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生田キャンパスの現状と将来 

理工学部長 荒川 利治

この春、明治大学4番目のキャンパスとして中野キャンパスが誕生した。休み時間には学生諸君の歓声が新キャンパスにこだましている。今後の第2期工事に期待が高まる。

さて、生田キャンパスの現状と将来計画を考えてみたい。理工学部・理工学研究科および農学部・農学研究科として12学科・9専攻に、約8000名の学生・大学院生が在籍している。昨年春、理工学部D館が竣工した。主に応用化学科の教育研究に使用しているが、危険な薬品およびガラス器具を多く扱うことから念願の免震構造である。教育研究の安全管理面から大きな前進である。一方では、農学部3号館最上階の一部を撤去(減築)する。約5万坪の生田キャンパス校地は南北にやや長い。南面が高く、北面に低く傾斜しており、相対的に低い北面にD館を建築したことで、キャンパス内建物の平均地盤面が低下した。校舎の日影が校地外に発生する時間が、規制に抵触したことが理由だ。生田キャンパスの将来計画においては、行政側との親密な関係の構築が重要となっている。

生田キャンパスでは、建築目的以外の未利用地と校地全体との割合である有効公開空地率が、川崎市が制定した規制値を若干下廻っている。建物高さ制限とともに、有効公開空地率が生田キャンパスの施設計画に大きく影響することから、校地面積の速やかな拡充が必要不可欠な状況だ。理系学部では卒業後に大学院進学を希望する学生が多く、学科・専攻の構成には時代と社会からの要請もある。そのためには生田キャンパスには若干の余裕が必要である。

生田キャンパス教育研究環境整備委員会(通称:生田キャンパス委員会)が、2011年6月から運用されている。理工学部と農学部は、これまで施設計画を個別に行ってきたが、この委員会は理工学部と農学部が協同してキャンパス内の施設設備計画、教育研究の環境改善、安全管理等を調整する会議体となっている。緑豊かな生田キャンパスの心弾むグランドデザインを、生田キャンパス委員会で策定中である。グローバル化時代に相応しい学生用の諸施設、技術開発の将来予測を踏まえた研究施設の実現が急務である。しかしながら、学内のみからキャンパスを論じることは面白さや新鮮味に欠ける面もある。教職員、留学生を含む在校生、校友会、父母会の意見も参考にしながら、生田キャンパス委員会として、生田キャンパスのあるべき将来計画を提示する義務があろう。

明治大学は、文科省の「平成25年度地(知)の拠点整備事業」に申請しているが、建学の理念を教育・研究・社会貢献等(知)として実現するには、キャンパス(地)が前提となる。神奈川県域における新技術創出、企業・市民の支援と連携を目的として、昨年3月に地域産学連携研究センターが生田キャンパスに設置され、(知)の拠点としての体制は整備された。理工学部では夏休み科学教室を15年間継続し、地域の子ども達に科学の面白さを伝えてきている。駿河台キャンパスでは、3・11震災時にリバティタワーとアカデミーコモンを帰宅困難者に開放して一時避難所としたことを思いだす。これからの生田キャンパスは、社会連携を軸に、地域から頼られるキャンパスとして、また防災拠点として変容しつつある。(理工学部教授)