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本棚 「アミーナ」  鳥居 千代香 訳(彩流社、2500円)



チュニジアから瞬く間に各地に広がったアフリカ・中東における民主化運動は、改めてかの地における独裁政権の腐敗ぶりをさらすことになった。だが、その腐敗とより沿うような形で存在する女性に対する抑圧については、あまり触れられることがない。本書はナイジェリアを舞台に、若く特権階級に身を置く女性アミーナが、目覚め立ち上がる姿を描いたものである。夫の日常的な暴力にさらされる妻、レイプされて妊娠しても、誘うような服装が悪いと鞭打ちの刑にされる少女、不義の子を宿したとして石打ちによる死刑を宣告される女性。それがイスラムの教えの名のもとに横行する社会である。

そんな社会の中から力強くだが静かに立ち上がったアミーナの姿が、あたかもドキュメンタリーのような臨場感で描かれている。心痛む場面の連続であるが、本書の著者が男性であること、更に最近放映されたドキュメンタリー「ラゴスの青春」の自立をめざす若き女性の姿は、かの地でも変化が着実に起きていることを教えてくれる。

吉田恵子・情報コミュニケーション学部教授(訳者は政治経済学部講師)