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リバティアカデミー オープン講座 坂東玉三郎×齋藤孝「演じるということ2014」





舞台と同様、あふれる気品に観客もウットリ

本学の生涯学習機関であるリバティアカデミーは6月27日、歌舞伎界を代表する女形で人間国宝の坂東玉三郎さんと、TBSの朝の顔(「あさチャン!」MC)としても活躍中の齋藤孝文学部教授によるオープン講座「演じるということ2014」を、駿河台キャンパス・アカデミーホールで開催した。会場には、学生300人を含む約1200人の観客が詰めかけ満員御礼。玉三郎さんの講演および齋藤教授との対談という昨年と同じ構成ながら、円熟味かつ新鮮味ある内容で、1時間半にわたって観客を魅了し続けた。

「影響を受けるハート。心を持っていることが大切です」と玉三郎さん。「カラオケで高得点を出す人でも、歌を上手いと思えない人もいる。それは『心』です」と訴えた。

そして『玉三郎』襲名50周年を迎えた今、歌舞伎を伝承していく身として、「自分には厳しくできても、人に厳しくするのは難しくなった」と現代の世相を嘆きつつ、「それでも、聞いてきた人には、全力で教えてあげることにしている」と前向きに語った。

対談では、身体論やコミュニケーション論を研究分野とする齋藤教授が『京鹿子娘道成寺』の演技に触れ、「女の情念すら感じさせる姿に感心します」と称賛しつつ、「常に恋心のような、心が動いている感じを大切にしているのですか」と質問。玉三郎さんは「芸術とか、良いものに憧れること。憧れのある人は、どこか清々としたものがありますよね」と答えると、齋藤教授も「憧れに、憧れるのが、教育の原理でもあります」と本質的な部分で共通性が見出された。

対談の終盤では、女形の見得を切る実演指導が行われ、観客も一緒になって、手振りを交えながら女性を演じる難しさや、そのコツとなる所作を体感した。

最後の質疑応答では、「感じる心を養うために、わが子にしてあげられることは」との新米パパからの質問に、玉三郎さんは「なるべく純粋な食べ物を親の手作りで。そして良いもの、本物に触れることを大切に」とアドバイスした。また、学生からの「歌舞伎を伝えていくのに大切なことは」との質問には、「それが分かったら苦労しない」と会場を沸かせながらも、「それは1つではない。形づくっているもの、どれか1つでも欠けてはいけない」と最後に決然と回答。観客をとりこにした講座を締めくくった。

歌舞伎俳優 坂東玉三郎

1950年生まれ。7歳で坂東喜の字(きのじ)の芸名で初舞台を踏む。1964年に14代目守田勘弥の養子となり、5代目坂東玉三郎を襲名。気品あふれる姫役や吉原の花魁役など女形として絶賛され、2012年、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。