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公的研究費の監査とアカウンタビリティ

副学長(研究担当) 山本 昌弘

研究不正に関する報道が喧しい中、2月18日に「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」が改正された。2013年8月に文部科学副大臣の下に設置されたタスクフォースの中間とりまとめを受け、文部科学省研究振興局の有識者会議の議論を踏まえて同省が公表したものである。

そこでは、研究者や職員に対するコンプライアンス教育の受講義務化、不正事案の氏名公表の徹底、リスクアプローチ監査の実施といった事前防止策とともに、競争的資金の管理・執行のモニタリング、さらには不正調査の期限(210日)の設定、告発窓口の第三者機関への設置、第三者を含む調査委員会の設置等、管理責任の明確化が要請されている。自身の研究は国際会計論であるが、コンプライアンス、リスクアプローチ監査、モニタリングといった企業会計ではなじみ深い概念が多用されている。

本学は、2005年に研究・知財戦略機構を設置し、学長を機構長として全学的な研究支援体制を構築するとともに、研究担当副学長を副機構長として置いてきた。この間、科学研究費の獲得額が倍増し、GCOEに採択されるなどの成果が上がっている。経済産業省からも、国家プロジェクトとしてメタンハイドレート研究の受託、補助金による植物工場基盤技術研究センターや地域産学連携研究センターの建設を実現してきた。

億単位で獲得される競争的資金は、研究活動にとっても、大学財政にとっても好ましいものであるが、その原資が国民の税金であることから、これも会計学の重要概念であるアカウンタビリティが求められる。明確な説明責任である。巨額の公的資金と厳格な不正対応は、一体かつ不可分である。

すでに本学は、「研究活動の不正行為にかかわる通報処理に関する規程」を2007年に制定し、2013年には遅まきながら各キャンパスに検品室を設置し公的資金の全品検品体制を開始した。それでも文部科学省によるガイドライン改正は、本学の研究支援体制整備のはるか先を行くものである。現在、学長の下にワーキンググループを設置し、現行規程の見直し作業を進めている。

研究活動の重要性は、教学においても法人においてもよく認識されている。事務組織として研究推進部が置かれ、研究知財事務室(主にグローバルフロント)と生田研究知財事務室(中央校舎)がある。本年度から、アカデミーコモンに大型プロジェクト研究推進事務室が増設され、事務長3人体制に発展した。同時に教員役職者も、研究企画推進本部長および研究活用知財本部長の下の副本部長がそれぞれ2人から3人に増員された。教育研究振興基金(いわゆる学長ファンド)についても、学長がより機動的に活用できるよう研究推進部から教学企画部に移された。

研究不正に対する世間の目がますます厳しくなる中、明治大学全体として研究業績が持続的に上げられるような、体制の整備が求められている。
(商学部教授)