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社会連携機構 創立者出身地への学生派遣

社会連携機構は、創立者出身地3地域(鳥取県、山形県天童市、福井県鯖江市)で、地域の人々と交流・連携しながら地域活性化への提言を行う課題解決型学生派遣プログラムを昨年度より実施。今年も6月のガイダンスを皮切りに、8月上旬に1泊2日の現地事前調査、同月下旬に3泊4日の本調査を行った。参加した学生は3地域で計37人。10月20日に開催されるホームカミングデーで、各自治体に対する政策提言を発表する。

明大生への期待膨らみ、創立者3地域との連携、一層深まる

副学長・社会連携機構長 藤江 昌嗣(経営学部教授)

明治大学は132年前、1881年に岸本辰雄、宮城浩蔵、矢代操という3人の青年により設立された。その創立者の出身地の「土」に触れ、「地域の人」と交流することは、言葉を要しない感動をもたらし、感謝の気持ちと未来への誓いをもたらす。読者にもぜひ、3地域を訪れてほしい。3地域には、設立者の胸像があるほか、鯖江市には明治大学が所有している矢代先生の旧宅地があり、皆さんの訪問を待っている。

社会連携機構では、創立者出身地3地域と連携協力に関する協定を締結し、さまざまな連携事業を推進している。2013年度は昨年度に続き、創立者出身地3地域それぞれの自治体が設定する課題について学生と地域住民との「熟議」手法を用いた交流・連携および現地調査・取材を通した「地域活性化への提言」を行う課題解決型の学生派遣プログラムを実施した。大学が果たすべき社会的責任の方針である、「教育研究成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与すること」を大学全体で実践している。

学生は、3つの目—すなわち、虫の目 精確にみる、魚の目 流れでみる、鳥の目—俯瞰してみる—を、各自治体の住民や行政等と交流・連携することで養いながら、他方においてフィールドスタディやインタビューなどを通じて、地域の課題の発見と解決策を考案—構想と着想、そして実現する仕組みや段取りを作り上げ、自らの力量を高めていける。正規化された授業ではないが、広い視野や具体的なものの見方・考え方を、その修得方法も含め、見つけることができるのだ。

折りしも今、「地域で生きる」のでも「地域を生きる」のでもなく、「地域に生きる」大学が求められている。創立者出身地域において、地域との連携は一層深まってきており、明大生への期待は大きく膨らんでいる。

鳥取県(8月5~6日、27~30日)

「熟議」で地元の方々と意見交換

岸本辰雄先生の出身地である鳥取県では、鳥取大生、鳥取環境大生も参加し、本学学生12人とあわせて、総勢18人が活動。鳥取市鹿野町、佐治町の2地域をフィールドに5グループに分かれて現地調査を実施した。

8月5~6日は事前調査のため、1泊2日で鳥取県へ。鹿野町で活動する3グループは、城下町の風情を残す町屋などを、岡山県との県境に位置する佐治町で活動した2グループは耕作放棄地やさじアストロパークを見学。見学後には、市役所担当者や地域の方と意見交換した。2日目には、2地域の学生たちが合同で鳥取市内を見学。鳥取県が誇る観光地である鳥取砂丘や鳥取港海鮮市場を見学し、観光客に鹿野町・佐治町の2地域まで足を延ばしてもらえる方策を考えた。

27~30日に行われた2度目の現地調査は“熟議”でスタート。地元の方に追加質問をしてさらに地域への理解を深めた。また、佐治町のメンバーは、民泊を体験し、一般家庭で地域での暮らしに触れた。事前調査でヒアリングした内容をもとに地域活性化プランを練ってきた学生たちは、2~3日目は各町内を再調査。最終日の4日目には中間発表会を開催し、総合支所内の会議室で関係者・市民らを前に、各地域の課題解決にむけた政策提言を発表した。

山形県天童市(8月2~3日、26~29日)

市役所で市長と対談

宮城浩蔵先生の出身地の山形県天童市では、8月2~3日と26~29日の計6日間、「創立者出身地・てんどう活性化プロジェクト~観光誘客・交流人口の拡大について」をテーマに学生を派遣。10人の学部・大学院生が3チームに分かれ、天童市での調査を行った。

8月2~3日の現地事前調査は、全国の将棋駒生産量の大部分を占める天童市の特徴を理解するため、将棋資料館を見学。夕方には同市の山本信治市長を訪問し、市長から歓迎のあいさつと激励を受け、事前調査の内容や各チームの提言方針について市の担当者らと意見交換した。2日目は、天童ワインのワイナリー、出羽桜酒造、温泉街、東北最大級の日帰り温泉施設や、縁結びで有名な若松寺などを視察。天童市の観光資源を実際に体験するとともに同市の課題を探った。

26~29日の現地調査では、これまで個人やグループで調査・検討してきたことと事前調査の結果を踏まえて、各課題に対する提言を深化・充実させた。市役所職員や市民との熟議では予定の3時間を超えて白熱した議論を展開。2~3日目には、天童市内を調査・ヒアリングし、最終日に中間発表を行った。現地での同プログラムに対する注目度は高く、滞在中に地元のテレビ局から取材を受けた班もあった。

福井県鯖江市(8月5~6日、26~29日)

矢代先生胸像前での集合写真

矢代操先生の出身地である福井県鯖江市では、8月5~6日と26~29日の計6日間、「創立者出身地・さばえ活性化プロジェクト~交流人口の増加」をテーマに計15人の学部・大学院生が4チームに分かれ、鯖江市での調査活動に臨んだ。

8月5~6日の現地事前研修では、鯖江の地場産業を紹介するめがねミュージアムやうるしの里会館や、商店街、住宅地など市内全域を回った。その後、牧野百男市長をはじめ鯖江市関係者との交流会を開催。2日目には福井県立大学の江川誠一講師による「地域活性化」の講義を受け、鯖江市民の「おもてなし」と地域活性化の関係を学んだ後、鯖江市の関係者と意見を交わした。

2度目の訪問は26~29日。初日に牧野市長・野村一榮商工会議所会頭との座談会で、同市の政策・商業などを学び、2~3日目は市内の調査・ヒアリング活動を実施。グループごとに、市役所、小学校、商店街、農家などさまざまな職場を訪問した。

最終日には、牧野市長、野村会頭をはじめとする市関係者・市民ら50人以上を前に、前日深夜まで検討を重ねた政策提言を発表。牧野市長、野村会頭、江川講師から講評を受けた。