本棚『チベット人の中で』イザベラ・バード 著 長尾 史郎 ほか訳(中央公論事業出版、1,600円)



本書は、明治初期の東京から北海道までの旅行記『日本奥地紀行』(Unbeaten Tracks in Japan;1880)で有名なイギリス人女性イザベラ・バードのAmong the Tibetans (1894)の本邦初の翻訳である。第一章「旅立ち」、第二章「シェルゴルとレー」、第三章「ヌブラ」、第四章「礼儀作法と慣習」、第五章「気候と自然の様相」の計五章建てで構成されているが、随所に挿絵が挿入されており、理解を助ける為に役立っている。

カシミール人とチベット人の比較の部分があるが、前者は、不誠実で卑屈、疑り深く、後者は、誠実で自立的で親しみがあり最も楽しい国民の一つとの記述があり、そのコントラストが興味深い。原文と照らし合わせてみたが、かなり忠実かつ読み易い翻訳に仕上がっており、高く評価できる。

高地での難行苦行の様子が伝わってきて、また、今に通じる文化的な背景、例えば、家族関係や慣習などが良く理解でき、チベットの文化研究にはなくてはならない一冊となるものと思われる。是非、ご一読をお薦めする。

宇野毅・経営学部教授(訳者は名誉教授)

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