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本棚 「三木武夫研究」 明治大学史資料センター 監修/小西德應 編著 (日本経済評論社、5,460円)



明治大学卒業生で第66代内閣総理大臣をつとめた三木武夫は、近現代日本政治史における最重要アクターの一人である。だがその評価は没後23年を経た今日なお定まっていない。清廉な「議会の子」「クリーン」と讃えられる一方で、世知と権謀に長けた「バルカン政治家」との揶揄もある。編著者が代表をつとめる三木武夫研究会の手になる本書は、振幅の大きい三木評を整理するとともに、その根源にある三木の全体像の解明に取り組んだ。三木家から寄贈された膨大な資料類や郷里・徳島での調査成果を活用し、これまで知られてこなかった三木の生育環境、初期政治活動、協同主義、自民党総裁選、総理在任中の諸施策(ライフサイクル計画、スト権スト対応)、演説の推敲過程など多様な側面から新たな三木像を描き出している。同研究会による三木夫人・睦子氏へのオーラルヒストリー『総理の妻 三木武夫と歩いた生涯』(同社刊、2,100円)と併せて読まれることをお勧めする。

大六野耕作・政治経済学部長(編著者は政治経済学部教授)