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バイオリソース研究国際インスティテュート「新規ガラス化凍結法」の開発に成功

細胞シートのガラス化凍結の実演に立ち会う長嶋教授(左)と東海大の佐藤教授

明治大学バイオリソース研究国際インスティテュート(代表=長嶋比呂志農学部教授)はこのほど、「ひざ軟骨再生医療」の一般化に欠かすことのできない細胞シートを、必要な時にすぐに使えるよう常にストックしておく保存法「新規ガラス化凍結法」の開発に成功した。また、同研究所に所属する東海大学医学部の佐藤正人教授が、世界初となる細胞シートを使ったひざ軟骨再生治療の安全性を確認する臨床研究を行い、治療を受けた4人全員が、一般生活に復帰するという目覚ましい成果を挙げた。

このことは、テレビ朝日系列の『報道ステーション』でも、ひざ軟骨再生医療の最前線特集として7月4日に放映され、現代病ともいえる、ひざの痛み「変形性膝関節症」に苦しむ人々への朗報として、世間の耳目を今なお集めている。

加齢やケガにより、ひざ軟骨が擦り減る「変形性膝関節症」の有病者数は、超高齢化社会を迎えた日本では推定2530万人(東大22世紀医療センター調べ)。外科的な治療も行われているものの、これまで有効な治療法はなく、体重を減らしたり、ひざに溜まった水を抜いたりする対処療法が中心となっていた。

今回、本学のバイオリソース研究国際インスティテュートを起点にさまざまな研究成果が結集。ひざ軟骨を再生させる医療、根本治癒を目指すという、治療の一般化に向けての大きな前進となった。

ひざ軟骨再生治療のおおまかな流れ

  1. ひざの軟骨と滑膜(かつまく)の組織から細胞を取り出し、軟骨と滑膜の細胞を一緒に培養。直径2.4㎝・厚さ0.2mmの軟骨細胞シートを複数枚作る
  2. 手術で、軟骨が擦り減ってしまった部分に軟骨細胞シートを重ねて貼る
  3. 術後、細胞シートから特殊なタンパク質が出続けて軟骨が再生するとともに、リハビリを経て、数カ月かけて痛みのない一般生活に復帰する
この成果について長嶋教授は、「私たちが農学で培った研究の成果が、人の健康とか、安心というライフサイエンス分野で、患者さんたちの役に立てれば嬉しい限りだ」と述べた上で、治療の一般化への課題として、「今後は、医療用にパッケージ化することや、機械メーカーなどとの連携によるシステム化が必要だ」とした。

佐藤教授は、「軟骨は、輸血や臓器移植の際に見られるような拒絶反応が起きない。細胞シートの大量生産と保存する方法が確立されれば、治療の一般化に向けて弾みがつく。寝たきりを防ぎ、自分の足で、ひざで歩ける健康寿命を延ばしていきたい」と意気込みを語った。

ガラス化凍結法

細胞シートに特殊な溶液をしみ込ませて液体窒素の蒸気(-120~-140℃)を当てて凍結させる方法。これにより、破れやすい細胞シートを長期間保存できるようになった。