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明治大学広報
第628号(2011年2月1日発行)
学長賞受賞スピーチ
「先駆者に学べ」
情報コミュニケーション学部3年 高 陽(コウ・ヨウ、中国)
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 私たちは偉大な時代に生まれた幸運な人間だと思います。戦争と飢饉を経験せず、世界2番目の豊かな国で留学することができたからです。

 私のような留学生たちを日本に駆り立てたいろんなきっかけの中で最も重要な原因は日本に対する憧れです。日本の文化的な自由さと物質的な豊かさに対する憧れです。

 100年あまり前、中国の清末といった、歴史の転換期における史上初の中国人留学生の目の中にも、今と同じような憧れが見られました。アジア近代化のショーウインドーとなった東京の町には、最盛時1万人を超す中国からの留学生があふれていました。彼らは当時の青年エリートで、日本で新しい知識を求め、祖国を列強の威圧から救い出そうという時代の使命感を持って、日本にやってきました。彼らの多くは、そのあとに偉大な文学者、思想家、社会活動家などとなり、中国の新しい文化を開拓して、斬新な時代を作り上げました。その中で、魯迅や周恩来など、名を後世に伝える人物もたくさん現れました。

 現在の留学生は当時の留学生と比べて、成し遂げた学問成果はともかく精神上においても、何か大きな差があると思います。

 おそらく、私を含めて留学生の多くは、日本で何を勉強すれば自分の将来にとって一番有益なのかと考えています。あるいは日本で働くため、必要な知識だけを身につければよいと考えている人も少なくありません。どうも、先人と比べて、大志がないように感じます。あの時代の留学生たちが、勉強についてどういう風に考えたのかを見てみましょう。

 中華人民共和国の初の総理となった周恩来は二十歳の日本に留学していた時に日記にこう記していました。

 「どこでも学問は出来るのだから、終日教科書にかじりついていることだけを勉強という必要はないのではないか。日本に来て以来、何事も勉強の眼で見ることができることが分かった。日本人の一挙一動、あらゆることに我々留学しているものは注意すべきである。新聞を読むのに毎日一時間余りかかる。光陰尊ぶべしというが、この国の国情はやはり知るべきである。」

 その文には蓄えが乏しく、食事も満足にできず、不安の多い下宿生活をものともしなかった若い有識者の鋭敏さと新しい文明に対する旺盛な熱情が現れています。後輩としての私たちはそのような言葉を耳にして、恥ずかしく思います。

 彼らは今の私たちより高い理想を持っていました。興りつつある日本のすべてを知り尽くし、そして学んだことを祖国に還元することによって、崩れゆく自分の国を一刻も早く救いたいという理想でした。祖国の未来のため、次世代の幸福のため、さらに人類全体の福祉のため、彼らは思想に縛られない日本という国で熱心な勉強をして、熾烈な議論を繰り広げました。

 しかし、100年後の私たちの身の上にそのような活気は見えなくなりました。

 現在の私たちは学位のため、仕事のため、勉強しています。私たちは現状に満足して、自分の将来しか考えないエゴイズムに陥りました。あの生き生きしていた留学生の先輩たちと比べて、私たちは祖国の未来について鈍感ではないでしょうか。その鈍感が生まれた原因は、従来の教育や今の消費社会における時代の色合いによるものだと思います。

 このグローバル化の中、経済発展し続けるにも関わらず、欠陥が沢山ある現代中国にとって、海外留学生の価値と責任はだんだん大きくなっています。ですから、私たちはもっと心身を鍛えてより大きな抱負を持つべきです。今の斬新な時代に、目の前の豊かな生活に報いるため、祖国のため、人間社会の幸福のために、もっと努力して貢献すべきです。

 それは私が先人から学んだ一番大切なことです。



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