「明治大学広報」
 
第559号(2005年7月15日発行)
論 壇: 知的財産と社会貢献
社会連携促進知財本部長 山元 洋
 本学が教育・研究に加えて第3の使命として、社会貢献を目標に本格的に活動に着手してから4年が過ぎ去ろうとしている。文部科学省が言う社会貢献の大きな主題は、大学の持っている知恵(シーズ)を社会に役立ててもらうことが目的である。これらはバブルがはじけて以来、日本はこれまでのように「キャッチアップ時代」から、「フロントランナー」になるべくことを大学に期待しているあらわれである。世界で「オンリーワン」になる独創的なアイデイアの創出と、創造的な活動をしてゆくことが求められている。

 本学のこれまでの成果としては100件を超す特許申請が行われ、技術移転も15件がなされ、着実に成果は上がっている。外部資金導入についても当初の3倍近く集められている。しかし、大学として直面している課題は、特許等における知的財産管理の財源確保と、知財に関する人材の配置の問題等多くの悩みを抱えている。また、最近は知的財産(特許)の表面的評価が先行し、研究の成果主義で判断される懸念が多い。特許等の実用化はセンミツ(千の特許のうち3つ実用化される)であると米国の昨年度のTLOの報告があるぐらい活用されるのは難しい。大学における研究はあくまでも基礎的な研究であり、2〜3年先の研究開発を重視するのは間違いで、10年先を見越してやるべきである。これに伴い、大学も将来を考えて、基礎研究成果も権利化される状況が生まれることが望ましいが、現状では私立大学の多くは財源の問題を含め非常に困難なところがある。最近筆者も世界的にみてありえない磁気特性をもつナノサイズの微粒子を発見したが、応用が考えられないものは、出願できないような状況に直面した。

 米国では25年前に日本のTLO(技術移転機関)と同様な機関が大学に設置され、特許出願件数は大変多いが、それらで潤っている大学はわれわれのよく知っている約1割の大学だけである。特許では金儲けは出来ないことの証明であろう。このようなことで、大学における社会貢献は、研究成果の社会での活用が主体で、金儲けではないといってもよい。

 しかし、大学の使命としては、将来にわたって、社会貢献の課題は引き継がれていく。本学にもようやく「研究・知財戦略機構会議」の設置が決まり、これからは本学の特徴である文理融合型の研究・知財の創出において、大学の個性を作り、伸ばしていくことが必要である。機構会議で本学の大きな戦略と、分野別の戦略を立て、研究プロジェクトの創設等を行なって、社会貢献していくことを期待したい。
(理工学部教授)
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