識を示している。
 これを踏まえ、答申は、各大学が自らの選択により緩やかに機能別に分化することで、それぞれの個性や特色を明確化していくことを求め、今後国は各高等教育機関に対してその方向での支援を実施していくよう提言している。
 答申が各大学の個性・特色と認めるのは、以下7つの機能である。@世界的研究・教育拠点A高度専門職業人養成B幅広い職業人養成C総合的教養教育D特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究E地域の生涯学習機会の拠点F社会貢献機能(地域貢献、産学連携、国際交流)等。
 そこで、個性・特色のある大学としてモデルにあげられるのは、例えば上記の機能のうち@とAに特化したものとして大学院の博士課程や専門職学位課程に重点を置く大学であり、Cの機能に特化したリベラル・アーツ・カレッジ型の大学である。ただし実際には、このような一部の機能に特化できる大学は極めて少数であろう。前者のモデルでは多額の予算措置を必要とし、後者の場合、研究機能を欠落した大学の発展モデルは採用しづらいからである。したがって、答申もまた複数の機能を併有するケースを想定し、各機能の比重のおき方に大学の個性・特色があらわれればよいとしている。
 では、明治大学はどうすべきか。当然に、複数機能をあわせもつ総合大学として、各機能の比重のおき方にその個性・特色を打ち出していくことになるであろう。本学で実際に行われてきた諸施策もその方向にあったが、今後はこれを如何に自覚的(戦略的)に再編・強化していくかにかかっている。では、そうした大学機能の再編・強化策の核となるものは何か。
 大学院であろう。しかも、ここでは限られた人的資源を有効活用できる抜本的施策が必要である。例えば、修士課程は従来の学部・学科の上に設置された研究科という縦割り構造を解体し、人文科学、社会科学、自然科学という学問領域それぞれで各研究科横断的な体制を再構築して、現在は各研究科に分散している人材の再組織化・有効活用を図るといった、抜本的・画期的な大学院改革である。
 その際、この大学院と研究・知財戦略機構との連携、およびこの戦略機構における人材(専任・客員教員採用)政策が改革の鍵を握るように思われるが、これについては今後の大学執行部の手綱さばきに大いに期待したいところである。むろん、各学部もこれに「同心協力」の体制で臨まなければならぬことは言うまでもなかろう。
 
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