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本棚『現代共済論』押尾 直志 著 (日本経済評論社、4,000円)



非正規雇用や貧困・格差の問題、若者の失業問題といった現在の経済-社会の不安定要因が多様な分野で実施されてきた新自由主義の規制緩和政策の結果であることは、今では周知のことである。にもかかわらず、保険の分野では今でも米・日の保険資本の要請により問題の規制緩和が強制され、自主共済を含む非営利の共済事業を営利の保険事業と同様な条件で扱うことが一部法制化された。この法制化はやがて市民生活に大きな影響を及ぼすであろう。

本書は、このような経済-社会政策的背景を受けて、非営利の協同組合保険である「共済の経済的本質」を論究することにより現代日本の「保険経済論」を再構築し、同時に共済の近・現代史を論考することで市民生活にとっての共済の経済-社会的役割を明確にした貴重な研究業績である。本書はまた、共済を規制することで保険資本に利益を与える「保険事業のイコールフッティング」を多面的に批判し共済運動の展望を示す課題に応えている。「共済の理論と実践」への大きな貢献である。

中川雄一郎・政治経済学部教授(著者は商学部教授)