Go Forward

未来開拓力のある、輝く「個」の育成を目指して

副学長(総合政策担当) 伊藤 光


雪の多かった今春、本学での学生生活で育まれた多くの若者が社会に羽ばたこうとしている。その進む先は、情報化・国際化が急速に進み、世界の激しい動きが瞬時に伝わってくる社会である。政治や経済の変化も著しい一方、科学技術の進歩も目覚しく、その成果は生命から宇宙の領域までに広がっている。世界の経済活動の流れに沿って、多くの企業が海外での事業展開を拡げている。いまや国と国との間に国境はあるものの、人的垣根はなくなりつつある。まさにグローバル化の時代である。しかし、わが国の18歳人口は、現在の120万人から18年後には100万人に漸減することが予測されているため、そのような流れの中で、世界で活躍できる若者をいかに育成するか、高等教育の在り方が真剣に検討されている昨今である。

近年広く高校生からは、明治大学に高い関心と期待が寄せられている。昨年のオープンキャンパスの来場者は約5万9000人に上り、過去最高を更新した。確かにこの状況は大変有難く、大学として大きな励みではあるが、むしろ非常に責任の重さを痛感するものである。本学はこの10年余の中で、3つの新学部の発足、法科大学院、専門職大学院の設立、また文理融合型の中野新キャンパスの展開など、時代のニーズに沿った大学づくりに力を注いできた。この新たな教育環境で学ぶ学生は、これからの世界で活躍するために専門分野の基礎を修得することは無論のこと、語学力が必須条件である。またこれまで以上に世界各国の歴史、政治、経済、文化など、幅広い教養を身に付けることが必要となる。深い教養が他者への理解と相互協力の源となるからである。自ら考え積極的に行動できる学生、創意工夫のある学生、教養に裏打ちされた心豊かな学生の育成が、これからの大学教育に強く求められている。まさに未来開拓力のある、輝く「個」の育成である。

いま本学は「次代を拓き、世界に発信する明治大学」を目指している。そのために「教育力」の飛躍に向けた「総合的教育改革」の検討に入っている。2014年度から、学年暦は「前期・後期」から「春学期・秋学期」へと改められる。大学院での教育研究環境の整備も進めていかなければならない。昨年、新潟県南魚沼市にある大学院大学「国際大学」と系列法人化協定を結んだ。ここは主にアジアからの留学生約300人がすべて英語で学び、3000人余の修了生が既に世界で活躍しており、今後の相互協力が期待されている。またタイに本学の国際教育拠点である「明治大学アセアンセンター」を開設し、ここにおいても各国の学生との学びの場を目指している。この4月からは大学院博士後期課程に、英語による講義・研究指導が行われるグローバル・ガバナンス研究科も立ち上げる。海外からの学生と一緒に学び、異文化と間近に接することにより、ここから国境を越えた理解と共感、協力し合える人づくりが進む。

創立130周年で唱えた本学の「世界へ」が、150周年の20年後には、その時なお私学の雄として、また「世界に発信する大学」として輝けるよう、今後も不断の努力が求められている。

(理工学部教授)