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企業経営的発想、そして法的安定性 

理事 石橋 良一

教育・研究・社会連携は大学の主要な社会的使命であるが、本学もこの3つについて適切かつタイムリーに取り組んできている事が、近年の大躍進となってまさに表われている。

ここで社会連携活動は、もちろん大学の活動であるから教育研究の部分は大であるが、その一面に学外諸団体諸機関との取引契約等も重要な部分を占めている。また社会連携活動とは直接関係ないが大学経営の維持発展拡充の為の大小の不動産取引、施設設備の取得棄却も学外者との取引である。人は他者と取引する時、自己の利得の最大確保リスクの最大回避を図るのが常であり、本学と学外者との間の取引でも当然当てはまる。不動産取引然り、研究知財分野の機関による装置施設の使用貸与、ノウハウの提供然り、またボランティアセンターの商品購入販売も然りである。これらの取引活動において本学は利得の最大確保リスクの最大回避を心しなければならないが、これは何が何でも儲けを出せという事ではない。教育研究活動では赤字になる事でもあえてしなければならない事は当然であろうが、それはコントロールされた赤字であるはずである。物的心的金銭的そして条件的トラブルや名誉信用の失墜を未然に防ぐ事も確保すべき利得と言えよう。又教育機関としては利益概念の伴ったこの様な取引活動は本来苦手かもしれないが、一時の勢いや一研究者一部局にだけ任せるのではなく大学全体として情報を吸い上げ、支援体制を築き、その社会的使命が終わるまでその活動を維持継続し風化状態にならない様にする事も広い意味で利得と言える。

そのためには企業経営的発想により危機管理意識の醸成が重要である。当該取引活動を実施するにあたっては、できる限りあらゆる分野にわたってリスクを最大予測する。そしてそれらのリスクを相対的最大回避し、利得を相対的最大確保するための方法論を検討する。マーケティング調査、多様な取引形態の取捨選択、情報の収集と共有、環境・情勢・状態の変化に柔軟に対応する体制の整備、決定目標を成功させるためのあらゆる方法技術道筋の研究、その上で当該活動のゴー・ストップ・アバンダンに対する明確な意思決定。これらは営利非営利を問わず全ての経営体に必要不可欠なものであろう。

最後に危機管理上考えておかねばならない事は、本学の法的安定性を担保する事である。法的安定性の確保によって最終的な争いにも対処可能であり、そもそも大きな争いを未然に防ぐ事にも繋がる。その為には当該取引活動において法務上瑕疵の無い文書契約書等を一元管理する部局が必要と思われる。

全ての経営体は各人がそれぞれの立場で最大最善の力を虚心坦懐に発揮し、有機的な一つの統合体となり、最大効果をステークホルダーに対して現出させていくこと事が常に求められている。