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本棚 『世界俳句2012 第8号』夏石番矢(乾 昌幸)・世界俳句協会編 (七月堂、1600円)



『世界俳句』は夏石番矢と世界俳句協会が編集する年刊の協会誌である。今年で第8号となる本誌には、2011年9月9日から3日間、明治大学で開催された第2回東京ポエトリー・フェスティバルと共催の、第6回世界俳句協会大会に寄せられた様々な国の俳人の作品、俳画、そして6編の俳論が掲載されている。

文字通り世界からの俳句が集まる本誌は、原語とその英訳及び和訳で作品が紹介されており、「俳句そのものの本質が言葉や言語の向こうに横たわる象徴化される前の現実に到達し、その現実を体験しようと試みることに存する」(ラウール・エナオ氏の掲載俳論からの引用)と考える、俳句による文化を越えた普遍的真実の探求を目指す人々の響宴の場である。

2011年の大会テーマは「神話へ、その彼方へ」であった。3月11日の大災害を経験したあとの響宴では、「すべてをなめる波の巨大な舌に愛なし」(夏石)という句に代表される自然に対するアニミズム的畏怖の必要と、詩の力による癒しの可能性が様々な形で探られている。

虎岩直子・政治経済学部教授(著者は法学部教授)