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論壇 外部研究費受入実績の推移と今後の課題 研究企画推進本部長 土屋 一雄

過去数年間の統計資料、外部研究費受入実績を眺めると、外部研究資金による本学の研究活動が活発化してきている様子が明らかになる。同時に今後の課題も見えてくる。

文部科学省科学研究費補助金(以降、科研費)および共同・受託研究費等を合算した外部研究費受入実績総計は、2010年度9.8億円(2007年度比較で1.5倍増)となった。科研費が4.8億円(1.9倍増)、共同・受託研究費等が5億円(1.35倍増)である。文系(7学部)、理系(2学部)、「その他」(法科・専門職大学院、研究・知財など)でグルーピングして傾向を見てみると、総額の27%、2.7億円が文系、60%の5.9億円が理系、残りが「その他」となる。文系では外部研究資金の89%を科研費が占めるのに対し、理系では72%が共同・受託研究費等である。一方、科研費に応募する教員の割合は文系で12%、理系は2007年度の57%から33%まで低下してきており、共同・受託研究費等を取得した研究者数も2007年度比較で16ポイント増にとどまっている。限られた数の教員が本学の外部資金による研究を具体的に支えているのである。1件当たりの平均研究費は238万円である。このことを考慮したインセンティブ付与を考えるべきである。これに加え、文系、理系をひとまとめにした一律な支援では不十分である。分野により取得研究費の性質・内容、研究の方法や研究費の使途などが異なるからである。これら多様性を認めた上で、各分野の実情に即した研究支援体制の構築が望まれる。

昨年の10月から、研究企画推進委員会を生田、和泉、駿河台キャンパスで順次、開催し、同時に研究現場の実情を見学する機会を設けた。委員相互が正確な情報を共有して今後の委員会活動に役立てることが目的である。生田キャンパスの場合、大学院生数が多いことにも関連して、研究・実験スペース不足が課題である。和泉・駿河台キャンパスの教員研究室も改善が必要である。少なくとも、普通サイズの長机を研究室内において学生や研究員との研究打ち合わせが可能で、かつ研究に必要な書籍類は、重量制限に気を遣うことなく手元に置ける面積と環境がほしい。

本年5月「明治大学グランドデザイン2020 ビジョンと重点施策 」が示された。その中で、駿河台キャンパスでは研究ラボタワー(仮称)を研究連携の拠点にすることが明記されている。生田キャンパスでは、科学技術研究所を中心として先端科学技術研究センター(仮称)整備事業の構想がまとめられている。これらの実現により、研究環境やスペース不足が一日も早く改善されることを期待したい。本学が研究面においてもトップスクールを目指すための条件である。

(理工学部教授)