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小野さん(先端研M2)「世界チャンピオンまでの道」講演会

「4本の横棒は平行の直線なのに…」と小野さん 分かっているのに、錯覚してしまう不思議な体験

今年5月、米国フロリダ州で開催された第9回「ベスト錯覚コンテスト」で最優秀賞に輝いた小野隼さん(先端研M2)は11月17日、中野区が主催する「なかのまちめぐり博覧会」の一環として、中野キャンパス5階ホールで「世界チャンピオンまでの道」と題して講演。計算された錯覚の世界を紹介し、区民ら約50人の聴衆の目をしばたたかせた。

講演で小野さんは、研究成果である錯視パターンについて、数理的ながらも、分かりやすくユーモラスに解説。世界チャンピオンになった時のプレゼンテーションの様子も動画で紹介した。小野さんの錯視アート作品「フットステップ錯視アート Rotation Generated by Translation」が、各国の名だたる研究者らの作品を抑えて、最優秀賞に選ばれた要因を、学生なので失うものが何もなかったなどと分析。また、多くの方々のアドバイスのおかげで、指導教授でもある杉原厚吉特任教授の3年前の受賞に続き、アジア圏に2度目となる栄冠を日本に持ち帰ることができたと喜びを語った。

生活を豊かにする錯覚

アートの世界に留まらず、錯覚は私たちの身の周りでもさまざまな形で利用されている。

例えば、東京ディズニーランドのシンデレラ城の壁面に積まれた石は、高いところほど小さくなっていて、高さ約50メートルの城をより高く見せる効果を発揮している。また、足先に行くほど模様を細かくし「脚がきれいに見える」ズボンや、しま模様の幅などを変えることで、スタイルをよく見せるワンピースなどへの応用も広がる。

逆に、錯覚を防ぐことで問題を解決する研究にも期待が集まっている。本学の友枝明保特任講師らのグループが取り組むもので、錯覚で上り下りを取り違え、渋滞の一因となる、通称「オバケ坂」の道の壁に、坂道を正しく認識するための模様をつけることで、渋滞を緩和させる研究も実用段階となっている。

フットステップ錯視

等速平行運動をする黒と白の長方形が、ストライプパターンの前を通ると、動いたり止まったりして見えるという錯視。2001年に米国の研究者Anstis氏が発見した。

錯視アート展示会「あなたの視覚は計算済み」同時開催

人の目の錯覚を利用して作られた不思議なアート作品の展示会も、同16日から1週間、中野キャンパス6階の教室を一般開放して催された。

展示された70作品は、本学の先端数理科学インスティテュート錯覚と数理の融合研究プロジェクト(リーダー=杉原厚吉大学院先端数理科学研究科特任教授)の研究で得られた成果などで、小学生連れの親子ら多くの来場者が首をかしげながら、近づいたり離れたりし、分かっているけど騙されてしまう、不思議な錯覚の世界を楽しんでいた。

錯覚を利用した作品は、計算錯覚学の研究拠点でもある「錯覚美術館」(千代田区神田淡路町1-1神田クレストビル2階)でも楽しむこともできる。同美術館への入場は無料だが、開館は土曜日の10時~17時のみ。詳しくはホームページで確認を。