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司法試験に82人が合格

法務省は9月11日、法科大学院修了者などを対象とした2012年司法試験の合格者2102人を発表した。合格者は2006年に始まった新試験では過去最多となり昨年比39人増だった。明治大学からの合格者は82人(昨年は90人)だった。総受験者数8387人に対する合格率は25.1%(昨年比1.6ポイント増)で新試験の導入後、初めて上昇に転じた。

新試験が導入されてから、新旧両試験が並行実施されていたが、旧試験の終了を受けて、新試験7回目の今回から、予備試験合格者85人が初めて試験に挑み58人が合格した。合格率は68.2%だった。

一方、法科大学院修了者の内、法学既修者コース(2年制)修了者の合格者は1171人で合格率は36.2%、未修者コース(3年制)修了者の合格者は873人で合格率は17.2%だった。

明治大学法科大学院からは、401人が受験、82人が合格した。この合格者数は、大学別では昨年と同じ第6位だった。合格率は20.4%だった。

予備試験

経済的事情などで法科大学院に通えない人の救済策として、合格できれば司法試験を受験できる「例外ルート」として設けられたもの。

2012年司法試験 法科大学院別合格者数上位10校

順位 大学院名 受験者数 合格者数
1 <2> 中央大 489(162) 202( 50)
2 <1> 東京大 379(154) 194( 48)
3 <4> 慶應義塾大 347(126) 186( 43)
4 <5> 早稲田大 472(393) 155(112)
5 <3> 京都大 280( 90) 152( 30)
6 <6> 明治大学 401(199)  82( 39)
7 <7> 一橋大 135( 45)  77( 20)
8 <11> 大阪大 177(113)  74( 39)
9 <8> 神戸大 131( 43)  60( 14)
10 <12> 北海道大 159( 76)  54( 19)
※< >数字は昨年順位、( )内は法学未修者コース修了者数で内数

今年度司法試験の最終結果について

法科大学院長 河内 隆史

今回の明治大学法科大学院修了生は82人の合格は、第1回試験以降7年連続で全国第6位ということになります。しかし、本学からの受験者が401人ですから、合格率は20.4%にとどまり(全国第19位)、全国平均を下回っています。人数的にも、5位の早稲田大学との差が開いており(本学90人→82人、早稲田大学138人→155人)、逆に、7位の一橋大学(77人)、8位の大阪大学(74人)との差が狭まっています。このような危機的状況にあることを十分に自覚し、合格率を上昇させるための有効な対策を立てることが急務であり、法科大学院内で検討を進めています。

法科大学院創設当初は、何年も旧司法試験の受験勉強を続けてきた者が既修者コースに多数入学してきましたが、他方、未修者コースには法律以外の分野からの入学者がかなりの割合を占めていました。そのため、既修者・未修者の法律学における学力差が大きく、結果的に、既修者の司法試験合格率が未修者を大きく上回っていました。しかし、ここ2年間は両者の差がほとんどなくなっています。最近では、旧司法試験経験者はほとんどおらず、既修者・未修者とも法学部出身の新卒者が大多数を占めているのが実情であり、おそらくそのことが原因と考えられます。しかもどの大学でも、カリキュラムの自由化が相当に進んでおり、法律学を体系的網羅的に学習していない法学部卒業生がむしろ多数を占めるようになっています。競合する上位校はいずれも既修者の入学を優先させており、既修者の奪い合いになっています。

このような現状を考えると、未修者の入学を促進し、未修者を対象に基本を丁寧に指導することも一案だと思われます。いずれにせよ、講義科目を含めて少人数教育を進めることが学習効果を高めるために必要でしょうし、本法科大学院修了の若手法曹によるサポート態勢を強化することも有効でしょう。また初年度に結果を出せなかった修了生に対する学習支援も重要です。修了直後の受験では結果を出せなかった者も、2年目に合格する者がかなりいますが、その多くは法制研究所の利用者のようです。法制研究所との協力を強化することが必要だと考えております。

全国的に法科大学院に対する逆風が強く、姫路獨協大学や明治学院大学など5校が募集を廃止しています。しかし、法と秩序に守られた安心できる社会において、法曹の役割は非常に大きなものがあり、優秀な法曹の需要がなくなるわけではありません。明治大学法科大学院は、困難な現状を打破して、優秀な法曹を送り出すための努力を続けていきます。

合格者の声

思えば、中学3年生のとき、木村拓哉主演のドラマ「HERO」を見て法曹に憧れ、司法試験に合格することを目指してから10年以上の時が流れ、ようやく法曹になるためのスタートラインに立つことができました。今後は、地元静岡で弁護士として働くことを目標に、司法修習に備えていきたいと思います。

私が司法試験に合格することができたのは、明治大学法科大学院が私の夢を実現するために最良の環境を用意してくれていたからです。先生方は、授業で積極的に質問する私に対して、常に真摯な態度で応えてくださり、私が法的な知識や考え方を身に付けることを助けてくださいました。また、昨年、私は法科大学院と明大法曹会の支援をいただいて、「被災地エクスターンシップ」という形で、仙台の弁護士事務所で2週間研修を受けることができました。この研修では、普段弁護士がどのような活動をしているのかに加えて、東日本大震災後に生じた多くの法律問題に対して弁護士や弁護士会がどのように対応しているのかを知ることで、弁護士の活動を具体的にイメージすることができるようになりました。そして、それが後の受験勉強における大きなモチベーションになりました。

昨今、法科大学院や司法試験をめぐる環境は厳しくなっていますが、コンプライアンスが求められる現代社会において、高い法的素養を持った人間は必ず必要になります。そのような時代の中で、明治大学法科大学院の修了生が、法曹に限らず、様々な分野で活躍する時代が来ることを願っています。そして、私としては、お世話になった法科大学院にこれから少しずつ恩返しをしていきたいと思っています。

(齋藤雄太・2012法科大学院修了)