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本棚 『軍拡と武器移転の世界史 —兵器はなぜ容易に広まったのか—』 横井 勝彦 ほか著(日本経済論評社、4000円)



本書には際立った特徴が二つある。軍拡と武器移転・武器取引の関係を16世紀から20世紀までの5世紀にわたって、グローバルに実証した書物は本書が初めてではなかろうか。これが第一の特徴である。第二の特徴は、本書のすべての章が初公開の海外一次史料を広範に駆使している点である。

16世紀イエズス会宣教師によるインド・日本への武器移転、19世紀南西太平洋諸島での武器=労働交易、第二次大戦直後のアメリカ武器輸出政策の思惑、ドイツ第三帝国による対中国武器輸出の急旋回、ナチス・ドイツとGM社の隠された関係、ヒトラー政権による原爆開発とホロコーストの顛末、以上が主な内容である。

大量殺戮兵器の拡散阻止は、冷戦後の安全保障の最重要課題である。武器・小型兵器の拡散も、武力紛争を激化させて途上国の開発支援を阻む重大問題である。にもかかわらず、なぜ兵器の拡散は止められないのか。軍縮を阻む要因とは何なのか。本書は、こうした問題の本質を武器移転の世界史的な構造の中に追究している。

白戸伸一・国際日本学部教授(著者は商学部教授)