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本棚『現代に甦る大杉榮』飛矢崎 雅也 著(東信堂、2,800円)



尾崎豊の歌詞にあるような「仕組まれた自由」のなかで、自分はどのように生きればよいのか。そういう問いから本書ははじまる。就職の問題ではなくて、生きていくことに意味を見出し、よりよく生きるためにはどうすればよいのか。それは現代における思想的な課題である。

著者は、20代の前半、「生」の喪失感にさいなまれている時に大杉栄という人物に出会った。「生」を肯定し、「生の拡充」を主張する大杉の思想的核心は、人類に強いられてきた「征服の事実」を打ち破り「自由」を求めることであり、「相互扶助」のもとに成立つ「社会」を目指すことであった。著者は、大杉の書かれた言説を精密に分解し、その論理的再構成を行うことによって、生きていくことの普遍的な意味を見出そうとした。それが、「現代に甦る」という表題になった。

本書は、2010年3月に授与された博士学位(政治学)論文をもとにしている。長い時間を費やして自分と向き合い、研究書としてまとめた渾身の書である。

山泉進・法学部教授(著者は政治経済学部助教)