「明治大学広報」
 
第554号(2005年4月15日発行)
論 壇:自立支援と学生部
学生部長 柳沢 敏勝
「長年の懸案が解決しつつある現在、学生部は、スチューデントセンターという新しい皮袋を用意し、学生のキャンパスライフをトータルにサポートするサービスの提供という新しい酒を注ぎ込み、ひいては『学生中心の大学』の一翼を担う絶好の機会に遭遇している」。これは、昨春、本紙に掲載していただいた拙文の結論である(第539号、就任所感)。
 それ以来、どの程度進めることができたのであろうか。残念ながら、新しい皮袋も酒もできあがったとはまだいえない。しかし、やるべきことははっきりしている。自分探しに悩む学生諸君に多種多様な「場」をいかに数多く提供できるかがその解答である。
 自らの職業人生をイメージすることのむずかしい学生諸君に、どのようなキャリアデザインの機会を提供できるのか。コミュニケーション能力など、社会的スキルの育成が十分でない学生諸君に自立のための機会をどれだけ多様に提供できるのか。具体的に言えば、正課、正課外を問わず、これらの場の提供がその方策であろう。
 3月上旬に開かれた私大連盟主催の学生支援会議に参加して衝撃を受けたのは、各大学の取り組みの進展具合であった。分科会に参加した大学の実に4分の3がキャリア開発形成支援のためのキャリアセンターを設置していたのである。加えて、多様な正課外教育プログラムを用意し、学生の自立支援に積極的に乗り出している大学が大手のなかに数多かったことも印象的であった。
 ただそこでは何をもって自立とみるかが大議論になったのであり、おそらくは多様な議論が可能であろう。とはいえ、おしなべて学生の自立支援が課題となっていたという事実にこそ注目すべきである。従来型の正課授業だけでは大学教育が完結しないことを物語っているからである。
 以上のことを踏まえるならば、奨学金や健康管理など、これまでの福利厚生サービスを一層充実させるのはもちろんのこと、それらに加えて、種々のプログラムを通じた自立支援に知恵を凝らすことが学生部の新たな課題となっていると言っても過言ではない。言い換えれば、厚生補導の管理ではなく自己形成のサポートが主要な課題となっているのである。
 しかしながら、社会的能力育成やキャリアデザインといった自己形成も社会との連携抜きには有効性が半減する。その観点からすれば、社会連携を意識したボランティアセンターや各種報奨制度の新設により、学生のもつ潜在能力を引き出すことが自立支援の一助となるはずである。また、課外教育プログラムを通して多様な世界の存在を認識させることも自分探しの助けとなるであろう。そのような場の設定が今年のテーマである。
(商学部教授)
 
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