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国際日本学部 「日本マンガ・アニメ文化先端講座」第3回 北京大で『手塚治虫』講座を開催

再び登壇して質問に答える手塚眞氏(左)と松谷社長 北京大生が作成した講座ポスター。中国語(簡体字)では「塚」に土へんは付かない 北京大の呉副学長(手前)もメモを取りながら最後まで聴講した

明治大学国際日本学部は10月23日、中国の最高学府として知られる北京大学において、同大外国語学院日本 言語文化学部と共催で「日本マンガ・アニメ文化先端講座」の第3回となる『手塚治虫』を実施。会場となった北京大学内の民主楼208教室には、聴講を許可 された260人(応募600人超)の学生たちが詰めかけた。

講師はヴィジュアリストの手塚眞氏(故手塚治虫氏の長男)と、手塚プロダクション社長の松谷孝征氏が務めた。手塚治虫作品が次々と生み出された背景と場 を、眞氏は家族としての視点を織り交ぜながら、松谷氏は当時の編集担当から専属マネージャー、同プロダクション社長になるまでを辿りながら、「命はみな平 等に大切」そして「読者を楽しませる(幸せにする)」という想いで描き続けた手塚治虫の人となりを語った。

講座は、国際日本学部の藤本由香里准教授による講師プロフィール紹介を経て進行。予定を超え6時間に及んだにもかかわらず、学生らは熱心にメモを取り、 映像に歓声を上げ、流れる主題歌を口ずさみ、手塚治虫の人間性の一端に触れた。1960年代後半から中国でも「鉄腕アトム」がテレビ放映され人気を博し、 以降もリメーク版や「ジャングル大帝」など、手塚作品は世代を超えて楽しまれている。

講座の最後には国際日本学部の宮本大人准教授が、今日の人気イラストレーターや漫画家が手塚キャラを自分の絵柄で描いた展覧会「osamu moet moso」を紹介。今日のクリエイターにとって手塚治虫の何が「萌え」要素なのかという問いから、手塚治虫の好んだ「メタモルフォーゼ=変態」という概念 について、初期作品に触れながら解説した。

深化する連携 日中の研究と文化の交流を牽引

この連携講座は「クール・ジャパン」として世界に知られる日本のサブカルチャーを紹介するもので、2010年5月『美少女戦士セーラームーン』幾原邦彦監督、同11月『機動戦士ガンダム』富野由悠季監督の講座に続き開催されたもの。

連携3回目となる講座開講に先立ち、北京大学の呉志攀副学長、在中国日本国大使館の山田重夫公使がそれぞれあいさつに立ち、歓迎の言葉とともに、回を重ねる毎に活発かつ深化する研究・文化交流への謝辞と称賛。そして、さらなる発展への期待が述べられた。

呉副学長はあいさつの中で、「1980年代に『ジャングル大帝』を初めて観たときの興奮は昨日のことのように覚えている。その画、芸術性、継続性を尊敬 しており、手塚治虫氏の芸術は日本だけのものではなく、全人類のものだ」との賛辞に続けて、「亡くなったアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏と同じ で、手塚治虫氏らのイノベーションは努力をし続けた者だけに与えられる。成功者が持つその能力を学生たちには感じて欲しい」と期待を込めた。

続いてあいさつに立った山田公使は、中国の温家宝首相、日本の野田佳彦首相らも期待を寄せる映画やマンガを通じた日中文化交流事業を紹介、「マンガは日 本文化そのもの。アニメやマンガを通じて日中相互の理解が一層深まることを期待する」と北京大と明治大学の日中の学術・文化交流への尽力を称賛した。

連携講座を終え土屋恵一郎教務理事(法学部教授)は、「今回の講座で手塚治虫氏は、中国にとって最も親しみやすい漫画家であり、世代を超え共感を得るこ とが出来る存在であることが分かった」と感想を述べるとともに、「明治大学と北京大の合同による共同プログラムも3回目を迎え軌道に乗った。今後は、国際 日本学部だけにとどまらない交流の輪を広げていきたい」と抱負を語った。