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本棚 『実践 日本人の英語』マーク・ピーターセン 著(岩波新書、798円)



単に誤りを指摘するだけでなく、われわれの不自然な英文を、心理面や国民性からも深く分析し、説得力をもって説明してくれる本である。ピーターセンさんが百人いて、各都道府県で教えてくれたら、日本人の英語もレベルが上がるだろうなどと考えてしまう。特に貴重だと思うのは、「おかしな」英文が、ネイティブにとって、どういう感じのおかしな「印象」を与えるか、という説明、日本語ならこういう感じのおかしさになる、という解説である。その際には、学生の作文だけでなく、理系の学術論文も材料にされている。「my friend問題」、「ひとつ覚え」、「副詞の立ち位置」、「大人の英文」、「I think 問題」、「付ければセーフの〈など〉」、「ぶつ切り問題」など、著者が創案したキーワードで「日本人の英語」が、分析、解説、訂正されていくのは、鮮やかで、爽快である。作者の著作は、たいていそうなのだが、例文に名画の台詞が多く引用され、文化の香りが馥郁と漂う。日本語の文例にも、微笑ましいウィットが効いているものが多く、二重に楽しめる本である。

中村幸一・政治経済学部教授(著者も政治経済学部教授)