本棚『日本神話の男と女—「性」という視点』堂野前 彰子 著(三弥井書店、3000円+税)



『古事記』や『万葉集』の内部に閉じこもり、重箱の隅をつつくように一字一句の表現にこだわり、「作品」の中で全完結して、一歩も外に出ない。これが昨今の上代文学研究の流行であり、論理を中心としたアカデミズムの停滞でもある。この現状に対して、論理で考えるのではなく、己が女性的身体を通して神話を読む、すなわち、己が女性的身体の感覚を通して、神話を読み込み、自らの身体感覚に従って描出する。結果、論理の停滞は消失し、まったく新しい神話読解の境地が拓かれる。快刀乱麻を断つ鋭さで従来論を覆していく本書は読んでいて爽快。著者曰く、これは研究書ではない、とのこと。現在の重苦しい学界に、それこそ己が身体ひとつで体当たりした結果、かくも美しい火花を散らし、その軌跡を描いた本書は芸術作品といえよう。なかでも、第2部「嫉妬の構造」は秀逸。『古事記』イハノヒメの嫉妬譚を、「動く男」と「動かない女」という対立的視点から読解したもの。ここに本書の研究方法の有効性が端的に示されている。

山田 純・文学部兼任講師
(著者は経営学部兼任講師)

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