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本棚『グローバル経済の誕生~貿易が作り変えたこの世界~』ケネス・ポメランツ/スティーヴン・トピック 著 福田邦夫/吉田 敦 訳(筑摩書房、3800円)



本書は、世界貿易の500年に及ぶ歴史を振り返り、今日「地球全体が恐るべき時代に直面している」事実を読者に伝える警告の書である。コーヒー、タバコ、絹、小麦、砂糖、石油、石鹸、コカコーラ等々、エピソードの数は類書をはるかに凌駕する。

だが、たんなる貿易史ではない。本書には、レオ・ヒューバーマンの名著『資本主義経済の歩み』(岩波新書、1953年)を彷彿させる迫力がある。これが評者の第一印象である。一般民衆が資本主義と世界貿易にいかに巻き込まれ、どのような問題に直面し対処してきたのか、という民衆史観を共有している。

この2冊の間には半世紀以上の隔たりがあるが、その間に世界が直面した新たな危機、「環境破壊と資源の枯渇」や「格差の拡大と暴力の蔓延」を考える上で、本書は示唆に富み、大変読み応えのある1冊である。ぜひ一読を薦めたい。

「誤訳」と「意訳」は紙一重と言われるが、本書はそのきわどい一線に果敢に踏み込み、大変読みやすい名訳に仕上がっている。訳者の労を多としたい。

横井勝彦・商学部教授(訳者は商学部教授/商学部助教)