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本棚『アメリカ合衆国における宗教の諸相』 イザベラ・バード 著 長尾 史郎 ほか 訳 (中央公論事業出版、1,600円)



本書は、前号で紹介したヴィクトリア朝イギリス人女性イザベラ・バード(1831-1904)による1858年から59年にかけてのアメリカに於ける宗教活動の調査報告書(原題はThe Aspects of religion in the United States of America;1859)である。

この時期は、イギリスでは産業革命が終わり国力がピークに達するころで、一方アメリカでは南北戦争と奴隷解放へ向かう直前という状況であった。

そのような背景におけるアメリカの地域的特性やさまざまな教会、非福音主義教会、南部諸州と奴隷制度、西部の諸相、説教の特性などが述べられている。アメリカの教会は教義的には大きく2つに分かれるが、統治形式では、監督教会[英国国教会派]・長老教会・独立教会の3つに大別される。

原書と照らし合わせてみたが、かなり忠実かつ読み易い翻訳に仕上がっている。筆者の記述の根底には、当時のイギリス階級社会と大英帝国の意識を感じさせるものがある。

なお、本書でいう「英国教会」は「英国国教会(Church of England)」を指している。

宇野毅・経営学部教授(訳者は名誉教授)