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明大をあとに「大学に尽きせぬ感謝を込めて」

政治経済学部教授 付属明治高等学校長兼中学校長 金子 光男

あれは確か、東京には珍しい大雪の日であった。膝まで積もった和泉グランドの雪に足をとられながら、私は人の群がる掲示板らしき方へと向かっていた。そのおぼつかない足どりは、雪のせいなのか、不安のためなのかはもう分らない。ややあって、板上にチラリとわが受験番号を捉えたような気がした。再度、その周辺を見詰めること、数秒。「合格」の一語が浮んだ。とたんに力が抜け、雪中に両膝を没して天を仰いでいた。

あれから数えて早や51年。本学への入学も危うかった新入生が、今こうして退職の辞を書くなど、誰が予想しただろう。志と言えば、「人並みに卒業できれば上出来」くらいのものでしかなかった、あの私が、である。

これを思えば、大学から私が受けた恩義は無限である。人様に向かって何事かを語り、文章を書くまでになった。組織の何たるかも学んだ。なるほど、私もそれなり努力はした。人には言えない苦労も負った。しかし、それが一体、何だというのだ。そのような時と場を与えられたからこそ、私は成長できたのである。ここにあるのは、感謝のほかはない。

私はまず、政治経済学部に感謝する。大らかな気風の中で、42年間を気ままに過ごさせていただいた。また、学部外の教職を問わぬ多くの方々に御礼申し上げる。皆さま方にさまざま助けられたことを、私は忘れない。わが教え子たるゼミ卒業生や学生たちへの思いも尽きない。最後に付属高中の生徒たちには何を言おう。君たちのお陰で、私の退職間際の5年間は大いに輝いた。君たちに幸多かれと切に祈る。ミンナ、元気で!サヨウナラ!