「明治大学広報」
 
第554号(2005年4月15日発行)
◆明大・箱根町地域活性化セミナー
  明治大学が『「箱根活性化計画案」報告会』を開催
  ビジネスマンと学生が箱根の町興しを提言
「旅館・ホテルの品質基準を作成し、選ばれる観光地に」「『芸術特区』を申請し、芸術による観光振興を」―。さる2月27日、明治大学リバティ・アカデミー主催「明治大学・箱根町地域活性化セミナー」(箱根町、箱根温泉旅館協同組合後援)では、受講生の研究成果を報告する「『箱根活性化計画案』報告会」を開催。会場となった箱根湯本温泉「ホテルおかだ」には、山口昇士氏(箱根町長、67年商卒)ら行政関係者のほか、鈴木茂男氏(箱根温泉協同組合組合長、ホテル南風荘)、久保寺治郎氏(箱根湯本観光協会会長、箱根水明荘)、葭田昌一氏(湯本富士屋ホテル取締役支配人)をはじめとするホテル・旅館関係者、小田急電鉄や箱根登山鉄道、さがみ信用金庫など地域産業の関係者、地元商店の代表者ら約45名が集まり、受講生の報告を熱心に聞き入った。
 このセミナーには、都心に勤務する社会人受講生18名に本学学生2名を加えた合計20名が受講。昨年10月22日の開講時から4つのグループに分かれ、約4カ月間に渡り、大友純商学部教授、小川智由商学部教授らの指導を受けてきた。受講生は、土・日を利用した現地調査など自主的な調査結果に各種統計等を加え、SWOT分析や消費者行動分析などの手法を活用しながら、消費者視点で地域経営の諸課題を浮き彫りにした。今回の報告会は、セミナーの最終回として、それら地域の諸課題に対しての解決策とその実施計画をとりまとめ、地域の方々に披露することを目的に開催されたものである。
 報告は各グループから、年間2千500万人が来園する東京ディズニーランドを超える観光地づくりのための新しいシステムとして、「サービス品質基準『HSO箱根2500品質基準』」の構築・実施計画案や、構造改革特区制度による芸術家育成と芸術文化を基盤とした新しい地域コンセプトの創設、また都心と箱根という地域間連携と異業種間の連携をミックスした新ブランド『箱根健美郷』の展開などが示された。既存の地域資源の活用では、温泉療養の顧客ポジショニングを老人層から子供層に変更することでファミリーを取り込み、体力増強や健康志向食品をテーマとした産業再活性化の提案もあった。
 1グループ30分以内の報告では、プレゼンテーションの工夫も求められ、プレゼンテーションソフト主体の報告に、実写ムービーや寸劇を取り入れたり、キャラクター設定された人物を主人公に物語形式で報告したり、プレゼンター自身も報告内容にあわせた衣装で登場する等、小田急電鉄で宣伝広報課長を務めた金野祥治氏(現在、小田急箱根ホールディングス潟`ーフマネージャー)も「優れた企画に加え、説得力あるプレゼンテーションだった」とその完成度に驚いていた。
 全ての報告が終了した後、フロアからの講評があった。萬翠楼福住専務の福住治彦氏は「私たちの地域をこれほどの愛をもって議論してくれたことに感謝したい」と受講生の努力を称え、ホテルおかだ取締役支配人の前島昌典氏は、「産業や業態を超えて地域一体となった取り組みの必要性を改めて実感、魅力ある地域にするために役立てたい」と今後の抱負を述べた。
 最後に受講生を代表して、佐藤由美子さん(シュガープラン代表)が箱根町に「箱根町地域活性化計画案」を贈呈した。受け取った若林伸二氏(箱根町企画部長)は、「今回の提案は、いずれも完成度が高く、地域にとって重要な指摘であり、貴重な事業計画書をいただいた。現在進行中のプロジェクトに組み入れるなど、報告の実現化に取り組みたい」と提案の実現を力強く誓った。
 今回のセミナーは、公開講座を活用した新しい地域貢献の試みである。通常の公開講座は、個人の知的欲求に貢献する講義形式が主体であるが、ここでは受講生自らが地域の課題解決に取り組むゼミナール形式で進行した。地域の代表者が教壇に立ち地域の課題を提供し、これを受けた大学教員が課題解決に必要なマーケティング論や地域経営論を講義、受講生は自らのビジネス上の課題と照らしながら、講師とともに課題解決に取り組んだ。
 報告会終了後、受講生の今野正信さん(本田技研工業勤務)からは「異業種のさまざまな発想のなかで、自己のマーケティング思考を鍛えることができた」、また小上馬広介さん(NTTコムウェア勤務)は「地域をテーマに自社の技術を再認識することで、ビジネスの幅が広がった」との感想があった。
 大学の第3の機能として地域貢献が注目されている。さまざまな地域貢献の形がある中で、リバティ・アカデミーでは、生涯学習事業を活用した地域住民との交流と、その交流から生まれる新しい知の創造をコンセプトとして、地域への知の還元を一層推進していく。(リバティ・アカデミー事務局)
 
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