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明治大学広報
第570号(2006年4月1日発行)
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「ディープ・エコロジーの原郷」 尾崎和彦 著 (東海大学出版会、3800円)
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 今日の全地球的な環境危機を多様な統計資料を駆使して告発することは、たしかに有効な手法であるに違いない。だが、その環境をどう再生するかという段になれば、その種の科学的方法はほとんど無力であろう。ここでは、まずもって環境問題に対する理念、決断が決定的だからだ。

 人間の生命、健康を中心にする立場と、地球上の全生命体の平等な生存権までをも視野にとらえた主張とでは、その対応において雲泥の差を生ずるはずだ。前者の「シャロー」に対して、後者は「ディープ・エコロジー」と称する、現在、世界でもっともラジカルな環境思想・運動の一大潮流をなす立場である。

 著者は、この思想潮流の生成過程を、原郷である北欧神話にまで遡り、哲学史的検討をふまえて解明した。

 今日までディープ・エコロジーを論じた文献にはこと欠かないが、しかし著者のような探求は、世界的にみても、ほとんど手つかずのまま放置されてきた。だが、今やディープ・エコロジーに関するわれわれの理解は、それが有する奥行きと徹底性の点において、格段の深みへと導かれることになった。これは、かつて北欧神話学の確立に先駆された、著者ゆえになしえた偉業である。

金子光男・政治経済学部教授(著者は元政治経済学部教授)


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