本棚 「夢十夜を十夜で」 高山宏 著 (はとり文庫、1,365円)



白状すると、高山宏氏のご専門の視覚文化論なるものを私は具体的には理解していなかった。ところが、本書をいただき、お義理に読んでみるかぁなんて思って読み出すと、はまってしまった。夏目漱石の『夢十夜』を十回の学生参加の白熱授業で解き明かしていく仕掛けだが、提示される読みがなんとも新鮮。

たとえば、第一夜の夢に出てくる美女が男に「百年のちに合いましょう」と言い残して死ぬ。百年たつと女を埋めた墓標の下から百合の花が咲いた。ほら、「百合」の字をよく見てご覧。「百に合う」ですね。ちゃんと小道具に持ってくる事物が暗号のように作品にちりばめられているでしょう。

こういう感じで、作品に出現する漢字の意味、数字の意味を読み込むことによって、作品の深い魅力が解き明かされる。行間には、高山氏の古今東西の文学を読みつくした薀蓄が鋭い光を発している。視覚文化論とはこんなふうに作品を読み解く楽しい作業だったのだ。読了後は、頭ミソが柔らかく揉みほぐされて、爽快である。

山口仲美・国際日本学部教授
(著者は国際日本学部教授)

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