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告辞 新たな飛翔にむけて 学長 納谷 廣美

明治大学で学び、本日ここに、めでたく卒業式を迎えた皆さん、ご卒業おめでとうございます。明治大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。

私は4年前の入学式で、「現代は『時代の進むべき方向性や価値観』につき、戸惑いを覚える時代であるが、それ故に、今こそ若者にとって自らの夢(大志)を実現できる『大きなチャンス』である」と呼びかけています。このことに関連して、改めて皆さんに語りかけたいと思います。

既成の考え方(価値観)・制度などが揺らぎはじめている現代は、見方を変えると、社会の「自縛」から解放されること(換言すれば「個の確立」)が容易な状況ともいえます。とすれば、このような時代においては、若い皆さんは、いわゆる社会経験が少ないだけに、自由度の点で質・量ともに有利であり、個人的に独立して、自らの夢(仕事)を語り、そして実現するチャンスが多大であるといえるでしょう。

ところで、禅の教えで「修証一等(修証これ一等なり)」という言葉がありますが、これは「修行と悟り」が表裏一体であるという意味を表わしています。どのような分野にあっても、「行」の実践を通して、一つの芸事(仕事)を習得することが肝要です。これを日常的に「精進」しているうちに、気がつくと、その人物が「一芸に秀でた達人」にまで登りつめている。このような生き方、これこそが本学が教育目標としている「他者との連携・共生のなかで、輝く『個』の確立」を習得した者の姿です。

本日、皆さんの手元に配布されている「M-style卒業生特集号」で、私は今年度贈る言葉として「精進」を掲げていますが、これを選定したのは、私の前述した思い(考え方)を伝えるためです。皆さんの胸に刻んでいただければ、幸甚に存じます。

明治大学は、皆さんもご承知のとおり、昨年(2011年)、創立130周年を迎えました。その基本コンセプトは「世界へ─『個』を強め、世界をつなぎ、未来へ─」です。これは、世界秩序の多様化・フラット化が進行している現況を踏まえ、本日この明治大学を巣立っていく皆さんが社会で重要な地位に就き、活躍しているであろう「20年後の世界」を想定し、その時、世界は国家を超えた地球市民的な考え方が尊重される時代を迎えるであろうとの共通認識のもと、宣言されたものです。私は、その周年記念式典において、本学の回顧と展望に言及し、明治大学が世界の誰もが認める「トップユニバーシティ」を目指して、新しいステージに入ることを学内外に表明しました。そして今こそ、その元年にあたるとし、今後は、明治大学の使命として「今日まで継承してきた『個の確立』を基礎とした教育方針を改めて再確認するとともに、人類の未来を見据えて『世界へ』飛び立つ人材を育成すること」にベクトルを置いて大学運営にあたることを誓いました。この意味において、皆さんは、その第一期生であり、本学期待の星でもあります。

これからの長い人生において、数多くの難局に遭遇し、時に傷つき、そして安息を求めることもあるでしょう。しかし、その時には、「希望」という2文字を大切にしてほしい。そして、何があっても「前へ」の心構えを。前進すれば、必ず新しい局面が現われます。皆さんには、このフロンティア精神ともいうべき心構えのもと、「世界へ」飛翔してほしいと願っております。

最後になりましたが、皆さんの前途に幸多いことを心よりお祈り申し上げまして、私の告辞といたします。

【卒業式次第より転載】