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国際日本学部 中野キャンパス移転記念シンポジウム

率直な表現で時に笑いを取りながら、たくさんのメッセージを会場に伝えた安藤氏 第2部では日本絵画の表現を巡り、活発な議論が繰り広げられた

国際日本学部は6月29日、中野キャンパス移転記念シンポジウム「ニッポンの未来と創造」を、同キャンパスホールで開催した。世界で活躍する建築家・安藤忠雄氏を招いての講演、さらに、テクノロジーとアートを融合させた作品を生み出すチームラボ株式会社の代表取締役社長・猪子寿之氏と国際日本学部・髙山宏教授による対談が行われ、中野キャンパスホールを埋めつくした聴衆は講演と対談を満喫した。

シンポジウムは2部構成で行われ、冒頭に、福宮賢一学長、日髙憲三理事長、国際日本学部の白戸伸一学部長がそれぞれあいさつを行い、中野キャンパスの開設にこめた想いと、明大から世界に羽ばたく国際人を育成する国際日本学部の抱負を語った。

第1部では、安藤忠雄氏が「逆境の中の創造」をテーマに講演を行った。

安藤氏は、冒頭で「日本は不安で先行きの見えない国になっていると思いませんか?」と会場に問いかけ、その背景として「1960年代の日本人が持っていた誇りを、80年代には失ってしまった」ことを指摘した。会場の大半を占めた80年代以降に生まれた若い世代に対し「過保護に育てられ自立していない」と苦言を呈しながらも、「これから自立して生きていくために何が必要かを考えてほしい」と呼びかけた。さらに、自身が建築家を目指すきっかけとなった子どもの頃のエピソードを披露し「元気を取り戻すためには、興味のあることを持ってほしい」とアドバイスを送った。

安藤氏はこれまで手掛けた仕事を紹介しながら、多くのメッセージを会場に伝えた。公害や開発行為で緑が失われていた瀬戸内海の直島が、25年かけて自然と建築・美術が融合した現在の姿になったことに触れ「最初は非常に難しい仕事だと思ったが、美しい風景を瀬戸内海に残したかった。それをやりとげるには、すぐあきらめない忍耐力・持続力が非常に大事だった」と継続することの重要さを訴えた。さらに直島の芸術作品に触れた人々の様子を紹介しながら「我々は生涯好奇心を満たしながら元気よく生きなければならない。今の日本人からはこれが抜けてしまっている」と、好奇心の重要さを強調した。また、自身の建築家としての原点が東大寺や千利休の待庵にあることを紹介し「皆さんも自分の原点を作ることが大切。仕事等が上手くいかなくなったら、そこに戻ってみると良い」と語った。

最後に安藤氏は「学ぶのに遅すぎるということはなく、心の中に意欲を持ちつづけることが大事。生きている限り自分の可能性を探していきたい」と述べ、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

続く第2部では「We are the Future.—日本こそ未来的である?—」と題して、チームラボ代表・猪子寿之氏と国際日本学部・髙山教授による対談が行われた。司会進行を同学部の宮本大人准教授が務め、チームラボが生み出した作品を映像で紹介しながら、髙山教授が視覚文化の観点からこれを解説した。

猪子氏は、江戸時代の日本画と西洋画では空間を表現する手法が異なると指摘。西洋画では遠近法を用いて立体感を表現するのに対し、日本画では全体を俯瞰して平面的に表現していると紹介した。全体を俯瞰できる日本画では登場人物になりきって絵を見ることができ、この特徴が近代の日本で開発されたコンピュータゲームの画面にも再現されたのではないかと切り込み、髙山教授・宮本准教授が西洋での遠近法の成り立ち、日本と西洋の社会構造の違い、マンガでの表現方法の違いなどの観点からコメントした。

対談後の質疑応答では、会場の学生から活発な質問が寄せられ、シンポジウムは盛況のうちに幕を閉じた。