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本棚『超心理学~封印された超常現象の科学』石川 幹人 著(紀伊國屋書店、2,800円)



「科学」の周縁を浮き彫りにし、「科学者」はどうあるべきかを考えさせられる、優れた学術書である。

超常現象はオカルトやキワモノであるという私たちの先入観に反して、超心理学では厳密な科学的方法にのっとった探究が続けられている。その結果、ある種の「透視実験」に対し、肯定的なデータが積み上がっているという。

本書では、この超心理学の成果が、やみくもな肯定論と、かたくなな否定論の信念論争によって不当にかき消されてしまう実情と、メディアがそれを助長する実態とを、具体例とともに論じている。本書の意義は、先端科学に従事する科学者の孤独と、社会による支援の在り方の問題を描写したところにある。

余談であるが、評者の恩師にあたる後藤以紀先生(元工学部教授)は、国産初のコンピュータを開発した逸材であるが、こうした周縁科学の重要性を口ぐせのように語っていた。

周縁科学における明治大学の伝統の厚みも、本書のあとがきに記されており、一読の価値がある。

向殿政男・理工学部教授(著者は情報コミュニケーション学部教授)