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再論“戦略的な国際化”について

政治経済学部長 大六野 耕作

この論壇に、「戦略的な国際化を目指して」というテーマで執筆して、ほぼ3年半が経過した(明治大学広報614号)。この間だけを見ても、明治の国際化にはめざましいものがある。ためしに、いくつかの簡単な指標を見てみよう。

2009年度には845人であった正規留学生数は、2012年度末には1600人(協定・認定留学等を含む)を超えている。海外留学を経験した明大生は、538人(2011年度)で、2009年度の2.3倍に達している。これに、「国際教育センター」が提供する短期集中留学を含めると、その総数は1000人に手が届くところまできている。政治経済学部でも、学部が独自に展開してきた「留学促進プログラム」が、文科省の「グローバル人材育成推進事業」に採択されたこともあり、昨年度は180人ほどの学生が海外留学を経験した。

英語能力についても同様だ。大手予備校が高校生を対象に実施する英語テスト(49.5万人)によれば、2012年度の明大合格者の平均点(TOEIC換算)は約490点で、東北の旧帝大合格者とほぼ遜色がない。政経学部の場合も502点で、ライバル校にかなり接近してきている。2012年度の卒業生では、600点以上が306人、700点以上が122人、800点以上が54人(団体受験のみ)であり、2008年度における平均点が440点であったことを考えると、正に隔世の感がある。

この他にも、国際日本学部、ガバナンス研究科等で実施しているEnglish Trackや、各学部等における英語コースの増大にも眼を見張るものがある。この5月にバンコクにオープンした「明治大学アセアンセンター」などは、各学部、研究科等が行なってきた地道な国際連携の努力が実を結んだものである。政治経済学部、情報コミュニケーション学部、経営学部、農学部、理工学部、国際日本学研究科等が、タイの大学との連携を計画、あるいは実施している。その規模は、明治からの送出しだけでも毎年70~100人の規模となり、留学生数でこれまで最大であった東京外大を一気に抜き去った。提携先の大学もチュラロンコン大学、タマサート大学などタイを代表するTop Schoolへと拡がっている。因みに、昨年組織されたばかりの「タイ日本人留学生会」の初代会長は、明治からの留学生である。

明治の国際化への努力は、「グローバル30」(2009年度)、「国際協力人材育成プログラム」、「日本ASEANリーダー育成プログラム」、「明治大学グローバル人材育成推進事業(特色型)」(いずれも2012年度)など、文部科学省GPへの採択にも反映されている。各学部、各研究科が競い合いながら進めてきた国際連携の努力が、今の明治の国際化を支える一つの大きな柱となっている。

しかし、世界の大学を巡ってみると、明治大学との、あるいは日本の大学との決定的な違いに気づかされる。それは、大学をめぐる世界的環境変化への鋭い問題意識と明確な戦略の存在である。明治大学も、そろそろ、世界の中でどのようなポジションを取るのか、何を強みとするのか、そのためにどのような制度や組織を準備するのか、真剣に議論するところにきているのではないか。何事も“戦略的”でなければならない。
(政治経済学部教授)