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本棚『インヴィジブル・ウェポン電信と情報の世界史 1851-1945』D.R.ヘッドリク 著 横井 勝彦ほか 監訳(日本経済評論社、6,500円)





オーストラリアで初めて電信が敷設されてから、2013年でちょうど160周年となる。スエズ運河の建設に関わったフェルディナン・ド・レセップスは「万民に利益をもたらす事業とは…争いのない時代を到来させる事業のことである」と述べたという。冒頭のこうした叙述に始まり、原著者の主たる関心は「国際政治」や2つの世界大戦と通信との関わりに向けられてゆく。

監訳者のひとりである横井勝彦教授は、武器産業の国際関係史の分野で多くの研究を蓄積されており、本書も「武器としての電信」という視点を共有した若手研究者(竹内真人日本大学准教授ほか、山下雄司・福士純・高田馨里の3人の本学大学院出身の大学教員)とともに完訳された訳業である。本書を通読して驚くのは、翻訳書とは思えないほどこなれた日本語となっていることである。

インターネット選挙も解禁され、情報通信の効用と活用のあり方が問い直されている今日、ダイナミックな視点でその「世界史」を描いた本書から学ぶことは多い。ぜひ、本書の味読をお勧めしたい。

佐々木聡・経営学部教授(監訳者は商学部教授)