本棚 「レジャーの誕生〈新版〉(上・下)」  渡辺 響子 訳(藤原書店、各2800円)



人の生活をみたすあらゆる慣習にはその起源がある。すべては歴史上のある時点、ある地域ではじまった。余暇やレジャーと呼ばれる魅惑の時間も、やはりそう。本書は「感性の歴史家」アラン・コルバンが第一線の歴史学者たちを率いて執筆した、われわれの日々の生き甲斐部分の成立をめぐる研究だ。

自由時間という言葉には、そもそも逆説が組み込まれている。それは不自由を耐え忍ぶ労働の時間の正確な裏面であり、その枠組自体は固定され動かせない。伝統的ヨーロッパ文化の感覚からいうと無縁のエリアだった海辺や山に出かけることも、釣りもツーリズムもスペクタクルもスポーツも、すべては産業社会のおまけとして19世紀に考案され流行し大衆化した。われわれはそれを継承しているにすぎない。

働け、遊べ、働け、遊べ。このリズムの至高の命令にしたがって組織される日々の楽しさ、悲しさ。「時間割」という強迫観念をかわすためにはその起源を見つめ直す必要がある。本書は確実にその手がかりとなるはずだ。

管啓次郎・理工学部教授(訳者は法学部准教授)

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