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祝 辞 謙虚に学び、今を懸命に生きよ

理事長 日髙 憲三
心地よい春風が薫り、生命の躍動を感じるこの佳き日、諸君の卒業・修了を心からお祝い申し上げます。また、卒業生の成長を誰よりも楽しみにされていたご家族の皆様、感慨もひとしおと存じます。これから、世界に羽ばたこうとする、卒業生の成長した姿を、皆様とともに喜びたいと思います。

晴れやかな門出に際し、学生生活を今一度振り返ると、諸君にはどのような思い出が甦るでしょうか。ゼミナールや研究室での勉学。部活動、サークル活動といった課外活動。留学やインターンシップ、悩み抜いた末に決断した進路選択。諸君は「権利自由、独立自治」の建学の精神の下、夢の実現に向けて、試行錯誤を繰り返しながら今日を迎えたことと存じます。目標を掲げ、挑戦し、その実現のために努力する。その積み重ねが個性を磨き、今の諸君を形成する力となったのです。師に学び、友と切磋琢磨した日々は、必ずや生涯の財産となることでしょう。

2011年3月11日。あの東日本大震災から4年の月日が流れました。今日、卒業式にご出席の方にも、被害に遭われた方、大切な人との別れを経験された方、今もなお生活に影響が及んでいる方が、少なからずいらっしゃると拝察いたします。心からお見舞いを申し上げます。また、当時は計画停電の実施を踏まえ、安全を考慮し、予定されていた卒業式及び入学式を中止しました。2011年の入学生は、人生の節目となる入学式を、ここ日本武道館で迎えることができず、私としても残念に思っています。それでも震災後の大学生活という苦難を乗り越えて、学問に励み、今日を迎えた卒業生諸君を、私は一人の明治大学卒業生としてとても嬉しく、そして誇りに感じます。

今年は、阪神大震災から20年を迎える年でもあります。私たちは、巨大地震や台風、火山の噴火といった自然災害がおこるたびに、日頃の生活で忘れかけていた自然の脅威を感じ、科学技術への過信を省みて、生命の尊さを学びます。人間は忘れることと同時に、過去の教訓から学ぶことができる生き物です。自然を畏れ、尊び、そして謙虚に生きること。私たちは、この姿勢を心に深く刻まなくてはなりません。

私たちは、過去を変えることはできません。しかし、過去に学び、今を懸命に生きることで、未来を変えることはできます。今日学んだこと、大学生活で学んだことが、明日すぐに成果として出るとは限りません。それでも、諸君は今日も明日も、そしてこれからも毎日学び続けることが大切です。今日1日の努力を怠る者に、輝かしい明日はやってきません。これから諸君は、多くの課題を抱える社会を逞しく生きていくこととなりますが、他者を尊重し、謙虚に学ぶ姿勢をもって、前へ、未来へと時代を切り拓いてください。

最後に、本学創立者の一人で、当時校長の職にあった岸本辰雄先生が、卒業証書授与式を終えた後、卒業生に述べられた言葉を紹介します。

「本校は諸君の卒業をもって、諸君に対する本校の任務既に終れりと為すものに非ず、諸君が卒業後ますます既修の学術を切磋し、発展し、これを実際に応用して、身を立て、志を行い、もって国家人民に裨補するを望みて已まず」。

諸君は、卒業後も、母校・明治大学とともにあります。明日から進む道はひとりひとり異なりますが、これからも自己研鑽に励んでください。そして、社会のため、他人のためにたくさんの汗をかいてください。諸君の活躍を心から楽しみにしています。

卒業生の進路に幸多きことを心から祈念し、お祝いの言葉といたします。