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《卒業特集》 学長告辞 新しい時代を拓く 学長 納谷 廣美

明治大学で学び、本日ここに、めでたく卒業式を迎えた皆さん、ご卒業おめでとうございます。明治大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。

私は、4年前の入学式において「時代の新しい動向を肌で感じとりながら、自らの夢(大志)の実現に向けて『前へ』歩みだす勇気を、この明治大学で形成していただくことを願っています」と語りかけています。皆さんは、一般入試志願者数が15年ぶりに10万人を超えた年度の入学者ですが、本学での学生生活は如何でしたか。きっと充実した時間を過ごされたものと拝察しています。

この間、わが国の政権政党は、自民党から民主党へ変わりました。また経済の分野においても、2008年9月にリーマン・ショックに見舞われ、その後世界的な金融危機に陥る中で、昨年GDPで日本は中国に抜かれ、とうとう経済大国第2位の座から第3位に降下しました。このような厳しい経済状況の中で、皆さんの多くは、辛く、かつ長い就職活動を余儀なくされた生活を体験されたことと思います。他方、昨年はうれしいニュースもありました。たとえば小惑星探査機「はやぶさ」が7年に及ぶ60億キロの旅を満身創痍で奇跡的帰還、また国際宇宙ステーションへ物質を運ぶ無人宇宙船「こうのとり」の打ち上げ成功など、科学技術の進歩には目を見張るものがありました。

本学にとっても、躍進した4年間であったと思います。たとえば2008年度には国際的教育研究拠点形成事業(グローバルCOE)で、2009年度には国際化拠点整備事業(グローバル30)で本学のプログラムが採択されました。また一般入試の志願者数は、昨年度に引き続いて今年度も11万人台で、「日本一」になりました。

ところで2011年1月17日、本学は創立130周年を迎えました。皆さんは、この記念すべき年の卒業生になります。そこで、このたびご卒業される皆さんに贈る言葉は、「温故知新」にいたしました。この言葉は、一般的に「故きを温ねて新しきを知る」と読み下されております。その趣旨は、諸橋轍次著「中国古典名言事典」によると「何事にもあれ、過去をたどり、それを十分に消化して、それから、未来に対する新しい思考、方法を見つけるべきだ」と説明されています。

今(現在)は、過去と未来を結んでいます。過去の集積があって、現状が生まれ、それをベースに新たな展開が始まります。過去を変えることはできませんが、自らの思い(志)にむけた不断の行動、それによって自らの将来を創成させることはできます。「今を大切に」との心構えで、是非、自らの人生路を歩んでください。

世界は21世紀に入って、明らかに諸分野においてパラダイムの質的転換が始まっています。わが国においても、同様です。現代は、近代化を目指した「明治維新」、アメリカをモデルにした「戦後改革」に匹敵する変革がおきても不思議ではない時期、状況に入っています。皆さんには、過去の出来事から、その芯となるところを学び、それを教訓に「明治魂」で新しい時代を拓く戦士になってほしいと願っています。

最後になりましたが、皆さんの前途に幸多いことをお祈り申し上げます。