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リバティアカデミー 中野ブロードウェイ商店街振興組合との連携講座を開催

「カルチャー批評から見る日本社会」

鋭いカルチャー批評を展開した宇野氏 受講者で埋まった会場。テーマへの関心の高さがうかがえる

リバティアカデミーは5月24日、評論家で批評誌『PLANETS』の編集長である宇野常寛氏を講師に招き、中野ブロードウェイ商店街振興組合との連携講座「カルチャー批評から見る日本社会」を中野キャンパスで開催した。サブカルチャーに敏感な若者から大人まで幅広い年齢層の受講生約300人で会場は埋め尽くされた。

中野ブロードウェイ商店街振興組合との連携講座は、双方の強みを生かして現代文化の魅力を社会に発信させることを目的に企画され、昨年11月の現代美術家・村上隆氏の講演会に続き2度目の開催となった。

宇野氏は学生時代、市販されるサブカルチャー雑誌が「全く面白くない」と感じ、インターネット上で募った仲間と共に批評誌『PLANETS』を創刊。これを契機に、これまでに多くの著書を執筆し、ラジオ番組のパーソナリティや大学での講義など、若き気鋭の評論家として活躍している。

講演では、現代の文化批評は「インターネットがもたらしたものは何か」という視点で議論が展開されているとし、音楽を例にとり、「20世紀はレコード、CDといった“モノを所有”することに価値を置いていた時代」と説明。インターネットの出現により安価で音楽が配信され、複製が可能になった現在においては「音楽を媒介としたコミュニケーションやライブのような“コピーできない体験”に価値を置くようになった」と述べ、「これをうまく活用しているのがAKB商法。私も先日CDを50枚買いました」と自虐的に会場の笑いを誘った。

また、政府のクールジャパン戦略についても、マンガやアニメなどのコンテンツだけを海外に発信するのではなく、インターネット上のプラットフォームや、コミックマーケットに代表されるイベント開催など「コミュニケーション環境の整備を強化すべきだ」と指摘し、「2020年東京五輪のタイミングに、日本のカルチャーを発信しない手はない」と構想段階中のプロジェクトの一端を明かした。

さらに、情報技術の発達によりこれまで計ることができなかったものが、インターネットなどを介して数値化・可視化できるようになると「社会・人間像の捉え方が変化していく」とし、「時代に応じて形成される文化の中から、未来を読み解くヒントを探して、社会に発信していきたい」と締めくくった。

受講した大学院生は「現代文化の成り立ちが体系的に語られていたので面白かった。文化が政治や社会と密接に関わっていることを改めて実感した」と充実した表情で会場を後にした。