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本棚『軍縮と武器移転の世界史「軍縮下の軍拡」はなぜ起きたのか』横井 勝彦 編著 (日本経済評論社、4800円+税)



今年4月1日付の新聞各紙は、安倍政権が武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」を閣議決定したことを大きく伝えた。一定の条件を満たせば海外への輸出や「第三国移転」を認めたのだ。憲法で武力による国際紛争の解決を放棄したこの国は、なにゆえに防衛用の武器を開発し、なにゆえに戦争用兵器として公然と輸出しなければならないのか。

世界史のテキストを見ると、両大戦間期は国際協調が高まり、不戦条約が締結され軍備制限が進められた時代と記されている。しかし、実はこの時期に武器の国際移転も拡大したのである。本書は「軍縮下の軍拡」の謎の解明に取り組み、軍縮によって国内市場の縮小に直面した兵器産業は、国内生産基盤を維持するために海外への武器輸出を開始し、新興諸国が主権と独立保持のために武器輸入を拡大したとの結論を導いた。今般の武器輸出原則の見直しでも、平和貢献や安保協力と共に、わが国防衛産業の国際競争力の底上げが期待されている。まさに時宜を得た大きな成果の刊行である。

須藤功・政治経済学部教授(著・編者は商学部教授)